姜ゼミからのお知らせ

🎥経済法ゼミナール2023新年会を開催しました

 ゼミナールの後にみんなで新年会を開催しました。昨年の就活で見事に公務員試験に合格した先輩ゼミ生たちもゲストとして参加し、公務員志望のメンバーらに貴重な経験談を直伝してくれました。
 「良く学び、よく遊べ」は、経済法ゼミナールのモットーでもありますので、新年会はこれから就職活動を迎えようとする皆さんの元気づけになれたら嬉しいです。

 


2023年01月29日

今週の審判決報告(20230124)

 1月23日(月曜日)のゼミナールにおいて、加山さんより福井県経済農業協同組合連合会支配型私的独占事件(排除措置命令平成27年1月16日)の報告が行われました。命令書は本ページの最後で閲読できます。

 

 

排除措置命令

 

福井県経済農業協同組合連合会に対する件

独禁法3条前段

平成27年(措)第2号

排除措置命令

平成27年(措)第2号
排 除 措 置 命 令 書

福井市大手三丁目2番18号
 福井県経済農業協同組合連合会
  同代表者 代表理事 香 川 哲 夫

 公正取引委員会は,上記の者に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき,次のとおり命令する。
 なお,主文,理由及び別紙1中の用語のうち,別紙2「用語」欄に掲げるものの定義は,別紙2「定義」欄に記載のとおりである。

主    文
1 福井県経済農業協同組合連合会(以下「福井県経済連」という。)は,次の事項を,経営管理委員会において決議しなければならない。
(1) 別紙1記載の工事(以下「特定共乾施設工事」という。)について,施主代行業務を提供する者(以下「施主代行者」という。)として,平成23年9月頃以降行っていた,受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を指定するとともに,受注予定者が受注できるように,入札参加者に入札すべき価格を指示し,当該価格で入札させる行為を行っていないことを確認すること。
(2) 今後,穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の製造請負工事等について,前記(1)の行為と同様の行為を行わないこと。
2 福井県経済連は,前項に基づいて採った措置を,会員の農業協同組合(以下「農協」という。)及び特定共乾施設工事の入札参加者等に通知し,かつ,自らの職員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
3 福井県経済連は,今後,穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の製造請負工事等について,第1項(1)の行為と同様の行為を行ってはならない。
4 福井県経済連は,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については,前項で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず,かつ,あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(1) 穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の製造請負工事等の入札等に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成及び自らの職員に対する周知徹底
(2) 穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の製造請負工事等の入札等に関する独占禁止法の遵守についての,自らの職員に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査
5 福井県経済連は,第1項,第2項及び前項に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。


理    由
第1 事実
1(1)ア 福井県経済連は,肩書地に主たる事務所を置き,昭和23年8月3日に農業協同組合法(昭和22年法律第132号)に基づき,それぞれ設立された福井県販売農業協同組合連合会及び福井県購買農業協同組合連合会が合併し,昭和27年1月5日に設立された福井県販売購買農業協同組合連合会が,昭和43年5月16日に名称変更したものである。
イ 福井県経済連の会員は,福井県に所在する全ての農協のほか,信用事業,共済事業又は厚生事業をそれぞれ行う農業協同組合連合会等で構成されており,会員数は,平成25年3月末日現在,合計18名であり,このうち農協が12名である。
ウ 福井県経済連は,会員である農協等から委託を受けて,穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の製造請負工事等に係る施主代行業務を提供する事業その他の経済事業等を行う者である。
(2) 穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の建設等に当たっては,その施主である農協等の多くが,当該施設の建設等に係る専門的知識を有していないなどの理由により,かねてから,施主が,施主代行者を選定し,施主代行業務の提供を受けて,当該施設の建設等を行う方法が採られてきており,施主代行者は,その報酬として,管理料(工事ごとに決められた料率を当該工事代金に乗じる等の方法により算出した金額)を収受している。
 なお,穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の製造請負工事等の多くは補助事業により発注されているところ,当該工事の施主代行者に支払われる管理料が助成対象となる場合には,平成18年度以降,原則として,一般競争入札の方法により施主代行者が選定されている。
(3)ア 福井県は,同県が生産を振興する「福井米」の評価向上を目的として,米の食味検査に基づいた区分集荷・販売等を実施することとし,これに必要な体制の整備を行うため,平成23年度ないし平成25年度の3か年を事業実施期間とする,「おいしい福井米生産体制整備事業」(平成24年3月31日以前にあっては「おいしい福井米づくり事業」。以下同じ。)と称する同県農林水産部所管の補助事業を実施していた。
イ 前記アの補助事業の助成対象には,農協が施主となり発注する,食味検査のための機器の導入に伴う荷受集計システムの改修工事,荷受ラインの増設工事,乾燥施設の改修工事等の穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の製造請負工事等があり(ただし,建設工事については助成対象とならない。),これらはいずれも,現在稼働している穀物の乾燥・調製・貯蔵施設に係る工事であった。
ウ 福井県は,農林水産部所管の補助事業について,平成22年3月15日付け「福井県農林水産部所管補助事業における施行方法、契約方法について」と題する福井県農林水産部長の通知において,農協が施主となる場合には,原則として,3者以上の施工業者が参加する指名競争入札により契約を行わなければならないと定め,その旨を農協に指導している。
(4)ア 福井県に所在する農協のうち,特定共乾施設工事を発注した農協は,別表1記載の11農協(以下「11農協」という。)であり,これらが発注した特定共乾施設工事は57件である。
イ 11農協は,特定共乾施設工事の発注に当たり,一般競争入札等の方法により,施主代行者を選定していたところ,当該入札の参加者が福井県経済連のみであったことなどから,特定共乾施設工事の全てにおいて,福井県経済連は施主代行者であった。
ウ(ア) 11農協は,特定共乾施設工事57件のうち15件を除くものについて,前記(3)ウに基づき,3者以上の施工業者が参加する指名競争入札の方法により発注しており,それぞれ,施主代行者である福井県経済連から助言を受けて,福井県内において現在稼働している穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の建設等又は保守点検等の実績を有する者(以下,当該施設において,当該実績を有する者を,それぞれの施設の「既設業者」という。)のうち別表2記載の6社の中から当該入札の参加者を指名していた。
 なお,特定共乾施設工事のうち前記15件については,入札等の方法によらずに,当該施設の既設業者に発注していた。
(イ) 11農協は,それぞれ,指名競争入札の方法により発注する場合,入札回数を2回以内と定め,予定価格の制限の範囲内の最も低い価格で入札した者を受注者とし,当該価格を契約価格と決定していた。ただし,2回目の入札によっても予定価格の制限の範囲内の価格で入札する者がいなかった場合には,最も低い価格で入札した者との間で当該価格を基に価格交渉を行った上で,契約価格を決定し,その者を受注者としていた。
2 福井県経済連は,平成23年9月頃以降,特定共乾施設工事について,施主代行者として,工事の円滑な施工,管理料の確実な収受等を図るため,次の方法等により,受注予定者を指定するとともに,受注予定者が受注できるように,入札参加者に入札すべき価格を指示し,当該価格で入札させていた。
(1) 当該施設の既設業者を受注予定者と決定する。
(2) 受注予定者に対し,「ネット価格」と称する受注希望価格を確認し,当該価格を踏まえて,受注予定者の入札すべき価格を決定し,受注予定者に当該価格で入札するように指示する。
(3) 受注予定者の入札すべき価格を踏まえて,他の入札参加者の1回目及び2回目の入札すべき価格を決定し,他の入札参加者に当該価格で入札するように指示する。
3 福井県経済連の前記2の行為により,指名競争入札の方法により発注された全ての特定共乾施設工事について,福井県経済連から指定された受注予定者が受注していた。
4 平成25年5月21日,「おいしい福井米生産体制整備事業」により発注される全ての工事の入札が終了したことから,翌日以降,福井県経済連の前記2の行為は行われていないと認められる。

   

 


第2 法令の適用
 前記事実によれば,福井県経済連は,特定共乾施設工事について,受注予定者を指定するとともに,受注予定者が受注できるように,入札参加者に入札すべき価格を指示し,当該価格で入札させることによって,これらの事業者の事業活動を支配することにより,公共の利益に反して,特定共乾施設工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第5項に規定する私的独占に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。このため,福井県経済連は,独占禁止法第7条第2項第1号に該当する者である。また,違反行為が自主的に取りやめられたものではないこと等の諸事情を総合的に勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
 よって,福井県経済連に対し,独占禁止法第7条第2項の規定に基づき,主文のとおり命令する。
平成27年1月16日

公 正 取 引 委 員 会

委員長 杉  本  和  行

委 員 小田切  宏  之

委 員 幕  田  英  雄

委 員 山  﨑     恒

委 員 山  本  和  史


別紙1

 福井県に所在する農業協同組合が,同県が実施する「おいしい福井米生産体制整備事業」(平成24年3月31日以前にあっては「おいしい福井米づくり事業」)と称する補助事業により発注した穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の製造請負工事等(当該工事と同時に発注された前記補助事業によらない製造請負工事及び建設工事を含む。)

別紙2

番号 用語 定義
1 穀物の乾燥・調製・貯蔵施設 穀物を乾燥,調製若しくは貯蔵する設備のいずれか又は複数を有する施設
2 製造請負工事等 施工業者が,一定の性能等を有する機械,設備,装備等の工場製作,現場での組立て,据付け,調整等を一括して請け負って完成させる製造請負工事並びに当該工事及び建設工事が併せて発注される工事
3 施主代行業務 施主が,施行管理能力を有する者に委託する,基本設計の作成,実施設計書の作成又は検討,工事の施行(当該工事の施工業者決定のための入札等参加者の選定についての助言,入札等の執行の補助等の業務を含む。),施工管理等の業務

別表1 特定共乾施設工事の発注者
番号 名称
1 福井市農業協同組合
2 福井市南部農業協同組合
3 吉田郡農業協同組合
4 花咲ふくい農業協同組合
5 春江農業協同組合
6 テラル越前農業協同組合
7 福井丹南農業協同組合
8 越前丹生農業協同組合
9 越前たけふ農業協同組合
10 敦賀美方農業協同組合
(平成23年12月31日以前にあっては敦賀市農業協同組合及び三方五湖農業協同組合)
11 若狭農業協同組合

別表2 穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の施工業者
番号 事業者 本店の所在地
1 日本車輌製造株式会社 名古屋市熱田区三本松町1番1号
2 井関農機株式会社 松山市馬木町700番地
3 株式会社福井近畿クボタ
(平成23年9月30日以前にあっては株式会社福井クボタ) 福井市開発四丁目209番地
4 クボタアグリサービス株式会社
(平成24年8月31日以前にあっては株式会社クボタ) 兵庫県尼崎市浜一丁目1番1号
5 ヤンマーグリーンシステム株式会社 大阪市北区鶴野町1番9号
6 株式会社サタケ 東京都千代田区外神田四丁目7番2号

平成27年1月16日

 



 

 


2023年01月24日

今週の審判決報告(20230116)

 1月16日(月曜日)のゼミナールにおいて、本田さんより野田醤油支配型私的独占事件(東京高判昭和32年12月25日)の報告が行われました。審決文は本ページの最後で閲読できます。

 

 

 

審決取消訴訟判決

田醤油株式会社に対する審決取消訴訟に係る件

独禁法3条前段

東京高等裁判所

昭和31年(行ナ)第1号

審決取消訴訟判決

千葉県野田市野田三三九番地
原告 野田醤油株式会社
右代表者代表取締役 中野栄三郎 
右訴訟代理人 弁護士 赤木暁
井原邦雄
東京都千代田区内幸町一丁目二番地
被告 公正取引委員会
右代表者委員長 横田正俊
右指定代理人公正取引委員会委員 蘆野弘
同内閣府事務官  三代川敏三郎
有賀美智子
日高勲
 

右当事者間の昭和三十一年(行ナ)第一号審決取消請求事件について当裁判所は次のように判決する。 
   主  文 
原告の請求はこれを棄却する。 
訴訟費用は原告の負担とする。 


   事  実 
第一、原告の請求の趣旨及び原因並びに被告の主張に対する反論。 
原告訴訟代理人は被告が公正取引委員会昭和二十九年(判)第二号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反審判事件について昭和三十年十二月二十七日にした審決はこれを取り消す、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求の原因及び被告の主張に対する反論として次のとおり陳述した。
被告は請求の趣旨記載の事件につき原告を被審人として昭和三十年十二月二十七日別紙審決書(写)のとおりの審決をし、原告は即日審決書の送達を受けた。審決は、原告が、自己の製造販売するしよう油の再販売価格を指示しこれを維持しもつて小売価格を斉一ならしめることにより他のしよう油生産者の価格決定を支配し東京都内におけるしよう油の取引分野の競争を実質的に制限しているとし、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下独占禁止法という)第三条前段違反をもつて問擬している。しかし審決の基礎となつた事実についてはこれを立証する実質的証拠がないのみでなく、審決における独占禁止法の適用は独断又は不当であつて、右審決は取り消さるべきものである。以下これを分説する。 
一、他の生産者の支配 
まず、他の生産者の価格決定の支配という点につき審決は「かくして「萬」の小売価格が同一線に保たれる以上これと同格の他の三印はその製品の売値を「萬」と同一に保たざるを得ない事情にあり、これがためこれらもまたそれぞれ卸および小売価格を指示し鋭意これが維持につとめるに至つている。……よつて野田が同社製品の再販売価格を人為的に一定せしむることはその競争者の価格決定を支配することであり、これすなわちこれら事業者の事業活動を支配するにほかならない。その結果東京都内の需要の七割近くをみたす四印の価格は全く同一となりその間に価格面の競争は全然抑圧されている」とする。しかし他面審決は、野田がたんに生産者価格のみを決定したとすれば他の三印が最上しよう油たる格付を維持するためこれにならつたとしても原告の行為は当然の行為であつて法の禁ずるところではないというのであるから、「その競争者の価格決定を支配する」とは三印の「再販売価格の決定」を支配するという意味であること明らかで、結局審決は原告がその再販売価格を維持することによつて他の三印をしてそれぞれその再販売価格を原告のそれと同一に決定せざるを得ざるに至らしめたものと認定し、これを本件違反の構成事実と見たものといわねばならない。後述のように原告が再販売価格の維持をしたという事実はないのであるが、その点はしばらくおくとしても、審決の右認定には左の不当がある。 
(一)審決は原告が競争者の価格決定を「支配」することになるのは、「萬」と同格の他の三印はその製品の売値を「萬」と同一に保たざるを得ない事情にあるからだとし、「支配」とは、「結果としてある事業者の行為が他の事業者の事業活動を制約する一切の場合」に生ずるとする。しかし他の事業者の事業活動の制約の態様もしくは手段方法は種々あるのであつて、結果として制約となればすべて支配というのは余りに広きに失する。審決は支配の意義をかく広く解しなければ「客観的条件を適当に利用して他の事業者の行動を制約する」如き場合を取締ることができないこととなるという。しかし、かくては相互にその事業活動を拘束することも結果において相手の事業活動を制約することで相互の支配ということとなり法第二条の第五項と第六項の区別を無視することとなる。これ支配概念の不当な拡大といわなければならない。支配はその字義からいつてもなんらか支配者の側で制圧を加えるという要素がなければならないものである。しかのみならず原告が被告という客観的条件を利用した事実も何一つ存しないところである。審決もさすがに原告が三印に対してなんらかの働きかけを行つた事実は認定することができず、ただ三印の方で格付を維持するために原告に追随せざるを得ない事情にあることを強調するに止まつている。しかしそれは全く原告の関知しないところである。その格付なるものを原告が作り上げたとか少くともそれを利用した事実でもあるならばかくべつ、全然そのような事実がないのに何故原告がその格付の仕わざについて責任を負わねばならないのか、とうてい理解することができない。もし槍玉にあげるならばその鉾先は原告に対してではなく、罪な格付に向けらるべきである。被告の強調する格付論によれば他のしよう油生産者の価格決定を支配したのは格付であり、格付が現存する限り、原告の行為とは無関係に追随が行われ、原告の再販売価格の維持行為の有無に拘らず依然として追随は行われるということにならなければならない。支配の意義をいかように解するにしても支配による競争の実質的制限が独占禁止法違反を構成するためには、それが公共の利益に反するものでなければならない。自由競争の結果、優勝なる事業者が劣弱なる事業者の活動を支配することとなつたとしてもまことにやむを得ないことである。そこに独占禁止法違反には規範的要素が介入するのであり、その競争の制限は不当な制限でなければならない。しかるに三印がキッコーマンの価格に追随せざるを得ないとされるのは、被告の主張によつても原告の働きかけでなくて格付のせいである。格付は自然にできたもので原告の与り知らぬところ、三印の追随は原告がそうさせたのではなく、時には原告の意思に反して追随されたのである。被告の所論は責任の本旨を没却している。
被告は本訴において、本件違反事実の本体は原告がその製造販売するしよう油の再販売価格を指示しこれを維持しもつて小売価格を斉一ならしめることにより他のしよう油生産者の価格決定を支配したことにありとし、この場合の他の生産者の価格決定とは生産者価格、卸価格、小売価格の決定を意味するもので、「他の三印をしてそれぞれその再販売価格を原告のそれと同一に決定せざるを得ざるにいたらしめた」ことのみにかかるものではないと主張する。しかし卸価格、小売価格の決定はしばらく別とし、原告が再販売価格を指示し維持しもつて小売価格を斉一ならしめることにより他のしよう油生産者の生産者価格の決定を支配したというのは理解し難く、被告従来主張の基本思想と相容れないと思われる。すなわち被告は、三印以下のしよう油の製造業者は自己の製造するしよう油の価格を決定するにあたり原告のしよう油の価格と一致させなければならない客観的必要性があり、キッコーマン印の価格が定まれば後は自動的に価格が決定される市場秩序があると主張するのであつて、他のメーカーの生産者価格の決定に関する限り、原告の再販売価格の指示、維持とは全く無関係である。原告の再販売価格の指示及び維持によつて他のメーカーの生産者価格の決定を支配したというところからみれば、その指示及び維持がなかつたなら他のメーカーの生産者価格の決定の支配とならぬということにならねばならないが、被告ははたしてこのようなことを主張しようとするのか。再販売価格の指示及び維持によつて他のメーカーの生産者価格決定を支配したということと、キッコーマン印の価格-生産者価格-が定まれば後は自動的に価格が決定されるということとはむじゆんといわなければならない。このようなむじゆんをあらわしたのもひつきよう被告のいわゆる市場秩序なるものはそれ自体違法とすべき根拠がないので、無理に再販売価格の指示及び維持という違法の行為を結びつけ全体として違法の色彩を帯有せしめんとしたからにほかならない。
(二)審決が、三印は自己の製造するしよう油の価格を決定するにあたり、原告のしよう油の価格と全く一致せしめなければならない客観的必要性がありまた次最上以下のしよう油の製造業者もまた前記価格と一定の開きを保たざるを得ない事情にあるとするのは、なんら実質的な証拠なき独断といわなければならない。審決の示す証拠によつても過去において三印が原告の製品と同一価格を決定したのは原告の価格が妥当であり、かつ妥当な価格であるならばこれに追随することが営業上有利だからというに止まり、結局は商策上の利害打算の結果であつて、三印が常に原告の製品と同一価格を決定しなければならない客観的必要性があるものではない。次最上以下の製造業者についても上記価格と一定の開きを保たざるを得ないというが如き特別の事情の存在は発見することができない。審決は他の三印生産者はその製品を「萬」より高くすることはもとよりこれより低くすることも「絶対に不利」であるから「萬」の価格に追随することが客観的必要であるというが、論理の飛躍がある。けだし「萬」に追随しないことが絶対に不利であり、追随することが絶対に有利であるならば、追随することは当然である。有利をすてて不利をとる愚はない。さればこの場合には利不利の打算較量が介入し、もし不利ならば追随しないという余地が残つているのであるから、それは主観的任意性の問題であつて客観的必要性の問題ではない。客観的必要性とは、有利なると不利なるとを問わず、好むと好まざるとに拘らず追随せざるを得ないところに成立するものであつて、三印の原告に対する関係がかような必要的なものでないことは証拠上明らかである。それ以外にも客観的必要性を証明する実質的証拠は全然なく、本件に顕出された全証拠をもつてしてもハンド判事のいう「任意の追随」以上のものは認定することができないのである。
それで審決は当初からマーク・バリュー即品質即小売価格の三位一体論なるものを持出し、これから右の客観的必要性を演繹しているが、三位一体論の支持し難いことは原告が審判手続において主張したとおりである。原告がこの三位一体論はマーク・バリュー、品質、小売価格の三者が不可分離の必然的関係でなければならぬとする点においてまだ論理的証明が十分でないとしたのに対し、審決はそれは必然的であることを要しないというが、三位一体論なるものは小売価格を下げれば品質を疑われ、マーク・バリューをも落すことになるという意味で三者の必然的関係を主張するものであることは明らかで、もしそれが必然であることを要しないとすれば三位一体論を持ち出すのは全く無意味となり、三印のキッコーマンへの追随の客観的必要性を根拠付けるに足りないこととなる。思うにマーク・バリューと小売価格との間には必ずしも必然的な関係はない。原告が被告のいうように優位にあると仮定すれば、キッコーマンの小売価格を三印以下に下げても、これによつて直ちにそのマーク・バリューを落すことになるとはいえず、逆に三印が小売価格を下げた場合にも、それがそのマーク・バリューを落す結果となるかあるいはキッコーマンの方で値下を余儀なくされる結果となるかはいちがいに断じがたいところであつて、三印にとつてマーク・バリューを維持するために原告への追随が絶対的な至上命令であるとはいい得ないのである。
(三)審決は原告の再販売価格の維持によつてその競争者たる三印の再販売価格の決定を支配したというが、三印は原告が再販売価格を発表するや直ちに追随したのであつて、原告が再販売価格を維持したがためではない。維持によつて三印の価格決定を支配したというのは因果関係が混線している。そもそも再販売価格の発表それ自体は別段違法ではない。生産者の生産者価格の決定が当然の行為であるならば、再販売価格の決定ないし発表は少くとも自由放任の行為である。ともに法の禁止するところではない。法の禁止しない行為の結果他の生産者の再販売価格の決定を支配することとなつても、公共の利益に反して他の事業者の事業活動を支配したものというべきでないこと、原告の生産者価格の決定が他の三印の生産者価格の決定を支配することとなつても違法でないのと全く同様である。もつとも被告は一般的には再販売価格の発表それ自体は一種の希望に止まるものとして違法でないといい得るとしても、原告の場合はなんらの維持行為を行わないでもその再販売価格の指示は違法であると主張する。その理由とするところは、原告の如くそのマークの力と事業能力によつて販売業者を完全に支配している場合には名目はかりに希望価格でも絶対の強制力をもち、市況調査係の訪問や荷止め処分によつて廉売防止策がとられている場合の希望価格は再販売価格の指示と異ならないというにある。廉売防止策がとられている場合はとりも直さず維持行為のある場合であるから、被告がなんらの維持行為も行われない場合でもその再販売価格の指示は違法であるとするのは、そのマークの力と事業能力とによつて販売事業者を完全に支配しているがためと見なければならない。原告がしかく販売業者を完全に支配し絶対の強制力をもつならばあえて廉売防止策をとる必要もなく、その間主張に一のむじゆんがあると思われるがその点は別としても、一般的には違法でないことがマークの力や事業能力のいかんによつて違法となるとの所論にはとうてい服し得ない。営業の自由は憲法の保障するところであるから営業活動は自由なのを原則とする。仮りに被告のいうように原告の発表した再販売価格は特別の維持行為がなくても励行されるとしても、それをもつて独占禁止法第二条第七項第四号にいう「相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引する」ものとはいえない。それならば原告がその再販売価格を発表したため他の生産者がこれに追随してその再販売価格を決定し又はしかく決定せざるを得ない客観的必要性があつたとしても、原告の行為を目して違法とすることはできない。
しからば原告の再販売価格の維持が他の三印の再販売価格の決定を支配したといえるか。再販売価格の維持行為が違法であることは原告も認める。原告がこれをしたことは否認するところであるが、そもそもこのような維持行為と三印の再販売価格の決定とは無関係である。原告は生産者価格と同時に再販売価格を発表したのに、三印は即日ないし翌日その生産者価格のみならず再販売価格を原告のそれと同一に決定している。原告の維持行為をまつて決定したのではない。原告の再販売価格の維持行為と三印の再販売価格の決定とを結びつけようとするところに因果関係の混線があるというのである。被告は本訴において独占禁止法の対象は単純な偶発的事実でなく、原則として企業者の一連の事業活動であるという。その点はいちおう異存ないとしても、被告は「原告会社の如くそのマーク・バリュー、生産能力並に問屋及び小売店に対する支配力が強大である生産者の再販売価格の指示は名目が希望価格でありまたなんら特別の維持行為が用いられない場合でもこれが励行されることは当り前のことで、たまたま末端の若干の小売店に廉売が行われたとしても最上印を象徴する一定価格を不安定ならしめる程度にいたらぬ限り他の最上印の生産者は原告会社の価格に追随せざるを得ないものであり、少くとも戦後は価格の改訂に当つては常にキッコーマンへの追随が他の最上印の唯一の価格政策となつていたものである」として「追随の基盤が確立されている」とするのであるが、仮りにそのような基盤があるとしても、その基盤の仕わざについて原告が責任を負う筋合のものでないことはすでに述べたところである。そこで被告は「他の最上印にとつて追随が絶対化されるゆえんは原告会社の維持行為である」と主張する。しかし他の最上印の追随を絶対化する原告の維持行為とは何をさすのか。それは昭和二十九年一月中旬ごろ原告の社員が小杉武の店に行つて一四〇円の価格を守らなければ荷止めするといつたといわれる小杉武の件ほか五件のほかに出るものでなく、三印の価格決定の支配とは三印が昭和二十八年十二月二十五日に改訂した生産者価格、卸価格、小売価格の決定に関するもの以外は本件では全然問題となつていない。しかしこの両者がどうして結びつくのか遂に解明し得ない。被告は、「因果関係を極く形式的に論ずることによつて責任を回避することはできない」とするが、形式的に論ずべきでないとしても、抽象的に論じてよいわけでなく、因果関係は事実に即して具体的にみなければならない。これを具体的にみるかぎり上記昭和二十九年一、二月の維持行為とされるものが昭和二十八年十二月の価格決定を支配すべきいわれはないのである。
もつとも審決は原告がその再販売価格を維持することによつて三印の価格決定を支配したとしながら、他方において三印もまたそれぞれ卸および小売価格を指示し鋭意これが維持につとめていると判示する。「四印の価格は全く同一となりその間に価格面の競争は全然抑圧されている」とする審決の立場からすれば、それは当然しなければならない認定である。しかし原告が法の禁ずる再販売価格の維持をしたから三印もこれにならつて同様な法の禁ずる維持行為をしている。いなその客観的必要性があるとするにいたつてはそれがいかに不当な認定であるかいうまでもあるまい。
(四)被告が市場秩序とか客観的必要性とか称するものは秩序でも必要性でもないことはさきに主張したとおりであるが、仮りにこのような市場秩序があるとしてもそれ自体なんら違法でないことは被告も承認するところである。曰く「ノダが再販売価格は指示することなく単に生産者価格のみを決定したと仮定し、他の三印は最上しよう油たる格付を維持するには生産者価格をこれと同一に保つことが必要であり、よつてこれにならつたとしても、事業者が自ら生産する商品の売価を決定するのは当然の行為であり、たまたま結果において他の事業者の価格決定を制約することになつてもそのこと自体は公共の利益に反して他の事業者の事業活動を支配するということにはならず、もとより法の禁ずるところではない」と。もとより何人も異存のない当然の事理である。しかるに審決はこれに引続き「再販売価格の維持にいたつては全然異なる」とし、再販売価格の指示及び維持行為の結果が他の生産者の価格決定を支配するときは公共の利益に反する事業活動の支配であるとする。再販売価格の指示及び維持行為が特別の場合を除いて違法であることは原告も争わないが、他の生産者の価格決定という価格の中には生産者価格も包含するというのであるから、原告の再販売価格の指示及び維持行為が他の生産者価格の決定に因果関係ありということに帰着するわけである。それが何故にしかるかは了解できない。審決も他の三印の価格の決定についてはこれらがいずれも原告の値上発表の即日ないしは翌日値上に同調したことを認めている。従つて三印の価格の決定は少くとも生産者価格に関する限り被告の主張する原告の再販売価格維持行為(原告はこれを否認するが、仮りにあつたとしても)がこれと因果関係に立ち得ないことは疑をいれない。被告の主張する原告の再販売価格の指示行為(これもたんなる希望の発表に止まるが)は原告の新生産者価格と同時に発表したものであるが、これと他の三印の生産者価格の決定とは無関係である。原告がもしその生産者価格を発表するだけで、再販売価格を発表しなかつたならば三印はその再販売価格だけでなくその生産者価格をも決定しなかつたであろうという関係にありというならばかくべつ、被告もさような主張をするわけではなかろう。原告がその再販売価格を指示しなかつたとしても事態は全く同一である。原告の再販売価格の指示及び維持によつて三印の生産者価格を決定し支配したという点の被告の主張が失当であることは明らかである。 
(五)のみならず被告は原告が三印以下の生産者価格のほかその卸価格、小売価格の決定をも支配したというが、三印等についても卸価格は問屋が、小売価格は小売商がそれぞれ決定するものであつて、生産者が決定するものではない。三印等も原告と同じくその再販売価格についての希望は表明したかも知れないが、それは再販売価格を決定したことにはならない。被告の主張によつても、三印以下は原告の如く問屋及び小売商に対して支配力を有するものでないというのであるから、三印等の再販売価格の発表はあくまで単なる希望に止まり決定ということではない。従つて原告が三印以下他の生産者の再販売価格の決定を支配したということは解しがたい。
(六)そもそも被告は原告の事業能力及びその製品の市場における優越を余りに過大評価し、三印その他のそれを余りに過小評価している。なるほど原告の事業能力が他社にまさり、その製品が他社の製品よりも一層消費大衆に滲透していることは事実であろう。しかしそれは単に相対的な程度の問題でそれ以上ではない。ことに三印の如きはそれぞれ業界における一方の雄であり、いわゆる一国一城の主であつて、決して原告に盲従するようなものではない。現にこれらの製品が市場において原告の製品と活溌に競争していることは公知の事実である。原告とその製品が市場において代表的ないしは指導的立場に立ち、その意味で原告が学者のいうバロメトリック・ファームすなわち代表的会社であるかも知れないが、市場を支配する如きドミナント・ファームすなわち支配的な会社ではない。業界に一の代表的な事業会社がある場合他の事業者が右にならえしてこれに追随することのあるのはむしろ普通であつて、必ずしもしよう油業界に限つたことではない。審決がその示す証拠をもつてこの限度の事実を認定するのならばかくべつ、これ以上さらに原告に擬するに支配的な会社をもつてすることは明らかに実質的な証拠を欠く不当な認定であり、なんらの根拠なき予断というほかなく、あるいは偏見であるとさえいえる。審決は「他の業界には見られないしよう油業界の特質」なるものを主張するが、仔細に検討すればその特質なるものは三位一体を中心とする格付論以上に出るものではなく、これによつてはとうてい上記の認定を基礎付けるに足りず、その格付といつても大なり小なりどの業界にもあることであつて、とくにしよう油業界に限つたことではないのである。
(七)被告は原告が格付を機縁として三印を支配している外、問屋及び小売店に対しても「絶対の強制力」をもつているとするが、これも実質的証拠なき独断である。原告と問屋とは長い伝統と直接の取引関係によつて結ばれ、その間摩擦の生ずることは比較的少いが、問屋は幾多の食糧品を取り扱うものであつて、しよう油ばかりを扱うものではなく、しよう油についてもキッコーマンばかりではなく、三印をはじめ種々のしよう油を扱う。その間にあつて原告のみが傍若無人の態度をとれるものではない。小売店についてはなおさらである。小売店は多くは世間でいう酒屋であつて、しよう油の扱高は他の扱商品に対しその比率が問屋の場合よりもさらに少額であり、しかも原告と直接の取引関係に立つものではない。従つてたとえキッコーマンが酒屋にとつて不可欠の商品であるとしても被告のいうように原告の威令が行われるものではない。ことに小売店は数十名の組合員を有する強大な協同組合を組織しているのである。かような強大な組合が原告の意のままに動くものでないことは常識より見ても当然である。原告の再販売価格の指示が絶対の強制力を有つとするのは全く事実に反する。
(八)さらに被告は原告が他の三印の価格を「萬」のそれと同一にそろえるように仕向けることを営業政策としているかの如く見ている。審決には直接見えないがこの根本思想の下に立つことは明らかで、この思想のあるため原告が四印の価格の同一を保持するためいわゆる市場秩序を利用しているかの如き、あらぬ疑をかけられているのであるが、これまた根拠なき独断であり偏見である。原告は四印の価格の同一を保持する必要を認めてもいないしこれを意図したこともない。被告自身の主張からいつてもかようなことはあり得ない。すなわち被告は他の三印はその製品を「萬」よりも高くすることも低くすることも絶対に不利であるとするのであるから、三印がもし価格を低くしてマーク・バリューを落すならば原告は名実ともに平素から標榜する「天下一品」となるのであり、最上一印となるのであり、何を好んで四印間の価格の同一を保持する必要があろうか。
(九)審決は原告が「萬」の再販売価格を指示維持し、小売価格を斉一ならしめその結果東京都内の需要の七割近くをみたす四印の価格は全く同一となつたとする。しかし小売価格について四印の価格を同一にしたのは小売商の協同組合である。「萬」についてはともかく少くとも三印以下に関する限り三印等が協同組合を支配しているとは被告も主張しない。事実また組合によつてマルキンが最上価格表から除外された実例もある。そして組合が四印を同一価格に協定した以上すでに四印の価格は同一となつたのであり、原告の再販売価格の指示維持によつて価格が同一となつたものではない。もとより組合が協定価格を設定した後においても散発的な乱売の事例は残るであろう。原告が再販売価格の指示維持をやつてみても乱売を一つ残らず絶滅し得るわけではなく、乱売の事例がいくらか少くなるというだけである。大体において四印の価格が同一であることは前後少しも変りはない。組合が存在し、組合が四印をはじめしよう油の協定価格を決定する限り従来の慣行にもとずき四印の価格は同一となるのであつて、原告の再販売価格の指示、維持とは無関係である。現に本件で問題の昭和二十八年十二月以降においても数回しよう油の価格は改訂せられたのであつて、これについて原告はなんら再販売価格の指示も維持も行つた事実はないが、依然として四印の価格は同一となつているのである。これが偶然の一致でないことは業界人のひとしく認めるところである。再販売価格の指示維持と四印の価格の同一を無理に結びつけようとするところに審決の誤りが存するのである。 
二、再販売価格の指示及び維持 
(一)原告がその製造するしよう油の再販売価格の指示をした事実はない。審決が再販売価格の指示と目するのは昭和二十八年十二月しよう油の価格を改訂したさい原告会社東京出張所長が「キッコーマン価格改訂につき御願」と題し「今回の改訂により卸小売価格左記標準値段を御実施下さるよう特別御配慮賜度御願申上げます」と記載した価格表を交付した事実を指すものと解されるが、これを独占禁止法上いわゆる再販売価格の指示と認めるのは相当でない。同法にいう再販売価格の指示はなんらかの形における強制の裏付をすることによつてその表示された価格をもつて問屋及び小売商を拘束しようとするところになり立つのであるが、本件の場合には全くかような要素がない。原告が生産者価格の外右のような再販売価格を記載した価格表を問屋に交付したのは、しよう油の価格統制時代には生産者価格、卸価格、小売価格の三段階の価格が告示によつて定められ、原告が問屋に交付していた価格表にも常に三価格を表示していた。この長い統制時代の慣行が統制撤廃後においてもただ惰性的に踏襲されただけで、原告にとつてそれ以上の意味をもつものではない。のみならずこの表示は他面問屋や小売店の側から見ればはなはだ便宜なものであり、かような表示は問屋や小売商の要望でもあつたのである。生産者価格の改訂があつた場合、問屋や小売商はそれぞれ卸価格、小売価格を改訂しなければならぬが、競争相手の他店がどの程度に改訂するかは重大な関心事で大体の見当をあらかじめ察知しておく必要がある。このことは新製品の発売の場合はもちろん、その他にも価格改訂の時などにはきわめて必要なことであり、また営業者として当然のことであるが、競争相手に聞くわけにも行かないからおのずから生産者に対し生産者としては一体再販売価格としてどの程度のことを予想しているのか参考のため照会してくることになる。これによつて他店の出方について大体の見当をつけることができるからである。かような生産者への照会は日常多くの商品についてひんぱんに行われるところであり、この場合生産者が問屋や小売商の営業上当然の要望にこたえて自己の予想しないしは希望する卸価格、小売価格を表示したとしてもそれは問屋や小売商の営業をやりよくするために協力することであつて、決して不当な行為ではない。これが法律上違法とされる理由はない。原告の上記価格表の交付は問屋や小売商からの個々の照会に対し個々に回答する代りに、これらの照会をまたずあらかじめ一般的に表示したものに過ぎないから、これまた違法と目すべきでない。被告は原告会社の場合は名目は希望価格でも絶対の強制力をもつから再販売価格の表示は違法とされるが、絶対の強制力をもつということが事実に反するのみでなく、仮りになんらの維持行為をしなくても励行される事実があるとしても、キッコーマンそれ自体のうちにおのずからそなわる信用の然らしめるところというのほかなく、絶対の強制力をもつというが如き外面的他律的なものではない。これをもつて原告の再販売価格の表示は拘束的性格を有すると見るのは正当でない。
(二)原告はその再販売価格の維持をしたことはない。原告の再販売価格の維持行為として疑惑を受けているのは昭和二十九年一、二月ごろ原告会社の外務員が小杉武ほか四名の小売商に対し協同組合の協定価格を守るようにと勧説した行為にもとずくものであるがこれをもつて原告の再販売価格維持と断ずるのは当らない。その理由を要約すれば次のとおりである。
(1) 上記外務員は協同組合の定めた小売価格を守るように勧説したものであつて、原告の発表した小売価格の順守を要望したものではない。この場合協同組合の協定価格は原告の発表した小売価格と一致してはいたが、そのために協同組合の定めた価格たる性格を失うものではない。そして右外務員らははつきりと組合の協定価格を守つてもらいたいといつているのみでなく、次に述べるように同人らは協同組合から頼まれて組合の利益のため小杉らに伝えたものである点からみても、組合の協定価格としての当該価格を守つてくれという意味であることは明白である。もともと協同組合は適法に協定価格を定め得るものであり、一且適法に定められた協定価格は組合員である以上守るのが当然である。当然守るべきことを守るように勧説することは違法でない。ことに本件では組合の依頼によつて組合の代理人的立場でしたのである。小売価格は生産者にとつて一指も触れてはならないタブーであるとする理由はない。組合員外の者にまで組合の協定価格に従うよう希望したことはあるいは行き過ぎであろうがこれとてあえて違法というには当らない。被告は組合の価格なるものは実は組合をかいらいとする原告の価格であるかの如くいうが、それは実質的証拠を欠く見当違いの認定である。
(2) 原告の方で荷止めするといつたことはなくそのようなことをにおわせた事実も全くない。事実小売商と直接の取引関係に立つ問屋をさしおいて原告の方で勝手に小売商に対し荷止めをするなどということは営業の実際問題としてできるものでもなく、前示外務員らも値くずしする小売商に荷を出す問屋は組合や組合員から一斉に非難攻撃されて苦しい立場に立ち、その結果荷止めせざるを得ない破目におちいるかも知れないといつているのである。その意味するところが原告の方で荷止めするという趣旨でないことはきわめて明白である。仮りに荷止めというような不利をにおわせたからとて、告知者がそれに対してある影響を与えそれを左右し得る地位にあることをにおわせたのでなければ告知者が強要したものとは認めることができない。
(3) 原告の外務員は市況調査係としてしよう油に関する一般市況の動向や小売商、需要者らの希望とか苦情などを調査することを職務とするものである。決して価格の維持を仕事とするものではない。ただ日常広く小売商と接触する機会があるので組合からたのまれ協定価格順守についての組合の要望を伝えたに過ぎない。伝えた相手の中にたまたま組合員でないものがあつたとしても組合の要望を参考のため伝えることを不可とすべき理由はなく、また数千軒に及ぶ小売商の各自につきはたして組合員であるか否かは外務員として必ずしも明らかでないのである。 
(4) 前項の行為も末端の二、三の外務員らが組合に頼まれ自発的にした偶発的なものであつて、原告の営業方針にもとづいてしたというわけのものではない。被告は原告会社が戦後常に程度の差こそあれ維持行為を行つていたことは推測に難くないとされるが、全然証拠のない推測であつてめいわくである。末端社員の偶発的な若干の行為から原告の価格政策なるものを帰納できるものではない。市況調査係の制度や小売商までの直配、キッコーマン会による共同集金等々は被告もあながちそれを第一次の目的としたものという意味ではないとしてある程度認める如く、それぞれ特別の目的を有する制度であつて価格維持政策のためにするものではない。
(三)審決は組合の協定価格はすなわち蔵元の指示した再販売価格であるとし、中間に協同組合の協定価格の介在した事実を軽視する。しかし協同組合は「組合員の利益を守ることを第一義とし、いかに有力であり大切な取引先であるにしても常に問屋生産者らの指図にやすやすと従うものではない」ことは審決も認めるところである。しかし審決は「このことは協同組合が利害一致するときは問屋あるいは生産者らの希望をいれまたはこれと密接に協力することあるを妨げるものではない」とするが、利害が一致すれば容認又は協力することは当然であつて、それは原告の指示なるが故ではなく、組合自身の利益に適合するからである。たまたま原告の希望価格と組合の協定価格とが一致したからといつて組合の協定価格の独自性を否認すべきではない。
三、競争の実質的制限
審決は「東京都内の需要の七割近くをみたす四印の価格は全く同一となりその間に価格面の競争は全然抑圧されている」とし独占をもつて問疑した。その趣旨とするところはたんにキッコーマンの価格をそろわせただけでなく、ヤマサ、ヒゲタ、マルキン等他の三印を加えた四印の価格をそろわせたというにあることはいうまでもない。しかし原告がキッコーマンについて再販売価格を発表し、これがため他の三印もこれに同調してそれぞれの再販売価格を決定したとしてもこれがため直ちに四印の間に価格面の競争は全然抑圧されるという結果は生じない。原告が絶対の強制力を有するとされるキッコーマン自体についてすら末端価格は不ぞろいであるのに、原告となんらの関係のない他の三印の末端価格までが原告の号令一下、一糸乱れず原告の発表した再販売価格に同調するはずはない。被告も、まさか原告がキッコーマンについて発表した再販売価格が、ヤマサ、ヒゲタ、マルキンに対してまで「絶対の強制力」を有すると考えるわけではあるまい。原告が再販売価格を発表し、そして仮りにこれを維持したとしても、四印間の価格面の競争が全然抑圧されているというのは事実を正視するものではない。そこで被告は「他の三印もまたそれぞれ卸及び小売価格を指示し鋭意これが維持につとめるにいたつている」とする。いかなる証拠によつてさような事実とくに鋭意維持の事実を認定されるのか不明であるが、いずれにしてもそれこそ原告の関知したところではない。とくに小売価格の指示及び維持は明らかに法の禁止に違反することである。もし原告がやれば他の三印もあえて法を犯してまでもこれに同調せざるを得ないというほど絶対的な力を格付なるものは有するのであろうか。
四、排除措置 
(一)審決は主文において原告はその製造するしよう油の再販売価格につき希望価格標準価格その他いかなる名義をもつてするかまたいかなる形式もしくは方法をもつてするかを問わず自己の意思を表示しまた何人にも表示させてはならないとしているが、先にのべたとおり再販売価格の決定はそれ自体違法と認むべきものではない。またその決定にかかる再販売価格を希望として表明したからとて、あえて違法となるものではない。しかるに審決がいかに予防措置としてとはいえ再販売価格に関する限りこれを口にすることさえ禁止しているのは正当な範囲を逸脱する違法な措置といわねばならない。

