ロゴマーク「Asahi」は著作物ではない?

 「アサヒビールのログは?」と聞かれると、皆さんはきっとスーパーの店頭やコマーシャルでいつも見かける、力強く書かれている「Asahi」の文字を思い出すのはないでしょうか。そうです!「Asahi」は日本中で知られているとても有名なロゴマークなので、それを見ると思わず、みんなアサヒビールのことを連想してしまいますよね。これほど知名度が高く、力強く美しく書かれているロゴマークなら、きっと著作物として著作権法で保護されているだろうと、多くの方は思っているのではないでしょうか。 

 実は、アサヒビール自身もそのように考えていて裁判まで発展した事件がありました。裁判所はどのように判断したでしょうか。アサヒビールは「AsaX」というロゴマークを使用して米穀等の販売を行っていたアサックスという会社に対して、「AsaX」のロゴが「Asahi」の著作権を侵害したとして訴訟を起こしました。東京高裁は次のように判示しました(東京高裁平成8年1月25日判決)。


 「デザイン書体も文字の字体を基礎として,これにデザインを施したものであるところ,文字は万人共有の文化的財産ともいうべきものであり,また,本来的には情報伝達という実用的機能を有するものであるから,文字の字体を基礎として含むデザイン書体の表現形態に著作権としての保護を与えるべき創作性を認めることは,一般的には困難であると考えられる。仮に,デザイン書体に著作物性を認め得る場合があるとしても,それは,当該書体のデザイン的要素が『美術』の著作物と同視し得るような美的創作性を感得できる場合に限られることは当然である。」
 欧文字「Asahi」についてデザインを施した点に特徴があり、「また,『A』の書体は他の文字に比べてデザイン的な工夫が凝らされたものとは認められるが,右程度のデザイン的要素の付加によって美的創作性を感得することはできず,右ロゴマークを著作物と認めることはできない。」。    

 このように「文字の字体を基礎として含むデザイン書体の表現形態に著作権としての保護を与えるべき創作性を認めることは,一般的には困難であると考えられる」ため、知名度は高いとはいえ、デザイン文字で構成されているだけのロゴマークは、「創作性」という要件が必要とされている著作物として必ず認められるわけではないということが分かりますよね。

 しかし、そうなると、「Asahi」のロゴマークは勝手に使われてしまうのではないかと心配する方もいるでしょう。ご安心あれ。実は、著作権は認められなくても、商標として登録すれば商標権を得ることができますので、商標法で守られることになります。
このように、知的財産に関わる問題であるだけに、アプローチを変えると知的に対処することができるよね。


 

 

2022年02月14日