ゼミ討論会「日本が『軍事産業立国』を目指すことに、あなたは賛成?反対?【後半戦】」

 

 「日本が“軍事産業立国”を目指すことに、あなたは賛成?反対?」をテーマに、討論会の後半戦を行いました。
ロシアによるウクライナ侵攻や、トランプ政権下での同盟国軽視といった国際情勢の不安定化を背景に、「自分の身は自分で守るしかない」「平和も結局は力によってこそ守られる」といった現実を突きつけられているのが、今の私たちの置かれた状況です。

 こうした中、日本でも防衛力の強化と並行して、軍事産業の発展を目指す動きが活発化しています。特に、軍事製品の海外輸出を通じて経済成長を促し、軍事産業を国家経済の柱の一つとして育成していくべきだという考え方が広がっています。一方で、憲法改正や武器輸出規制の緩和が進めば、戦争への加担につながるのではないかという懸念も根強くあります。

 このように賛否両論がある中で、ゼミでは前半・後半の二部構成で、賛成派・反対派に分かれて活発な意見交換が行われました。次では、その討論の様子を振り返ります。

 

発言要旨
【賛成派】
(川角)私は賛成です。軍事産業を推進することによって、今までのわが国の安全保障は構造的に変わることができると考えます。戦後80年間、わが国は日米同盟と自衛隊の存在によって平和が保たれてきたわけです。しかし、米国の国力が徐々に後退する中でどのように日米同盟を維持していくのかが重要になります。そこでわが国はこの問題に対処するためにはより一層の防衛力=軍事力を強化する必要があります。これを成し遂げるためには、官民一体になった軍事産業の推進によってしかあり得ません。さらに、軍事産業を推進することで新たな産業がわが国に加わります。これは経済成長の一因にもなることから軍事力と経済力も同時に強化できるのでこんなに国益になることはないと考えます。
(杉崎)軍事産業立国となることで得られるメリットの方が大きいため賛成です。理由として、過去にコンピュータやGPS、ナビゲーションシステムなどの技術は、もともと軍事、防衛産業から派生して作られたものであり、この産業の衰退は製品開発の分野で遅れを招く可能性もあります。このように軍事、防衛産業と技術開発は密接な関係にあるため、さらなる経済成長の発展に貢献します。また、自国の防衛力の向上は有事の際に必要であることはもちろんのこと、安全保障における米国への依存からの脱却の必要性とともに国際的な同盟関係の維持・強化にも寄与します。軍事費の増大による財政負担も懸念されるが、この経済成長を通じて財政負担を補完することができるのではないかと考えます。
(田村)軍事力=戦争ではありません。むしろ戦争を防ぐ「抑止力」であります。「軍備拡大は緊張を高める」との懸念がありますが、それは相手国が日本の意図を誤解する場合に限られます。日本が防衛目的で透明性を保ちつつ軍事力を整備するならば、かえって戦争のリスクは下がります。なぜなら、相手に「日本に手を出すと痛い目に遭う」と思わせることが、最も有効な抑止だからです。特に現在の自衛隊の戦力だけでは、同時多発的な有事への対応は困難です。備えることで戦争を防ぐ、それが現代のリアルな平和主義です。
(渡辺)周辺国が軍事拡張しているなか、日本だけが立ち遅れるのはリスクが大きいです。将来的にもアメリカに守ってもらえるとは限らない以上、自分たちの国は自分たちで守る備えが必要です。
(本吉)賛成です。軍事技術を軍事分野だけでなく民間にも転用することで技術革新を加速させることができるからです。
(中原)軍事産業立国することで、科学技術が向上し、科学技術が石川:gps技術なども元々は軍事用として開発された経緯があります。軍事産業は技術的な革新が生まれるのではないかと考え軍事産業立国に賛成します。向上することで産業が発展し日本経済を潤すから。今の日本の防衛の立ち回りとして、台風が来ているのに窓を開けたまま、吹き込んできた雨に濡れた床を拭き続けている状況だから。
(石川)GPS技術なども元々は軍事用として開発された経緯があります。軍事産業は技術的な革新が生まれるのではないかと考え軍事産業立国に賛成します。
(秋葉)賛成です。国家の安全保障と経済成長を支える基盤になるからです。
 