(二)本件は最初から東京都内における取引の制限を問題としていたのに、審決にいたつてにわかに排除措置の範囲を全国的に拡大したのはただにその必要がないのみでなく原告にこれに対する弁明の機会を与えずしてした抜打的な審決であつて重要な手続規定に背反するものといわなければならない。


第二、被告の答弁及び原告の主張に対する反論 
被告指定代理人は主文同旨の判決を求め、答弁又び原告の主張に対する反論として次のように述べた。 
原告主張の事実中被告が原告主張の日その主張の審決をし、即日原告が右審決書の送達を受けたことは認めるが、その余の事実はすべて争う。審決の基礎となつた事実はすべて審決書記載の実質的な証拠により立証され、その法の適用は正当である。以下原告主張の順序に従いこれを反ばくする。
一、他の生産者の支配について、
本件違反の構成事実は原告のいう如く「原告がその再販売価格を維持することによつて他の三印をしてそれぞれその再販売価格を原告のそれと同一に決定せざるを得ざるにいたらしめた」ことのみにかかるものではない。本件違反事実の本体は原告がその製造販売するしよう油の再販売価格を指示しこれを維持しもつて小売価格を斉一ならしめることにより、他のしよう油生産者の価格決定を支配したことにあり、この場合の他のしよう油生産者の価格決定とは生産者価格、卸価格、小売価格の決定を意味する。審決(審決第三法の適用二)において「ノダが再販売価格は指示することなく単に生産者価格のみ決定したと仮定し、他の三印は最上しよう油たる格付を維持するには生産者価格をこれと同一に保つことが必要であり、これにならつたとしても、事業者が自ら生産する商品の売価を決定するのは当然の行為であり、たまたま結果において他の事業者の価格決定を制約することになつてもそのこと自体は公共の利益に反して他の事業者の事業活動を支配するということにはならず、もとより法の禁ずるところではない」といつたのは、競争事業者の価格決定を支配しても違法となし得ない場合の一つを例示したに止まり、本件の如く原告がその再販売価格を指示し維持することによつて競争事業者の生産者価格の決定を支配する場合をも違法でないとする趣旨ではない。審決で認定した違反事実が原告の主張する如きものであるとするのは原告の思い違いである。
(一)原告は審決が支配の意義についてのべた点に対して、原告が客観的条件を利用した事実はなく、また三印の方で格付を維持するために原告に追随してもそれは原告の関知しないところであり、その格付を原告が作り上げたとか少くともそれを利用した事実でもあるならばかくべつ、全然かような事実がないのに何故原告がその格付の仕わざについて責任を負わねばならないのか理解できないと主張する。しかし審決(第一事実の認定の四)に示すとおり、原告が再販売価格の指示を行つていることは事実である。そして次項に述べるように、しよう油業界においては各メーカーの品質について格付が行われている以上しよう油の品質と価格の一体関係からキッコーマン印の価格が定まれば後は自動的に価格が決定される市場秩序があり、審決(第一事実の認定の一、二並びに第三法の適用の一)に示した如く、原告の事業能力及びキッコーマンのマーク・バリューは強大で他のメーカーは価格競争を挑むことができず、加うるに問屋は各メーカーに共通であるものが大多数であり、しかもこれら問屋に対する原告の支配は圧倒的で、小売店をも掌握しているという経済的基盤の上では、メーカー間の競争が行われる余地はなく、最上三印はキッコーマンの価格と異なつた価格を設定する自由はない。右の事情の下において原告が再販売価格の指示並びに維持を行えば、他の三印メーカーを規制しさらに業界全体を支配するにいたるのは自然の勢であり、この事自体が原告の競争業者の支配であり、被告が全審決をもつて証明せんとするものは主としてこの一点に係る。この場合原告が格付を作り上げたとか、利用する意思の有無は特に問題とはならない。また原告は事業者の行為が支配となるためにはなんらかの点において強圧の要素が加わらなければならないと主張するが、右の経済的基盤の上では原告の行為は他のメーカーや販売業者に対しては経済的には絶対的な強制力があり、ただ場合によつてそれが直接的でないことがあるというに過ぎない。
(二)原告はマーク・バリュー、品質、小売価格のいわゆる三位一体論を否定しようとする。しかし右にいわゆる三位一体論は東京都内におけるしよう油業界においてキッコーマンの価格への追随を必要ならしめる市場秩序を底礎する事情の正しい認識にもとずくものであり、審決の認定は正当である。すでに審決(第一事実の認定の二)に述べたとおりしよう油の如き調味品にあつては味覚、風味等の主観的要素に左右されて実質的品質の識別は一般大衆にとつて困難であり、マークに対する信用によつて品質評価が行われることになる。すなわちマーク・バリュー即品質の関係が成立しており、これによつてその商品価値が決定される。またしよう油は一般大衆に直結する日用品としての特性上、小売価格はマーク・バリューの端的な表現であり、一般大衆には小売価格がしよう油の品質価値を判断する有力な指標である。すなわちマーク・バリュー即小売価格即品質の三位一体の関係が成立している。このことはしよう油に限らず一般の日用品についても専門的知識のない消費大衆の性向からして珍らしくない現象であるが、しよう油については古くからマーク・バリューに対する級別と価格差が判然としていることから、この購買者心理は抜き難いものとなつており、マーク・バリューと品質の一体関係は特に強固なものがある。さらにしよう油については古くからマーク・バリューに対する格付けがされているが、以上のマーク・バリューと価格と品質の一体関係から価格が同一であるものは品質も同一であるとして同一の格付を獲得し、価格が低いときは品質も劣るものとされ格付より脱落することになる。なおマーク・バリューと小売価格と品質とはもちろん不可分離の関係にあるが、被告のいう不可分離の必然関係とはしよう油業界の実勢関係、取引関係の特殊性から生ずる現実のさけ得ない事実上の必然関係をさすのであり、それが一般的に抽象的論理的な意味で必然関係にあるか否かとは必然の連関をもたずまたその必要もないのである。三位一体論は現実の動かせない事実関係であれば足りるとともに、現実の事実関係であるところに重大な意味がある。この点に対する原告の非難は理由がない。またしよう油については最上、次最上、極上等のマーク・バリューに対する級別即格付が生じ取引価格もそれぞれの格に応じてほぼ一定の開きが保たれ、しよう油の品質に対する実質的評価はマーク・バリューのかげにおおわれ、一般消費者はもつとも普及滲透している特定のマークを愛用する根強い傾向を有し最上印という格付が一種の需要わくとして消費性を規制することになる。そこで最上四印の中でもキッコーマンのマーク・バリューがもつとも強力であることからキッコーマン以外の他の三印はキッコーマンより高い値段をつけ得ないことはもちろんとして、その販路を維持するためにはその価格、とくに小売価格をキッコーマン印と同一水準にし、キッコーマンと同一の最上印という格付と信用を保持することが不可欠である。キッコーマン印以外の三印が自ら価格を最上並より安くすることは数代にわたる努力にもとずく歴史的所産である最上印の格付を自ら放棄することであり、需要減退に追い込められることになるし、格付は一度脱落するときはこれを回復することは困難であり、さらに安売り競争ともなれば原告の強大な事業能力に抗し得べくもない。すなわちキッコーマン以外の他の三印の生産者はその製品をキッコーマン印より高くすることはもとよりこれより低くすることも絶対的に不利であり遅滞なくキッコーマンの価格に追随することが一の客観的必要となつているのである。原告会社はマーク・バリューと価格との関係から自己の製品の売価を自由に定め得るが、他の最上印は各自の採算、市況のみによつて値段を定めるわけにはゆかず、原告会社の動きに従わなければならぬ実情であると認められる。一方原告会社においてはキッコーマンのマーク・バリューは同じく最上四印といつても他の三印に比しはるかに強力であるから、最上四印が同一小売価格である限り、最上四印間の競争においてはキッコーマンが絶対の優位に立つことは明らかであり、原告会社としてもキッコーマンの販路の確保拡大のために四印間の価格を同一に保つことは必要なのである。次最上以下がキッコーマンのマーク・バリューに対抗し得ないことはいうまでもないが、前述の如くしよう油については最上、次最上、極上等の格付に応じて取引価格に一定の開きが保たれているので、次最上以下もキッコーマンの価格によつて代表される最上四印の価格を基準として一定の開きをもつて決定される。審決にも示したとおり現に昭和二十八年の秋ごろしよう油の原材料の高騰により、次最上のあるものは業界全般の値上を待ち切れずに値上を発表したが、翌年一月の最上四印の値上までは実施できなかつた。ひつきようするにしよう油業界においては次最上以下はまず最上四印が値上げしない限り事実上値上げすることは不可能であり、最上四印の中ではキッコーマンの値段が動かない限り他の最上印はいかんともしがたく、またキッコーマンの値段が動いた場合には遅滞なくこれに追随せざるを得ない確固たる市場秩序が成立しているということがいえる。原告は過去において三印が原告の製品と同一価格を決定したのは、原告の価格が妥当でこれを同一にすることが有利であるからだと主張するが、上記述べたところからそれは原告の価格が妥当であるとか追随することが有利であるからとかの理由によるものでなく、三印としてはキッコーマンへの追随以外に自己の販路維持の方途がないからであること明らかである。以上を綜合すれば、三印の生産者はその製品を「萬」より高くすることはもとより、これより低くすることも絶対に不利であり、ためにキッコーマンの価格に追随することが一の客観的必要性となつており、次最上以下もまたこの最上印の価格を基準として一定の開きを保つた値段によつて取引されているとの点について実質的証拠がないとする原告の主張は理由がなく、被告が審決第一事実の認定の二において示した事実は実質的証拠に支持された正確なものであると信ずる。
(三)原告は「審決は原告の再販売価格の維持によつてその競争者たる三印の再販売価格の決定を支配したといわれるが、三印は原告が再販売価格を発表するや直ちに追随したのであつて原告が再販売価格を維持したがためではない。維持によつて三印の価格決定を支配したというのは因果関係が混線している。しかるに再販売価格の発表それ自体は別段違法と認むべきものではない」と主張する。まず原告のいう因果関係の混線があるとの点から反論すると、審決にも明らかにしたように、元来しよう油業界においては最上印が一致した価格で売られているのは戦前からの習慣ともいえるものであることは関係人の等しく認めているところである。戦前のことはしばらくおくとして、戦後一貫して最上印が同一価格で販売されているということは、換言すれば最上印の価格を代表するキッコーマン印の価格への追随が不断に行われたということであり、この追随を余儀なくさせたゆえんのものは前述のようなしよう油業界の特殊の事情による。原告会社は戦後常に希望価格の名目で再販売価格の指示を行つており、また原告会社の市況調査係は昭和二十八年末の価格改訂の時にいたつて突如設けられたものでないことを考えると、程度の差こそあれ維持行為も行つていたことは推測にかたくないが、原告会社の如くそのマーク・バリュー、生産能力、並びに問屋又び小売店に対する支配力が強大である生産者の再販売価格の指示は、名目が希望価格でありまたなんら特段の維持行為が用いられない場合でも、これが励行されることは当り前のことで、たまたま末端の若干の小売店に廉売が行われたとしても、最上印を象徴する一定価格を不安定ならしめる程度にいたらぬ限り、他の最上印の生産者は原告会社の価格に追随せざるを得ないものであり、少くとも戦後は価格の改訂に当つては常にキッコーマンへの追随が他の最上印の唯一の価格政策となつていたものである。右のような事情の下においては昭和二十八年末に行われたしよう油業界全般の価格改訂のさいもキッコーマン以外の他の三印メーカーの動きももちろん右の例外であり得るはずはなく、原告のいうように「三印は原告が再販売価格を発表するや直ちに追随」せざるを得なかつたのである。ただ今回の価格改訂に当つては、当時のデフレ経済の下で商況不振にあえぐ販売業者の濫売取締と生産者の代金回収の円滑を図る必要上原告会社は特に再販売価格の維持に力を注いだので、最上印を代表するキッコーマンの卸価格、小売価格は各区域において一定不動のものとなり、他の最上印のキッコーマンへの追随の必要を絶対化したものといい得る。仮りにキッコーマン印の価格が各区域又は各小売店において、不同であるとしたら他の最上印のキッコーマン印への追随の必要はうすくなるかなくなる。従つて審決において原告が「自己の製造販売するしよう油の再販売価格を指示し、これを維持し、もつて小売価格を斉一ならしめることにより他のしよう油生産者の価格決定を支配し」といつても、原告の昭和二十八年十二月末の再販売価格の指示以降の市場支配を昭和二十九年八月二日の審判開始決定の時又はその後の審決の時からふりかえつて観察するとき、いささかも因果関係の混乱はないのである。元来独占禁止法の対象は単純な偶発的な事実ではなく、原則として企業者の一連の事業活動である。本件の場合は大企業たる原告会社の市場支配へ向けられた過去から現在、さらに将来にまたがる一連の大きな歩みが対象であり、その一歩は全体の動きとの関連において評価されなければならない。「三印は原告が再販売価格を発表するや直ちに追随した」のは追随の基盤が確立されていたからであり、他の最上印にとつて追随が絶対化されるゆえんは原告会社の維持行為である。原告が「三印は原告が再販売価格を発表するや直ちに追随したのであつて、原告が再販売価格を維持したがためではない。」というところにむしろ重要な問題が伏在するのである。因果関係を極く形式的に論ずることによつて責任を回避することはできない。また原告は「再販売価格の発表それ自体は別段違法と認むべきものではない」というが、原告の再販売価格の指示は審決にも明らかにしたように再販売価格の発表それ自体ではなく、維持行為の裏打のある強制力をもつたものである。たとえ原告がなんらの維持行為を行わない場合でも、原告の場合は再販売価格の指示は違法である。一般的には再販売価格の発表それ自体は一種の希望に止るものとして違法でないといえるかも知れない。しかし原告会社のようにそのマークの力と事業能力によつて販売業者を完全に支配している場合には名目は仮りに希望価格であつても絶対の強制力をもつことは明らかである。それが市況調査係の訪問や荷止め処分によつて廉売防止策がとられている場合の希望価格は再販売価格の指示と異なるところはない。さらに原告は「原告が法の禁ずる再販売価格の維持をしたから三印もこれにならつて同様な法の禁ずる維持行為をしている。否その客観的必要性があるとなすにいたつてはそれがいかに不当な認定であるかいうまでもあるまい」と主張する。審決の認定するところが何故に不当であるかについて原告の明らかにするところはないが、しよう油は一般大衆に直結する商品であるからその品質又はマーク・バリューを化現するものとして生産者にとつても小売価格が最も重要な意味をもつ。従つて最上三印のキッコーマンへの追随ということもその小売価格に力点がおかれ、卸価格や生産者価格については小売価格をキッコーマンと同一ならしめる必要上、キッコーマンと同一価格としているものである。審決が「これと同格の他の三印はその製品の売値を「萬」と同一に保たざるを得ない事情にあり、これがためこれらもまたそれぞれ卸および小売価格を指示し、鋭意これが維持につとめるにいたつている」と認定したのを攻撃する原告の非難は当らない。
(四)原告は、原告会社は学者のいわゆる代表会社ではあつてもいわゆる支配会社ではないといい、また本件はハンド判事のいう「任意の追随」以外の何物でもないという。まず原告会社がいわゆる代表会社であるとの主張については、原告の価格が常に市場の諸条件を正当に反映したものであつたか否は別として、競争業者が追随したのは原告の価格が妥当なるが故におのずから一致したという類のものでなく、競争業者は好むと好まざるとに拘らず追随せざるを得ない地位におかれていたものであることは審決に示したとおりで、過去におけるその追随の様相を一見して明白であり、この意味において原告はまさに学者のいわゆる支配会社に当るものである。またハンド判事のいわんとしたことは、コーンプロダクツは主要同業者の全部を併呑しすでに生産の過半を占めており、さらに無理な値下によつて残存独立業者の営業をも不可能ならしめようと企てたのに対し、この場合コーンプロダクツの生産能力に限りがあつて価格低下によつて増加すべき需要に応じきれないとすれば競争業者は必ずしもコーンプロダクツの線まで値下することを強要されないが、事実は正反対で、コーンプロダクツの能力には十分の余裕があり全需要を賄うに足りるものである以上、独立業者はその価格まで引下げざるを得ないとし、独立業者らは法廷において彼らはコーンプロダクツの価格に随がつたと証言しているがこれは決して任意の追随とはいい得ないというにある。本件の場合コーンプロダクツの如く原告に競争者に追随を強要する意思があつたか否は疑問であるとしても、原告の意図いかんに関せず一度原告が価格を定めるときは他の三印はこれに随わざるを得ない関係にあつたことは審決にも十分説明したとおりであつて、断じて任意の追随ではない。本件の参考人石橋啓、石橋立二らが「必ずしも従わなければならないということはありませんが……」とか「商略上そうしたまでです」とかいつているのは、いわば問いつめられて架空の場合の観念論を述べているに過ぎない。商略上得策であるということは業者にとつては絶対の命令であり、従うか従わないか選択の余地はない。この事実はこれまた過去において値上の度毎に起つた現象を見れば一点の疑いもないのである。
(五)キッコーマン印の価格が定まれば後は自動的に価格が決定される市場秩序があるとか、最上三印はキッコーマンと異なつた価格を設定する自由はないとかいつた場合、ここにいう価格は再販売価格のみでなくその卸売価格及び生産者価格を含むものではあるが、それは観念的に分析すればそうなるということであつて、事実としては原告にあつても他の主要生産者にあつても価格決定は単一の行為であつて、生産者卸小売の各段階の一がきまれば多年の慣習による一定の値幅に従つて他の価格もおのずから定まるものであり、一の価格を決定するということはすなわち同時に他の二の価格を決定することであつて、各生産者ともこれを別々に行つたという例はない。審決において特に原告の再販売価格指示が他の生産者の価格を決定したといつているのは次のような見解にもとづくものであつて、決して原告のいうように被告がむりに違法の要素を結び付けようとしているのではない。すなわちしよう油の取引においては格付なるものがあり、これは価格により表現され、価格がやすければそれだけ格も下るとみなされる傾向が特に強いため、格を維持するためには三印は原告の価格に追随せざるを得ない事情にあることは審決(理由第一の二)において述べたが、そのさい明らかにした如く、格の徴表となる価格のうち最も主要なのは小売価格である。けだし小売値段はもつとも広く大衆の間に知れわたつたものであつて「今キッコーマンはいくらいくらである」ということがそのまま格付を代表する価格の標準となつている。しかしこれは生産者価格も一の格付の基盤となつていることを否定するものではない。さればこそ各生産者とも内密に割戻し等の方法によつて実質的には幾分の較差をつけながらも表面上の生産者価格はあくまでキッコーマンと同等に保つているのである。それは生産者価格もその取引業界の関する限りそれが一の格の徴表となつているからである。しかししよう油業全体から見ればその作用の比重は軽いといえる。格付の徴表とする価格のうちもつとも重要なのは小売価格であるから、末端小売価格をキッコーマンと同一にそろえるためにはさかのぼつて卸価格さらに生産者価格もキッコーマンのそれと同一にそろえる必要が存するのである。被告は現在主要銘柄の価格の間に各段階とも少しも較差が生じていないのは、原告の生産者価格に他の主要生産者がならうという作用を無視するものではないが、主として原告の製品の小売価格が基準となりこれに他の銘柄がならう結果さかのぼつてその卸売価格、生産者価格も一致するにいたつていると観察しているのである。
(六)原告並びに他の主要しよう油生産者らがそれぞれ再販売価格指示を行つたのは本件昭和二十八年十二月の価格改訂のさいがはじめてではない。昭和二十五年価格統制撤廃以後数次の価格改訂の都度これを行つて来た。価格維持の積極的努力の有無に関せず大体においてこれが守られそれが正しい価格として標準となつていたことは多くの証言によつて明らかである。たまたま表面にあらわれた原告の維持行為は後にいたつて行われたのであるが、維持行為の有無に関せず一般に標準と認められる権威があり、その故に他の三印は常にこれに追随していたのである。事後に行なわれた維持行為はすなわち原告の指示行為の性格を明白にしいつそう効果的にしたものに過ぎない。必ずしも時間的に原告の維持行為があつて後他の三印が追随したという関係ではない。ただ維持行為が行われる場合はキッコーマンの小売価格はより確固不動なものとなり、他の三印の追随を絶対的なものにすることとなるのである。
(七)本件審判においては原告のした再販売価格の表示が違法であるかどうかの問題には立入つてはいない。仮りに違法であるとしても本件で問擬されている私的独占の手段として行われたものであるからこれに吸収され、同一の排除措置をもつて足りるからである。私的独占の成立のためにはその用いた手段自体が違法であるか否かは問う必要がないことは審決(第三法の適用二)において示したとおりである。
二、再販売価格の維持について、 
(一)原告は原告会社の東京出張所の外務員が唐沢吉弥外四店の小売商に対し東京都味噌醤油商業協同組合の協定価格を順守されたい旨の希望を述べた事実をもつて、原告が東京都内における五千数百軒に及ぶ小売業者によつて販売されているしよう油の小売価格面の競争を完全に抑圧していると断ずるのは誇大な認定であつて実質的証拠にもとずかない認定といわなければならないと主張する。
しかし原告のいう右協同組合の協定価格なるものは実は審決(第一事実の認定の四及び五、第三法の適用の四)にも示したように、原告会社の指示価格であり、原告会社は右協同組合を利用してその指示小売価格の徹底と励行を図つているものである。前にも述べたように、原告会社の指示価格の励行されないことはきわめてまれな事であり、とくに昭和二十八年末のしよう油の値上の場合は審決(第一事実の認定の五)に示したとおり、しよう油生産者の廉売小売店に対する荷止めの方針が小売店間に伝えられて予め小売店を戒める措置がとられた。しかし主として右協同組合員外の小売業者の方面から例外的に生起する廉売行為は皆無とはいえないのでこれに対する取締の事例が審決に摘示した数例である。右協同組合の自主的な統制力は非常に弱いので原告会社の指示小売価格が励行され維持されるのは一に原告会社の小売店に対する支配力と維持行為によるものであり、この事実を正視するときは原告会社がその製品の小売の価格面の競争をほとんど完全に抑圧しているという認定が何故に誇大であるのか了解することができない。すでに右協同組合の協定価格が原告会社の指示にもとずくものであり、その維持励行は原告会社の小売店に対する支配力に負うものであり、さらに散発的に発生する廉売行為に対する原告会社の取締の一般方針とその実例が示された以上、審決の認定は当然である。審決に掲げた数例に加えてさらに原告会社の小売価格の維持行為を挙示しなければ右の認定をし得ないというようなものではない。この点の原告の主張は理由がないものである。かくしてキッコーマン印の小売価格が同一線に保たれる以上これと同格の他の三印もそれぞれ卸小売価格を指示して鋭意これが維持につとめるにいたり、その結果東京都内の需要の七割をみたす最上四印の価格が同一となりその間に価格面の競争は全く抑圧されているのである。
(二)原告は「……もともと協同組合は適法に協定価格を定め得るものである。かように当然順守すべきことを順守するように勧説することが何故違法なのか。ことに本件では組合の依頼によつて組合の代理人的立場でしたのである。……組合員外の者にまで組合の協定価格に従うよう希望したことはあるいは行きすぎであろうが、これとてあえて違法というには当らない」と主張する。この点については審決(第三法の適用の二後半)において被告の見解を詳細にしたが、少しくふえんすると原告は協同組合の協定価格をその代理人的立場で小売店に順守するよう勧説したというが、協同組合の協定価格は原告会社の指示した再販売価格である。この価格の順守を勧説することは自己の指示価格の順守の勧告であり強制である。審決摘示の事例においても相手方の小売業者は原告会社の市況調査係を単純に協同組合の代理人と了解して応援しているのではない。これら市況調査係らの言動は、原告会社の意向を伝えるものとして、あるいは原告会社の立場を代弁するものとして、相手方の小売店等を畏怖せしめたればこそ、一様に廉売行為を停止しているのである。しよう油販売業者にとつてはキッコーマン印は不可欠の商品であり、またその生産者たる原告会社のしよう油業界における地位から原告会社の動向にはとくに敏感である販売業者に、原告会社の市況調査係等の価格維持に関する行為を協同組合の代理人的立場でするものと了解せよということがむりな話である。原告は「組合員外の者にまで組合の協定価格に従うよう希望したことはあるいは行きすぎであろう」というけれども、原告会社の指示にもとずく協同組合の協定価格はもともと、協同組合独自の力では維持し得ないものであり、いわんや組合員外の小売業者に対する組合の統制力は全くない。原告会社が小売価格を指示しこれを維持するには協同組合員に対する取締はもちろんのこととして組合員外の小売業者にまで取締を拡げなければならない。そうでなければその指示価格は一千を超えるこれら組合員外の小売業者の方面から崩れてくるのは必定である。本件で原告会社の取締の対象となつた事例で数えても組合員外の小売業者の方が多いのである。これは原告会社のたんなる行きすぎではなく、その強力な再販売価格の指示並びに維持の決意を物語るものであり、原告会社の本来の価格政策の表現である。原告会社の価格統制の機構はこの市況調査係の外にも、運賃込同一卸値をもつてする小売店頭までの直配、小売店問屋間及び問屋蔵元間の画一的支払制度、キッコーマン会による共同集金、問屋店入分の制限等を挙げることができ、これらを仔細に観察するときは原告会社の価格政策の全貌を知ることができるのである。
(三)原告は、審決が組合の協定価格はすなわち蔵元の指示した再販売価格であるとしたことを、中間に協同組合の協定価格の介在したことを軽視するものとして非難し、たまたま原告の希望価格が一致したからといつて組合の協定価格の独自性を否認すべきでないと主張するが、この点に関する被告の見解は審決(第三法の適用の四)に述べたところに尽きる。あえて蛇足を加えれば中間に協同組合の協定価格が介在しておつても、それはたんに形式的に協同組合の協定価格として存在するに止まり、原告のいうように組合独自の価格ではない。現在しよう油業界の特殊な経済的基盤の上では原告会社にとつて小売価格の設定維持は価格政策の根幹であり、これを小売業者の決定にゆだねることのできないものである。ことに協同組合には自主的な価格の統制力がないのであるから原告会社の力にまつほかはない。そうすれば組合が原告会社の指示する価格と異なつた価格を設定することが無意味であり不可能であることはもちろんとして、原告会社の方からみても自己の意思と相違する小売価格の徹底励行に熱中することは考えられない。協同組合においても小売価格を協定することは競争の回避、恒常的利潤の保障の面から利益であるには違いない。しかしそのことから協同組合の協定価格の独自性を肯定することはできない。何となればいかに協同組合にとつて協定価格の設定が利益の大きいものであつても、その利益を自ら実現できない以上原告会社に従属せざるを得ないものである。本件で問題にした値上の前の昭和二十七年十一月の値上げ、さらにそれ以前の同年五月の値上げのときも、原告会社の指示価格と協同組合の協定価格とは一致しており、たまたま一致したという性質のものではない。
(四)原告は、原告会社の外務員が二三の小売店に対し組合の協定価格を順守するよう希望した事実はあるがこれを強制するため荷止めを実行したこともなければ荷止めをするといつて威圧を加えたこともないと主張する。この点の被告の見解は審決(第三法の適用の四の(三))に明らかにしたが、原告会社の市況調査係が訪問して「安売りを続ければ荷止めも止むを得ない(査第二十六号吉屋安平供述調書)」とか「この価格表で販売して貰いたい、もしそうでないと荷止めする(査第二十七号石塚正雄供述調書)」とかいえば相手方の小売店はそれが原告会社による荷止めであるとの意味に受取るのは当然である。この場合話をする方も話をきく方も荷止めを実行するのは原告会社であるという意識の下に立つて話をしているものと考えるのが普通である。これら関係人の供述が、むりに荷止めをするのは問屋であるという趣旨にもとれるような陳述に改められ、荷止めをするのはメーカーか問屋かあいまいなものにしたのは、業界関係人の多数傍聴する公開審判における特殊の空気と原告の尋問の仕方によるものであつて、全く事実に相違するものである。またこのような個人的な事例に止まらず引用乙第十二号証(藤原熊治供述調書)審判手続における参考人唐沢吉弥同小杉武の各陳述によれば、昭和二十九年一月の協同組合神楽坂支部の会合で廉売小売店に対する三印メーカーとくに原告会社の荷止めの方針が支部組合員に伝えられたことを認めることができる。原告会社はこのように協同組合を通じて一般的に小売店を戒めるところがあつたとみることができる。
審決が、荷止めが問屋によつて行われるか原告会社によつて行われるかよりも重要なことは原告会社の社員がかかる不利をにおわせて小売商に一定の価格を守ることを強要したことにあるとした点につき、原告は仮りに不利をにおわせたからといつて告知者がそれに対してある影響を与えそれを左右し得る地位にあることをにおわせたのでなければ告知者が強要したものとは認めることができない」と主張する。不利をにおわせる場合に、告知者が不利の実現を左右し得る地位にあることをにおわせなければ被告知者を畏怖せしめるに足らぬということは一般的には考えられるかも知れないが、本件の如き原告会社の外務員が小売店に対して荷止めを云々した場合、とくに原告会社が荷止という不利な事実の実現を左右する地位にあることをにおわせなくても原告会社の業界における地位から小売店を畏怖せしめ廉売行為を止めさせるに十分である。現に原告会社の市況調査係の訪問を受けた廉売小売店は廉売行為を止めているのである。また原告会社の市況調査係が小売店を訪問して安売りを止めなければ荷止めするといつた場合、小売店がたとえそれを原告会社が荷止めするのでなく、問屋が荷止めするのだという趣旨に了解したとしても、とくに原告会社が問屋の荷止めを左右する地位にあることをにおわせなくても永年しよう油販売業を営む小売店はそのくらいのことはよく承知している。協同組合の常務理事田辺鉄五郎が第八回審判で、しよう油代金の手形払制度の実施の点について「実際私共の相手は問屋です。私共の直接の相手は問屋です。過去の実績から徴しまして野田の生産者が値上げ値下げしないものは問屋のみでしたことは一回もございません。でありますから当然対象は野田です。」と述べたのは一般の小売店が問屋対原告会社の関係を完全な隷属関係とみなしている証左である。そしてそのような会社対問屋の関係をわざわざにおわせなければ強要にならぬという原告の主張は余りにも形式的抽象的な議論である。
三、競争の実質的制限について、 
原告の値上発表に対する三印の追随がある以上東京都内の需要の七割近くをみたす四印の価格は全く同一となることは明らかである。三印の追随を余儀なくする特殊の市場秩序の下では三印の価格がキッコーマン印と異ることはあり得ないところである。現に協同組合においても四印について同一小売価格を協定して組合員外にまで価格表を配付し、また小売店の代金支払について銀行払手形制を実施することと関連して協同組合から問屋並びに蔵元に対して従来にも増して小売店の濫売取締に力を注ぐよう要望し、問屋蔵元はこれを了承しているのである。一方原告会社以外の最上印の蔵元もおのおのその外交員を定期的に担当区域を定めて巡回させ、しよう油の品質包装に対する一般消費者小売店等の批判、売行並びに価格等を調査させて値くずししている小売店にはとくに外交員を差し向けて注意を与える等の方法により小売価格の維持励行につとめて問屋もこれに協力している。その結果きわめて例外に属するものを除いては都内の四印の価格は全く同一になつている。これをもつて都内四印の価格面の競争は全然抑圧されていると認定するのは当然であり、原告の非難は当らない。
四、排除措置について
(一)原告は、再販売価格の決定それ自体は違法でなく、またその決定した再販売価格を希望として表明したとて違法ではないとし、審決が原告に再販売価格に関する限り口にすることさえ禁じたのは正当な範囲を逸脱する違法な措置であると主張する。再販売価格の決定は当然表明することを前提とするであろうし、表明される以上、たんに希望価格とか指示価格とかいう呼称の相違で違法性が決定されるものではない。問題は表明された再販売価格が販売業者に対して強制力をもつか否にある。原告会社の製品であるキッコーマンのマーク・バリューは強大で販売業者にとつて営業上不可欠の商品であり、かつ問屋は原告会社に完全に従属しており、協同組合は常に原告会社の設定するところに従つて価格を協定し、その違反者に対しては原告会社の市況調査係による取締の手段も整備されているという特殊な事情の下では原告会社の表明する再販売価格は直ちに問屋又は協同組合を通して、あるいは業界紙等により小売店に伝えられることとなり、現実になんらの維持行為をしないでも強い強制力をもち、むしろ励行されないことが例外である。すなわち原告会社の再販売価格の表示は希望価格とか標準価格という名義で表明される場合でも原告会社のしよう油業界における地位から販売業者に対して強制力をもつもので、これを禁止することは本件の排除措置として正当かつ必要である。
(二)原告は審決が排除措置の範囲を全国的に拡大したことを非難するが、その理由についてはすでに審決(第三法の適用の五)において明らかにした。本件において審決が違反事実として取り扱つたのは東京都内のしよう油の取引分野における原告会社の私的独占である。これについては原告は審判手続において異議を尽したものであり、審決が排除措置の範囲を東京都内に限らなかつたのは排除措置を実効あるものとする上に必要やむを得ないことにもとずくものである。原告が、弁明の機会を与えず抜打的にした審決で手続規定に違反すると攻撃するのは当らない。 


