午後12時(24時)と午前0時は同じ?違う?

 今回のタイトルのような疑問を皆さんは考えたことがありますか。例えば、大晦日の夜24時は新年の午前0時でもあるというふうに思ったことはありませんか。

 日常において、どうでもいいようなシンプルな問題でも、経済的利益に関わる法的問題にされると、拗れてしまうことがあります。今回は著作権の保護期間を巡るこのような捻くれた争点についてお話ししましょう。

 映画の著作物について、旧著作権法は公表後50年まで著作権が存在すると規定していましたが、2004年1月1日に施行された改正法により、新法が施行された際(即ち2004年1月1日)に著作権は消滅していなければ、公表後70年まで存在期間が延長されることになりました。他方で、「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については、なお従前の例による」とされ、言い換えると、消滅している場合には延長されないということになります。

 元々はシンプルな話でしたが、こともあろうに本来なら2003年12月31日に著作権が消滅するはずの名作映画「シェーン」(や「ローマの休日」)の著作権を保有するパラマウント・ピクチャーズ・コーポレーションは、新法の施行される2004年1月1日が2003年12月31日と同意味・同時点であると主張し、自社映画の著作権が延長されたとして、「海賊版」に対する著作権侵害の差止訴訟を提起しました。


 訴訟において、両日時が同時点を意味するかの法解釈が、最大の争点となって、最高裁まで争われました。上告審第三小法廷は「本件文言の一般用法においては,『この法律の施行の際』とは、当該法律の施行日を指すものと解するほかなく、『・・・の際』という文言が一定の時間的な広がりを含意させるために用いられることがあるからといって、当該法律の施行の直前の時点を含むものと解することはできない。」と判示したのです(最三小判平成19年12月18日民集226号559頁)。

 即ち、両日時は、異なる時点を意味するという判断です。噛み砕いていうと、保護期間の満了を測る基本単位は一瞬の時間ではなく、「日」である、というふうに裁判所が解釈しているということですね。なるほど、著作権の満了期間が何年何日までというふうに素直に解釈すれば、俄然分かり易くなりますね。

 著作権法って、日時まで面白いと思いませんか。


 

 

2022年03月18日