【反対派】
(川上)反対です。軍事力を高めることで、それが正義と結びついてしまう可能性があり、平和的な解決が軽視されるかもしれません。また、武力による抑止が当然であるという考えが広まり、攻撃的な思考を生み出し、教育にも悪影響を及ぼすと考えます。
 そして、将来的に見ても、一度軍事産業に力を入れてしまえば、莫大なお金が関わってくることになり、企業や国際的な関係も生じるため、簡単には縮小することが難しくなります。
 私たちが軍事産業立国という道を選べば、将来の人々の政治的選択の自由を奪ってしまう可能性があると考えます。
(田中)私は、日本が“軍事産業立国”を目指すことに反対です。憲法9条の存在や武器輸出規制の緩和といった問題も理由として挙げられますが、最も大きな問題は「現在の日本の財政面が不安定である」ことだと考えます。
 令和5年10月1日に施行された「防衛生産基盤強化法」には、「装備品等の安定的な製造等の確保のための事業計画の認定を受けることで、必要な経費が国から支払われる制度」が存在します。このことから、日本政府が軍事産業立国に前向きな姿勢を示していることがうかがえますが、その必要経費を国が支出しようとしているのです。
 しかし、令和7年度の国家予算は115.5兆円と過去最大であり、その歳入の4分の1は国債に依存しています(しかも、現時点で債務残高はGDPの2倍を超えています)。また、租税及び印紙収入によって約68%を賄っている状況です。
 このような財政的に厳しい状態で、国が資金を出してまで軍事産業を推進すれば、国民の負担は増す一方です。そのため、政府による軍事産業立国への介入(ひいては防衛関係費への過度な歳出)は、現時点では控えるべきだと考えます。
(伊藤)日本は、第二次世界大戦に参戦した国の中で、唯一憲法9条により戦争の放棄や戦力の不保持が規定されている国です。そのような日本が軍事立国を目指してしまえば、他国間、特に中国や韓国との緊張が高まってしまうのではないかと懸念しています。
 また、軍事産業を促進させるために、そちらに大幅に予算が割かれてしまうと、日本の平和を支えてきた社会保障制度がないがしろにされ、その結果、社会的な格差の拡大につながる可能性があります。
 たとえ軍事産業国として一時的に成功したとしても、平和が続くかぎり、それは一過性のものとなる可能性の方が高いと考えます。
(宮内)日本では、戦後から軍事に対して強く否定的な感情を持つ人が多いため、軍事産業を積極的に発達させようとすれば、国内で反発が起こりやすいと思います。また、軍事産業の拡大は、周辺国との緊張を高めてしまうのではないかとも感じます。さらに、日本の現在の経済状況を考えると、軍事産業立国を目指すのは難しいのではないかと思います。
(中村)私は、日本が軍事産業立国を目指すことに反対です。憲法9条のように平和主義を象徴する日本が軍事産業を発展させることには矛盾があると感じます。自衛隊が防衛のために必要最低限度の実力組織として認められているのであれば、それを発展させてしまえば、その「必要最低限度」の範囲を超えてしまうと考えます。
(横山)私は軍事立国に反対です。理由は、戦争によって利益を得るような国でよいのかと疑問に思うからです。さらに、戦争があるかないかによって利益が大きく左右されるため、そうした不安定な分野よりも、安定した事業に投資したり、他の分野にお金を回すべきだと考えます。
(大橋)日本で製造した武器を他国に売ったとしても、その国が日本に脅威をもたらさないとは限らないと考えます。
長島)反対です。理由としては、たとえメリットがあったとしてもデメリットのほうが大きすぎて釣り合っていないと思いますし、そもそもそのための資金をどこから出すのかという疑問があります。
(半澤)反対です。軍事産業がなければ国は強くなれない、という考えが広まってしまうことを懸念しているからです。
(関口)私は、日本が軍事産業立国を目指すことに反対です。日本国憲法第9条には「戦争の放棄」と「戦力の不保持」が掲げられており、軍事産業を国家の成長戦略に位置づけることは、憲法の精神と矛盾していると考えるからです。
 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

2025年07月05日