第三、証拠関係 
 (一)原告代理人は引用甲第一ないし第五号証、審判手続における参考人岡田源吉、中沢純一、石橋立二、竹村平太郎、岡崎武右衛門、唐沢吉弥、満井保三、佐野長次郎、島重城、田辺鉄五郎、石橋啓、守田英雄、鈴木鐐助、戸野部富五郎、秋谷満寿、柴田孝、浜野茂利、水口寛、古屋安平、石塚正雄、岡田正夫、藤原熊治、小杉武、荒井政次郎、高梨小一郎の各陳述を引用し、
(二)被告代理人は引用乙第一ないし第二十九号証、第三十号証の一ないし三、第三十二ないし第三十八号証、第三十九号証の一ないし四、第四十号証の一ないし六、第四十一ないし第四十八号証、第四十九号証の一、二、審判手続における参考人岡田源吉、中沢純一、竹村平太郎、石橋立二、佐野長次郎、田辺鉄五郎、石橋啓、秋谷満寿、高梨小一郎、唐沢吉弥、鈴木鐐助、戸野部富五郎、石塚正雄、古屋安平、浜野重利、水口寛、小杉武、藤原熊治、岡田正夫、荒井政次郎の各陳述を引用した。 
 


理  由 
被告が昭和三十年十二月二十七日原告を被審人とする公正取引委員会昭和二十九年(判)第二号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反事件について、別紙審決書写のとおりの審決をしたことは当事者間に争ない。原告は審決の基礎となつた事実はこれを立証する実質的な証拠がなく、その法の適用は独断又は不当であると主張するので、以下原告主張の順序に従つて判断する。 
一、他の生産者の支配について 
被告が審決において認定した事実の結論的部分を要約すれば原告はその製造販売するキッコーマン印しよう油の再販売価格を指示しかつ維持しもつてその小売価格を斉一ならしめることにより他のしよう油生産者の価格決定を支配し、東京都内におけるしよう油の取引分野における競争を実質的に制限しているというにあること、審決自体から明らかであり、ここに他の生産者の価格決定の支配というその価格とは、原告の主張する如くたんにその再販売価格をのみさすのか、被告の主張するように生産者価格をも含めるものかについては争があるが、審決全体からそのいわんとするところを見れば、しよう油業界における特質と原告の業界に占める優越的地位とからして他のしよう油生産者は原告のしよう油キッコーマン印の価格がきまればこれに追随せざるを得ない事情にあり、他の生産者は原告にならつて生産者価格、卸価格、小売価格を定めることとなるのであるが、その追随を余儀なくさせる最も重要な契機はしよう油の格付から由来するマーク・バリュー、品質及び価格の一体関係にあることからこれらの価格の中でも直接消費者大衆に向けられる小売価格が最も重要な意義をもつものであるとするのであつて、それらの内容は以下の判断においておのずから明らかにされるべきものであるから、この問題はここではこれ以上そのいずれであるかを決定する必要はない。
(一)審決が原告をもつて他のしよう油生産者の価格決定を支配しているものと判断したゆえんのものは、しよう油業界における顕著な特質として各メーカーの製品について格付が行われ、マーク・バリュー、品質、価格の一体関係が成立し、そのため原告の製品たるキッコーマン印しよう油の小売価格が同一線に保たれれば、これと同格の他の三印(ヒゲタ、ヤマサ及び丸金)はその製品の売値をキッコーマン印と同一に決定し維持しなければならないという事情にあるのであるから、原告が、その再販売価格を指定し維持する行為は、その当然の結果として他の生産者の価格決定を支配することとなるというにあることは審決自体から明らかである。この点につき原告は独占禁止法第二条第五項にいう「他の事業者の事業活動の支配」とはなんらか支配者の側でする制圧の要素がなければならず、その者の関知しない客観的条件の存するため、結果としてその行為が他の事業者の事業活動を支配することとなつても、それはここにいう支配ではないとして原告の行為は他の価格決定を支配したものということはできないと主張する。よつて按ずるに右法条に私的独占を成立せしめる行為として他の事業者の事業活動を支配するとは、原則としてなんらかの意味において他の事業者に制約を加えその事業活動における自由なる決定を奪うことをいうものと解するのを相当とする。しかしこのことから一定の客観的条件の存するため、ある事業者の行為が結果として他の事業者の事業活動を制約することとなる場合はすべてここにいう支配に当らないとするのは狭きに失するものといわなければならない。なんとなれば、法は支配の態様についてはなんらの方法をもつてするかを問わないとしているのであつて、その客観的条件なるものが全く予期せざる偶然の事情であるとか、通常では容易に覚知し得ない未知の機構であるとかいう特別の場合のほかは、一般に事業者はその事業活動を営む上において市場に成立している客観的条件なるものを知悉しているものというべきであるから、自己の行為がその市場に存する客観的条件にのつて事の当然の経過として他の事業者の事業活動を制約することとなることは、当然知悉しているのであつて、かような事業者の行為は結局その客観的条件なるものをてことして他の事業者の事業活動を制約することに帰するのであり、ここにいう他の事業者の事業活動を支配するものというべきであるからである。本件で市場に存する客観的条件とはしよう油業界における格付及びそれにもとずくマーク・バリュー、品質、価格の一体関係から他の生産者が原告の定めた価格に追随せざるを得ない関係をさすことは明らかであり、このような市場秩序の存するところで原告がその再販売価格を指示しかつ維持し小売価格を斉一ならしめれば、他の生産者はおのずから自己の製品の価格をこれと同一に決定せざるを得ざるにいたり、その間価格決定につき独自の選択をなすべき余地はなくなるというのであつて、これがすなわち原告の価格支配であるとする審決の所論は、そのような市場秩序があるといい得るかどうか、原告が小売価格を斉一ならしめているかどうかの事実の有無は後に見るとおりであるが、それはとにかく、その論理の構造においてはなんら不合理なものあるを見ないのである。ただ原告の行為に客観的条件が作用する場合であつても、原告の生産者価格が決定された結果、他の生産者がその格付を維持するためそれと同一の生産者価格を決定せざるを得ないとしても、この行為をこの側面からとらえて私的独占の一場合たる価格支配となし得ないことは被告が審決において認めるところである。しかしこのことから、生産者のする再販売価格の指示及び維持による他の価格支配もまた許されるとすることのできないことは多言をまたない。生産者がその生産する商品を販売するにあたり自らその販売価格すなわち生産者価格を決定することはそのなすべき当然のことであり、それなくしては生産者の事業活動そのものが許されなくなるのであるが、生産者がする再販売価格の指示及び維持は本来自己の事業活動そのものとは不可欠の関係にあるものではないのみでなく、むしろ多くの場合独占禁止法上不公正な取引方法として禁止せらるべきものに当ることを保しがたいのである。本件において原告がその再販売価格とくに小売価格の指示をしその維持行為をする限り、業界における原告の優越なる地位と相まちその末端の小売価格は少くとも東京都内において斉一となり、キッコーマン印しよう油はいずれの小売店においても画一的な価格で売られ、キッコーマンはいくらという一定の価格を帯びるにいたり、その結果これと同一の格付にある他の三印はその格付を維持するためこれと同一の小売価格を定めざるを得ないこととなり、ここに右小売価格から卸価格、生産者価格の三段階を含む価格体系を原告のそれと同一ならしめざるを得ないこととなるのはみやすい道理であるから、ひつきよう原告の再販売価格の指示及び維持行為が他の生産者の価格決定を支配することとなるのである。もし原告が再販売価格の指示及び維持をしなければ、原告の製品といえどもその末端の小売価格は、小売商協同組合その他小売商の間に価格協定がなされ、これが強力に維持されることとなる等他の事情の介入しない限り、必ずしも斉一に維持されるはずはなく、かえつて原告の商品相互の間にさえ活溌な価格競争を招来するであろうから、キッコーマンはいくらという一定の小売価格は指摘し得ないこととなり、自然最上印の小売価格も一定しないこととなつて、その結果、他の三印も必ずしもキッコーマン印と同一の小売価格を定めるということができなくなるとともにまたその必要もなくなるものといわなければならないのである。原告は審決のいう如き市場秩序は原告の作つたものでもなく、またその関知するところでもないとして、かかる客観的条件の作用によつて結果するところを原告に帰せしめるのは責任の本旨をあやまるものと主張する。しかし本件において原告の価格支配を判断するにあたり原告がその客観的条件を作つたものであることを必要としないことは前記説明からおのずから明らかであり、原告が多年業界に優越の地歩を占める事業者であることからすればこれを知らなかつたとすることの不当であること多言をまたない。この場合原告にこれを利用するという積極的な意思のあることはとくに必要ではなく、客観的条件存在の認識及び自己の行為がその条件にのつて一定の経過をたどることの認識があれば十分というべきであり、本件において原告にこれを肯定すべきことは前同様である。本件価格支配を原告に帰せしめることがなんら責任の本旨をあやまるものでないことは明らかである。そしてそれが原告に帰せしめられる以上原告の価格支配による私的独占そのものの中に公共の利益に反する要素は内在するものというべく、これをもつて公共の利益に反しないものと解すべきとくだんの事情は認め得ないところである。なお審決が格付といいマーク・バリュー、品質、価格の一体関係といつても、原告のすべての行為と無関係に他のしよう油生産者の価格決定が自動的になされるものというのでないことは審決の全体を見れば明らかであり、原告の再販売価格の維持行為の有無と拘りなく依然として他の生産者の追随が行われるというにあるのでないことも前記のとおりであるからこの点を前提とする原告の所論は失当である。
(二)原告は、審決がヤマサ、ヒゲタ、丸金の最上三印は自己の製造するしよう油の価格を決定するにあたり、原告のしよう油の価格と全く一致せしめなければならない客観的必要性がありまた次最上以下のしよう油の製造業者もまた前記価格と一定の開きを保たざるを得ない事情にあるとするのは、なんら実質的な証拠なき独断であると主張する。よつて按ずるに被告が審決においてあげた証拠でかつ本訴において引用する引用乙第一ないし第三号証、第六号証、第九号証、第十三ないし第十六号証第二十号証(以上順次に福島一郎、常世田忠蔵、秋谷満寿、石橋立二、石橋啓、藤原熊治、田辺鉄五郎、島重城、椎名正太郎、都辺道三郎の各供述調書)第二十八号証(野田醤油(株)出荷実績)第二十九号証(銚子醤油(株)出荷実績)第四十一号証(ヤマサ醤油(株)答申書)第四十二号証(丸金醤油(株)回答書)、審判手続における参考人岡田源吉、中沢純一、竹村平太郎、石橋立二、佐野長次郎、田辺鉄五郎、石橋啓、秋谷満寿、高梨小一郎の各陳述をあわせれば、しよう油のような調味品は食べてみてすぐその品質の良否が一般大衆に判別するというようなものでなく、長い間に確立された印(マーク)に対する信用がその品質を保証するものと解され、マーク・バリュー即品質の関係があること、またしよう油は一般大衆を消費者にもつ日用品であつて、大衆の直接利害関係をもつ小売価格が安ければその品質内容に対する信用を害することとなり、小売価格は品質の標準となつていること、その結果原則としてマーク・バリュー、品質、小売価格の三者が相互に他を規定し合う一体関係が成立していること、しよう油業界にあつては古くから最近の統制時代を通じマーク・バリューに対する級別と価格差が判然として最上、次最上、極上等の格付けが行われており、そのために前記のマーク・バリュー、品質、小売価格の一体関係は顕著な特質をなしていること、原告の製品であるキッコーマン印は他のヤマサ、ヒゲタ、丸金の三印とともに最上四印たるの格付を持しているが、中でも原告のキッコーマンのマーク・バリューはもつとも強く、しよう油といえばキッコーマンといわれるほどに名がとおつておる上に、原告の生産能力、出荷量とも他を圧しているので、他の三印はその価格決定にあたり、とくに小売価格についてはキッコーマンより高くするときは同格でありながら値段が高いとして当然売行が減少し、安くするときはかえつてその品質内容を疑われ自然格付に影響を生じることとなるのであえて価格競争を挑むことができず、結局常にキッコーマンに追随しこれと同一の小売価格を持することが自己の市場を確保するほとんど唯一の方策となつていること、次最上以下についてもそれぞれその格付に応じた一定の値開きが保たれ、最上印が値上をしない限り次最上だけでは独走できない関係にあること最上印相互の場合とほぼ同様であることを認めるに十分であるから、前記原告の指摘する部分の審決の認定は実質的証拠によつて立証されているものといわなければならない。なるほど前記引用証拠のうち引用乙第二号証(常世田忠蔵供述調書)中には「結局値上げの時期も価格もキッコーマンに追随するのが一番賢明で……」とか、引用乙第一号証(福島一郎供述調書)中には「ヤマサ、ヒゲタ、丸金等はキッコーマンより高くは売れないが、安くも売りたくない訳です」とか、審判手続における参考人石橋啓の陳述中には「妥当な価格であれば一緒に売つたほうが商売上得だというのであります」同岡田源吉の陳述中には「(ヤマサだけで独自に値上げするとか或いは価格をきめるということはできないのかとの問に対し)できないことはないんですが商略上やらないのであります」とか同中沢純一の陳述中には「まあ伝統的な呼び名と先程申上げましたがそういつたグループの価格になつておれば商売上得策じやないかというふうに考えます」とか「(実際問題として違つた生産者価格或いは卸、小売価格を出すということはむづかしいというのかとの問に対し)まあ商売上そうすることが最も有利だ一番いいというふうなことだと思います」とかの部分が散見し、これらによつてみれば、他の三印が原告の価格に追随するのは、そうすることが営業上有利であるから商策上の利害打算にもとづいてそうしているということがいえるであろう。従つてその意味では他の三印につき原告の価格と一致せしめなければならない客観的必要性があるといつても、その客観的必要性なるものが自然法則のように絶対不動のものであるというのでないことはおのずから了解すべきところである。他の三印がもし原告と同格を持しながら原告の価格に追随せずこれより安い価格を定めるとすれば競争上有利に立つこととなるはずであろうが、これを可能ならしめるには現に市場を支配している諸条件の変更を前提としなければならないものというべく、それが容易のことでないことは見易いところである。事業者が経済社会において事業活動に従事するのはもとより利益追及を目的とするのであるから利益の存するところにつき、不利益の帰するところにそむくことは当然のことである。たださきに説明したようなしよう油業界における特質と原告の業界に占める地位とからして、他に事情の変更のない限り、三印としては原告の価格に追随することが経済上有利であり、商策上得策であつて、経済人たる事業者がこの有利得策について原告に追随することが不可避の情況にあることは疑いを容れないものであり、その間他の三印の価格政策において独自の決定を期待し得る余地はないのである。換言すれば他の三印は、利益追及の目的を放棄しない限りは、好むと好まざるとにかかわらず原告に追随せざるを得ない立場に立たされているのであり、決していわゆる任意の追随というべきものではない。マーク・バリュー、品質、価格の一体関係の問題にしてもそれが自然法則における如き不可分離の必然的関係であることを要しないことはもちろんであるが、それは経済社会における問題であり、現実のしよう油業界の実情からして他に事情の変更のない限りこの三者の一体関係を否定すべき理由はないのである。次最上以下についてもおおむね同様の関係にあることはおのずから明らかである。
原告は仮りに原告がキッコーマンの小売価格を三印以下に下げても、これによつて直ちに原告のマーク・バリューを下げるとは限らず、逆に三印が小売価格を下げた場合は、キッコーマンが値下を余儀なくされるかもわからないとして、マーク・バリューと小売価格の関係を否定しようとする。しかしこれらの関係はしよせんは絶対的なものでないことは前述のとおりで、原告といえども市場の状況を無視した価格決定をし得るものでなく、その間おのずから一定範囲の制約は免れないものというべきである。原告の価格が他の三印と異なる場合を想定して、それがはたして原告の主張のようになるか、あるいは原告が文字どおり「天下一品」となるか、他の三印が値下を余儀なくされるかは、原告に関する限りその業界に占める優越の地位を除外しては論じ得ないけれども、他の三印の価格決定に関する限り前述の関係を否定することはできないというべきである。
(三)原告は、審決が原告の再販売価格の維持によつて競争者たる三印の再販売価格の決定を支配したとしたことを攻撃し、三印は原告が再販売価格を発表するや直ちに追随したのであつて原告が再販売価格を維持したがためではないと主張する。被告が審決において原告の再販売価格の維持行為として例示した二三の事例はいずれも昭和二十九年一月末から二、三月にかけての事であり、三印が原告に追随してその再販売価格を決定したのは昭和二十八年十二月末で、原告の値上発表の直後であるから、このことからすれば原告の右再販売価格の維持行為と他の三印の価格決定との間には因果関係がないように見える。しかし原告の再販売価格の維持行為は昭和二十八年十二月末の本件価格改訂の時以後はじめてとられたものでなく、他の三印と同じく従来から末端の価格の維持に格別意を用いて来たものであること、とくに原告についてはその業界に占める優越した地位からしてその決定した再販売価格はたんに希望価格又は標準価格という名目であつても販売業者にとつて最大の尊重を受けて来たことは審決の示す証拠で被告が引用する証拠によつて優にこれを認め得るところである。原告もいやしくも再販売価格を定めて発表する以上それが販売業者にそのとおり受け入れられてその価格が励行されることを期待するのは当然であり、また原告にはそう期待し得る能力があるものというべきであつて、そのような事情はもとより他の三印に理解されているものというべきであるから、このような事情の下ではひとたび原告が再販売価格を発表すればその価格は当然原告により維持されるべきものとして理解せられるのである。昭和二十八年十二月末の価格改訂のさいも例外であることを認めるべきなんらの事情もなく、現に審決認定のような小売協同組合の動向もからんで原告の維持行為はむしろ一段と強化されたのであり、そのことは原告の発表した再販売価格が本件において原告のいうような単なる希望価格、いいかえれば守られても守られなくてもよい価格としての意義しかないというものではなかつたことを裏付けるに十分である。そしてその全体の観察の上で原告の再販売価格の維持が結局において他の三印の価格支配に因果関係を及ぼしたとすることは決して不当ではないのである。この点の原告の主張は形式的に過ぎ、事態の実質的意味を遠ざかるものであり、採用できない。
原告はまた再販売価格の発表それ自体は違法ではないと主張するが、本件昭和二十八年十二月末における原告の再販売価格の発表はたんなる希望の表明に過ぎないものではなく、十分その維持さるべき裏打のある発表であり、またしかく他の業者に理解されていたものというべきことは前記のとおりであるのみでなく、原告のいわゆる再販売価格の発表は審決において本件私的独占を構成すべき行為の一環としての意義を有するものとされていること明らかであつて、私的独占を組成すべき個々の行為がそれ自体違法であるかどうかは私的独占の成否に影響ないものというベきである。憲法は営業の自由を保障しているが事業者の営業活動といえどもそれが私的独占を組成すべきものとなるときは公共の福祉に反するものとして制限を受けることは当然のことである。
さらに原告は、審決が原告がその再販売価格の維持により他の三印の価格決定を支配したとしながら、他方において三印もそれぞれ卸、小売価格を指示し鋭意これが維持につとめているとした点を攻撃する。しかし審決のこの点の趣旨は原告はその製品キッコーマンの再販売価格を指示しかつ維持することによつて東京都内のキッコーマンの小売価格を斉一ならしめているので、他の三印はしよう油業界の特殊の事情の下で原告の右価格と同一の価格を決定しかつ自らその再販売価格の維持によつて値崩れを防止しなければならない立場にあつて、現にそうしているというにあること審決自体によつて明らかである。そしてこのことはもし原告にして再販売価格の指示及び維持をしない限り、原告の商品キッコーマンの再販売価格とくに小売価格の決定はもつぱら市場の法則にゆだねられ、東京都内においても必ずしも画一的価格を保持し得ないであろうし、そうなつたあかつきは他の三印はもはや追随すべきキッコーマンの一定の小売価格は存しないこととなり、従つてまた自己の小売価格を斉一に保つべき協力は必要としないこととなり、その結果他に特段の事情のない限り、最上四印の小売価格はここに価格競争を招来するであろうとの見解に基礎づけられているものであることは審決全体からこれを理解し得るところであり、その見解は肯認するに足る。この点の原告の非難は当らない。
(四)原告は原告の再販売価格の維持行為が他の三印の少くとも生産者価格の決定に因果関係ありとすることは理解できないという。しかし他の三印の生産者価格は同時にその卸、小売価格とともに決定されたものであり、生産者価格をまず定めてしかる後その再販売価格を定めたというものでないこと審決の示すところであり、原告の価格改訂によつて直ちに三印はその生産者価格を含めた価格体系を決定したものであること明らかであるから、ここでは生産者価格の決定それ自体に必ずしも重要な意義あるものではない。そして三印の右価格決定は時間的には原告の再販売価格の発表の直後になされたものであるけれども、その事柄の実質的意義は要するに原告の再販売価格の維持によつてその小売価格が斉一ならしめられていることが他の三印の価格追随を導いたものであることは前記のとおりであり、その間に因果関係の存することは明白である。原告がその生産者価格を発表するだけで再販売価格を発表しなかつた場合に三印がその生産者価格を原告と同一に決定するかどうかは本件の問題ではないのである。
(五)原告は、三印についてその卸価格、小売価格はそれぞれ問屋及び小売商が決定するのであつて三印の生産者が決定したものではないから、原告が他の三印の再販売価格の決定を支配したということにならないと主張するが、審決の挙げる証拠で被告の引用する証拠によれば他の三印がそれぞれ原告に追随してその卸価格、小売価格を決定したことを認めるに十分であり、この点の主張はあえて事実を直視しないものというべく失当である。
(六)さらに原告は原告会社は学者のいわゆる代表的会社ではあつてもいわゆる支配的会社ではないと主張する。その趣旨は結局他の三印は独自の利害較量からたんに原告に追随しているに過ぎず、原告が他の三印の価格決定を支配しているものではないというに帰するところ、その主張の理由のないことはすでに前記説明からおのずから明らかであり、原告会社を呼ぶにいわゆる代表的会社をもつてするか支配的会社をもつてするかは問題を解決するものではない。
(七)原告は、審決が原告を目するに問屋及び小売店に対して絶対の強制力をもつとする点は実質的証拠なき独断であるという。しかし審決の挙示する証拠で被告の引用するところを綜合すれば、原告は東京都内において卸問屋の主要なものと古い取引関係をもち、キッコーマン印の市場に不可欠な需要を基礎とし、それに加えるに距離の遠近にかかわらず運賃込同一卸売値をもつてする小売店頭までの直配制、小売店問屋間及び問屋蔵元間の画一的支払制度、キッコーマン会の組織等一連の完備した機構の作用により卸売機関はほとんど完全に掌中に握り、小売商に対しては以上の諸制度のほか東京出張所内に数名の外務員を常置して絶えず直接小売店と接触を保ちいやしくも値くずしをする業者があるときはたちまちこれに干渉してやめさせる等の方法によつてその販売価格を看視しているという審決認定の事実を認めるに足り、以上の事実によつて考えれば原告が卸商に対してはもちろん小売商に対しても強い支配力を有すると判断することは相当というべきである。そして小売店は五千余名からなる協同組合を組織していて、その力のあなどりがたいことは当然であるが、この協同組合自体も原告の協力なくてはその協定価格(それが実質的に原告の定めた小売価格であることは審決のいうとおりである)を組合員の中にさえ維持することが困難であり、いわんや一千名内外にわたる組合員外の小売商に対しては組合はなんら独自の強制力をもたず一に原告に頼つてその濫売防止を求めるほかはないものであることも審決の挙示する証拠上明らかである。これらの事情を綜合すれば原告が販売業者に対していわゆる絶対的強制力を有するものと判断するのはなんら不合理ではなく、審決のこの点の認定は実質的証拠により立証されているものというべきである。
(八)原告は、被告は審決において原告が他の三印の価格を「萬」のそれと同一にそろえるように仕向けることをその営業政策としているかの如く見、かつこの根本思想の下に事案を判断しているもののようであるが、これは根拠なき独断であり偏見であるという。この点は原告も自認するとおり審決がその事実認定においてとくにこれを明示するものでないが、本件事案の判断に関係する限度で審究するに、原告の引用する証拠中例えば審判手続における参考人秋谷満寿の陳述によれば、原告会社としては四印からさらにぬきんでて一つになり価格においても特別の価格を持し文字どおり「天下一品」となりたいという心持で努力しているということはよく理解できるが、前記のような格付を中心とするしよう油業界の実状の下において、原告ひとりが他の三印の追随し得ない特別の価格を設定し、独走よく天下一品たり得ることは、きわめて困難であり、多くの日子と多額の資金を注入して、しよう油業界に成立している市場秩序の変更に成功することを前提としてはじめて可能であると解せられる。それ故それまではまずもつて他の三印が追随を余儀なくされ得る限度の価格を決定することが原告の価格政策の基調となつているものと推認すべきであり、従つてそれは具体的には市場の状況を反映し、かつ正当な原価計算にもとずくものとして成立するのである。原告の定める価格がかかるものである限りそれはしよう油業界を支配する市場秩序の作用に従い他の三印によつて追随されるべきものとなり、それはもとより原告の予期するところであることは前記のところからおのずから明らかである。原告のこの点の主張は理想論であり、現実の問題としては直ちに肯定しがたいところである。
(九)原告は東京都内の四印の小売価格が同一となつたのは小売商協同組合の協定のためであり、原告の再販売価格の指示維持とは無関係であると主張する。しかし本件事案に関する限り原告が再販売価格を発表指示し、他の三印は遅滞なくこれに追随し、小売商協同組合はその後においてこれらの再販売価格とくに小売価格を受け入れるかどうかについて議し、結局丸金については一時おくれたけれども他は実質的にこれを受諾してこれを組合の協定価格と定め、その後丸金についても同様となつたものであること、組合には独自の統制力が弱く原告はじめ最上印らの協力によらなければ組合員内部の値崩れ防止ができない状態にあること、いわんや組合員外のそれについては組合はなんらの干渉をもし得ず一に原告らに頼らざるを得ない事情にあること等審決認定の事実の下では、原告の再販売価格の指示及び維持によつて東京都内の四印の価格が同一となつているものとする審決の判決の判断は相当であり、中間に協同組合の価格協定が介在したからといつてその因果関係を否定せしめるには足りない。本件以後の価格改訂については審決のふれるところでないから、それがはたして原告主張のとおりであるか、そうとすれば何故にそうであるかについてはこれを認めるに由ないものというべく、そのことからさかのぼつて前記結論を批判するのは相当でない。
二、再販売価格の指示及び維持について 
(一)原告は再販売価格の指示をしたことはないと主張するが、この点は審決のかかげる証拠で被告の引用する引用乙第三号証、第十六、第十七号証、第四十九号証の一、二審判手続における参考人秋谷満寿の陳述をあわせればその事実を認めるに十分である。その形式が「御願」とあり「御実施下さるよう特別の御配慮賜わり度御願申上げます」とあつたからといつてそれが再販売価格の指示であるとするに妨げないと解すべきこと審決の説明するとおりである。審決はこの再販売価格の指示そのものを独立した違法行為として取り上げたものでないことは審決の全体を通じて自明であり、私的独占を構成すべき行為の一環たるある行為が独立して独占禁止法上違法とされるかどうかは独占の成否と直接の関係がないこと前記のとおりであるから、原告の右にいう再販売価格の指示行為がはたして不公正な取引方法としてのそれに該当するかどうかは本件で判断の必要がない。しかしそれがたんなる希望であり、小売商が自ら決定すべき価格についての参考意見であり、照会に対する回答であり、それ以上の何物でもないとするのは事実に反するものであることは前記証拠上明らかである。
(二)さらに原告は再販売価格の維持行為をしたことはないと主張するがその趣旨とするところは原告会社の外務員が小杉武ほか四名の小売商に対して協同組合の協定価格を守るよう勧説したことによつては再販売価格の維持とはならないというにあつて、右にいわゆる勧説行為そのものを否定するわけではない。よつて右の行為をもつて原告の再販売価格の維持といい得るかどうかについて原告主張の順序に従い検討する。
(1) 協同組合の協定価格が原告の発表した再販売価格たる小売価格と一致したものであることは原告の自認するところである。従つて協定価格を守るように説くことは組合が原告のかいらいであるかどうかに関係なく原告の定めた小売価格を守るように説くことと同趣旨である。組合員に対しては協定価格を守るよう説く方がより説きやすいであろうし、それによつて協定価格が守られれば原告の定めた小売の価格は維持されるわけであり、その表現にこだわる必要はないのである。原告会社の外務員らは組合の依頼にもとずきその代理人的立場でしたという。しかし組合自体に説得力のない場合にたんなるその代理人にそれ以上の説得力があると考えることは不合理で、なんらか加えるものがあるとすれば、それはその代理人たる者の固有の地位に由来するというべきであるが、それはそれとして、原告がその外務員をして小売商につき調査報告せしめている事項にはそこで売られている小売価格がいくらであるか、濫売があるかどうかということのあること引用乙第三十九号証の一ないし四、第四十号証の一ないし六の市況調査報告書により明らかでありキッコーマンが末端においていくらで売られているか、「濫売」がなされていないかどうかがたえず原告会社の関心事であつたことは明らかであり、右外務員らが協同組合から依頼されて協定価格の順守を説得したとしてもそれが全く原告会社の小売価格維持行為でないとする理由とはならないものというべきである。いわんや組合員外の小売商に対する説得にいたつてはたんに行き過ぎというに止まるものでなく、原告会社の一般方針と合致するものであること審決の説明するとおりであると解すべきものである。
(2) 原告は原告すなわち蔵元で荷止めするといつたことはなく、それをにおわせたこともないと主張するが、この点は被告が審決において第二証拠の摘示五の事実中列記事例(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)についての証拠として挙示する証拠(これらはいずれも被告が本件訴訟において引用するところである)を綜合すればこれを認めるに十分であり、原告の引用する証拠によつて右認定は左右されないと解され、この点に関する審決の第三法の適用四の(三)における説明は相当である。従つてこの事実はこれを立証する実質的証拠があるというべきである。この場合告知者に荷止めを実行する権限があつたかなかつたかは必ずしも問題ではなく、相手方が荷止めの実行を感得すればその意義は同一であり、前記証拠によればこれを肯定すべきことは明らかである。
(3)原告の外務員が市況調査係としてする仕事のうちにその商品の末端における小売価格の状況いかんということの存することは前記のとおりであり、絶えず小売商と接触を保ちつつその小売価格を看視し、時あつて値くずしする者に対してはその価格(それが組合の協定価格という表現であつてもその効果は同一である)を守るべき旨を説くのが外務員であることからすれば、かかる外務員が再販売価格維持の先端を担当するものでないとすることを得ないものである。原告の引用する参考人戸野部富五郎(原告会社東京出張所市況調査主任)岡田正夫(同市況調査係)の陳述によつても、安売防止のため小売商を説得するのは、組合からの依頼によるものとしても、原告会社の行為としてなされているものである消息をうかがうに十分である。
(4)右外務員らの行為が組合にたのまれ外務員が自発的にした偶発的なもので原告の営業方針にもとずくものではないとの主張が事実にもとずかないこと右(3) に説明したところから明らかである。そして原告がかような外務員の制度をその主張の他の制度とともに-それだけのためではないとしても-その再販売価格の維持のためにも用いているものと認めるべきことは審決の説明するとおりであり、原告の再販売価格維持が原告の方針であることを否定せしめるものはない。
 (三)原告は審決は組合の協定価格が中間に介在する事実を軽視すると非難する。審決が組合の協定価格を軽視したかどうかはともかくとして、中間に協定価格の存するとの一事によつて原告の再販売価格の指示及び維持行為を軽視し得るものでなく、その四印の価格決定への因果関係を中断せしめるものでもないと解すべきことは審決がその第三法の適用四(二)において説明するとおりであり、右説明は肯認するに足りる。生産者たる原告と小売商の協同組合の利害が一致して原告の再販売価格が組合の協定価格となつた場合、組合員相互は協定価格が守られてその間に価格競争が回避されることはその欲するところであるが組合自体にはその協定価格維持の能力がなく原告の協力を必要とするほかないとするのであれば、同じく利害一致の結果といつても組合の価格決定には大幅な自由はなく、要するに原告の発表指示する価格を無視し得ないこととなるのはみやすい道理である。この程度の組合の力をも仮りに独自性と呼ぶとしてもその独自性の故に原告の再販売価格の指示及び維持行為の影響力を左右し得ないことは明らかである。
三、競争の実質的制限について
原告は、審決が東京都内の需要の七割近くをみたす四印の価格は全く同一となりその間に価格面の競争は全然抑圧されているとすることを攻撃する。しかしこの結果そのものは審決の挙示する証拠で被告の引用するものによつて争い得ない明白な事実として肯認するに足り、各印の再販売価格の維持にもかかわらずたまたま散発する二三廉売の事実によつては大勢を左右するものではない。そしてこの結果こそは実に原告の再販売価格の指示及び維持により東京都内におけるキッコーマン印の小売価格が斉一ならしめられていることによるものとするのが審決の立場であり、その正当と認めるべきこと上記説示したとおりである。そしてかかる事態が東京都内におけるしよう油の取引という一定の取引分野における競争を実質的に制限するものであることは多言をまたない。この点の原告の攻撃は失当である。 
四、排除措置について 
(一)原告は、審決が原告に対し再販売価格に関する限り口にすることすら禁止したのは予防措置としての正当な範囲を逸脱すると主張する。しかし再販売価格の決定は表示することを前提とするものであり、表示できない再販売価格は無意味である。そしていつたん表示される以上それは審決認定のような事情の下にある原告会社の指示する再販売価格として販売業者に対し、強い強制力を有することは従来の実情からおのずから理解し得べきところである。この再販売価格の指示がそれ自体違法であるかどうかは問うところでない。審決認定の如き原告会社の私的独占を排除し再び同様の方法による私的独占を防止するためには、同じ条件の下において考える限り、かかる再販売価格の表示それ自体を禁止することは必要な措置というべきである。所論は採用できない。
(二)本件が当初から東京都内における原告の私的独占を問題としたものであり、審決において認定された事実も東京都内における原告の私的独占にあることは明らかであるところ、審決がその主文において命じた排除措置は東京都内におけるものに限定されていないことは右主文自体から明らかである。この点は審決が第三法の適用五において説明するところによれば、もつぱら東京都内のしよう油取引の自由競争を回復せんがためであること明らかである。独占禁止法は公正取引委員会に同法違反の行為排除のために必要な措置を命じ得る権限を与えている。その命令は原則としてそれに必要なものに限定されるとともに必要である限りその内容に制限はないのである。そして審決が右の個所において示すとおり、原告はそのしよう油を全国一円にわたり遠近を問わず運賃生産者持ち同一の価格で販売しているから東京都以外について再販売価格の指示を認めればそれが従来の惰性により都内にも有効なるかの如く解されるおそれがあること、隣接県をはじめ他の地域に再販売価格の維持が行われるときはそれが都内に反映して販売業者を心理的に拘束するおそれがあること、ことに多年統制期間中に馴致された気風のため各販売業者に自主的に自己の販売価格を定めるべきものとする自覚に乏しいところでは右のおそれは大であるという事情の下では、原告の東京都内における価格支配による私的独占を排除するためには原告の再販売価格の指示及び維持を東京都内に限つて禁止するのでは不十分であり、これを都外にわたつて拡大することは、その止むを得ない必要な措置として是認するに足りる。これを必要ないものとする所論は採用できない。 
次に公正取引委員会が審判手続を経て事件を終結し審決をもつて排除措置を命ずるにあたつては、いかなる内容の排除措置を命ずるかについてあらかじめ被審人の意見弁解を徴すべき明文の規定は存しない。その審判の対象となつている事案について意見弁解の機会をもつ以上、その排除措置の内容についてまでその意見弁解をきく必要はなく、この点の被審人の利益の擁護はもつぱらその排除措置が当該違反行為の排除に必要なりや否の一線によるものと解するのを相当とする。従つて本件審決は手続規定に違反するとの原告の主張は理由がない。
以上の次第であるから原告の本訴請求は理由がないものとしてこれを棄却すべきであり、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。 

昭和32年12月25日

東京高等裁判所第三特別部
裁判長高等裁判所長官 安倍恕
判事 藤江忠二郎
判事 浜田潔夫
判事 猪俣幸一
判事 浅沼武

 



 

 


2023年01月17日

ゼミ討論会「選べるとしたら、理想の学歴それとも理想の見た目?」

 12月26日に、毎月慣例のゼミナール討論会を開催しました。2022年最後の討論会でもあります。今回のテーマは、選べるとしたら学歴と見た目のどちらを選ぶかについての討論です。シンプルに思われる論題ですが、両グループがほぼ半々に綺麗に分かれて白熱な舌戦を繰り広げたことから、今後就職を迎え、人生の選択を行わなければならない学生らにとっては、身近でありながら奥深いテーマであることを切に感じました。

 

理想の学歴を選ぶ 理想の見た目を選ぶ
(本田)高度な教育を受けるために重ねた努力、そしてその過程における経験は新たな人生のスタートを切る時に必ず効果を発揮すると思います。
また学問に勤しむことで得られる能力、知識は数知れずあり、潤滑なコミュニケーションやよりよい人間関係の構築において大いに役立つと考えたからです。 
(福田)理想の学歴は自分の努力次第で得られるかもしれないが、理想の見た目(顔、身長、体型)は努力では実現不可能だからです。
また、理想の見た目になることで自己肯定感が上がり、様々なことに挑戦できそうだからです。
(相田)学歴は一度獲得してしまえば何年たっても変わることがないからです。また、社会的信頼を得るために最も有効なものであると考えたからです。 (大曾根)人の第一印象において見た目が重要だから、相手に良い印象を与えやすいです。そのため交友関係が広がったり、上司や後輩、営業先の相手に好かれて仕事も上手く運ぶようになるからです。
(茂木)学歴は自らの将来の目標、理想に向かうにあたって自分自身が良し悪しを決める事であり、社会で生きる、自分の描く将来像に近付く上で最も必要なことだと考えたからです。 (高瀬)理想の学歴、および資格や専門知識などは、今後いくらでも得られるチャンスがあります。それに比べ、理想の見た目は一生得ることができないのです。また、見た目が良ければ相手に好印象を与えることが容易であることから、理想の見た目を選びます。
(加山)社会で生きていく中で、実力が最も重んじられる局面は多いのではないかと思います。そのため自分の実力を証明できる学歴は価値が高く、良い学歴を持っていればその分生きやすくなると考えるからです。
また、教養の深さの証明にもなるため、人として信頼される一要素にもなると思います。
(相葉)学歴は就職活動等の一部でしか使うことができず、しかも学歴を相手に伝えるという作業をしなくてはいけないが、見た目は仕事以外の私生活でも使うことができ、尚且つ見るだけで相手に伝えることができます。また、見た目が良ければ自分に自信をもつことができて学歴よりも役立つと考えるため見た目の方を選びます。
(佐藤)就職や人間関係の場合、その多くは長期的であり、広範囲である。そのため、理想の見た目を選択した時、第一印象という観点から短期的に考えれば理想の学歴は不利かもしれないです。しかし、理想の学歴を長期的に考えると第一印象では分からないようなあらゆる場面で豊富な知識や高い能力を発揮できる場面が多いと思われます。このような外見と内面のギャップは相手に好印象を与えると考えます。このことから、理想の学歴を選択します。 (本橋)学歴は、自ら言わなければ他人には伝わらないのに対し、見た目は容易に伝わります。また、見た目は一生使うため、良いに越したことはありません。理想の学歴があるからと言って仕事ができるとはかぎりません。
(尾澤)私は生きる上で見た目はもちろん大切だと思いますが、社会に求められている要因として「学力」が求められることが多いと考えました。それゆえに、私は社会で安定して生活するためには、理想な学歴がある方が良いと考えました。
(勝山)理想の見た目が手に入れば、モテるし好きな人と結ばれる確率が高くなると思います。モテたり、好きな人と結ばれたら人生が楽しくなると思います。人生の目的は楽しく生きることだと思うから、学歴よりも見た目の方が大事だと考えます。
(鈴木)私たちが後に迎える就職において、学歴が良いというのは非常に大きなアドバンテージであると考えます。見た目が良いというのはとても魅力的だが、見た目が良いだけで将来、ご飯を食べていけるのはとても少数であると考えるため、理想の学歴がある方が良いと考えます。 (吉野)理想の見た目があれば、周りから人気者になることから、人脈が広がります。そして、チャンスが増えると思います。1つのことではなく、多様な挑戦をすることができるようになり、人生が豊かになると考えます。
  (原田) 理想の見た目になれれば、自分に自信がつき表情や行動が前向きになります。それにともない第一印象が良くなることや自分磨きや人付き合いが楽しくなり人生が豊かになると考えました。
 また、見た目と学歴をどちらもただの自分の為の飾りと考えた時に見た目の方がひと目でわかり華やかだと思ったからです。

 

 



 

 


2023年01月09日

アメリカ留学

 ゼミナールの応援を受けながらイギリスへ渡ったゼミ生の春口くんは、アメリカ留学から帰ってきました。
 楽しい思い出をたくさん作ることができたようで良かったです。

 

 



 

 


2022年12月27日

今週の審判決報告(20221219)

 12月19日(月曜日)のゼミナールにおいて、本橋くんより農林中金私的独占事件(公正取引委員会昭和31年7月28日審判審決)の報告が行われました。審決文は本ページの最後で閲読できます。

 

 


審判審決

雪印乳業(株)ほか3名に対する件

独禁法19条(旧一般指定1項・旧一般指定8項) 

昭和29年(判)第4号

審判審決

札幌市苗穂町36番地
被審人 雪印乳業株式会社
右代表者 取締役社長 佐藤 貢
札幌市北3条西1丁目2番地
被審人 北海道バター株式会社
右代表者 代表取締役 鈴木 伝
右両名代理人
弁護士 田中 治彦
弁護士 環 昌一
東京都千代田区丸ノ内2丁目3番地
被審人 農林中央金庫
右代表者 理事長 湯河 元威
札幌市北4条西1丁目1番地
被審人 北海道信用農業協同組 合連合会
右代表者 会長 岡村 文四郎
弁護士 大塚 喜一郎弁護士 長野 潔 

公正取引委員会は、右被審人らの行為が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下私的独占禁止法という。)に違反するということで昭和29年11月22日審判開始決定を行い、これに対し昭和29年12月25日雪印乳業株式会社および北海道バター株式会社の代理人らから、同日農林中央金庫および北海道信用農業協同組合連合会の代理人らから、それぞれ答弁書が提出された。
当委員会は、私的独占禁止法第51条の2および公正取引委員会の審査および審判に関する規則第26条第1項により昭和29年12月15日総理府事務官石井幸一、同阿久津実、同吉田文剛を本件担当審判官に指定し、同審判官らは石井審判官を首席として12月25日以降翌年6月16日まで9回にわたり審判を行つたが、当委員会は昭和30年7月18日付決定により石井幸一の指定を取り消し、阿久津実を首席として吉田文剛との合議をもつて審判手続を行うことを命じたので、右両名は手続を更新し、さらに8月23日まで8回の審判を重ねた。その間、審判開始決定書は昭和29年12月24日および昭和30年5月11日の両度の決定により補充され、被審人農林中央金庫および同北海道信用農業協同組合連合会の代理人らから昭和29年12月29日、昭和30年1月17日、同年2月2日および同年同月22日、被審人農林中央金庫の代理人らから昭和30年7月15日、被審人雪印乳業株式会社および同北海道バター株式会社の代理人らから昭和30年2月2日、また右四被審人の代理人らから昭和30年5月27日および同年6月15日準備書面が提出され、なお昭和30年11月30日被審人農林中央金庫および同北海道信用農業協同組合連合会の代理人らから、同年12月12日両会社の代理人らから、それぞれ最終陳述書が提出された。
右手続の結果に基き阿久津、吉田両審判官は昭和31年3月30日審決案を当委員会に提出し、その騰本は同年4月2日各被審人に送達された。これに対して同年4月16日被審人農林中央金庫ならびに同北海道信用農業協同組合連合会の代理人らおよび両会社の代理人らからそれぞれ異議申立書が提出された。
当委員会は、本件事件記録および右異議申立書に基いて審決案を調査した結果、次のとおり審決する。
主文
一、被審人雪印乳業株式会社、同北海道バター株式会社は、被審人農林中央金庫および同北海道信用農業協同組合連合会と通謀しその他いかなる方法をもつてするかを問わず、右両会社以外の乳業者に直接または間接に原料乳を販売する農業協同組合またはその組合員に農林中央金庫から乳牛導入資金を融資されないようにしてはならない。
二、被審人農林中央金庫は、農業協同組合に乳牛導入資金の貸付をなすに当り、生産乳を直接または間接に雪印乳業株式会社または北海道バター株式会社に販売することを条件としてこれをしてはならず、また直接または間接に生産乳を両会社に販売しないことを理由として融資を拒絶しまたは差別的取扱をしてはならない。
三、被審人北海道信用農業協同組合連合会は、乳牛導入資金を被審人農林中央金庫から借り受ける農業協同組合のためにその債務を保証するに当り、生産乳を直接または間接に雪印乳業株式会社または北海道バター株式会社に販売することを条件として保証してはならない。
四、被審人雪印乳業株式会社、同北海道バター株式会社は、農林中央金庫に対する昭和28年度および同29年度乳牛導入資金の債務を保証するにつき農業協同組合として差し入れさせた念書中両会社の保証人としての利益を確保するために相当と認められる限度をこえて生産乳の販路を制限する一切の条項を無効ならしめるに必要かつ適切な措置をすみやかにとり、その経過を遅滞なく当委員会に報告しなければならない。
五、被審人農林中央金庫は、前記農業協同組合の念書または農林中央金庫と雪印乳業株式会社、北海道バター株式会社および関係農業協同組合との了解のいかんにかかわらず、乳牛導入資金の債務者たる農業協同組合または同資金により乳牛を購入した組合員もしくは保証人が右両会社の承諾なく両会社以外の者に生産乳を販売しても債務者たる農業協同組合に対し資金の繰上償還を請求してはならない。ただし、諸般の情況からみて自己の債権を確保するために他の手段がないと認められるときはこの限りでない。



事実
第一、一、被審人雪印乳業株式会社(以下雪印乳業という。)および被審人北海道バター株式会社(以下北海道バターという。)は、それぞれ肩書地に本店を置き、牛乳の処理ならびに乳製品の製造、販売等を営んでいるが、両社は、大正の末年北海道の酪農家有志により設立され北海道における酪農の普及発達に多大の寄与をした北海道製酪販売組合聯合会(通称酪聯)が戦時中の株式会社北海道興農公社に発展し、更に終戦1年後北海道酪農協同株式会社に改組され、当時北海道においては乳業をほとんど完全に独占していたところ、過度経済力集中排除法(昭和22年法律第207号)に基き昭和25年1月20日付持株式会社整理委員会の決定指令により分割され二社となつたもので、現時においても両会社の集乳量は北海道の全生産量の前者が50パーセント、後者が20数パーセント、合せて約80パーセントを占めており、両会社は集乳面においては、特に乳価の決定等につき常に協同の歩調をとつている。
二、被審人農林中央金庫(以下農林中金という。)は、肩書地に主たる事務所を置き、農林漁業関係の所属団体に対する金融を行うことを主たる業務とするものであるが、雪印乳業の株式の約4パーセント、北海道バターの株式の約2パーセントを所有し、また両社に対し多額の非所属団体融資を行つており、
被審人北海道信用農業協同組合連合会(以下北信連という。)は、肩書地に主たる事務所を置き、会員に対する金融業務を行うものであるが、単位農業協同組合(以下単協という。)が農林中金から融資を受ける場合には常に北信連の保証を必要とするのみならず、北信連は農林中金に対する融資申請の窓口ともなり、農林中金のために単協の信用その他の下調べをするのが常であつて、したがつて農林中金の融資の許否は少からず北信連の意見によつて左右される。しかして北信連の会長岡村文四郎は雪印乳業の取締役を、その副会長三井武光は最近まで北海道バターの代表取締役社長をそれぞれ兼ねており、なお北信連は北海道バターの株式の約22パーセントを所有している。
第二、一、雪印乳業および北海道バターは、昭和28年春相共にそれぞれ自社工場周辺の有畜農家に乳牛の飼育頭数を増加させるための融資をあつせんすることにより、酪農経営の安定と工場の集乳経費の軽減とを意図し、農林中金および北信連の了解を得て農林中金の資金約10億円をもつて三ヵ年間に乳牛(搾乳牛または妊娠牛)約1万頭を両会社地区に導入する計画を立て、同年6月中旬それぞれ「昭和28年-30年度乳牛増殖、乳量増産対策要綱」(別紙一の一および二の一、以下「要綱」という。)およびこれに基き融資を受ける各単協が差し入れるべき念書(別紙一の二および二の二)の形式を決定し、本計画の実行に入つた。
二、北海道においては、その気候、風土等の環境が酪農経営に適しているのみならず、数年に一度は必ず起るといわれる冷害の対策等のためにも、酪農業をあわせ営むことが一般農家にとつても有利であることはあまねく認められているが、現実には道内における酪農業の普及率はさまで高くないので一般農民の間にも酪農業に対する熱意はきわめて盛んであり、また現に酪農を営んでいる者も、最も経済的な安定した経営のためには、最低4、5頭の乳牛を保有することが必要であるのに、大部分はこの水準に達していないので、乳牛導入資金の提供は農民にとつてはすこぶる魅力がある。しかも購入される乳牛の供給地は、乳牛価格その他の点からして道内に限られるので、もしも一部に資金が供給され他に供給されないときは、資金を受け得ない地区はすでに有する乳牛を引き抜かれるおそれさえあるので、乳牛導入資金のあつせんは乳業者が農民を自社にひきつける最も有力な手段に供しうるものである。
しかるに多額の乳牛導入資金を供給しうる道内での唯一の機関であるところの農林中金、および北信連は、昭和28年8月以降各単協に乳牛導入資金を供給するに当り、雪印乳業、北海道バターと完全な了解の下に、(一)もつぱら前記「要綱」により、両会社に生産乳を供給することを条件として両会社の保証を受ける単協または組合員のためにのみ融資し、他の乳業者と取引する単協または組合員のための申請はこれを取り上げず、(二)両会社以外の乳業者の、これに原料乳を供給する単協または組合員に対する融資の保証の申出はこれを認めず、(三)両会社とその他の乳業者との集乳圏の近接交錯している地区においては両会社と取引する者に他の地区より特に厚く本資金を融資し、また(四)雪印乳業は現に他の乳業者と取引している農民を本資金あつせんを条件に自己と取引するよう誘引し、(五)農林中金の係員および北信連の役員は、組合員が両会社以外の乳業者と取引する単協は単に乳牛導入資金のみならず、その他の営農資金の融通についても不利に取り扱われるべき旨を示唆して農民の間に多大の不安の念を起させる等、ひたすら本資金を両会社の利便をはかり他の乳業者の事業活動を抑圧するように使用し、ために両会社以外の乳業会社は所要の集乳を確保するに多大の不利をこうむり、この状況が逐年反復されるにおいては事業の継続すら困難となるおそれあるに至つた。
なお右のほか、有畜農家創設特別措置法(昭和28年法律第260号)に基く家畜導入資金についても農林中金の係員は他の乳業会社と取引する協同組合に対する割当を阻止した。以上の事例を具体的に示せば左のとおりである。
(一)遠軽地区における差別的融資 本地区は遠軽町(網走支庁紋別郡)に前記過度経済力集中排除法に基く決定指令により森永乳業株式会社(以下森永乳業という。)に譲渡された同社の遠軽工場があり、周辺に中湧別工場その他の雪印乳業の工場があるため両社間の集乳競争の殊に激じんな地区であるが、右森永乳業への工場の移譲に伴い地区の全部または一部が森永乳業と生産乳取引を開始するに至つた上湧別町農業協同組合、湧別町芭露農業協同組合、下湧別村湧別農業協同組合、遠軽町農業協同組合、佐呂間町農業協同組合、上佐呂間農業協同組合、生田原農業協同組合、安国村農業協同組合(融資申請後生田原農業協同組合に吸収合併された。)、白滝村農業協同組合等の各単協(その一部の組合員が森永乳業遠軽工場と取引している単協においては森永乳業取引関係者の分について)は、昭和28年8月ごろから隣接両会社地区に乳牛導入資金の割当が行われはじめたので、同年9月ごろから翌年初めにかけ乳牛導入資金(昭和28年度分)の借入のため、農林中金および北信連と数回にわたつて交渉を重ね、この間昭和28年11月ごろから農林中金に対してそれぞれ融資申請書(申請額の総計3100余万円)を提出し、同時に森永乳業北海道事務所長浪岡弥一郎も昭和28年10月30日および12月12日の2回にわたり農林中金札幌支所長永井国男と会見し、これら単協の債務は同社が保証すべきことを申し出て融資を懇請したが、いずれも乳牛導入資金は主として雪印乳業、北海道バター両会社の経営合理化を図る趣旨のもので他の乳業者と取引している単協には融資する筋合のものでないとて拒否された。このためこれら単協では地区内の乳牛が両会社地区に移出されるような事態も起つたので、同年10月ごろから翌年3月ごろにかけて森永乳業から乳牛導入資金を借り入れるに至つた。もつとも、この当時からほとんど1年の長期間を経た後当委員会の本件審査が進み審判開始決定の行われる直前、関係者が農林中金、北信連と数次にわたる交渉の結果とうてい見込なしとあきらめていた際昭和29年10月30日に至り突然右各組合のうち、上湧別町、生田原の両農業協同組合の申請に対して、農林中金から前者は200万円(申請額通り)、後者は73万5000円(申請額の約半額)の融資決定をした旨の通知があつたが、この決定たるや、生田原農業協同組合にあつては北信連において書類不備として注意されたままの融資申請書に対するものであり、上湧別町農業協同組合にあつては農林中金の内規によりその金額は本所の決裁を要するものであるのを事後承認を受くることとして札幌支所限りで生田原と同日通知を発する等急きよなされたものであり、これらは当時の農林中金の正常な融資の例とみることを得ない。
他方右上湧別町農業協同組合は、組合員の約4分の1が森永乳業遠軽工場地区に属し、残りが雪印乳業中湧別工場地区に属するが、同組合は雪印乳業地区の分の昭和28年度乳牛導入資金470万円の融資を昭和28年9月11日に農林中金に申請し、はやくも同年11月2日に農林中金から申請金額通りの融資をうけている。
また、雪印乳業は、昭和28年8月末森永乳業が雪印乳業の集乳地区であつた紋別郡沼ノ上地区の一部において集乳取引を開始するや、あたかもこれに対抗するがごとく、前記湧別町芭露農業協同組合、生田原農業協同組合、若佐村農業協同組合その他の数農業協同組合を、乳牛導入資金をあつせんすることを条件に従来森永乳業と取引していた組合員に自社と取引するよう勧誘した。その結果湧別町芭露農業協同組合の計呂地地区酪農民の1部が雪印乳業(中湧別工場)に取引先を変更することとなるや、雪印乳業は、湧別町芭露農業協同組合に交渉して昭和28年10月13日農林中金宛計呂地地区分(雪印乳業と取引することとなつた者の分)として、昭和28年度乳牛導入資金30頭分300万円の融資申請書を提出させたが、同年11月14日には農林中金から融資決定通知(申請金額通り)があつた。右通知書には「本資金は雪印乳業の申添えもあり、貴地区内の乳業事情に鑑みお取計い申上げますが、対象地区内牛乳はあげて会社に出荷するよう恒久的な指導対策を講じて下さい」との付記がなされている。
右計呂地地区分昭和28年度の融資額300万円は他の地区に比しすこぶる優遇されている額であることは雪印乳業中湧別工場当事者もこれを認めている。なお、森永乳業の遠軽工場と最も近接せる雪印乳業中湧別工場の取引関係地区の乳量比率による乳牛割当頭数は75頭であるにかかわらず同地区には昭和28年度分として147頭分、昭和29年度分として134頭分の乳牛導入資金が融資されている。
(二)北見地区における他社との取引妨害 網走支庁常呂郡訓子府町の訓子府町農業協同組合は、従来所属酪農民の全部が北海道バター北見工場と取引してきたがかねてから旧酪連系会社の運営方式にあきたらず生乳の取引先変更を考究中であつたところ、たまたま昭和29年初めごろ北信連、北海道販売農業協同組合連合会(以下北販連という。)、北海道指導農業協同組合連合会、両会社および酪農協会によつて構成されている「5日会」が「北海道酪農基本要項案」を作成して関係者に配布したが、その内容に両会社を農協連合会化し道内の生産乳は農協で集乳し北販連を通じて両会社に販売する方針が含まれていたため一部酪農民をいたく刺激し(その後本「要項」においては両会社に販売することは削除されている。)、訓子府町農業協同組合の酪農民の間にもこの案は酪農民を会社に縛りつけ両会社による集乳の独占を企図するものであるとの批判が起り、その結果同年4月ごろから取引先を森永乳業に切りかえ同社と同組合との間で団体契約を締結することとした。これに対して既に昭和28年度の北海道バター保証にかかる乳牛導入資金156万円を同組合に融資していた農林中金は5月22日文書をもつて森永乳業との契約締結は系統金融機関として深じんなる関心を有しそれが事実ならばはなはだ遺憾である旨を表明し、その経緯について報告を求めた。
更にその後森永乳業との契約締結に反対する一部の酪農民およびこの契約は農協の上部系統機関からの不信を招くであろうとのうわさを心配した多数の一般農民(同組合は約千名の組合員中約300名が酪農民である。)の要求によつて6月6日同組合の臨時総会が開かれ、その席上農林中金札幌支所の農林第二課長滝脇真円が中金の意向として同組合が北海道バターとの取引をやめて森永乳業に牛乳を出荷する場合には営農資金、冷害資金等の融資についても影響があるであろうという趣旨のことを示唆したため総会は一時大混乱におちいつたが、その後滝脇が前言を取り消したため会場は秩序を回復し、この総会は、農民大会として決議した森永乳業との契約締結等の件を可決した。
またこのころ北信連の副会長にして北海道バターの社長である三井武光も、同組合の北海道バター側酪農民の集まりである訓子府町酪農革新会結成会の席上で農協の幹部が森永を誘致することは遺憾であり、営農資金は一般市中銀行では貸し出されていないのであるから森永乳業との提携はよく考えるべきであるという趣旨を述べた。
かくのごとく訓子府町農業協同組合の原乳取引の問題は同組合の酪農民のみでなく一般農民の間にも動揺を与えたが、更にこの問題は全道の農業協同組合のあり方について大きな波紋を生ぜしめた。
なお農林中金の訓子府町農業協同組合の300名に近い酪農民に対する昭和28年度乳牛導入資金の割当は前述のごとく20頭分156万円であつたのに、昭和29年度は同組合の全酪農民中のわずか50名足らずの北海道バター出荷者の分として30頭分255万円が融資されている。これまた他社との競争地区には不相応に多額の資金を供給している一例である。
(三)斜網地区における原乳生産農家引止 網走支庁斜里郡の斜里町、上斜里村および小清水各農業協同組合は、従来雪印乳業網走工場と生産乳取引を行つていたが、これら単協の地区は同工場から相当離れている(たとえば斜里町は網走工場から約40キロの距離にある。)ため雪印乳業の指導援助もあまり積極的でなく、その生産乳は雪印乳業により最低段階の乳価で購入され、乳牛の頭数も次等に減少しつつあつた。しかるに、三井農林株式会社(以下三井農林という。)がこれら単協から1日最低20石程度の生産乳を受け入れ処理する予定で昭和28年8月ごろ新たに斜里町に工場を設置するや(操業開始は同年12月ごろ)、雪印乳業はにわかに従来の態度を改め、同工場から遠隔の地であるにもかかわらず乳牛導入資金(昭和28年度)を斜里町農業協同組合に15頭分、上斜里村農業協同組合に10頭分、小清水農業協同組合に20頭分割りあてる予定をなし自社との取引を継続するようこれらの組合に働きかけ、その結果斜里町農業協同組合の大部分、上斜里村農業協同組合、小清水農業協同組合の全部が三井農林への生産乳出荷をとりやめるに至り、このため三井農林斜里工場では当初予定集乳量の半量程度しか集乳できず事業経営が困難となるに至つた。三井農林斜里事業所長大鐱④脇噂蠅料犇罰・呂棒茲世繊⊂赦・8年10月10日農林中金札幌支所黒田次長と会見し、三井農林斜里工場と取引する者に対しても乳牛導入資金を融資するよう懇請したところ、同次長は農林中金としては現在のところ雪印乳業と北海道バター両会社取引関係地区だけに融資しているから三井農林取引関係者には融資できない、しかしもし三井農林が雪印乳業と提携し、三井農林で使用する原料乳を全部雪印乳業から購入するか、または三井農林の工場の製品を全部雪印乳業を通して販売するかすれば考慮しないこともないという趣旨を答え、ために自社の取引関係者に対する昭和28年度乳牛導入資金の融資あつせんを断念した。同人は昭和29年7月10日さらに昭和29年度乳牛導入資金の融資について永井支所長と折衝したが、永井支所長は農林中金は明治乳業および森永乳業の関係には本資金の貸出をしていない、したがつて三井農林関係だけに融資することは右二社と異なる何かの特殊な事由でもない限り困難であるという趣旨を答えたので(なお、このとき大釮・崙・軻各・餠發蝋・貅・佞了・虧・戮鮃發瓩襪燭瓩僕算颪気譴襪箸いΔ海箸任△襪砲・・錣蕕此⊆侘つ・清閥・荏塙臙篭菘傔祕・・箸旅・譴・蕷鵑・イ譴討い訝楼茲砲泙罵算颪気譟△燭瓩忙旭翡昔咾蝋・譴料犇箸砲弔㍍很薪・之發鮗・曳鷯錣忘い弔討い襦彁櫃鯱辰靴燭里紡个掘・憤羯拿蠶垢呂修里海箸禄淑・錣・弔討い觧歸悊┐討い襦・紡莎釮肋赦・9年度分についても三井農林取引関係者のために融資あつせんを断念せざるを得なかつた。
なお、右の各単協に対して昭和28年末ごろ、農林中金から雪印乳業の割当頭数分通りの乳牛導入資金が融資されている。(四)帯広地区その他における生産乳取引の拘束 明治乳業株式会社(以下明治乳業という。)は、帯広に工場を開設し、昭和29年1月初より操業を開始したが当時既に同工場周辺の各単協はおおむね両会社いずれかの保証の下に乳牛導入資金を農林中金から受けており、この融資は結果においてそれぞれ保証会社との取引継続が条件となつていたため(なおたとえば、農林中金の音更村(行政地区の変更で現在は音更町)農業協同組合にあてた昭和28年10月27日付雪印乳業保証の乳牛導入資金融資決定通知書には「組合員の生産牛乳はあげて系統会社である雪印乳業へ出荷するよう強力な御指導を願いたい」旨が付記してある。)、その集乳活動は困難をきわめた。同社の工場長竹内栄一は雪印乳業の帯広工場は戦前明治乳業の系統会社の工場であつたので、それらの旧縁をたどつて勧誘につとめた結果辛うじて従来雪印乳業帯広工場その他と取引を行つていた約16単協の一部の組合員との生産乳の取引を開始することはできたが、昭和29年6月ごろまでは、その1日の集乳量は約10石という状態であつた。(その後同年7月ごろ宝乳業株式会社の業務を引き継いだ関係もあり1日の集乳量は30石前後に増加した。)一方同社の北海道事務所長潮田辰次も昭和29年5月初めごろ、農林中金の永井支所長を訪れ、同社と取引する単協に対しても乳牛導入資金の融資をするよう要望すると共に、既に融資を受けている両会社取引関係者が新たに明治乳業と取引する場合には明治乳業が両会社に代つて保証することとしたい旨を申し入れたのに対し、同支所長は、森永乳業に対する場合と同じく乳牛導入資金は雪印乳業、北海道バター両会社の援助という意味をもつており、農林中金としては他の乳業者の地盤に融資することは考えていない旨を答え、肩替りを認めず右の要求を拒否した。よつて明治乳業は約800万円の資金を自ら工面して、あるいは奨励金として与えまたは乳牛導入資金として貸し付けることによつて原乳生産者をつなぎ止めるのほかなかつた。
次に、雪印乳業は、昭和29年4月19日社長名をもつて関係単協の組合長宛、
原料乳争奪戦の酣なる現況下において融資を受けた組合または組合員中契約に反して原料乳を他社に供給される向が発生しつつあることであつて、同社においても詳細なる状況を取りまとめてその筋に連絡することになつておるが、他社に原料乳を供給する場合には状況により該資金の一部もしくは全部の繰上償還を求められるのみならず、今後の融資査定においても厳に之を除外する方針がとられるべきにつき、万一にも貴組合員中該資金導入者にして他社に原料乳を供給するむきが出来た場合は、さきに組合長等の連署差し入れた念書等も再確認させる意味で該当者に説明し、原料乳はすみやかに同社集荷に復帰するよう勧告されたき
旨の強硬な文書を送付した。その後たとえば三川地区(空知支庁夕張郡)においては、明治乳業と取引を開始した由仁町酪農業協同組合の該当者12名中4名が雪印乳業に復帰し、追分町農業協同組合の該当者3名中一名が借受金を同組合に返還することとなつた。
(五)有畜農家創設特別措置法資金の割当より今金町酪農業協同組合の排除 上記酪農経営の安定(すでに乳牛を有する農家を対象とし、保有頭数を経済単位まで高めること)を目的とする両会社「要綱」の乳牛導入資金とやや趣を異にして全国の無畜農家解消を目的とする有畜農家創設特別措置法(昭和28年法律第260号、同年9月1日公布施行)に基く資金の各農業協同組合に対する割当は都道府県知事が一定の計画および基準に従つてこれを行うものであるが、その資金の出所は主として農林中金であつて、したがつてその意に反して実施することはできないものである。
よつて、北海道庁においては、前年農林次官通達(昭和27年6月6日27畜第1806号)にかかる有畜農家創設要綱に基き同性質の資金を配分した際独自に割当を定めて各支庁を通じて発表したところ農林中金の審査によりこの割当の中から削除された単協が多数生じたためこれらの単協には無用の手数と費用を掛けかつは北海道庁の権威にも関するきらいもあつた経験にかえりみ、昭和28年6月あらかじめ前記措置法による資金の割当案を作成するに当つて同庁ではその原案を農林中金の当局者に示して意見を求めたところ、農林中金札幌支所の農林第2課長滝脇真円は今金町酪農業協同組合(檜山支庁瀬棚郡今金町)に30頭分割り当てたのを不適当とした。よつて同庁ではその言のままに今金を削り、その分の資金は同じく檜山管内の厚沢郡に振り向けた。このことについて今金町酪農業協同組合組合長小岩隆一が友人の北海道森林組合連合会理事加藤五郎を介して事情を確かめたところ、農林中金が今金に反対した理由は、同組合が前に自ら製酪施設を所有せんとして所要資金を農林漁業金融公庫から借入方農林中金に申し込んだところ農林中金はこの企図を好まず手続を進めなかつたので、同組合は北海道庁のあつせんにより北海道銀行を通じて農林漁業金融公庫から470万円の資金を借り入れて処理工場を設置したことおよび同組合は組合員の生産乳の1部を前記自家の工場で処理して、大部分の原乳は明治乳業に販売し、製品の1部は森永乳業に販売していることであることが判明した。
なお、明治乳業の今金工場は前記過度経済力集中排除法に基く決定指令により、附属集乳施設と共に同社に売却されたもので今金町酪農業協同組合が同社と取引するに至つたのは右決定指令の趣旨に従つたものである。
三、以上主として昭和28年度の融資状況を述べたが、昭和29年度はさらに一層両会社の原乳生産者との排他的取引を確実ならしめるため、昭和29年6月両会社は農林中金および北信連と協議して(一)資金借受組合の生産乳は全て保証会社に販売させること、(二)単協から保証会社に差し入れさせる念書に生産乳の会社販売に違反した場合には繰上償還させることを規定すること、(三)北信連は以上の条件を保証条件とすることを決定し、この趣旨に従つて両会社は「要綱」に「会社の信用保証により資金を借入れ乳牛を購入したる者は借入資金の返済が完了するまでは借入れにより購入した乳牛の分のみならずその人の経営内における生産牛乳全量(自家消費量を除く)を会社に販売することを確約する」との規定を加え、また「要綱」に基いて単協が保証会社に差し入れる念書に「若し当組合が貴社の承諾を得ずして第三者と牛乳の取引契約をなし、若しくはこの資金により乳牛を購入した組合員及び保証人が貴社の承諾を得ずして第三者に牛乳を販売したる時、債権者若しくは貴社よりその全額又は一部の返還要求ありたる場合は異議なく之に応ずる。」旨を追加規定し、北信連は、昭和29年度の融資保証に当り、単協あて「会社保証による乳牛導入資金の取扱い並に代金決済要領について」と題する文書において「本資金の借入農家および保証人はその経営内における生産牛乳を組合へ、組合は会社へ販売することが保証条件」である旨を記載し、単協または組合員の生産乳取引に対する拘束を強化しかつその範囲を拡げることとなつた。
しかして、右の改正「要綱」「念書」等に基く昭和29年度分乳牛導入資金融資の状況をみると、
昭和29年6月、両会社はそれぞれ自己と取引する各単協に乳牛導入資金借入希望頭数を申し出させた上、両会社の導入計画に基いて各単協別に割当を行い、その割当案を北信連、農林中金に回付して両者の査定をうけ右の各単協別割当頭数は8月中旬ごろまでに北信連または両会社から各単協に通知された。たとえば、北信連北見支所は昭和29年8月4日付文書をもつて、昭和29年度分融資が北信連、農林中金および両会社協議の結果内定された旨を管内各関係単協に通知しており、また雪印乳業網走工場は昭和29年8月11日付文書をもつて、昭和29年度の融資については、農林中金、北信連等と折衝していたが、このたび決定をみた旨を管内各関係単協に通知している。
右の割当頭数内定に基き関係各単協では、昭和29年9月ごろから農林中金あての融資申請書を北信連に提出したが、同申請書には必要添付書類として昭和29年6月改正の「要綱」およびそれに基いて単協から会社に差し入れた「念書」の写ならびにその「念書」を会社に差し入れることについての審議過程を明らかにした組合理事会議事録抄本等が添付されている。
かくして、この前後より資金借受予定者のうちには前年度の例により融資が確実であるとして乳牛の購入を開始したものもあるが、本件が当委員会の審査、審判の対象となつたので農林中金においては手続を一時見合わせるに至り、このため既に乳牛を購入した資金借受予定者は北信連その他から農林中金の融資が行われるまでのつなぎ資金の融資を受け、その後昭和30年初めごろに至りはじめて農林中金からそれらの者に対する貸出が開始された。
四、しかるに、以上のような乳牛導入資金の融資方法が単協、酪農民等の間で問題とされ、北海道議会、国会での問題ともなり、また当委員会の審査、審判が開始されるや、昭和30年2月ごろ農林中金および北信連は乳牛導入資金の融資につき会社保証に替えて北海道経済農業協同組合連合会(以下北経連という。)への委託販売すなわち生産乳を農家から単協へ、さらに北経連へ販売する方式を条件とすることとし、その旨を両会社に申し入れたので、両会社は同年3月ごろ「要綱」をさらに改正し、同資金の借入につき会社保証制度を廃止し利子補給を中心とすることに変更を加えた。
また前出農林中金永井札幌支所長は、昭和30年3月初め札幌市で開かれた北見地区関係農業協同組合長会議において生産乳の販売権をもつ単協に対しては公平に融資する旨を明らかにし、昭和30年5月ごろから昭和29年度分融資を斜里町農業協同組合、湧別町芭露農業協同組合、下湧別村湧別農業協同組合、佐呂間町農業協同組合、若佐村農業協同組合等の両会社以外の乳業者と取引している地区に対しても一部実施している。
なお、農林中金札幌支所は昭和30年10月初めごろに至り「昭和30年度乳牛導入資金貸出取扱要領」を定めたが、それによれば「貸出(転貸)対象農家」の項においては「生産牛乳の全てを農業協合組合に販売委託すること」とし、それ以上に販売先を限定していないが、貸出注意事項として「組合は原則として北経連と牛乳の委託販売契約を締結すること」が記されているほか、この取扱要領に基き単協が農林中金に差し出す念証は、販売先が北経連の場合と乳業会社の場合とに区別され、北経連の場合の念証には「本資金の転貸先を含む当組合員生産乳の当組合と北経連との販売委託契約を貴金庫ならびに北信連の承諾なく、当組合の都合にて解約したときは、本資金は直ちに全額繰上償還する」旨の条項がそう入されている。
右に引用した「取扱要領」ならびに貸出注意事項中の字句は、現実には両会社以外と取引する農家またはその組合は北経連に販売を委託していないのでなおこれらの業者を融資の対象から排除するよう運用される余地絶無にあらざるところ、農林省農林経済局長は、昭和30年10月27日北海道知事あて通達(同日付その通達の内容を農林中金あて通知)において「……一般に農協の系統利用が恰も独禁法に抵触するがごとき印象を受けているが、事実そのような事はなく、公正取引委員会においても農協の系統利用を否定するものでなく……過去においては北海道における乳牛の導入に関し、農林中金が個々の会社との間において対策要綱を作成し、これに基いて乳牛導入資金の貸付を行つてきたが……今後は道庁において道全体の綜合的酪農振興方針に立脚して樹立された乳牛導入計画に基き、有効適切な乳牛導入資金が系統金融機関から円滑に融通せられるよう、農林中金等と充分協議の上よろしく措置」するよう要望すると共に、右取扱要領中問題のある点について、農林中金と打合せの上
一、要領貸出注意事項に「組合は原則として北経連と牛乳の委託販売契約を締結すること」となつているが「北経連以外(地区連等)に販売することやむを得ないものと認められる組合」についてはこの限りでない。
二、要領添付念証中「本資金の転貸先を含む当組合員生産乳の当組合と北経連との販売委託契約を貴金庫ならびに北信連の承諾なく、当組合の都合にて解約したときは本資金は直ちに全額繰上償還すること」とあるが、これは金融機関の債権確保の規定であり「債権確保上支障がなくかつ北経連以外に販売することがやむを得ないものと認められる組合については販売先の変更を承諾す」べきである。
と解釈を一定した次第を通知し、その旨末端まで徹底させるよう依頼している。



証拠
前記事実第一は、
一の末尾の「両会社は集乳に関し特に乳価については常に協同の歩調をとつている」という点が参考人山岸六郎、同森谷武繁の審判廷における各陳述により認められ、
二の「単位農業協同組合が農林中金から融資を受ける場合には常に北信連の保証を必要とするのみならず、北信連は農林中金に対する融資申請の窓口ともなり、農林中金のために単協の信用その他の下調べをするのが常であつて、従つて農林中金の融資の拒否は少からず北信連の意見によつて左右される」という点が参考人田下健治、同竹浪秀明、同金房欣吾の審判廷における各陳述および領第10号証(北信連定款)によつて認められるほか、被審人らの認めて争わぬところであり、
事実第二の一は、
参考人山岸六郎、同本田五郎、同永井国男、同沼部園春、同潮田辰次、同浪岡弥一郎、同昌谷孝、同加地謙三の審判廷における各陳述、査第1号証(雪印乳業昭和28年―30年度の乳牛増殖、乳量増産対策要綱、念書等)、査第3号証(同上北海道バター分)、査第5号証(永井国男の供述調書)、査第9号証(昭和28年7月25日付雪印乳業から農業協同組合長あて「会社保証による乳牛導入資金借入申込書について」と題する文書写)、査第12号証(北信連より農林中金札幌支所あて文書)、査第13号証(農林中金札幌支所、「雪印保証乳牛導入資金について」と題する文書)、査第26号証(青木耕栄の供述聴取報告書)、弁甲第10号証(昭和28年7月30日付農林中金札幌支所長から本所審査部長あて「雪印乳業並に北海道バター会社債務保証による乳牛導入資金について」と題する文書写)、弁丙第1号証の(二)(雪印乳業、昭和28年度―30年度乳牛増殖、乳量増産対策)、同号証の(三)(会社の行う自昭和28年度至昭和30年度、乳牛増殖、乳量増産対策)、弁丙第2号証(雪印乳業稟議書)、弁丙第7号証(雪印乳業、酪農委員会規約)、弁丙第8号証の(一)(雪印乳業、第8回工場委員長会議記録抜すい)、弁丁第1号証(北海道バター回議書)により、
事実第二の二は、
参考人永井国男、同森谷武繁の審判廷における各陳述、前記弁甲第10号証、前記査第5号証、査第7号証(大西武雄の供述調書)、査第14号証(遠軽地区11農業協同組合陳述書)、査第18号証(渡辺芳郎の供述調書)、査第20号証(香川嘉太郎の供述調書)、査第86号証(昭和29年5月21日付農林中金札幌支所から本所審査部あて「有畜農家創設事業資金について道会議員陳情について回答」と題する文書)、査第89号証(雪印乳業から農業協同組合長あて昭和29年4月16日付「弊社保証証による乳牛導入資金借受者にして原料乳他社供給防止御依頼について」と題する文書)によるのほか、
(一)については、
参考人大西武雄、同細谷悦三、同石田勝喜、同山岸六郎、同永井国男、同浪岡弥一郎、同金房欣吾、同森谷武繁の審判廷における各陳述、査第6号証(越智清敏の供述調書)前記査第7号証、査第8号証(農林中金札幌支所の家畜導入資金(会社保証分)貸出調書)、前記査第14号証、査第15号証(昭和28年10月13日付湧別町芭露農業協同組合より農林中金あて乳牛導入資金借入申込書)、査第16号証(昭和28年11月20日付湧別町芭露農業協同組合より農林中金あて乳牛導入資金借入申込書)、査第17号証(昭和30年12月14日付農林中金札幌支所から湧別町芭露農業協同組合あて融資決定通知書)、前記査第18号証、査第19号証(笠井憲治の供述調書)、査第27号証(雪印乳業、昭和29年度乳牛導入資金斡旋業務進捗状況調)、査第28号証(北海道バター、昭和29年度乳牛導入計画)、査第31号証(永井国男の供述聴取報告書)、査第42号証(清水精一の供述調書)、査第46号証(雪印乳業中湧別工場長から上湧別町農業協同組合長あて「会社保証による融資決定について」と題する文書)、査第77号証(昭和28年10月14日付農林中金札幌支所より下湧別村湧別農業協同組合に対する乳牛導入資金融資決定通知書)、査第78号証(昭和29年2月20日付下湧別村湧別農業協同組合より農林中金あて乳牛導入資金借入申込書)、査第88号証(遠軽町農業協同組合長証明書)、査第90号証(雪印乳業中湧別工場長から本社生産部長あて、計呂地地区畜牛増殖並びに乳量増産計画書送付の件)、領第6号証(生田原農業協同組合から農林中金あて乳牛導入資金借入申込書)、領第7号証の四(生田原農業協同組合から農林中金あて昭和30年1月24日付質問文書)、領第7号証の五(生田原農業協同組合から北信連あて乳牛導入資金借入申込書)、弁甲第6号証(農林中金札幌支所から上湧別町農業協同組合に対する昭和29年10月30日付融資決定通知書)、弁甲第7号証(農林中金札幌支所から生田原農業協同組合に対する昭和29年10月30日付融資決定通知書)、弁丙第10号証(雪印乳業、昭和28年度会社保証乳牛導入資金斡旋実績調)、弁丙第11号証(雪印乳業昭和29年度乳牛導入資金融資斡旋業務進捗状況調)により認めることができる。右参考人浪岡弥一郎の農林中金札幌支所長永井国男が乳牛導入資金が両会社の経営合理化を図るための資金である旨を同人に告げたとの陳述について(その他の参考人の同様の陳述についても)、農林中金、北信連の代理人らはその最終陳述書において、右は両会社の競争会社の担当者等の利害関係より生じた誇張であつて信用し難いと主張しているが、永井札幌支所長は査第5号証(同人の供述調書)および審判廷における陳述において本件乳牛導入資金が両会社の経営合理化を図る趣旨のものであることを否定し居らず、前記最終陳述書の主張はこれを首肯することを得ない。
同(二)については、
参考人富山明一、同細谷悦三、同渡辺義夫、同茅山健蔵、同竹内栄一の審判廷における各陳述、前記査第5号証、前記査第8号証、査第11号証(北海道バター、昭和28年度乳牛増産計画)、査第21号証(昭和29年5月22日付農林中金札幌支所発訓子府町農業協同組合あて文書)、査第22号証(訓子府町農業協同組合第9回臨時総会議事録写)、前記査第28号証、査第60号証(昭和30年4月5日付北信連北見支所から訓子府町農業協同組合あて「乳牛導入資金決定書類送付について」と題する文書)、査第61号証(昭和30年3月25日付農林中金札幌支所から訓子府町農業協同組合あて文書)、弁丁第6号証(北海道バター、昭和28年度乳牛導入状況)、弁丁第7号証(北海道バター、昭和29年度乳牛導入資金進捗状況調)、および茅山健蔵提出書類(昭和30年8月9日付審判官の書類提出命令に基き昭和30年8月18日付で提出のあつた書類)により、
同(三)については、
参考人大鐱④凌拡縦遒砲・韻訥捗辧∩圧Ⅵ座・号証、前記査第27号証、査第52号証(金喜多一の供述調書)、領第2号証(三井農林斜里事業所長から本社事業部長あて報告書)により、
同(四)については、
参考人竹内栄一、同潮田辰次の審判廷における各陳述、査第73号証(昭和28年10月27日付農林中金札幌支所から音更村農業協同組合あて融資決定通知書)、前記査第89号証、領第1号証(昭和29年5月12日付明治乳業北海道事務所長より同社取締役社長あて文書)により、
同(五)については、
参考人今野喜市、同加地謙三、同潮田辰次の審判廷における各陳述、査第32号証(今野喜市の供述調書)、査第33号証(滝脇真円の供述調書)、査第34号証(実況見分書)、査第35号証(領置書)、査第36号証(小岩隆一の供述調書)により、
事実第二の三は、
査第2号証(雪印乳業、昭和29年6月21日付改正要綱、念書等)、査第4号証(同上北海道バター分)、前記査第8号証、前記査第12号証、前記査第13号証、査第23号証(昭和29年7月2日付、農林中金札幌支所「会社保証による乳牛導入資金融資について打合事項」と題する文書)、査第24号証(農林中金札幌支所昭和29年7月23日付「会社保証による家畜購入資金の取扱について」と題する文書)、査第25号証(昭和29年7月30日付北信連北見支所長から訓子府町農業協同組合長あて「会社保証による乳牛導入資金の取扱い並に代金決済要領について」と題する文書)、前記査第26号証、前記査第27号証、前記査第28号証、査第29号証(雪印乳業関係組合別乳牛導入頭数)、査第30号証(北海道バター関係組合別導入頭数)、査第37号証(昭和29年8月4日付北信連北見支所長から湧別町芭露農業協同組合長あて「会社保証による乳牛導入組合別頭数について」と題する文書)、査第38号証(昭和29年8月19日付雪印乳業から関係各農業協同組合長あて「会社保証乳牛導入資金借入申込について」と題する文書)、査第39号証(昭和29年10月28日付湧別町芭露農業協同組合の農林中金に対する昭和29年度乳牛導入資金借入申込書)、査第40号証(昭和29年12月17日付雪印乳業中湧別工場長から湧別町芭露農業協同組合あて「当社保証乳牛導入資金の資金の資金化時期について」と題する文書)、査第41号証(昭和30年2月24日付湧別町芭露農業協同組合から北信連北見支所あて「乳牛導入資金継ぎ資金借入申込について」と題する文書)、前記査第42号証、査第43号証(昭和29年8月4日付北信連北見支所から上湧別農業協同組合長あて「会社保証による乳牛導入組合別頭数について」と題する文書)、査第44号証(昭和29年8月11日付上湧別町農業協同組合長から北信連北見支所長あて「会社保証による乳牛導入頭数増加依頼について」と題する文書)、査第45号証(昭和29年8月21日付北信連北見支所から上湧別農業協同組合長あて「会社保証による乳牛頭数追加について」と題する文書)、前記査第46号証、査第47号証(上湧別町農業協同組合の農林中金に対する昭和29年度乳牛導入資金借入申込書)、査第48号証(昭和29年8月4日付北信連北見支所長から斜里農業協同組合長あて「会社保証による乳牛導入組合別頭数について」と題する文書)、査第49号証(雪印乳業網走工場長から斜里町農業協同組合長あて「昭和29年度会社保証による乳牛導入資金について」と題する文書)、査第50号証(昭和29年8月19日付雪印乳業より各農業協同組合あて「会社保証乳牛導入資金借入申込について」と題する文書)、査第51号証(斜里町農業協同組合から農業林中金あて昭和29年度乳牛導入資金借入申込書)、前記査第52号証、査第53号証(北見市農業協同組合から農林中金あて昭和29年度分乳牛導入資金借入申込書)、査第54号証(北見市農業協同組合から北信連あて昭和29年度乳牛導入資金つなぎ資金借入申込書)、査第55号証(川村正雄外5名から北見市農業協同組合長あて乳牛代金受領証)、査第56号証(乳牛購入証明書)、査第57号証(北信連北見支所から北見市農業協同組合に対する貸付決定通知書)、査第58号証(今村実の供述調書)、査第59号証(昭和29年10月7日付訓子府町農業協同組合より農林中金あて乳牛導入資金借入申込書)、査第62号証(昭和29年6月1日付雪印乳業帯広工場長から幕別町札内農業協同組合長あて「昭和29年度会社保証(中金融資)乳牛導入資金借入申込に関する件」と題する文書)、査第63号証(昭和29年6月6日付札内農業協同組合長から各畜産部長、酪農振興会役員あて「雪印乳業会社保証乳牛導入資金借入申込の取まとめについて」と題する文書)、査第64号証(幕別町札内農業協同組合会社融資申込者氏名)、査第65号証(昭和29年8月13日付雪印乳業帯広工場長から札内農業協同組合長あて「昭和29年度会社保証乳牛導入資金割当に関する件」と題する文書)、査第66号証(昭和29年12月10日付雪印乳業帯広工場長から札内農業協同組合長あて「本年度会社保証乳牛導入つなぎ資金について」と題する文書)、査第67号証(梶浦福督の供述調書)、査第68号証(昭和29年6月1日付雪印乳業帯広工場長から音更町農業協同組合長あて「昭和29年度会社保証(中金融資)乳牛導入資金借入申込に関する件」と題する文書)、査第69号証(昭和29年8月13日付雪印乳業帯広工場長から音更町農業協同組合長あて「昭和29年度会社保証乳牛導入資金割当に関する件」と題する文書)、査第70号証(昭和29年8月31日付雪印乳業帯広工場長から音更町農業協同組合長あて「昭和29年度会社保証乳牛導入に関する件」と題する文書)、査第71号証(昭和29年9月30日付音更町農業協同組合から北信連あて乳牛導入資金借入申込書)、査第72号証(川田健二郎外5名から音更町農業協同組合に対する金円借用証書)、査第74号証(高木米治郎の供述調書)、査第75号証(石川進の供述調書)、査第79号証(昭和29年8月4日付北信連北見支所長から湧別町農業協同組合長あて「会社保証による乳牛導入組合別頭数について」と題する文書)、査第80号証(昭和29年10月1日付湧別町農業協同組合から農林中金あて乳牛導入資金借入申込書)、前記弁丙第11号証、前記弁丁第7号証、被審人農林中金外3名提出の昭和30年5月27日付準備書面別紙「昭和29年4月―昭和30年4月間乳牛導入資金(一般)貸付調書」により、
事実第二の四は、
参考人昌谷孝、同大沢重太郎、同加地謙三、同沼部園春、同大鐱①・営・鎮ぜ ・穎臆・鎔賚困凌拡縦遒砲・韻覲督捗辧・鐃蛙庸昔喘羔盂・名提出の昭和30年5月27日付準備書面、被審人農林中金の当委員会に対する昭和30年7月15日付報告書、前記査第42号証、前記査第75号証、前記査第52号証、前記査第86号証、弁甲第9号証(昭和30年3月24日付下湧別村芭露農業協同組合より農林中金札幌支所あて文書)、弁甲第11号証の(一)(昭和30年1月14日付農林中金札幌支所より本所審査部長あて「北海道における乳牛導入資金について」と題する文書)、同号証の(二)(昭和30年2月8日付農林中金審査部長より札幌支所長あて「乳牛導入資金について回答」と題する文書)、弁丙第6号証(昭和30年3月8日改正雪印乳業昭和28年―30年度の乳牛増殖乳量増産対策要綱)、弁丁第3号証(昭和30年2月18日改正北海通バター昭和28年―30年度の乳牛増殖乳量増産対策要綱)、領第11号証の一ないし三(農林中金札幌支所制定の昭和30年度乳牛購入資金貸出取扱要領、念証)、領第12号証の一(農林省農林経済局長から農林中金あて昭和30年10月27日付「乳牛導入資金について」と題する文書)、領第12号証の二(農林省農林経済局長から北海道知事あて昭和30年10月27日付「乳牛導入資金について」と題する文書)により、いずれもこれを認めることができる。



法の適用
第一、一、前記事実第一の一および第二の一ないし三によれば、
被審人雪印乳業、同北海道バターは協同して被審人農林中金および同北信連と完全なる了解の下に、3ヵ年間に約10億円の資金を両会社に生産乳を供給する農家に融通させて両会社の集乳地区に約1万頭の乳牛を導入し、本資金によつて乳牛を購入した者の当該乳牛のみならずその保証人ならびに資金借受単協自体についてまで販路を制限し、それら生産乳はすべて両会社のみに販売せしめるという計画をたててこれを実行し、他の乳業者の集乳活動を抑圧し、特にいわゆる競争地区においては本資金を他の乳業者に対する強力な競争手段として利用し、農林中金に他の地区に比し厚く本資金を融通させ、他の乳業者の集乳活動を排除し、もつてすでに北海道地域において集乳量約80パーセントに及ぶ両会社の地位の全面的維持および強化をはかつているものと認められるから、両社の行為は私的独占禁止法第3条前段に違反する。
二、前記第一の二および第二の一ないし三の事実によれば、
被審人農林中金は、雪印乳業、北海道パターのいずれかに原乳を供給する単協またはその組合員にのみ乳牛導入資金を融資し、他の乳業者と取引する単協等に対しては取引先が両会社でないという以外格別の理由なく乳牛導入資金の供給を拒否しているものと認められ、右すなわち特定事業者に不当に資金を供給しないもので、私的独占禁止法第2条第7項に基き昭和28年公正取引委員会告示第11号により指定された不公正取引方法(以下一般指定という。)の一に該当し、また、
各単協に乳牛導入資金を融資するに当り、右資金を借り入れた各単協、組合員およびその保証人についても、それらの生産または販売する原乳を必ず両会社に販売することを条件としているのは、正当な理由がないのに相手方と当該相手方から物資の供給を受ける者との取引を拘束する条件をつけて当該相手方と取引しているもので、一般指定の八に該当し、
いずれも私的独占禁止法第19条に違反する。
三、前記第一の二および第二の一ないし三の事実によれば、
被審人北信連は、本件融資に当り、正当な理由がないのに、金融機関の業務として単協に保証を与えるに際し、両会社との取引を条件としているものであつて、一般指定の八に該当し、私的独占禁止法第19条に違反する。
第二、被審人らの主張を要約すると、
一、「要綱」の目的は審判開始決定書記載のごとく両会社の経営合理化にあるのではなく、乳牛の増殖による酪農経営の安定を図るとともに地域的に散漫な乳牛導入を防止して単位経営当りの乳牛密度と地域的集乳密度とを高め集乳経費の軽減に努めることにあり、このことは両会社の特殊な性格および「要綱」の成立経緯を検討すれば明らかであるというのであるが、「要綱」がその成立過程において管内酪農民の乳牛導入希望をも取り入れて立案され、したがつてそれが一面に管内酪農家の経営安定を図る目的をもつていたことは、これを認めることができる。しかしながら、この酪農経営の安定が会社の経営合理化と表裏の関係にあることは参考人昌谷孝らの証言するとおりであり、また地域的に散漫な乳牛導入を防止して単位経営当りの乳牛密度を高め集乳費の軽減に努めることが、それ自体会社の経営合理化につながるものであることは明らかである。もつとも両会社が会社の経営合理化を計ること自体は別に問題ではなく、問題となるのは、この「要綱」が実施されるに当つて、被審人らが互に意を合わせてこの「要綱」による融資を北海道における各乳業会社の集乳事業の競争を制限する手段に用いた点にある。
二、しかるに右農林中金、北信連と両会社との通謀の点について、農林中金は両会社が作成した「要綱」案の提示をうけて道内乳牛増殖対策に沿うものとしてこれを了承したもので積極的にその作成に参画したものではなく両者間に通謀の事実は全く存しないというが、
「要綱」の作成または改正は両会社と農林中金、北信連との間に常に緊密な連絡協議の間に進められたことは前記諸証拠により明らかであり、しかも「要綱」の実施に当つては、前記認定事実のごとく農林中金、北信連と両会社とは一体となつて行動し、乳牛導入資金をもつぱら両会社地区のみに導入することにつとめ、さらにいわゆる競争地区において同資金を明らかに両会社のため他の乳業者の競争を排除する手段として利用しているのであつて、これらの点からみれば両会社と農林中金、北信連との間に本資金をもつぱら両会社地区のみに導入し他の乳業者と取引する者へは本資金の融資を行わないものとの了解が成立していたものと認めざるを得ない。
三、さらに、農林中金および北信連は本件融資に当り、審判開始決定書記載のごとく各単協の信用状態よりもむしろ両会社との取引関係に重点をおき、もつぱら両会社と取引している単協に対して融資するという方針をとつたことはなく、各単協の経営状態、信用状態およびいわゆる系統利用(生産乳を農家から単協へ、さらに北経連へ販売すること)等を勘案して融資決定をしてきたものであり、個々の単協が融資を拒絶された理由は主としてその信用状態のいかんによつたものであるとし、その例証として、両会社と取引する単協でも融資を拒まれたものがある事実をあげているが、
両会社と取引するものとしからざるものとの別なく、農林中金が単協の信用状態の良否を考慮したであろうことは、公共の金融機関として当然なことであり、あえてこれを否定しないが、前記上湧別町農業協同組合のごとく、同一単協でも雪印乳業地区の分はすみやかに融資が実行され、その他の分については長期間保留された例があり、また同一単協で一旦拒否された後数月をいでずして融資を許可されたものが数例あり、一方農林中金が当初両会社以外の乳業者と取引する単協に対して一貫して融資不許可の態度を採つていたことを見れば、信用状態のいかんによつて融資を行つたというのは弁解に過ぎないものと言わざるを得ない。
また、農林中金が本件融資の当初から北経連への委託販売をも融資基準の一として考慮してきたとする点については、前記のように農林中金の音更村農業協同組合に対する昭和28年10月27日付融資決定通知書に「組合員の生産牛乳はあげて系統会社である雪印乳業へ出荷するよう強力な御指導を願いたい」との付記がなされ、また同じく湧別町芭露農業協同組合に対する同年11月14日付融資決定通知書に「本資金は雪印乳業の申添えもあり貴地区内の乳牛事情に鑑みお取計い申上げますが、対象地区内牛乳はあげて会社に出荷するよう恒久的な指導対策を講じて下さい」との付記がなされていること、また北信連が昭和29年度の融資保証に当り農林中金、両会社と協議の後各単協あてに出した昭和29年7月30日付文書においても両会社への販売ということが強調され、北経連への販売委託ということについて何も触れていないこと、さらに三井農林大鋓侘せ・判蠶垢・赦・8年10月10日農林中金札幌支所黒田次長と会見した際、同次長から三井農林が原料乳または製品の面において雪印乳業と提携すれば三井農林取引関係者に対する乳牛導入資金の融資を考慮しないこともない旨いわれたこと等からみれば、農林中金は融資に際し北経連への販売委託ということでなく両会社への販売を主として考慮していたものと認めざるを得ず、代理人らの主張を首肯することはできない。
なお、被審人らは、北海道における単協と両会社との生産乳の取引方式としてすべて単協は組合員の生産乳を北販連(現在は北経連)に販売委託し、北販連はその委託によつて両会社に生産乳を販売する方式をとつておると主張し、この証拠として昭和25年11月に両会社が北販連と締結した団体協約書の写(弁甲第1号証および同第2号証)および昭和27年8月に訓子府町、妹背牛町、八雲町、池田町および富川各農業協同組合が、昭和28年5月に天塩酪農業協同組合が、それぞれ北販連に差し入れた牛乳販売契約委任書の写(弁甲第3号証)を提出している。
しかしながら訓子府町農業協同組合は昭和25年北海道バターの発足以来北販連を経由することなく同社と直接取引していたが、昭和27年8月に至り北海道バター社長名で関係単協に対し、
乳代は前年4月より手形払いとしたにつき、その裏書割引一切の手続きを北販連に依頼し、同連に乳代の取立を委任していない組合についても北販連の厚意ある取計により支障なく送金することができたが、過般北販連が農林省の監査を受けた際右の取扱いが非合法的なることを指摘され、じ後この便法中止方の申出があり一時乳代支払の方法に窮し、5、6両月は北信連の厚意により辛じて支払うことを得た、その後種々関係先とも折衝の結果、従前に返り北販連に依頼することに了解決定をみたが、前述の農林省の監査に対処する事務上の書類整備上別紙の通り委任書を必要とするから手数ながら至急提出されたく、現行の1000分の0.75の手数料は同社が負担し単協には迷惑をかけない
旨の文書がきたので同月前記のごとき牛乳販売契約委任書を北販連に提出したものである。
なお、雪印乳業も同年6月同様の文書を関係単協に送付しており前記妹背牛町等の各農業協同組合の委任書提出の事情も訓子府町の場合と同様である。(領第3号証、領第4号証、査第81号証)また天塩酪農業協同組合は、元来北販連でなく北海道酪農業協同組合連合会を経由して乳代を受けとつていたが昭和28年5月同連合会が同組合の乳代取立を北販連に委任したのでその後北販連のもとめに応じ前記の委任書を提出したものである。したがつて前記諸証拠をもつてしては両会社と取引している単協はすべて前記のいわゆる系統利用を行つていたものとは認定できない。(査第82号証、査第83号証、査第84号証、査第85号証)
四、次に農林中金は、乳牛導入資金を単協に融資するに当り、両会社の保証を条件としたことはなく、まして両会社へ生産乳を販売することを条件としたことはないと主張するのであるが、
農林中金が昭和28年度の乳牛導入資金融資150数件総額3億円余を単協の信用状態のいかんに関係なく全部両会社の保証の下に行う(査第8号証)とともに、両会社以外の乳業者による保証ないし、保証の肩替りは全てこれを拒否し、昭和29年度も同様の方針で融資手続を進めたことをみれば、農林中金が両会社の保証を条件として融資を行つたことは明らかであり、さらに農林中金は、両会社および北信連が単協に出した生産乳を両会社に販売すべき旨の保証条件について、前記認定事実のとおり充分了解し(単協が会社に差し入れる念書の写を農林中金は資金借入申請の時の必要添付書類としている。)、また昭和29年6月改訂した念書には生産乳を両会社以外の乳業者に販売した場合農林中金も繰上償還を要求しうる旨の規定が加わつているから、農林中金は、両会社への生産乳販売を条件として融資したというべきであり、被審人らの主張は事実に反するものである。
なお両会社が保証する上において生産乳を両会社に販売すべき旨を条件とすることは、両会社が借り入れ単協のために保証をなす以上当然の要求であり、またその保証人としての地位の安全を計るためにも当然なさるべき措置であるというが、
たとえ両会社の利益確保のためこのような保証条件をつける必要があるとしても、この保証条件を手段として農林中金が生産乳の両会社への販売を融資の条件としていることは前述のとおりでそこに何ら正当な理由を見出しえないのである。
五、また前記「要綱」は両会社により立案され、国の綜合計画の一環として道庁の承認をうけ、農林中金および北信連に通報されて実施されたものであり、一方両会社以外の乳業会社は何ら積極的に計画もたてず、その取引先の単協に漫然融資の申込をさせたにすぎないのであるから農林中金もしくは北信連がこれらに対する融資について幾分その取扱を異にしたとしてもそれは当然の事柄であるというが、
その「要綱」なるものも国全体の綜合計画の立場から立案されたものでもなく、一方上記のとおり両会社以外の乳業会社にあつては具体的計画の段階に至らぬまでに農林中金から拒否の態度を示されていたのであるから、他の乳業者としては自己と取引ある単協は結局融資を受けられぬものと判断することは当然のことであつて、被審人らの抗弁には理由がない。
六、なお、本件に現われた事例によつても、両会社以外の乳業者は、昭和28年以降集乳量が増加しているのであるから道内原乳取引分野の競争は実質的に制限されておらず公正に行われてきているというが、
「要綱」による三ヵ年計画は、両会社の管内に搾乳牛または妊娠牛約1万頭を導入せんとするものであつて、しかもその導入先は、北海道が乳牛の生産地であるため、道内に限られており、当時の全道の搾乳牛の総数が約4万5000頭であつたことを思えばこの計画はきわめて規模の大きいものであり、しかも融資対象農民は搾乳牛1頭以上を保有していなければならずかつ昭和29年度の「要綱」改正により融資をうけたならば借受人の所有にかかる乳牛全部からの生産乳ばかりでなく保証人および単協までその生産しまたは取り扱う生乳はすべて両会社に販売しなくてはならないことになつており、またその違約に対する措置もきびしいため融資に伴う拘束もまたきわめて深くかつ広いもので、これにより生産乳販売活動は強く制限されるものといわねばならない。さらに本導入資金は農林中金によつてほとんど一手に貸し出され、両会社以外の乳業者の地区には貸し出されないのみならず、両会社の競争手段として競争地区に厚く貸し出されているのであるからその拘束力は単協の生産乳販売活動を支配し、乳業者間の乳価および集乳上その他のサービスによる公正な競争を有効に抑圧することができるものと判断される。
両会社以外の乳業者の集乳量が増加しているのは、両会社以外の地区の単協にあつては、当初農林中金資金が借りられないのみならず本件差別融資の結果隣接両会社地区に導入資金が融資されたため地区内乳牛が両会社地区に買われて行くような事態さえ起つたので、この乳牛の移動を防止するため取引先乳業者に融資を要望し、また乳業者も自己の集乳量を維持するためこれら単協に自己資金を導入資金として融資したこと、また28年度の酪農ブームのため乳量の自然増もきわめて顕著であつたこと(昭和29年度には当時の金融および経済事情から再び前年度のような防衛のための資金投入は他の乳業者においてもほとんどできない状態にあると認められる。)によるのほか、たまたまこのころから資金の融資方針そのものについて国会始め各方面からの批判がおき、当委員会の審査、審判の手続も開始されたため昭和30年初めごろから差別的取扱は緩和され、両会社地区以外にも農林中金資金による乳牛の導入が除々に行われるに至つたこと等(明治乳業帯広工場では宝乳業株式会社の業務引継によつて乳量が増加したことが認められる。)によるものと判断される。
なお、乳牛導入資金の融資が公正に行われなかつたため、三井農林斜里工場のように新たに開設された両会社以外の他社の工場の集乳量が予定量に達せず経営が困難をきわめたことが認められる。
以上のような理由から両会社以外の特定の会社の乳量が増加していることのみをもつて他の乳業者の集乳活動が制限されることなく道内生産乳の取引分野の競争が公正に行われたと認めることはできない。
第三、以上のほか被審人らは、「被審人両会社の要綱に決定書記載のような変遷があり、独禁法違反の疑惑を深めた観がないでもないが、疑惑の原因とも観られる手続は、昭和30年初頭以降においてすべてこれを解消させたものであり」、「特に昭和30年度の融資については、農林省農林経済局長の新通牒もあり、農林中金としては、これに副う取扱方針を定めているのであつて、これらの取扱方針は、特殊金融機関としての農林中金の独自の立場から立案したもので、独禁法違反の疑を挿まれる余地のないものである。」というのであるが、
たしかに農林中金らは、前記認定事実のとおり、昭和30年初め以降融資についての差別的取扱を改善し、更に昭和30年度以降の融資については、農林中金の「昭和30年度乳牛購入資金貸出取扱要領」が厳に昭和30年10月27日付農林省農林経済局長の通達の趣旨に従つて実施されるならば差別的および拘束的取扱はなくなるであろうが、これが履行の完全な保障はなく、またしかも昭和28年度および29年度の融資の実情ならびに両会社と農林中金および北信連との密接な関係等にかえりみるときは、将来同様の違反が行われるおそれがないということを得ないので主文第1項ないし第3項の措置を命じ、昭和28年度および29年度の融資に関して資金借受単協およびその組合員から両会社に差し入れあるいはその写が農林中金に差し出されている念書がその後、破棄しまたは修正され、これら単協および組合員は現在では生産乳の取引を拘束されていないと認めるには証拠が不十分であるので、主文第4項および第5項の措置を命ずるものである。
なお、審決案の主文中には被審人北海道バターに当時同社の取締役社長であつた三井武光を同社の役員の地位または北信連の役員の地位のいずれかから退かせることを命ずる旨の一項がある。
北信連のごとく農民の死活を制するともいうべき各種農業資金の貸出を左右する力を有する機関の幹部が北海道バターの首脳者を兼ねていたことは、たまたま前掲事実第二の二(二)の末尾のごとく乳業会社が金融機関の威力をかりて原料乳供給者が自己の競争者と取引することを阻止することにより両会社の独占を強化するような行為の契機ともなりかつ本件事実の全過程を通じ農民の協同組織である北信連の勢力が特定会社の利益のために不当に利用されたことは疑がない。しかしながら、本年6月18日付当委員会あて北海道バター上申書によれば、同社は5月30日すでに自発的に三井武光を代表取締役の地位から去らせているから本審決においては格別の措置を命じない。

昭和31年7月28日



別紙一の一
昭和28-30年度の乳牛増殖、乳量増産対策要綱 雪印乳業株式会社
一、目的
1、酪農経営の安定線、採算基準は現況から判断すれば最低搾乳牛2頭以上(年間搾乳量50石以上)育成牛1頭、産犢1頭、計4頭と考えられるので之を目標として酪農経営の安定と乳牛の絶対数増加に努める。
2、乳牛の管外移出を極力防止すると共に乳牛の新規導入は既存工場を中心とし、工場周辺の飼育密度を高める様創意工夫を凝らし、地域的に散漫な乳牛導入を極力防止し、単位経営当り乳牛密度と地域的集乳密度を高め集乳経費の軽減に努める。
二、対策
此の目的を達成するために道、支庁、市町村、各関係団体に対し協力を願い、地域内乳牛の減少防止を図り、乳牛導入に対しては左記要領により斡旋に努力する。
単協自体で政府の利子補給による借入れを受けることのできない場合は会社は左記条件を以つて乳代見返により保証し、融資斡旋を行うことがある。此の導入頭数は2,500頭程度とする。

(イ) この保証融資を受けるものは農協、酪協若しくは之に代る団体とし、別掲念書の各条項の確守を必要とする。
(ロ) 会社は二ヵ年を限り年3分の割合で利子補給を行う。
(ハ) 融資保証額は購入価格の七割限度とし、1頭当り10万円を超えないものとする。
(ニ) 導入頭数は1集乳区域当り10頭以上を原則とし、会社が適当と認めた地帯とする。
(ホ) 購入牛は搾乳牛若しくは妊娠牛とす。
(ヘ) 資金の返済方法は据置期間六ヵ月を含め三ヵ年々賦とするも借入者個人の実情に於いて年限を画一的に取扱わず短縮する場合もある。(三〇ヵ月以内の月割均等償還)
但し会社の利子補給は二ヵ年とする。
(ト) 会社の信用保証により資金を借入れ乳牛を購入したる者は借入資金の返済が完了する迄は、その生産したる牛乳を会社に販売する事を確約する。
(チ) 借入金の返済については借受団体及び借受人の連帯責任とし、且つ家畜保険に加入し、保険証券は原則として農林中金にて保管する。
(リ) 乳牛購入資金を借受けんとするものは次の条件を具備するものとする。
(1) 現に搾乳牛1頭以上を有し、関係機関竝びに会社が適当と認めたもの
(2) 粗飼料の準備、特に多汁性飼料の生産が1頭当り千貫以上可能なもの
(3) 現に適当な尿溜を有し、又は施設せんとするもの
借受者にして導入牛を加えたる妊娠牛又は搾乳牛頭数の現存しない場合には爾後の利子補給は即時停止する。
以上
別紙一の二
念書
今般貴社の保証により畜牛購入資金を当組合理事会の決議に基き農林中央金庫より借用いたしますにつきましては、左記条項は固く厳守し違背致しません。
万一違背せる場合は貴社が農林中央金庫に対する保証債務の履行上必要なる措置の執行に対しては一切異議を申しません。
茲に後日の為理事会の決議録抄本を添へ念書を提出致します。

一、各自の経営規模に応じ適正な乳牛飼養頭数を保有し、之れに必要な設備並に飼料の自給策を積極的に購じ酪農経営の安定に努力せしめる。
二、貴社の乳牛増殖、乳量増産対策要綱の各条項を厳守する。
若し購入資金を乳牛購入以外の目的に使用したる時、其の金額又は1部の返還要求ありたる場合は異議なく之れに応ずる。
三、借入金償還は貴社に於て当組合の毎月乳代より年賦金の月割額を前月乳代より一括控除し、北海道信用農業協同組合連合会「以下信連と謂ふ」に積立方を委任する。
四、貴社に於て当組合乳代より一括控除せる積立金の個人別計算及び資金操作は当組合に於て行ふ。
五、据置利子の支払は定期償還期日の当組合前月分乳代から貴社が控除し信連に支払ふ事を委任する。
六、貴社が信連より期日前繰上償還要求せられたる場合は当組合は直ちに之れに応ずる。
七、本資金により購入したる乳牛の不測の災害に備へ家畜共済規定による最高額の保険に加入し保険証券は債権者に預託する。
八、乳牛を購入したる場合は其都度貴社工場長に報告し相違無き事の確認を求める。
尚購入後に於て斃死其他事故発生したる節は直ちに報告する。
九、貴社が当組合に代り、信連の請求により債務を弁済せられたる時は、当組合はその弁済金額及之に対する弁済日当日より貴社に現入金の日迄百円に付き1日4銭の割合による損害金を支払する。
昭和28年8月 日
雪印乳業株式会社
取締役社長 佐藤 貢殿
別紙二の一
昭和28年―昭和30年度の乳牛増殖、乳量増産対策要綱
北海道バター株式会社
一、目的
1、本道に於ける酪農経営の現況から判断すれば、その安定線、採算基準は最低搾乳牛2頭以上(年間搾乳量50石以上)育成牛1頭、産犢1頭、計4頭以上と考えられるので、之を目標として、乳牛の増殖を計り酪農経営の安定に努める。
2、採算基準頭数に至るまでは、乳牛の管外移出を防止するとともに、乳牛の新規導入は既存工場を中心として、工場周辺の飼育密度を高めるよう創意工夫を凝らし、地域的に散漫な乳牛導入を極力防止し、単位経営当り乳牛密度と、地域的集乳密度を高め、集乳費の軽減に努める。
二、対策
此の目的を達成するために、道・支庁・市・町・村・各関係団体に対し協力を願い地域内乳牛の減少防止を計り、乳牛の導入に対しては左記要領により斡施に努力する。
政府融資による畜牛購入を行なわんとするものに対しては、乳牛の鑑定照会はもとより各方面に亘り積極的に協力する。
会社は左記条件に依り単協自体で政府の利子補給による融資又はその他の乳牛導入資金の借入を受けることの出来ない単協に対し乳代見返りに依る融資を保証斡旋する外政府の利子補給によらざる乳牛導入資金に対する利子の補給を行う。
但し、会社の利子補給による導入頭数は850頭程度とする。
(イ) この保証融資を受けるものは単協若しくは之に代る団体とし別掲念書の各条項の確守を必要とする。
(ロ) 会社の行う利子補給は年3分とし二ケ年に限る。
但し、金利の個人負担が政府補給の場合を下廻る時は個人負担7分5厘を限度とし利子補給を行う。
(ハ) 融資保証額は購入価格の七割を限度とし、1頭当10万円を超えないものとする。
(ニ) 導入頭数は1集乳区当り、10頭以上を原則とし会社が適当と認めた地帯とする。
(ホ) 購入牛は搾乳牛若しくは妊娠牛とする。
(ヘ) 資金の返済方法は据置期間六ケ月を含め三ケ年以内とする。
(ト) 借入金の返済については、借受団体及び借受人の連帯責任とし、且つ家畜保険に加入し保険証券は債権者又は会社で保管する。
(チ) 乳牛購入資金を借受けんとするものは、次の条件を具備するものとする。
(1) 現に搾乳牛1頭以上を有し、関係機関並に会社が適当と認めたもの。
(2) 基礎飼料の準備、特に多汁性飼料の生産が1頭当千貫以上可能なもの。
(3) 現に適当な尿溜を有し、又施設せんとするもの。
(リ) 借受者にして導乳牛を加えた妊娠牛又は搾乳牛頭数が現存しない場合は、爾後の利子補給は即時停止する。
別紙二の二
収入印紙 念書
今般貴社の保証により畜牛購入資金を別紙証書の通り農林中央金庫より借用致しましたに就而当組合理事会の決議に基き貴社の行う乳牛増殖乳量増産対策に協力し左記条項は固く厳守し万一違背せる場合は貴社が農林中央金庫に対する保証債務履行上必要なる一切の措置に異議なき事を●に後日の為理事会議事録抄本を添え念書を提出いたします。

一、各自の経営規模に適正な乳牛飼養頭数を保有し之れに必要な設備並びに飼料の自給策を積極的に講じ酪農経営の安定に努力せしめる。
二、貴社の乳牛増殖乳量増産対策要綱の各条項を厳守する。
三、借入金償還は貴社に於て各人月割積立額を当組合の毎月乳代より一括控除し、北海道信用農業協同組合連合会(以下「信連」と言う)に積立を委任する。
四、貴社に於て当組合乳代より一括控除せる積立金の個人別計算は当組合に於て支払う。
五、据置利子の支払は定期償還期の当組合前月分乳代より貴社に於て控除し「信連」に支払うことを委任する。
六、貴社が「信連」より期日前繰上償還を要求せられたる場合は当組合は直ちに之れに応ずる。
七、本資金により購入したる乳牛の不測の災害に備へ家畜共済規程による最高額の保険に加入し、保険証券は に預託する。
八、本資金により乳牛を購入したる場合は其都度貴社工場長に報告し相違なきことの確認を求める。
昭和 年 月 日
住所
××××農業協同組合
組合長理事 氏 名印
住所
理事 連 名印
住所
借受人 連 名印
北海道バター株式会社
社長 三井 武光殿
〔参考〕
昭和29年(判)第4号
審判開始決定書
札幌市苗穂町36番地
被審人 雪印乳業株式会社
右代表者取締役社長 佐藤 貢
ほか 三名
右の者らに対する昭和22年法律第54号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下私的独占禁止法という。)違反被疑事件につき審判手続を開始する。
第一、事実
一 被審人雪印乳業株式会社(以下雪印乳業という。)および被審人北海道バター株式会社(以下北海道バターという。)は、それぞれ肩書地に本店を置き、牛乳の処理ならびに乳製品の製造および販売業務その他を営み、北海道における集乳量の同地区における全生産乳量に対する割合は前者が50数%、後者が20数%を占めるものであり、被審人農林中央金庫(以下農林中金という。)は、肩書地に主たる事業所を置き、農林漁業関係の所属団体に対する金融を行うことを主たる業務とし、現に北海道における乳牛導入資金の融資に関しては独占的地位を占めるものであり、かつ雪印乳業の株式の約4%ならびに北海道バターの株式の約2%を所有し、また両会社に対し多額の非所属団体融資を行っているものであり、被審人北海道信用農業協同組合連合会(以下北信連という。)は、肩書地に主たる事務所を置き、会員に対する金融業務を行っているものであるところ、
二 農林中金は昭和28年春、雪印乳業および北海道バターの申出に応じ、両会社合せて三ヵ年間に乳牛約1万頭を導入しもって両会社の集乳面における経営合理化を計ることを主要目的として両会社がそれぞれ作成した「昭和28―30年度の乳牛増殖、乳量増産対策要網」(以下「要綱」という。)に基き、昭和28年8月以降各単位農業協同組合(以下単協という。)に乳牛導入資金を融資するに当り、各単協の信用状態よりむしろ両会社との取引関係に重点を置き、もっぱら両会社と取引している単協に対して両会社の保証を条件として融資を行い、もって他の乳業者の融資あっせんないし保証を事実上拒否してきたが、その後右資金借受単協の組合員にして両会社以外の乳業者と取引するものが出てきたので斯る取引を排除するため雪印乳業では同社保証により右資金を借り入れた各単協に対して昭和29年4月19日付社長名文書をもって右資金借受組合員にして生産乳他社供給者に雪印乳業復帰を求めることを要請したところ、たとえば北海道勇払郡由仁町酪農業協同組合では該当者12名中4名が復帰し、同郡追分町農業協同組合では該当者3名中1名が融資金を同組合に返還することとなったのであるが、昭和29年度においては更に単協ならびにその組合員が両会社以外の乳業者と取引することを防止して取引先を両会社に限定するためこれを融資条件の中に織り込むこととし、昭和29年7月ごろ両会社は農林中金および北信連と協議して(一)資金借受組合員の生産乳は全て保証会社に販売させること、(二)単協から保証会社に差し入れさせる念書に生産乳の会社販売に違反した場合には繰上償還させることを規定すること、(三)北信連は以上の条件を保証条件とすること等を決定し、更にこの線に沿って両会社は「要綱」に「会社の信用保証により資金を借入れ乳牛を購入したる者は借入資金の返済が完了するまでは借入により購入した乳牛の分のみならずその人の経営内における生産牛乳全量(自家消費を除く)を会社に販売することを確約する」との規定を加え、また「要綱」に基いて単協が保証会社に差し入れる念書に「若し当組合が貴社の承諾を得ずして第三者と牛乳の取引契約をなし、若しくはこの資金により乳牛を購入した組合員及び保証人が貴社の承諾を得ずして第三者に牛乳を販売したる時、債権者若しくは貴社より其の全額又は1部の返還要求ありたる場合は異議なく之に応ずる。」旨を追加規定し、北信連は、昭和29年度の融資保証に当り、単協あて文書において「本資金の借入農家及び保証人はその経営内における生産牛乳を組合へ、組合は会社へ販売することが保証条件」である旨を記載しここに農林中金および北信連と両会社との間に完全な了解が成立するに至るとともに昭和29年度の融資は現にかかる了解のもとにおいて行われている。
三、昭和25年7月過度経済力集中排除法(昭和22年法律第207号)の決定指令により森永乳業株式会社遠軽工場(北海道紋別郡遠軽町所在)と生産乳に関する取引を開始するに至った上湧別町農業協同組合、湧別町芭露農業協同組合、下湧別村湧別農業協同組合、遠軽町農業協協同組合、佐呂間町農業協同組合、上佐呂間農業協同組合、若佐村農業協同組合、先田原農業協同組合、安国農業協同組合、白滝村農業協同組合および丸瀬布町農業協同組合は昭和28年11月ごろから農林中金に対して総額3603万円の乳牛導入資金の借入申請書行い、そのため数回にわたって、農林中金札幌支所と交渉を重ねたが、乳牛導入資金は農家のためというよりは雪印乳業および北海道バターの経営合理化のために貸出されているのであるから、両会社以外の地区に対する貸出は行わないという趣旨の下に右申請は事実上拒否されて今日に及んでいる。
四、更に北海道庁が道知事決栽のもとに昭和28年度有畜農家創設特別措置法(昭和28年法律第260号)に基く家畜導入資金の各単協別仮割当を昭和28年5月ごろ行い、その各単協の信用状態につきあらかじめ農林中金と協議したところ、農林中金は北海道檜山郡今金町酪農業協同組合につき同組合が、(一)昭和27年度に株式会社北海道銀行から農林漁業金融公庫の資金470万円を借り入れていること、(二)その製品であるバターを森永乳業株式会社に販売して雪印乳業には販売していないこと、(三)その生産乳を明治乳業株式会社に販売していることを理由として昭和28年度分の融資については、これを拒否すべしとの意を示したため、道庁は農林中金の資金による同組合への割当予定の30頭分を削除するに至り、その結果同組合は農林中金から右資金を借入れることができなかった。
第二、法の適用
一、前記第一の一ないし四の事実によれば、雪印乳業および北海道バターは共同して農林中金および北信連と通謀し、両会社以外の乳業者の集乳活動を排除することにより、北海道における原乳取引分野の競争を実質的に制限しているものであって、私的独占禁止法第3条前段に違反するものであり、
二、前記第一の一および二の事実によれば、農林中金ならびに北信連はいずれも正当な理由がないのに単協と単協から物資その他の経済上の利益の供給を受ける者との取引を拘束する条件をつけて当該単協と取引しているものであって、私的独占禁止法第2条第7項に基き昭和28年公正取引委員会告示第11号により指定した不公正取引方法の8に該当し、同法第19条に違反するものであり、
三、前記第一の一、三および四の事実によれば、農林中金は前記各単協に対して不当に乳牛導入資金を供給しないものであって前記告示第11号により指定した不公正取引方法の1に該当し、同法第19条に違反するものである。
昭和29年11月22日
公正取引委員会
委員長 横田 正俊
委員 蘆野 弘
委員 高野 善一郎
委員 山本 茂
委員 吉田 晴二

補充決定書
昭和29年判第4号審判開始決定書4頁8行目「なったのであ」の次に左の通り插入する。
「り、北海道バターならびに農林中金では昭和29年5、6月頃北海道常呂郡訓子府町農業協同組合に対して同組合が森永乳業株式会社と取引する場合には乳牛導入資金のみならず営農資金、冷害資金等の融資についても影響あるべき旨を示唆し、もって同組合の生産乳取引等に多大の紛糾をもたらしたのである。」
昭和29年12月24日
公正取引委員会
委員長 横田 正俊
委員 蘆野 弘
委員 高野 善一郎
委員 山本 茂
委員 吉田 晴二

 


 

 


2022年12月23日

今週の審判決報告(20221212)

 12月12日(月曜日)のゼミナールにおいて、茂木くんよりマイナミ空港私的独占事件(東京地裁令和4年2月10日判決公取委WEB)の報告が行われました。判決文は本ページの最後で閲読できます。

 

 


判決

マイナミ空港サービス㈱による排除措置命令等取消請求事件

独禁法3条前段、独禁法7条の2

東京地方裁判所民事第8部

令和3年(行ウ)第4号及び令和3年(行ウ)第124号

判決

令和4年2月10日

同代表取締役 ≪X1≫
同訴訟代理人弁護士 谷本 誠司
植村 幸也
村上 亮
東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
被告 公正取引委員会
同代表者委員長 古谷 一之
同指定代理人 横手 哲二
近藤 智士
向井 康二
山本 浩平
並木 悠
永井 誠
櫻井 裕介
安齋 乃綱
廣地 卓也
岸本 真由
牧内 佑樹
福井 雅人
津田 和孝

令和4年2月10日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和3年(行ウ)第4号 排除措置命令取消請求事件
令和3年(行ウ)第124号 課徴金納付命令取消請求事件
口頭弁論終結日 令和3年10月7日

判決
東京都港区元赤坂一丁目7番8号
原告 マイナミ空港サービス株式会

 



主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。



事実及び理由
第1 請求
1 被告が,原告に対し,令和2年7月7日付けでした令和2年(措)第9号排除措置命令を取り消す。
2 被告が,原告に対し,令和3年2月19日付けでした令和3年(納)第1号課徴金納付命令を取り消す。



第2 事案の概要
被告は,令和2年7月7日,原告に対し,原告が,八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売に関して①自社の取引先需要者に対し,エス・ジー・シー佐賀航空株式会社(以下「佐賀航空」という。)から機上渡し給油を受けた場合には自社からの給油は継続できない旨等を通知し,②佐賀航空から機上渡し給油を受けた自社の取引先需要者からの給油に係る依頼に応じる条件として,佐賀航空の航空燃料と自社の航空燃料の混合に起因する事故等が発生した場合でも原告に責任の負担を求めない旨等が記載された文書への署名又は抜油を求めることにより,自社の取引先需要者に佐賀航空から機上渡し給油を受けないようにさせており,これが私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(ただし,令和元年法律第45号による改正前のもの。以下「独禁法」という。)2条5項の私的独占に該当し,独禁法3条に違反する(以下独禁法3条に違反するとされたこれらの行為を併せて「本件違反行為」という。)として,独禁法7条1項に基づき,排除措置を命じる(令和2年(措)第9号。以下,「本件排除措置命令」という。)とともに,令和3年2月19日,原告に対し,独禁法7条の9第2項に基づき,課徴金として612万円を国庫に納付することを命じた(令和3年(納)第1号。以下「本件課徴金納付命令」という。)。
本件は,原告が,本件排除措置命令は,上記①②の行為には排除効果がない上,自己の危難を避けるための合理的根拠に基づく行為であり正当化事由があったから,独禁法2条5項の私的独占に該当するものではなかったのに,これを看過してされた違法なものであり,本件排除措置命令を前提としてされた本件課徴金納付命令も違法なものであるとして,本件排除措置命令及び本件課徴金納付命令の各取消しを求める事案である。
1 前提事実(争いがないか,後掲証拠〔書証は,特に断らない限り枝番号を含む。以下同じ。〕又は弁論の全趣旨により認定できる事実)
(1) 当事者等
ア 原告
原告は,東京都港区に本店を置き,航空燃料の販売業等を営む株式会社であり,成田国際空港,東京国際空港,中部国際空港,関西国際空港,大阪国際空港,新千歳空港,広島空港,八尾空港,名古屋飛行場,東京都東京ヘリポート及び広島ヘリポート(以下,これらの空港等を総称して「直営11空港等」といい,空港法〔昭和31年法律第80号〕2条に規定する空港及びその他の飛行場を併せて「空港等」という。)において,国内石油元売会社から仕入れた航空燃料を給油会社(自ら機上渡し給油を行う事業者をいう。以下同じ。)として販売している。
イ 佐賀航空
佐賀航空は,佐賀市に本店を置き,航空燃料の販売業等を営む株式会社であり,平成24年7月に経済産業大臣に石油販売業の届出をした後,国外の石油精製業者から輸入した航空ガソリンの販売事業を開始し,令和元年11月時点において,帯広空港,仙台空港,八尾空港,北九州空港,佐賀空港,大分空港及び宮崎空港において給油会社として航空燃料を販売していた。
なお,八尾空港に本社を置く航空事業者(航空法に規定する航空運送事業(同法2条18項)及び航空機使用事業(同条21項)を併せて「航空事業」といい,航空事業を営む者を「航空事業者」という。以下同じ。)である≪AA≫株式会社(以下「≪AA≫」という。)は,佐賀航空とグループ会社の関係にある。
(2) 航空燃料の概要
ア 航空燃料の油種・等級
民間航空機向けの航空燃料の油種には,大別して「ジェット燃料」と「航空ガソリン」の2種類がある。
ジェット燃料は,タービンエンジンを搭載した航空機に用いられる航空燃料であり,原告及び佐賀航空を含む国内の給油会社が販売しているジェット燃料はJET A-1である。
航空ガソリンは,ピストンエンジンを搭載した航空機に用いられる航空燃料である。原告及び佐賀航空を含む国内の給油会社が販売している航空ガソリンは,AVGAS100LLである。国内で販売されている航空ガソリンは,平成26年4月以降,全て,国外で精製されたAVGAS100LLが輸入されたものである。
イ 航空燃料の規格・取扱指針
(ア) JET A-1の規格・取扱指針
a JET A-1の規格
石油連盟(日本の石油元売会社で構成される業界団体)は,日本において,国際的な規格等の一つである「AFQRJOSジョイントチェックリスト」(Aviation Fuel Quality Requirements for Jointly Operated Systems(AFQRJOS)Joint Fuelling System Check List(Joint Check List)for Jet A-1の略。)に準拠して,「共同利用貯油施設向け統一規格」(以下「石連規格」という。)を作成している。
石連規格は,日本国内の空港の共同利用貯油施設(複数の国内石油元売会社が共同して利用する貯油施設)におけるJET A-1の品質規格を定めたものである。
b JET A-1の取扱指針
石油連盟は,日本において,国際機関であるJIG(Joint Inspection Group)の作成するJIGスタンダード(正式名称は,Aviation Fuel Quality Control & Operating Standards for Joint Airport Depots and Hydrants, and Into-Plane Fuelling Services。)等を母体として,日本における歴史,実績,現状等を考慮の上,「ジェット燃料取扱基準に関する指針」(以下「石連指針」という。)を作成している。
石連指針は,石連規格と同じく,共同利用貯油施設を用いて航空機にJET A-1を給油する場合を対象にした指針である。
(イ) AVGAS100LLの規格・取扱指針
AVGAS100LLには国際的な規格が複数存在し,これらの規格 には,AVGAS100LLとしての規格値やその規格値を満たしているかを確認するための試験方法が定められている。
石油連盟は,日本において,JET A-1とは異なり,AVGAS100LLについて,規格や取扱指針を定めていない。
ウ 同油種・同等級の航空燃料の混合について
航空法,同法施行規則等には,同一規格の航空燃料どうしの混合を禁止又は制限する規定は存在しない。
また,通常,航空機を飛行させる者は,複数の空港等を利用しており,必要に応じて,それら空港等における給油会社から機上渡し給油を受けている。そのため,航空機の燃料タンク内では,異なる給油会社から給油を受けた同一規格の航空燃料の混合が生じている。(乙15,弁論の全趣旨)
(3) 八尾空港の概要
ア 八尾空港は,大阪府八尾市に所在し,国土交通大臣によって設置され管理される空港(以下「国管理空港」という。)である。同空港には,その事務処理のため国土交通省大阪航空局八尾空港事務所(以下「八尾空港事務所」という。)が置かれている。
八尾空港は,事業用若しくは自家用の小型飛行機若しくはヘリコプター又は消防及び警察の航空隊のヘリコプター等の離発着に利用されており,民間航空機の定期便の就航がない。
八尾空港における給油会社は,平成28年11月1日の前は原告のみであったが,同日,佐賀航空が同空港での航空燃料の販売を開始したため,原告及び佐賀航空の2社となった。原告及び佐賀航空が八尾空港において販売する航空燃料の油種・等級は,ジェット燃料であるJET A-1及び航空ガソリンであるAVGAS100LLである。
イ 国管理空港における営業に必要な承認等
国管理空港において,国の管理する土地,建物その他の施設を借用するなどして航空燃料の構内販売を行う場合,空港管理規則(昭和27年運輸省令第44号)12条又は12条の2に基づき,当該構内営業の内容に従い,地方航空局長又は空港事務所長の承認を得る必要がある。地方航空局長又は空港事務所長は,空港管理上必要があるときは,営業者等に対し,施設又は営業の状況等について報告を求め(空港管理規則24条),また,空港管理上特に必要があるときは,営業者に対し,営業の停止その他当該営業について必要な措置を命じ(同規則25条2項及び3項),さらに,営業者が法令若しくは空港管理規則に基づく命令又は承認に付した条件に従わなかったときは,構内営業の承認を取り消すことができる(同規則26条1項及び2項)。
ウ 八尾空港協議会について
八尾空港協議会は,八尾空港の発展を図るため,安全の確保,円滑公正な運用,環境の整備等に関し,航空当局及び地方自治体に協力し,かつ意見具申又は陳情を行うとともに会員相互の意思疎通等を行うことを目的として設立された任意団体である(八尾空港協議会会則3条〔乙30〕)。
八尾空港協議会の正会員は,八尾空港で航空事業又は構内営業権を有し航空関連事業を行う法人であり理事会で承認した者とされ,八尾空港協議会の目的に賛同する官公庁等を理事会の推薦により賛助会員にすることができるとされている(八尾空港協議会会則4条及び6条)。
平成28年12月当時における八尾空港協議会員は別紙「平成28年12月時点の八尾空港協議会員」記載の17名(賛助会員1名を含む。)であった。その後,少なくとも令和元年10月まで,会員に変更はない。
(4) 八尾空港における供給者の概要
ア 原告の事業活動について
(ア) 原告の八尾空港における事業活動の概要
原告は,昭和47年4月以降,平成28年11月1日に佐賀航空が参入するまでの間,同空港の唯一の航空燃料給油会社として航空燃料の販売事業を行ってきた。そして,佐賀航空が八尾空港における航空燃料の販売事業に参入した後も,少なくとも平成31年1月まで,供給量ベースで八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売分野(以下「本件市場」という。)の8割を超えるシェアを保持していた。
原告が八尾空港に所在する原告の八尾事業所において航空燃料の需要者(以下,単に「需要者」という。)に対し航空燃料を販売する方法は,機上渡し(航空燃料を航空機の燃料タンクに直接給油することにより引き渡す方法),ドラム缶渡し(ドラム缶に航空燃料を充てんして引き渡す方法),ローリー渡し(航空燃料をタンクローリーで出荷し,需要者の貯蔵タンク等に航空燃料を注入することにより航空燃料を引き渡す方法)の3種類に大別される。
原告は,需要者との間で航空燃料の継続的な売買に係る契約(以下「継続売買契約」という。)を締結して,取引口座を開設した上,掛け払いで航空燃料を販売しているところ(原告と継続売買契約を締結している需要者を,以下「取引先需要者」という。),当該契約を締結していない需要者に対しては,機上渡し給油の都度,現金払いにより航空燃料を販売している。
原告は,遅くとも昭和47年9月28日付けで,国土交通省大阪航空局長(平成13年1月5日以前は運輸省大阪航空局長をいう。以下「大阪航空局長」という。)から,八尾空港における航空燃料の販売について第1類営業(空港管理規則12条1項の規定に基づく構内営業であり,空港内の国の管理する土地,建物その他の施設を借用して営業を行う場合である。)の承認を受け,その後,当該承認が更新され続けており,原告の給油施設及び給油車両は八尾空港内にある。(弁論の全趣旨)
原告の八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の売上高は,原告の直営11空港等における機上渡し給油による航空燃料の売上高の中で,平成27年度ないし平成30年度の各年度(ただし,平成30年度については平成30年4月1日から平成31年1月31日までをいう。以下同じ。)において,名古屋飛行場に次いで2番目に高いものであった。
(イ) マイナミ給油ネットワークについて
a マイナミ給油ネットワークの概要
原告は,原告の直営11空港等以外の空港等において航空燃料の 供給販売事業を営む給油会社との間で業務委託契約を締結し,原告の取引先需要者が,当該空港等に飛来した場合に,当該給油会社(他社に機上渡し給油を再委託している航空燃料の販売会社も含む。以下,「提携先給油会社」といい,後記の≪A≫株式会社と併せて「提携先給油会社等」という。)に申し出れば,①提携先給油会社から原告が給油量相当量の燃料を購入する,②原告が提携先給油会社に機上渡し給油業務の代行を委託する,③原告が当該取引先需要者に当該燃料を販売するという仕組みを構築し,これにより,原告は,当該取引先需要者が当該空港等において原告との取引口座で給油を受けられるようにしている。
この仕組みは,航空機の乗員が給油代金の支払に必要な高額な資金を持ち歩くことなく国内の多くの空港等で機上渡し給油を受けたい,との取引先需要者からの要請に応えるために構築された。
また,福岡空港には,原告のグループ会社である≪A≫株式会社(以下「≪A≫」という。)が給油会社として存在し,原告は,同社との間で給油業務委託に関する契約を締結し,同社を通じて航空燃料を販売している。
(以下,①原告の直営11空港等における給油サービス,②上記仕組みによる提携先給油会社による給油サービス,及び③≪A≫による給油サービスからなる全国の給油ネットワークを併せて「マイナミ給油ネットワーク」という。)
b マイナミ給油ネットワークの利用可能空港等
平成29年度に航空燃料の給油実績のあった全国の公共用の空港等91か所のうち,同年度において,原告が,マイナミ給油ネットワークにより取引先需要者に対して航空燃料の販売を行うことが可能な空港等は80か所(原告の直営11空港等11か所及び提携先給油会社等の空港等69か所)であり,実際に販売した実績のある空港等は69か所(原告の直営11空港等11か所及び提携先給油会社等の空港等58か所)であった。
c マイナミ給油ネットワークの利用状況
八尾空港協議会員のうち,≪B≫株式会社,≪C≫株式会社,≪D≫株式会社,≪E≫株式会社,≪F≫株式会社,≪G≫株式会社,≪H≫株式会社,株式会社≪Ⅰ≫及び≪J≫の9社は,平成29年度の実績において,いずれも,原告が唯一の給油会社である名古屋飛行場で原告から給油を受けていたほか,その他の空港等においてもマイナミ給油ネットワークを利用して機上渡し給油を受けていた。
(ウ) 八尾空港以外における原告の地位等
平成28年12月以降,少なくとも令和元年11月までの間,名古屋飛行場,広島ヘリポートには原告以外に給油会社は存在していなかった。なお,東京都東京ヘリポートには,原告と≪K≫株式会社の2社の給油会社が存在していたところ,JET A-1は両社とも取り扱っていたが,AVGAS100LLは原告のみ取り扱っていた。
また,平成28年12月以降,少なくとも令和元年11月までの間,福岡空港には,≪A≫以外に給油会社は存在していなかった。
イ 佐賀航空の八尾空港における事業活動
佐賀航空は,平成27年11月13日,八尾空港事務所長から第2類営業(空港管理規則12条の2第1項の規定に基づく構内営業であり,空港内の国の管理する土地,建物その他の施設において行う営業で,第1類営業以外の場合である。)の承認を受け,平成28年11月1日から八尾空港で機上渡し給油による航空燃料の販売を開始した。
佐賀航空は,その給油施設が八尾空港の外(隣接地)にあるため,八尾空港を利用する需要者から機上渡し給油の依頼を受けてから,機上渡し給油を開始するまで,15分程度を要する。(乙22,34,48,49)
(5) 八尾空港における需要者の概要
八尾空港の給油会社から機上渡し給油を受ける需要者には,①八尾空 港に拠点を置く需要者と,②他空港等を拠点とする需要者,具体的には,他の空港等から八尾空港を目的地又は経由地として同空港に航空機を飛行させる航空事業者,官公庁並びにその他の法人及び個人とがあり,①として,八尾空港に拠点を置く航空事業者及び航空機の整備事業者,八尾空港に格納庫を置いて消防ヘリコプターの運航を行う大阪市消防局及び警察ヘリコプターの運航を行う大阪府警察,自家用機を八尾空港に定置する法人及び個人がいる。
上記①の八尾空港に拠点を置く需要者のうち,後記(7)アの平成28年12月7日付け八尾空港協議会員宛て文書の通知先となった≪B≫株式会社,≪C≫株式会社,≪D≫株式会社,≪L≫株式会社,≪E≫株式会社,≪F≫株式会社,≪G≫株式会社,≪H≫株式会社,株式会社≪Ⅰ≫,≪J≫及び大阪市消防局の11名(以下「八尾空港協議会員11名」という。)が本件市場における需要の約8割を占めている。
(6) 佐賀航空が八尾空港における営業の開始に至るまでの経緯
ア 八尾空港への参入前の佐賀航空に関する事情
(ア) 佐賀航空の運航又は整備した機体について,平成12年から平成21年までの9年間に,以下のとおり,4件の航空事故が発生した。(甲22)
a 平成12年,佐賀航空が運航する航空機について,機長の判断および操作が適切でなかったことにより搭乗者が軽傷を負う事故が発生した。
b 平成16年,佐賀航空が運航する航空機が墜落し搭乗者が死亡する事故が発生した。運輸安全委員会の報告において,この事故の原因は,機長が空間識失調に陥ったことにあったとされている。
c 平成20年,佐賀航空が整備を請け負っていた航空機が墜落し搭 乗者が死傷する事故が発生した。この事故の原因について,搭乗者の遺族は航空機の排気管に亀裂が入っていた点にあり,佐賀航空が定期検査時にこの亀裂を見落としたと主張していた。
d 平成21年,佐賀航空が運航する航空機が離陸後エンジンの停止により不時着する事故が発生した。運輸安全委員会の報告において,この事故の原因は,航空機のアイドル調整ねじの脱落にあったとされている。
(イ) 国土交通大臣は,国土交通省大阪航空局が平成22年9月8日から17日の間に実施した立入検査の結果,佐賀航空の所有する航空機4機について,エンジンのシリンダー等の部品を記録に残さないまま交換していたことなど,整備管理体制に不適切な点があったため,平成22年9月22目,佐賀航空に対し,航空輸送の安全確保に関する業務改善勧告を行った。(甲23)
(ウ) 原告は,平成13年以降平成25年頃まで佐賀航空を佐賀空港における提携先給油会社と位置づけていたほか,平成14年頃,佐賀航空に対し,給油車を貸与し,航空燃料を販売していた。(乙145,146,148~150)
イ 佐賀航空による九州での事業活動等
(ア) 原告は,遅くとも平成26年7月頃までに,佐賀航空が航空ガソリ ン(AVGAS100LL)を輸入し,同社の航空機に給油するほか,他社の航空機の給油のために九州各県で販売していることを認識していた。
(イ) 原告の販売部長は,遅くとも平成26年9月頃には,取引先需要者 である≪M≫株式会社が,大分空港において,佐賀航空から航空ガソリンの補給を受けていることを認識していた。(弁論の全趣旨)
(ウ) 原告は,平成26年当時には,自社の航空ガソリンと佐賀航空の航 空ガソリンとの混合の可能性を問題視し,又はこれを防ぐための対応はしていなかった。
ウ 佐賀航空による八尾空港での航空燃料販売への参入とこれに伴う原告の対応等
(ア) 佐賀航空は,平成27年6月4日に八尾空港事務所に対し,また, 同月18日に国土交通省大阪航空局(以下「大阪航空局」という。)に対し,八尾空港において第1類営業の承認を得て航空燃料を販売したい旨を相談した。
八尾空港事務所は,同月19日頃,八尾空港協議会会長会社であった≪B≫株式会社に対し,佐賀航空から大阪航空局に対して,八尾空港で航空燃料を販売する構内営業を行いたい旨の話があったことを伝えた。
これを受け,八尾空港協議会会長会社であった≪B≫株式会社,副会長会社であった株式会社≪Ⅰ≫及び原告の3社は,平成27年6月23日,佐賀航空が八尾空港において航空ガソリン(AVGAS100LL)を販売したい旨打診している件について協議を行った。その協議において,原告は,佐賀航空の参入により,自社が「大きな影響を受ける唯一の企業」であるとして,参入に反対である旨述べ,佐賀航空の参入により八尾空港での航空燃料の供給が需要の2倍を超え,原告も佐賀航空も共倒れになる旨述べた。
(イ) 原告は,平成27年7月中旬頃,八尾空港における佐賀航空の構内 営業の計画に関し,八尾空港協議会員宛ての「八尾空港におけるS社の構内営業承認について」と題する意見書(乙60)を作成し,同月22日頃,八尾空港協議会員の航空事業者等にこれを配布した。
当該意見書には,①原告の供給により八尾空港における需要は満た されているため,佐賀航空に構内営業の承認をすることは不要である旨,②佐賀航空の構内営業が承認された場合,原告との間で過当競争が引き起こされるおそれが極めて高く,両者とも財務状況を悪化させ,給油業務を適正に行えなくなるおそれがある旨等が記載されていた。
(ウ) 原告は,平成27年7月22日,八尾空港事務所長と面談し,上記 意見書を手交した上で,原告にとって「経営上死活的な問題」であるとして,佐賀航空の構内営業の承認申請を承認しないよう求めた。
(エ) 八尾空港協議会は,平成27年9月1日,臨時協議会を開催し,佐賀航空が出席して事業計画を説明し,質疑応答がなされた。佐賀航空の退席後,原告は,佐賀航空の構内営業承認について反対する旨の意見を表明した。原告のこの意見表明は,八尾空港協議会員への根回しとして配布した前記(イ)の意見書(乙60)に沿って行われた。(乙62)
原告の常務取締役である≪X2≫(以下「≪X2≫」という。)は,平 成27年9月2日,上記臨時協議会について,社内報告書(甲16の2)を作成した。同報告書には,≪X2≫の意見として,①「各使用事業者にとっては,自分の事業にとっての利害のほうが分かりやすいということがはっきりと見えた」こと,②原告としては,「各社が検討しやすいように,本日の協議内容を踏まえて,問題点を抽出し,それを分かりやすく書いて,提供することが得策と判断する。」こと,③問題点の一つとしての「八尾空港にける燃料混合リスクの排除リスク」(原文ママ)の説明として,原告を「MKS」として(以下同じ),「八尾空港において佐賀航空から給油を受けると,燃料の混合リスクを避けるために,八尾空港においては,MKSは給油をすることができないというリスク。燃料の混合リスクとは,航空機事故の場合,燃料が原因であるか否かの品質検査があり,混合している場合には,MKSも疑われることになり,そのようなリスクはとる立場にない。」「つまり,MKSは二股をかける業者には給油しない。」との記載があった。(甲2,16の2〔4枚目〕,弁論の全趣旨)
(オ) 原告は,平成27年9月3日,八尾空港協議会員宛ての「佐賀航空の AVGAS100LL販売事業に関する問題点に関する検討資料」と題する文書(乙63)を作成し,八尾空港協議会員11名に配布した。原告は,当該文書に,八尾空港において佐賀航空が給油した機体には燃料混合リスクがあり,原告は「給油を行えない」旨等を記載していた。
(カ) ≪X2≫作成のメモには,平成27年9月7日の記載として,「使用事業者サイドのリスク」として「MKSは混合は不可」,「地方ネットワークも使えなくなる(S社と契約した場合)」との記載がある。(乙131)
(キ) 八尾空港協議会は,平成27年9月14日,臨時協議会を開催し,佐賀航空への八尾空港協議会員各社の質問事項をまとめた資料(乙66)を配布した上で,佐賀航空の航空燃料販売計画についての質問書の取りまとめについて協議した。
原告は,上記臨時協議会の社内向け報告書(甲17の2)の中で,八尾空港協議会が作成した上記資料(八尾空港協議会員各社の質問事項をまとめたもの)の内容が,原告が作成し各社に配布していた前記(オ)の文書(乙63)の内容と同じであり,原告の狙い通りとなった旨記載していた。
(ク) 八尾空港協議会は,平成27年9月16日,佐賀航空に対し,「八尾空港での給油事業計画内容の質問について」と題する文書(甲18)を送付し,同社の品質管理,安全管理,品質保証等について質問した。
これに対し,佐賀航空は,「八尾空港での給油事業計画内容の質問について(御回答)」と題する回答書(甲19)をもって回答した。
同回答書には,①佐賀航空は,国土交通省航空局の安全管理の監査を毎年受けている旨,②≪N≫による,「燃料品質管理体制」,「品質保証」,「教育及び訓練体制」,「燃料給油の地上取扱い方法」等についての入札参加資格に合格し,平成27年度から≪Nの施設≫の給油業務を実施している旨,③大分空港では3年前から大手民間会社に航空燃料の給油を行っており,年数回の定期的な監査を受けている旨等が記載されていた。(甲19)
(ケ) 原告は,平成27年9月25日,八尾空港協議会会長会社に対し, 八尾空港協議会が八尾空港事務所に提出する意見書作成の重要参考事項としてもらうため,前記(キ)の佐賀航空の回答書(甲19)に原告の疑問点を付記した意見書(乙67)を送付した。
また,原告は,同月29日,八尾空港協議会会長会社に対し,佐賀航空の構内営業の承認申請についての答申案とともに,同社の回答書は「いい加減な内容」で,「具体性を記載しないのは,事業会社としては失格」,また,「直接的利害関係人」として「大変心配」しており,「直接的な利害関係人としての立場」から答申案を作成した旨記載したメールを送信した。(乙68)
(コ) 八尾空港協議会は,平成27年9月30日,臨時協議会を開催し, 佐賀航空の八尾空港における航空燃料販売の事業計画についての意見書の取りまとめを議論し,同協議会会長は,同日,取りまとめた意見書を,八尾空港事務所長に提出した。
≪X2≫は,上記臨時協議会等の面談記録を作成し,社長を含む社内に報告した。同取締役は,その面談記録に,①八尾空港協議会に対し,「佐賀航空については,安全面,品質面等において信頼できないという,払拭できない不安を抱かせるにおいて」原告の「思惑通りに方向付けができた」こと,②八尾空港協議会の意見書は,「極めてネガティブな意見になっているので」「大阪航空局が,佐賀航空に対して,『構内営業許可を承認する』ということは先ず考えられない。」「大阪航空局が承認するとすれば」「佐賀航空の考えている機上給油でも,空港運営上問題ないということを,書面で明らかにすることが不可欠であろう。このようなことは,今の佐賀航空には,無理な話であろうと判断する。」と記載していた。(甲20の2〔4頁〕)
エ 佐賀航空の構内営業の承認
(ア) 八尾空港事務所長は,平成27年11月13日,佐賀航空による同年10月13日付けの八尾空港における航空燃料の販売についての第2類営業の承認申請を承認した。
(イ) 原告は,平成28年3月2日,前記(ア)の構内営業承認について,八尾空港事務所長に抗議するとともに,同年4月14日,大阪航空局長に対し,八尾空港における航空燃料の供給過剰・過当競争,同空港の運営の混乱,佐賀航空の事業遂行能力等への不安等を理由に,当該構内営業承認の取消しを求めて審査請求をした。
(ウ) 大阪航空局長は,平成29年3月28日,前記(イ)の審査請求を却下した。なお,処分庁である八尾空港事務所長が審査庁である大阪航空局長に提出した弁明書には,佐賀航空提出の事業計画書に,制限区域の立入り,機上渡し給油の際の給油取扱所及び許可体制等,法令遵守や安全管理体制の確立等が明記されており,当該営業の遂行上,適切な計画を有していると判断した旨が記載されていた。
オ 佐賀航空の八尾空港協議会への入会
(ア) 佐賀航空は,平成28年9月28日,八尾空港協議会に入会を申し込んだ。
(イ) これを受けて,平成28年10月6日,八尾空港協議会の臨時理事会が開催されたが,結論は出ず,同月20日開催の臨時理事会において,原告以外の出席理事全員の賛成により,佐賀航空の入会が承認された。
カ 佐賀航空の八尾空港での営業の開始
佐賀航空は,平成28年11月1日,八尾空港において機上渡し給油による航空燃料の販売事業を開始した。
佐賀航空は,八尾空港でジェット燃料(JET A-1)の販売を開始するに当たり,平成28年11月,石油連盟の一機構であるJIG国内委員会に加入した。
(7) 原告による需要者に対する通知行為等
ア 平成28年12月7日付け八尾空港協議会員宛て文書による通知
(ア) 原告は,佐賀航空が八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売を開始したことを受け,平成28年12月7日,八尾空港協議会員11名を訪問して,同日付け同協議会員宛ての「八尾空港おける航空機給油について」(ママ)と題する文書(以下「12月7日文書」という。)を配布し,下記(イ)の記載を含む通知をした(以下「12月7日通知」という。)。(甲27,乙77)
(イ) 「佐賀航空様の航空機燃料と当社の航空機燃料を混合した場合,それに起因する責任は負えません。従って,当社契約先である会社様が,佐賀航空様より航空機燃料の販売を受けられた場合,以下の理由により,当社からの給油継続を致しかねると考えております。」
「通常,国内の航空機燃料取扱い会社は,航空機燃料取扱いについての情報を航空機燃料取扱い石油元売会社を通じ取得します。この場合,一般的に国内の航空機燃料取扱い会社は,その石油元売会社の契約先となることが多く,これに属さない航空機燃料取扱い会社は,航空機燃料の取扱いについての知識や理解が不足していることが多いと言わざるを得ません。」
「現状において当社が信任できない,そのような航空機燃料の取扱い会社の航空機燃料と,適切に航空機燃料を取扱う会社の航空機燃料を混合した場合,責任の所在が航空機燃料にあるのか,給油会社にあるのか甚だ不明確となります。その結果,適切に航空機燃料を取扱う会社が要らぬ疑義をかけられかねないのみならず,万一の場合には,責任の所在が明確にできないばかりでなく,適切に航空機燃料を取扱う会社として,航空機燃料の供給元である石油元売会社からの保障も受けられなくなりかねません。当社としては,そのような潜在的な危険が内在する給油作業は致しかねます。」
「また,当社の契約先の各地方給油会社においてもこの状況に何ら変わることはなく,特に航空機燃料供給元である石油元売会社による万一の場合の保障に関しては,重大な関心をお持ちになっており,それゆえ各地方の当社契約先給油会社においても同様の意向が表明されており,これらの地方空港においても当社の契約先供給会社による給油継続が困難になることが考えられます。」
イ 平成29年2月10日付け消防局宛て文書による通知
(ア) 八尾空港協議会員11名のうちの1名である大阪市消防局は,平成29年1月25日,同年2月及び3月分の八尾空港の機上渡し給油によるジェット燃料の購入について原告と佐賀航空による指名比較見積を実施し,佐賀航空が契約の相手方となった。
(イ) 原告は,前記(ア)を受け,平成29年2月10日,大阪市消防局に対し,同日付け同消防局宛ての「当社直営空港での燃料販売について」と題する文書(以下「2月10日文書」という。)を送付して,新千歳空港を除く直営11空港等及び福岡空港の合計11の空港等での航空燃料の販売に関し,下記(ウ)の記載を含む通知をした(以下「2月10日通知」という。)。(甲29)
(ウ) 「下記の理由から,貴局航空機に対し,当社直営空港の燃料販売を停止させて頂きますことをご報告するとともに,ご対応の方,宜しくお願い申し上げます。」
「当社不落札期間中の対応は,下記の通りとなります。」
「エス・ジー・シー佐賀航空㈱(以下佐賀航空)が航空機に対して給油している航空機用燃料油の品質と我々給油会社が国内石油元売会社より供給を受けている航空機用燃料油の品質が,同等の品質管理を経て,航空機に給油されているとは言えません。」
「また,同機体に佐賀航空が給油した航空機用燃料油の残燃料と当社が新たに給油した航空機用燃料油が,同機体の燃料タンク内で混ざった場合,何らかの原因による事故が発生した際,原因の追究が困難になります。
「よって,当社の対応として,佐賀航空が給油した航空機の燃料タンク内に残燃料がある場合,当社として品質の保証が困難になるため,給油することは出来ません。」
ウ 平成29年3月15日付け顧客宛て文書による通知
(ア) 原告は,平成29年3月15日付けで,12月7日文書の内容を簡素にした「八尾空港おける航空機給油について」(原文ママ)と題する顧客宛て文書(以下「3月15日文書」といい,これと12月7日文書及び2月10日文書とを併せて「本件通知文書」という。)を取引先需要者261名(12月7日文書の配布先である八尾空港協議会員11名を含む。)に送付し,下記(イ)の記載を含む通知をした(以下「3月15日通知」という。)。(甲30,乙79,80)
(イ) 「当社はお客様へ供給する航空機燃料の品質管理に対し重大な責任を負っており,品質を完璧に保持した航空機燃料を供給する義務があります。」「このような中,佐賀航空様の航空機燃料と当社の航空燃料を混合した場合,それに起因する事故等に係る責任は負えません。万一の場合,責任の所在が何れの航空機燃料にあるのか,全くの不明確となります。従って,当社契約先であるお客様が,佐賀航空様より航空機燃料の給油を受けられた場合,それ以降は当社からの給油継続を致しかねると考えております。」
エ 平成29年5月中旬頃以降の免責文書への署名又は抜油を求める対応
(ア) 大阪航空局長は,平成29年3月30日,原告に対し,3月15日文 書を発出した背景や,八尾空港及びその他の空港等における給油継続停止の有無等について,空港管理規則24条(地方航空局長又は空港事務所長は,空港管理上必要があるときは,施設利用者又は営業者に対し,施設又は営業の状況等について,報告を求めることができる。)に基づき,報告を求めた。
大阪航空局長は,平成29年3月31日付けで,原告の八尾空港における航空燃料の販売に係る同年4月1日から3年間の構内営業について,「合理的な理由なく役務の提供を拒むなど」や「他の構内営業者の営業行為を阻害するなど」に該当するときは承認を取り消すことがあること等の条件を加えた上で承認するとともに,原告に対し,上記の報告要求に対する回答内容によっては営業停止その他必要な措置を命ずることや,承認条件に従わなかった場合は構内営業の承認を取り消す旨をあらかじめ通知した。
原告は,大阪航空局長の報告要求に対し,平成29年4月12日付けの報告書(甲37)を提出した。同報告書には,①3月15日文書は,顧客の安全性を確実に担保し当社の責任範囲の明確化を図るために,速やかに説明責任を果たすためやむを得ず執った措置である旨,②八尾空港及びその他の空港等において給油を停止したことは,過去において一切なく,今後も,安全性の確保について懸念が残る状況であれば,顧客に対して継続して当社の考え方を説明し理解を求めていく旨等が記載されていた。(甲37)
原告は,平成29年4月14日頃,大阪航空局による営業停止や構内営業承認の取消しのおそれを考慮し,「八尾空港における給油:当局の処分に対する対抗策」と題する検討資料を作成して,「当局処分前に執りうる事前の対策」について検討し,社長に説明した。
(イ) 原告は,平成29年4月14日,佐賀航空から航空燃料の給油を受けた需要者に対する同日以降の航空燃料の機上渡し給油について,次の対応を取るよう社内に周知した。
① 当該取引先需要者に,3月15日文書を提示し,次の点を説明すること。
(i) 原告が,事業所開設以来,安全性を確保するために航空燃料の品質管理に取り組み続けてきたこと。
(ⅱ) 佐賀航空が提供する航空燃料の品質については,同社から説明もなく,当該航空燃料の品質がどのようなものであるか原告には分らないこと(その際,佐賀航空の航空燃料について「品質が悪い」,「燃料は危険」等,佐賀航空への営業妨害と受け取られかねないことを一切言わないこと)。
(ⅲ) 佐賀航空の航空燃料と原告の航空燃料が混合した場合,原告は,航空燃料に起因する事故等に係る責任は負えないこと。
② 当該取引先需要者が前記①の説明を理解して納得したことを確認するために「私は,この度の航空機燃料の給油に関し,マイナミ空港サービス株式会社より,航空機燃料に係る安全性の確保について説明を受けました。私は,その説明を理解し納得した上で,航空機燃料の給油を申し込みます。」と記載された文書に押印又は署名を求め,それを受領した後に給油を実施すること(以下,佐賀航空の航空燃料と原告の航空燃料の混合に起因する航空機に係る事故等が発生した場合に原告に責任の負担を求めない旨を確認する文書を「免責文書」といい,免責文書に署名を求める対応を「免責文書対応」という。)。
③ 万一,押印又は署名を拒まれた場合,その理由を聞き,その上で,原告としては,原告から給油するに先立って,機体に残存する佐賀航空の航空燃料を抜き取る必要があることを説明し,残燃料の抜取りをした後,給油を行うこと(以下,航空機の燃料タンク内の航空燃料を抜き取ることを「抜油」といい,押印又は署名を拒まれた場合に取ることとされていたこのような対応を「抜油対応」という。)。
(ウ) 原告は,平成29年5月19日,前記(イ)②の免責文書の内容を航空燃料が混合した場合の責任を顧客が原告に対して求めないことを明記したものに変更することとし,同月26日,社内の各事業所長に対し,前記(イ)②の免責文書を,「私は,この度の航空機燃料の給油に際して,貴社より,エス・ジー・シー佐賀航空株式会社の航空機燃料と貴社の航空機燃料が混合した場合,それに起因する事故等の責任は負えないとの説明を受けました。私は,その説明を理解し,納得した上で,貴社に航空機燃料の給油を申し込みます。なお,万一の場合であっても,貴社に航空機燃料が混合した場合の責任の負担は求めません。」との内容に変更した免責文書(甲40〔3枚目〕)に差し替えるよう伝えた。
(エ) 原告は,平成29年5月中旬頃以降,前記(イ)及び(ウ)の指示に基づき,佐賀航空から機上渡し給油を受けた需要者からの航空燃料の給油に係る依頼に応じる条件として,実際に給油が行われる航空機のパイロット又は整備士等に対し,免責文書への署名を求め,これに応じない場合には,抜油を求めていた(以下「免責文書・抜油対応」といい,12月7日通知,2月10日通知,3月15日通知及び免責文書・抜油対応を併せて「本件通知行為等」という。)。(甲39,乙22〔24~32頁〕,49〔16~33頁〕,88〔2~9頁〕,90〔7~15頁〕,弁論の全趣旨)
(8) 本件通知行為等実施後の経過
ア 大阪航空局は,平成29年6月2日,原告の前記(7)エ(ア)の報告書に 関し,原告に対するヒアリングを実施した。大阪航空局は,当該ヒアリングにおいて,原告に対し,佐賀航空の航空燃料が国土交通省の基準に合致している旨伝えるとともに,3月15日文書の取下げ又は訂正を求めた。これに対し,原告は,給油を拒否した事例はない旨等を回答し,原告において文書を撤回するとの回答はしなかった。(甲41,乙58)
イ 大阪航空局長は,原告に対する構内営業承認を取り消さなかった。(弁論の全趣旨)
(9) 本件通知行為等の取止め等.
ア 被告は,平成30年5月22日,原告の行為が独禁法に違反する疑いがあるとして,立入検査を実施した。
イ 原告は,令和2年3月,本件排除措置命令案に係る意見聴取手続に先立ち,開示証拠の閲覧又は謄写を行った。
原告は,当該閲覧により,佐賀航空が,平成30年6月からジェット燃料(JET A-1)を専ら国内石油元売会社から仕入れて販売していると被告に報告していること等が判明したなどとして,令和2年3月25日付け「弊社発信の2017年3月15日付け『八尾空港における航空機給油について』などにてお知らせした弊社の対応のうち,JET A-1に関する対応の取止めについて」と題する文書(以下「3月25日文書」という。)により,取引先需要者に対し,以下の記載を含む通知をした(以下「3月25日通知」という。)。(甲45)
「エス・ジー・シー佐賀航空株式会社様(以下「佐賀航空様」といいます。)が,2018年6月以降,機上渡しの方法等で販売されているジェットエンジン向けの航空燃料JET A-1は,国内石油元売会社から仕入れたものであると,公正取引委員会に対して報告されていることが今月分かりました。つきましては,弊社は,本日(2020年3月25日)より,佐賀航空様のJET A-1の給油を受けられた機体につきましても,他の給油会社様から給油を受けた機体と同様に取扱い,弊社のJET A-1を給油させていただきます。」
「弊社は,八尾空港において2016年11月より,エス・ジー・シー佐賀航空株式会社様(以下,佐賀航空様といいます。)が,航空機用燃料の給油業務を開始されたことに伴い」「佐賀航空様の航空燃料の給油を受けた機体については当社から給油を致しかねると考えておりますという旨をお伝えし,また,給油の条件として,当社より,佐賀航空様の航空燃料と当社の航空燃料を混合した場合,それに起因する航空機に係る事故・故障等が発生した場合でも当社は責任を負えないとの説明を受けた旨などを記載した書面への署名等をお願いしてまいりました。」「上記のような運用を取らせていただいた理由は,佐賀航空様が販売される航空燃料については,弊社において統一品質規格と同等の品質を確認,判断できなかったところにあります。」
「ところが,今般,佐賀航空様が,公正取引委員会に対して2018年6月以降JET A-1を国内石油元売会社から仕入れて販売していると報告していることが今月判明しました。」
「そうしますと,佐賀航空様の取り扱われる燃料は統一品質規格に合致した燃料ということがいえますから,今後は,佐賀航空様からJET A-1の給油を受けた機体につきましても,他の給油会社様から給油を受けた機体と同様に取扱い,給油させていただきます。(なおAVGAS100LLにつきましては現時点では運用に変更はござません。)」(ママ)
ウ 被告は,本件排除措置命令に先立ち,意見聴取手続を実施した後,令和2年7月7日,原告に対し,独禁法7条1項に基づき,本件排除措置命令を行った。本件排除措置命令を記載した排除措置命令書(以下「本件排除措置命令書」という)は令和2年7月8日に原告に送達された。
エ 原告は,本件排除措置命令に基づく措置として,取締役会において本件通知行為等を取りやめる旨を決議し,取引先需要者及び佐賀航空に対し,令和2年8月20日付けの文書により,その旨を通知し,当該通知は同月21日から同月28日にかけて各宛先に到達した。(乙97,98)
(10) 本件課徴金納付命令
被告は,令和3年2月19日,原告に対し,本件違反行為が独禁法2条5項に規定する私的独占に該当し,同法3条に違反するものであるとした上で,本件違反行為の実行期間を平成29年8月21日から令和2年8月20日までの3年間と認定するとともに,独禁法施行令(ただし,令和2年政令第260号による改正前のもの。)9条に基づき算定される本件違反行為の実行期間における八尾空港における機上渡し給油による航空燃料に係る原告の売上額を6億1233万2236円と認定し,独禁法7条の2第4項,7条の9第4項,7条の8第2項に基づき算出された612万円を課徴金として納付するよう命じ,本件課徴金納付命令を記載した課徴金納付命令書は同月22日,原告に送達された。(乙112,113)



2 争点とこれに対する当事者の主張
(1) 排除行為該当性(争点1)
(被告の主張の要旨)
本件通知行為等が独禁法2条5項の「他の事業者の事業活動を排除」する行為(以下「排除行為」という。)に該当するか否かは,本件通知行為等につき,自らの市場支配力の形成,維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり,他の事業者である佐賀航空の本件市場での事業活動の継続を著しく困難にするなどの効果を持つものといえるか否かによって決すべきであるところ,本件通知行為等は,排除行為に該当する。
ア 12月7日通知について
(ア) 12月7日通知は,本件市場において圧倒的なシェアを有しており,佐賀航空より競争上優位な立場にある原告が,本件市場における航空燃料の供給の全てを長年原告に依存しており,本件市場における需要の約8割を占める主要な需要者である八尾空港協議会員11名に対して,佐賀航空から機上渡し給油を受けた場合において,八尾空港を含む直営11空港等において原告から給油を受けられなくなるリスクのみならず,全国約70か所の空港等に所在する原告の提携先給油会社等からの給油が受けられなくなるリスクがあることを提示することにより,本件市場における需要の約8割を占める主要な需要者が佐賀航空と取引を開始することを強く牽制ないし抑制するものである。
(イ) そして,原告は,自由競争経済秩序の下で能率競争を行うことで需 要者に選択される手法を検討すべきであったところ,これとは異なる手段を選択し,需要者が佐賀航空と取引を開始することを強く牽制ないし抑制させた上,需要者である八尾空港協議会員11名に対し,事実上,佐賀航空のみから給油を受けるか,原告のみから給油を受けるかの二者択一を迫る状況を強い,需要者の商品選択の自由を歪めたのであり,かかる行為は,自由競争経済秩序の基本である能率競争とは,およそ相容れない。
(ウ) 以上によれば,原告が,12月7日通知をする行為は,それ自体,需要者が佐賀航空と取引を開始することを強く牽制ないし抑制することを通じて,佐賀航空の事業活動を人為的に制約し,その競争的抑制を緩和するものであって,自らの市場支配力の形成,維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり,他の事業者である佐賀航空の本件市場での事業活動の継続を著しく困難にするなどの効果を持つ。したがって,12月7日通知は,「他の事業者の事業活動を排除する」行為に該当する。
イ 2月10日通知及び3月15日通知
2月10日通知及び3月15日通知は,12月7日通知により成立した 排除行為に係る排除効果を強化するものである。
2月10日通知は,佐賀航空から給油を受けている限り,原告からの給油を受けられない旨を需要者に通告することにより,また,3月15日通知は,12月7日通知と同様原告の取引先需要者が佐賀航空から給油を受けた場合には,原告からの機上渡し給油の継続が受けられなくなるリスクがあることを提示することにより,本件市場における需要者が佐賀航空と取引を開始し又は継続することを牽制ないし抑制するものである。そして,特に,3月15日通知は,通知の対象者を取引先需要者約250名に拡大している。
したがって,2月10日通知及び3月15日通知は,12月7日通知と同様の内容を繰り返すことにより,また,通知の対象となる需要者の範囲を大幅に拡張して,排除の包囲網を最大限拡大することにより,12月7日通知により成立した排除行為に係る排除効果を強化するものである。
ウ 免責文書・抜油対応
本件において排除行為は,12月7日通知により直ちに成立し,2月10日通知及び3月15日通知により,その排除効果がより強化されていたところ,平成29年5月中旬以降に実施された免責文書・抜油対応は,以下のとおり,当該排除行為について,その排除効果を維持するものである。
原告の免責文書・抜油対応は,佐賀航空から給油を受けた需要者についても,当該文書への署名に応じ,又は,抜油に応じれば,原告が給油に応じるとするものであった。しかし,需要者にとって,そのような文書に署名すべき義務はないところ,機上渡し給油の現場で署名を求められる需要者の従業員(パイロット又は整備士等)にとって,あたかも事業者として原告の免責を認めるかのような文書に署名することには大きな負担が伴う。また,需要者としても,航空機に係る事故等が発生した場合において,法律上,原告が損害賠償責任を負う場合も含め原告の損害賠償責任を免責するかのような文書に応じることには,リスクないし負担が伴う。抜油についても,需要者にとっては抜油に応じる必要はないところ,原告と需要者のどちらが抜油の経済的負担を負うのかが明らかでなく,抜油に伴う時間的ロスも生じることとなる。
これらのリスクないし負担は,佐賀航空から給油を受けた後に原告から給油を受ける度に生じる一方で,需要者において原告と取引をする必要も否定できないことから,免責文書・抜油対応は,本件市場における需要者が佐賀航空と取引を開始し又は継続することを引き続き牽制ないし抑制する効果を有する。
したがって,免責文書・抜油対応は,12月7日通知により成立した排除行為に係る排除効果並びに2月10日通知及び3月15日通知によってより強化された排除効果を維持するものである。
エ 本件通知行為等が一連・一体のものとして排除行為に該当すること
12月7日通知,2月10日通知,3月15日通知及び免責文書・抜油対応(本件通知行為等)は,いずれも佐賀航空が本件市場に参入したことを契機として連続して行われたものであり,行為に至る経緯が共通し,時期も近接しており,また行為の相手方も共通している八尾空港において佐賀航空を利用する(又は利用する可能性のある)航空燃料の需要者に対して行われたものであって,2月10日通知及び3月15日通知,免責文書・抜油対応は12月7日通知の効力を維持・強化するものであるから,一連・一体の一つの行為ととらえることができる。
そして,前記アないしウによれば,本件通知行為等は,能率競争とは相いれない行為であり,本件市場の需要者の自由な選択を歪めるものであって,正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有し,かつ佐賀航空の利用を抑制する効果を有するものといえる。このような佐賀航空の利用の抑制効果が生じる範囲は本件市場の大部分の需要者に及び,行為が行われた期間は約3年7か月と長期間にわたっており,利用抑制効果の程度は著しいものであった。したがって,本件通知行為等は,佐賀航空の本件市場での事業活動の継続を著しく困難にする効果を有するものといえる。
オ 原告の排除の意図が本件通知行為等の排除効果を推認させること
原告は,以下の事実からすれば佐賀航空を排除する意図を有しており,これは,本件通知行為等の排除効果を推認させる。
(ア) 原告の本件通知文書や免責文書の記載は,佐賀航空の八尾空港への参入を契機として,客観的に合理的な根拠なしに,佐賀航空の航空燃料と原告の航空燃料が需要者の航空機の燃料タンク内で混合すると航空事故等が発生するかのように記載するものであるとともに,原告から航空燃料の機上渡し給油を受ける条件として,佐賀航空から機上渡し給油を受けないこと又は免責文書に署名すること若しくは抜油対応を求めるものである。
(イ) 原告は,平成27年6月から同年7月頃,佐賀航空が八尾空港に参入するとの情報に接すると直ちに反対の姿勢を表明し,八尾空港事務所に対して佐賀航空の構内営業の承認をしないよう働きかけ,同年9月頃,八尾空港協議会員から支持を集めるため,燃料混合のリスクを突如持ち出し,「二股をかける業者には給油しない」こととし,八尾空港協議会員に対して,佐賀航空から給油を受けた場合原告は給油できない旨伝え,また,自社の思惑どおりに佐賀航空の航空燃料の品質・安全性に対する払拭できない不安を抱かせ,構内営業の承認に反対する旨の意見書を同協議会が提出するよう誘導するなど,佐賀航空が八尾空港の構内営業に参入できないように働きかけていた。
(ウ) 原告は,平成27年9月末頃以降,八尾空港における航空燃料の販売に参入しようとしている佐賀航空について,追い詰めるような追い込みを対処方針として進める,早めに排除したい等の佐賀航空排除の意識を社内で共有していた。
カ 本件通知行為等に人為性がないとの原告の主張に対する反論
(ア) 品質の評価は市場にゆだねられるべき問題であって,一私企業である原告が競争関係にある他の事業者の商品の品質を理由にその事業活動を排除することが正常な競争手段の範囲内と評価される余地はない。原告の行為が自社に生じる危難を回避するためにとったやむを得ないものであったか否かは,排除行為該当性とは無関係である。
(イ) 本件通知行為等が,「自社に生じる危難を回避するためにとったやむをえないもの」ということもできない。
a 原告が自社に生じる危難と主張する3点(①民事訴訟,刑事訴訟を提起された場合の応訴の負担,②事実誤認による判決に基づく損害賠償責任あるいは有罪判決の負担,③風評被害)について,原告の免責文書・抜油対応は,これらのリスクを回避するための有効な手段ではない。
また,12月7日文書の,提携先給油会社からの給油の継続も困難になる旨の記載は,原告に生じる危難を回避する目的との関係で必要性を欠く。
さらに,航空機事故の原因の疑いをかけられるリスクは抽象的である上,原告が,給油作業の実施の各段階において品質確認を漏れなく実施し,記録を残しているなら当該リスクはさらに低減される。
加えて,原告の給油する航空燃料と原告以外が給油する航空燃料との混合は日常的に生じているほか,航空燃料の品質の劣化が生じる可能性は様々あるにもかかわらず,原告は佐賀航空による航空燃料の品質のみを取り上げている。
b 原告の主張する事情は佐賀航空の航空燃料について適切な品質管理が図られていないとの合理的な疑いを生じさせるものではなく,また原告が実際に疑っていたとも認められない。
仮に,佐賀航空の航空燃料に問題があり,事故の発生の危険を有することが合理的に疑われる事情があったなら,原告としては,規制当局に対してその証拠を提供し,しかるべき是正措置を求めるべきであり,それで足りる。
c 原告が,本件違反行為により航空当局や競争当局から調査・処分を受けるという大きなリスクを負ってまでも本件違反行為に及んだ理由は,佐賀航空の事業活動を排除すること以外に考え難い。
原告が,当初,過当競争を理由に八尾空港参入を阻止しようとしていたにもかかわらず,航空機使用事業者である会員には,「自分の事業にとっての利害のほうが分かりやすいということがわかった」として,燃料混合リスクを強調して参入を阻止する方針に転換をしており,前記オのとおり原告が排除の意図を有していることも踏まえれば,「自社に生じる危難を回避するため」とのストーリーは後付けである。
(原告の主張の要旨)
ア 本件通知行為等の排除効果について
原告の本件通知行為等には排除効果が認められず,むしろ佐賀航空に 原告の取引先需要者を譲る効果があるから,排除行為に該当しない。
(ア) 本件市場における原告の市場シェアは,排除効果の根拠とならない。原告の地位が需要者の購買行動に影響したという事実はなく,そもそも競争に影響するのは供給能力のシェアである。本件市場において佐賀航空の市場シェアが低くとも原告に対する牽制力になるはずである。したがって,本件通知行為等よりも前に原告が独占事業者であったこと及び佐賀航空の参入後の原告の市場シェアが約8割であったことは行為の排除効果に無関係である。
(イ) マイナミ給油ネットワークの存在も,排除効果の根拠とならない。 八尾空港とそれ以外の空港の両方で原告から給油を受ける需要者が存在するとしても,原告以外の給油会社から給油を受ければ足りるし,原告が直営11空港等を有していることは,本件市場とは異なる市場の事情であって,八尾空港での排除効果には関係がない。給油会社が原告のみの空港等があることについても,原告は他の空港等の販売価格を引き上げることができるから,八尾空港において効率的な競争者の参入を阻止するインセンティブがない。マイナミ給油ネットワークは決済代行に過ぎないから,排除効果の根拠となるものではない。
(ウ) 原告と佐賀航空の給油時間の差も,10分程度に過ぎず給油会社の競争力の差になるものではなく,佐賀航空は八尾空港内の≪AA≫営業所の敷地内に給油車両を駐車させているから,給油時間に有意な差は生じない。
(エ) 12月7日通知が,需要者に対し佐賀航空のみから給油を受けるか原告のみから給油を受けるかの二者択一を迫るものだとしても,それ自体は独禁法上否定的評価を受けるわけではないから,排除効果の根拠とならない。
(オ) 免責文書・抜油対応については,抜油よりも負担の軽い免責文書へ の署名を選ぶのが通常であるところ,署名による負担は重くないので,佐賀航空との取引に影響を与えないから,排除効果を有する行為ではない。
(カ) 本件市場の需要者は,燃料の品質や,継続して取引していたこと等,それぞれ取引において重視する事情が異なり,原告の行為がなくとも需要者は佐賀航空とは取引しなかったであろうから,原告の行為は需要者の意思決定に影響を与えていない。原告の排除措置履行後も佐賀航空と取引を開始した需要者はいなかったことは,原告の行為に排除効果はなかったことを裏付ける。
イ 本件通知行為等の人為性について
自社に生じる危難を回避するためにとった防御的行為等,事業活動上 合理性を有する行為は,正常な事業活動の範囲内であり,「排除行為」に該当しないことは条理に照らして当然の法解釈である。原告の行為は,次のとおり,自社に生じる危難を回避するためにとった防御的行為としてやむを得ないものであり,社会通念に照らして事業活動上合理的性を有するものであったから,正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有しておらず,排除行為に該当しない。
(ア) 航空機の運航の安全性は,品質管理体制のとられた製油所で精製され,かつ,規格値に適合することが確認された航空燃料が,汚染されることなく,その内容・品質を維持した状態で航空機に給油されることによって担保されている。必要な品質管理体制がとられず,汚染され,規格値を外れる等した航空燃料が航空機に給油されれば,安全性は担保されず,航空機事故を招く危険が高まる。航空機事故がひとたび発生すれば,自社の航空燃料の品質(給油業務の品質も含む)に問題なかったことの立証は困難であるから,民事上の損害賠償義務の負担や刑事上の有罪判決を受けることになりかねず,事業継続上の重大な危険を負うおそれがある。そこで,事故に巻き込まれる危険を回避し,責任の所在が不明となる事態を避けることは,事業継続上必要な防御対応であるから,品質が確保されていない蓋然性がある航空燃料が給油された航空機への給油をできるだけ避けることは,原告にとって事業活動上の合理的な行為にほかならない。
(イ) 佐賀航空については,適切な品質管理を図られていないことが合理的に疑われる事情があった。
すなわち,佐賀航空は,国内石油元売会社から航空燃料を仕入れる給油会社が通常行う調達方法と異なり,自ら海外で航空燃料を購入してISOタンクコンテナで海上輸送し,陸揚げ保管,国内輸送,タンクへの積み替え等も全て自社で行う方法をとっており,そのような輸送の過程で様々な汚染が生じる蓋然性が避けられないにもかかわらず,平成27年9月1日の臨時八尾空港協議会の場における品質管理体制等の説明が不十分なままで事業開始に及んだ。
また,佐賀航空においては,平成12年から平成21年までの9年間に死亡事故2件を含む4件の航空機事故が発生し,平成22年9月に国土交通大臣から航空輸送の安全確保に関する業務改善勧告を受け,さらに平成27年9月に仙台空港で給油員がヘルメットを被らずに給油作業をするなど,給油業務について従業員の安全教育が適切に行われているか疑わしい状況があった。
本件訴訟提起後の調査において,佐賀航空の航空ガソリン(AVGAS100LL)は,16件中3件がASTM規格の規格値を外れていたこと,ジェット燃料(JET A-1)も,12件中1件が石連規格の規格値を外れていたことが判明しており,佐賀航空の「ISOタンクは燃料専用のものを用いる」との主張は虚偽であったことが疑われ,原告の行為の合理性が事後的に裏付けられている。
(ウ) 原告は,必要な品質管理がなされておらず,国際規格又はそれに準 拠した国内規格に合致した航空燃料と同等の品質が確保されているといえるのかについて強い疑いがあり,安全性が担保されない佐賀航空の航空燃料と,これらの規格に合致している原告の航空燃料が航空機の燃料タンク内で混合された場合において,万一,当該航空機に航空燃料に起因する事故・故障が発生した際の原告の責任範囲を明確にする必要があると考え,混合によるリスクを回避するべく12月7日文書,2月10日文書及び3月15日文書を送付した。
(2) 本件通知行為等が「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ものに当たるか(争点2)
(被告の主張の要旨)
ア 「一定の取引分野」について
(ア) 「一定の取引分野」は,排除行為によって競争の実質的制限がもた らされる範囲をいい,基本的に,「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ことを要件とする不当な取引制限(独禁法2条6項)と同様,具体的な行為や取引の対象・地域・態様等に応じて,当該行為に係る取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討し,その競争が実質的に制限される範囲を画定して決定すべきである。
本件において,原告の排除行為の中核を成す12月7日通知は,佐賀航空が八尾空港の機上渡し給油による航空燃料の販売事業に参入したことを契機として,需要者に対して,佐賀航空から機上渡し給油を受けた場合に原告及びその提携先給油会社等から機上渡し給油を受けられなくなる旨を通知するものであるところ,当該通知は,主として,八尾空港における航空機への機上渡し給油を対象にしており,その通知相手も,八尾空港における機上渡し給油による航空燃料販売の主要な需要者である八尾空港協議会員11名である。
よって,原告の排除行為が対象とする取引及びこれにより影響を受ける範囲は,「八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売に係る取引」であり,当該取引分野(本件市場)を原告の排除行為に係る「一定の取引分野」と画定すべきである。
(イ) 原告は,「一定の取引分野」について需要の代替性によって画定すべきと主張するが,私的独占における「一定の取引分野」は,不当な取引制限と同様,具体的な行為や取引の対象・地域・態様等に応じて,当該行為に係る取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討し,その競争が実質的に制限される範囲を画定して決定すべきである。排除型私的独占ガイドラインは,商品の代替性に言及するが,主として当該行為に係る取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討することを原則として,必要に応じて商品の代替性の観点を考慮することになる旨記載しているにすぎず,本件においては,行為の対象及び態様等から,対象行為により影響を受ける範囲が本件市場であることが明らかであって,ジェット燃料と航空ガソリンとの間の需要の代替性を考慮する必要はない。
イ 競争の実質的制限について
(ア) 「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」とは,当該取引 に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい,当該市場において,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することができる状態をもたらすことをいう。原告は,本件市場において圧倒的なシェアを有しており,本件通知行為等によって佐賀航空の事業活動を人為的に制約することにより,その競争的抑制を緩和させたものであるから,本件市場が有する競争機能は損なわれ,原告がその意思で,ある程度自由に本件市場における価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することができる状態をもたらしたといえる。したがって,本件通知行為等は,「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」の要件を充足する。
(イ) 本件通知行為等について,正当化事由は認められない。
確かに,私的独占の要件に形式的に該当する場合であっても,問題となる行為によって侵害される独禁法の保護法益と当該行為によって守られる利益とを比較して,「一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という同法の究極の目的(同法1条参照)に実質的に反しないと認められる例外的な場合には,同法2条5項の「公共の利益に反して」又は「競争を実質的に制限する」の要件を満たさないものと解される。
しかし,本件通知行為等によって守られる利益は,原告の主張によれば,責任範囲が不明確になることによって生じる同社の事業活動上のリスクの低減という一私企業の事業運営上の利益にすぎず,「一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進する」目的に実質的に反しないとはいえないし,市場の自由競争経済秩序という独禁法上の重要な保護法益の侵害を正当化し得る利益とも解されない。
そのほか,原告の主張する事由が正当化事由たり得ず,「公共の利益に反して」又は「競争を実質的に制限する」の要件該当性を否定するものではないことは,前記(1)(被告の主張の要旨)カのとおりである。
(原告の主張の要旨)
ア 「一定の取引分野」について
「一定の取引分野」は需要の代替性によって画定するのが競争法の常識 であり,被告自身が排除型私的独占ガイドラインにおいて商品の範囲が需要者からみた商品の代替性という観点から画定される旨記載しているところ,ジェット燃料と航空ガソリンには需要の代替性がないから,これらを併せた一つの「一定の取引分野」として画定することはできない。
したがって,被告が航空燃料全体を一つの「一定の取引分野」と画定したのは誤りである。
イ 「競争を実質的に制限する」について
(ア) 前記(1)(原告の主張の要旨)のとおり,原告の行為はそもそも排除効果があるとは認められず,むしろ逆排除効果すら認められるものであったところ,市場支配力が生じるためには,一定の取引分野全体で排除効果が逆排除効果よりも大きくなければならないから,原告の行為により市場支配力の形成・維持・強化は生じない。
また,佐賀航空は,八尾空港近辺に十分な容量の貯油タンクを設置することにより,八尾空港の機上渡し給油事業において十分な供給能力を有し,かつ固定費を考慮することなく価格を設定できる上,佐賀航空は≪AA≫という需要者を有しているので,少ない設備投資でも,原告の限界費用を下回るかこれに等しい価格で供給し,原告に対して十分な競争圧力を加えることが可能である。
さらに,佐賀航空においては再参入が容易であり,また大口需要者としての≪AA≫がいるため,これを退出させることは困難である。
したがって,本件通知行為等には競争の実質的制限は認められない。
(イ) 原告の行為は,自己の危難を避けるための合理的根拠に基づく行為であり,正当化事由があるから,競争の実質的制限は認められない。原告の本件通知行為等が,自社に生じる危難を回避するためにとった,社会通念上合理的な防御的行動であって,原告の本件通知行為等に正当化事由があることは,前記(1)(原告の主張の要旨)イのとおりである。
また,本件排除措置命令書の理由における記載を前提とすると,平成29年度及び平成30年度における佐賀航空のシェアは2割を下回っていたことになるが,これは佐賀航空が顧客の信頼を獲得することができなかったり,真摯な営業活動を行っていなかったことなどの結果であり,原告の行為と佐賀航空のシェアとの間には因果関係が認められない。したがって,本件違反行為期間中の競争状況は,原告の行為と因果関係が認められないから,原告の行為は競争の実質的制限該当性を欠く。
(3) 違反行為期間の終期(争点3)
(被告の主張の要旨)
ア 原告は,本件排除措置命令に基づく措置として,取締役会で本件通知行為等を取りやめる決議をし,令和2年8月21日以降にその旨を通知する文書を取引先需要者及び佐賀空港に対し送付したから,同日以降本件違反行為を取りやめたといえる。したがって,本件違反行為の終了時期は,上記通知文書送付前日の令和2年8月20日である。
イ 原告が本件通知行為等を終了させたと主張する3月25日通知は,以下のとおり,排除効果を解消させるものではないかち,本件違反行為を終了させるものではない。
(ア) 3月25日通知には12月7日通知や3月15日通知自体を撤回する旨の記載はないし,原告の考える基準に合致しない航空燃料については取引先需要者が佐賀航空から機上渡し給油を受けないようにさせるという従来の対応と基本的に変わらない。どのような品質の商品を購入するかは需要者が自由に判断すべきところ,原告が自らの基準で品質の是非を判断して給油許否をするか否かを決めていることに変わりはない。
(イ) 原告は,3月25日通知の対応を取った理由として,佐賀航空がジェット燃料(JET A-1)を国内石油元売会社から仕入れていることが判明したことを挙げ,航空ガソリンについて従前の対応を継続する旨殊更に記載していることを踏まえれば,佐賀航空が,再度輸入品のジェット燃料を販売していることが判明するなどした場合には,原告の判断によって,3月25日通知による対応が撤回されることが十分に予測される。需要者にとって,佐賀航空からジェット燃料の給油を受けた場合,原告の判断によって,何らかの不利益措置を講じられる可能性があることは否定できないから,佐賀航空の利用を抑制し,その競争的抑制を緩和する効果は維持されている。
(ウ) 本件通知行為等と同様に佐賀航空に対する原告の排除意図は継続しており,3月25日文書の文面上,ジェット燃料(JET A-1)についても,いつでも免責・抜油対応等の措置を再開できる余地を残した一時的な措置の停止に過ぎないから,需要者が佐賀航空からジェット燃料の供給を受けた場合,原告の判断によって不利益措置を講じられる可能性があり,従前のとおり,佐賀航空の利用を抑制し,その競争的抑制を緩和する効果は維持されており,同一の排除意図に基づく一連の違反行為は依然として継続している。
(エ) 需要者においては,3月25日文書に原告の排除意図がうかがえることから,ジェット燃料(JET A-1)について免責・抜油対応を取りやめる旨を通知されても,原告から不利益措置を講じられることを警戒して佐賀航空の利用を躊躇するのが自然であり,現に需要者の中には3月25日文書の前後を通じて原告の対応が変わっていないと考えたり,原告による従来の運用が完全に終了するまでは佐賀航空から給油を受けることを検討しないとの意向を抱いていた者がいた。
(原告の主張の要旨)
原告は,3月25日文書を送付し,ジェット燃料(JET A-1)については,佐賀航空から給油を受けた機体も,他の給油会社から給油を受けた場合と同様に扱うことを通知したから,ジェット燃料の販売市場については令和2年3月25日に行為を取りやめている。
したがって,本件排除措置命令時点で八尾空港におけるジェット燃料の機上渡し給油の市場においても違反行為があるとしてなされた本件排除措置命令は法令の適用を誤ったものであるし,ジェット燃料の機上渡し給油についての違反行為期間は令和2年3月24日からさかのぼって最大3年間となるところ,本件排除措置命令と同様の認定を前提として違反行為期間及び課徴金算定基礎額を認定した本件課徴金納付命令は違反行為期間及び課徴金算定基礎額の認定を誤ったものであるから,違法である。
(4) 本件排除措置命令書の主文の不特定及び理由付記の記載の不備の有無(争点4)
(原告の主張の要旨)
ア 排除措置命令書の主文は,その履行が不能あるいは著しく困難なもの は違法となると解されるところ,本件排除措置命令書の主文には不明確な記載があり,その記載だけではどのような措置をとれば排除措置を履行したことになるのか特定できず,その履行が不能または著しく困難なものであるから,本件排除措置命令は違法である。
本件排除措置命令書の主文1項(1)では,自社の取引先需要者が佐賀航空から機上渡し給油を受けた場合には自社からの給油は継続できない旨「等」を通知することにより,自社の取引先需要者に佐賀航空から機上渡し給油を受けないようにさせている行為を取りやめなければならないとされているが,「等」とあるために,何を通知したことが問題とされているのか,今後どのような通知をすれば排除措置命令違反にならないのか判然とせず,その履行が不能又は著しく困難であり,その内容は特定を欠く。
また,本件排除措置命令書の主文1項(2)では,佐賀航空から機上渡し給油を受けた取引先需要者からの給油に係る依頼に応じる条件として,佐賀航空の航空燃料と自社の航空燃料の混合に起因する航空機に係る事故等が発生した場合でも原告に責任の負担を求めない旨「等」が記載された文書への署名又は抜油を求めることにより,自社の取引先需要者に佐賀航空から機上渡し給油を受けないようにさせている行為を取りやめなければならないとされているが,「等」とあるために,原告に責任の負担を求めない旨以外にどのような記載の文書への署名を求めることができないのかが判然とせず,その履行が不能又は著しく困難であり,その内容は特定を欠く。
本件排除措置命令書の主文1項が特定を欠き不特定である以上,これを前提とする本件排除措置命令書の主文2項,3項及び4項も,特定を欠く。
イ(ア) 排除措置命令書に記載すべき理由の内容及び程度は,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該排除措置命令がなされたのかを名宛人においてその記載自体から了知しうるものでなければならないところ,本件排除措置命令書には以下のとおり理由付記の記載に不備があるから,本件排除措置命令は違法である。
本件排除措置命令書の理由の第1の2(2)イにおいては,2月10日通知について相手方が「八尾空港協議会員11名のうちの1名」となっており誰であるかが不明であるし,同ウにおいても,3月15日通知の相手方について「八尾空港協議会員11名を含む約250名の自社の取引先需要者」と記載されているだけであり,本件排除措置命令書の記載自体から,いずれの相手方に対する自己の行為が私的独占に該当すると評価されたかを具体的に了知し得ない。
また,本件排除措置命令書の理由の第1の3「前記2(2)の行為による影響等」に係る事実関係が不明確であり,本件排除措置命令書の理由の第1の3(1)においては,原告の行為により機上渡し給油を受けられなくなること「など」を懸念して,佐賀航空を回避している者「等」がいるとされているために,何を懸念したのか,どのような者がいるのか特定できない記載となっている。本件排除措置命令書の理由第1の3(2)及び(3)にも同様に特定されていない部分がある。
さらに,本件排除措置命令書においては,その記載のどの部分が佐賀航空の事業活動を著しく困難にした事実に該当するのかも明らかでない。
(イ) 被告は,排除措置命令書には要件事実に相当する事実のみを記載すれば足り,間接事実に相当する事実を記載する必要はない旨主張するが,被告の主張する立場を前提としても,本件排除措置命令書は記載の意味が特定できないので,記載自体からいかなる事実関係に基づき命令がなされたのかを了知できない。
(被告の主張の要旨)
ア 排除措置命令書の主文(及び理由)の記載は,特定の一文や文言を命令書から切り離してその意味を解釈するのではなく,命令書全体を参照の上,当該排除措置命令書の趣旨・目的に照らし,社会通念にしたがって,合理的に解釈すべきものである。
本件排除措置命令書は,原告が,①12月7日通知,②2月10日通知,③3月15日通知及び④免責文書・抜油対応をした事実すなわち本件通知行為等を認定し,これを,「自社の取引先需要者にエス・ジー・シー佐賀航空から機上渡し給油を受けないようにさせている」行為(利用抑制効果を有する行為)と評価し,違反行為として認定している。このような認定を前提とすれば,本件排除措置命令書の主文1項(1)は前記①ないし③の3つの通知行為を指し,同項(2)は前記④の免責文書・抜油対応を指し,これらの差止めを命じていることが,本件排除措置命令書全体を見れば,容易に読み取れる。したがって,本件排除措置命令書の主文1項は,命令書上,十分特定されている。そして,本件排除措置命令書の主文1項が十分特定されている以上,これを前提とする本件排除措置命令書の主文2項,3項及び4項も特定に欠けるところはない。
イ(ア) 排除措置命令書に記載すべき理由につき,独禁法61条1項は,「公正取引委員会の認定した事実」と記載しているが,これは,審査の結果,被告が排除措置命令の発令要件を充足するものとして認定した独禁法違反行為に該当する事実を記載すべきことを定めたものと解される。
被告が,独禁法2条5項に規定する私的独占に該当し,同法3条の規定に違反するものと認定した行為の要件事実としての事実関係については,本件排除措置命令書の理由の第1の2(2)「マイナミ空港サービスによる自社の取引先需要者に対する行為」において本件通知行為等が具体的に記載されており,また,当該行為の排除行為該当性及び「競争の実質的制限」該当性を基礎付ける事実として,かかる記載に加え,同命令書の理由の第1の1に原告及び佐賀航空の本件市場における地位及び12月7日通知の対象となった八尾空港協議会員11名の地位等に係る事実関係も明確に記載されている。よって,本件排除措置命令の発令要件に該当する要件事実について,被告がいかなる事実関係に基づき,いかなる法規を適用して排除措置命令をしたかが原告においてその記載自体から了知できる。したがって,本件排除措置命令書には,独禁法第61条第1項が定める事項が十分に付記されており,不備はない。
(イ) 原告が本件排除措置命令書の理由の記載につき不備があると主張する事情は,いずれも本件違反行為の排除効果の存在を事後的・実証的に補強する間接的・補助的な事情にすぎない。したがって,仮に,当該記載が記載されておらず,あるいは,一定程度抽象化された記載になっていたとしても,本件排除措置命令書の理由付記の不備をもたらすものではない
(5) 被告による排除措置命令書に記載のない主張追加の有無及び許否(争点5)
(原告の主張の票旨)
行政庁の処分において事前の意見聴取手続が法律上定められている場合は,取消訴訟における理由の追加は許されない。
被告は,本件排除措置命令書に記載していないにもかかわらず,①八尾空港以外で原告から給油を受ける必要性の主張,②全国の空港に占めるマイナミ給油ネットワークの割合に関する主張,③マイナミ給油ネットワークの必要性に関する主張,④原告が迅速に給油できるとの主張を,本件訴訟において追加した。これらはいずれも違法な理由の追加であるから,認められるべきではない。
(被告の主張の要旨)
被告は本件訴訟において「処分理由の追加」に当たる主張をしていない。被告は,本件排除措置命令書及び本件課徴金納付命令書の「理由」欄に記載の本件通知行為等及びこれに関連する事実等の認定事実並びに法令の適用を維持するための主張をしているのであって,それと異なる理由を追加して主張しているものではない。

 



第3 当裁判所の判断
1 認定事実
前提事実に加え,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告の佐賀航空に対する対応等,本件市場における需要者の状況並びに本件通知行為等に対する需要者及び佐賀航空の対応等に関し,次の事実が認められる。
(1) 原告の佐賀航空に対する対応方針等
ア ≪X2≫は,原告の名古屋事業所長から原告の販売部長≪X3≫(以下「≪X3≫」という。)に対する,顧客から他社と比較して原告が優れている旨の言葉をかけられた旨のメールをCCの形式で受信したことを受け,平成27年9月29日,原告の名古屋事業所長及び≪X3≫を宛先とし,執行役員3名をCCとして宛先に含めて,「足元もおぼつかないやつが,単に儲けたいからと,給油業務に進出する輩が出てきていますが,とんでもない考え違いですね。例えば宮崎,仙台,そして八尾空港・・・・・今,撃退中ですが・・・・・。五月蝿いハエですよ。まったく。」などと記載したメールを送信した。(乙106,弁論の全趣旨)
イ 平成28年11月10日,原告の取締役,執行役員,≪X3≫を含む各部の部長が出席していた原告の社内の会議において,佐賀航空が仙台,宮崎,八尾,北九州と給油会社が1社である空港等に参入していることに関し,≪X2≫は,佐賀航空に関し,「今の進出先で行くと,やっと,その,仙台がプラスになるから。収益的にね。宮崎がプラスになったじゃない。あと八尾がどのくらい,だからこれから活躍できるかなんだよね。そこを今,まあ社長も,我々もそうなんだけど,日干しにしてやろうじゃないかと思っているんだけど。」「八尾でどのくらい抑え込めるか。これがポイントでしょうね。その,我々にチャレンジしてくるとすれば。」「今,輸入玉だからどっから出ているのか分からない。そこで,今,早めにつぶそうって話で。元売から供給証明出ちゃったら,もう勝負にならない。」「ドブネズミ。所詮。だって佐賀でどんなことしているかってみんな知っているわけだから。そこがポイントなんだよ。いかに,いい加減な業者かってことをアピールしとくってことが。」などと発言した。(乙105)
ウ ≪X3≫は,平成28年7月19日,原告の八尾事業所長に対し,≪X2≫をCCとして宛先に含めたメールにより,佐賀航空が八尾空港に設置予定の施設の着工を開始したことを伝えると共に,現地の写真等の情報収集を依頼した。これに対する返信のメールで,八尾事業所長は,佐賀航空の施設の写真を添付し,当該施設から空港内まで10分程度で到着可能であったことを伝えた。これらのメールのやり取りを受け,≪X2≫は,八尾事業所長に対し,「八尾の件では,これからもいろいろな面でタッグを組んで対処していきましょう。これから,タンク施設ができれば,無法な業務運営が行われていくことが予想され,そのとばっちりは必ず当社にも飛んできます。当社が火の粉を浴びないように,やつらを懲らしめる,やがて,追い詰めるような追い込みを対処方針として進めていきたいと思っています。」と記載したメールを送信した。(乙107)
エ 平成28年9月6日,原告の広島事業所長から≪X3≫に対し,原告の広島事業所の課長,西広島営業所の課長,八尾事業所長,販売部の課長及び≪X2≫をCCとして宛先に含めたメールにおいて,佐賀航空の求人情報についての情報提供がなされた。このメールを受け,原告の≪X3≫は,広島事業所長に対し,前記の全員をCCとして宛先に含めた返信で,「情報提供ありがとうございます。s社は宮崎,仙台と≪N≫を落札し,航空燃料販売を拡大しております。八尾空港へも参入してきますが,早めに排除したいですね。航空機給油作業の経験者が入社しなければ良いです。」と記載したメールを送信した。(乙108)
オ 原告の八尾事業所長は,前記ウのメールの送信後,≪X3≫に対し,≪X2≫,原告の販売部の課長,係長及び主任を宛先又はCCとして宛先に含めて,①平成28年7月22日,佐賀航空の施設の工事現場付近を視察し,その写真と共に今後も情報収集に努める旨を,②同年8月1日,佐賀航空の施設の工事現場の写真と共に,同工事の進捗につき,地下タンクの埋没予定地の掘削が終わった旨を,③同月15日,同月14日の佐賀航空の工事現場の写真と共に,佐賀航空の工事の進捗として,現場周囲のブロック及びフェンスの作業が途中であり,地下タンクが埋没されている状況であった旨をそれぞれメールで連絡した。≪X2≫は,同年9月13日,これらのメールに返信する形で,八尾事業所長に対し,前記の全員を宛先及びCCとして宛先に含めた形式で,「写真,情報有難うございます。」「当社の燃料と混載になる惧れのある先には,売らないことになります。燃料の混載リスクについては,使用事業者側に良く分からせる必要があります。」「八尾においては,同一の機体に燃料搭載した場合になります。これからは,厳密な販売管理が求められてきます。一つ宜しくお願いします。」と送信した。その後,≪X3≫は,平成28年9月14日,八尾事業所長に対し,宛先及びCCとして宛先に含まれる者を変更しないまま,「都度の報告,いつもありがとうございます。s社ぶっ潰したいですね。引き続き各使用業さんと良好な関係を保って下さい。」と記載したメールを送信した。(乙109)
カ 八尾事業所長は,平成28年11月7日,≪X3≫及び≪X2≫に対し,原告の執行役員課長及び課長代理をCCとして宛先に含めたメールで,同日から佐賀航空がジェット燃料(JET A-1)の給油を開始した旨を報告すると共に,佐賀航空の給油状況に関する写真を送付した。≪X2≫は,このメールへの返信で,原告の八尾事業所長に対し,「引続き宜しくお願いします。マーケットを荒らす溝鼠ですので,病原菌を撒き散らす惧れがあります。」「困ったものですが,溝鼠は重装備がないので,コストは低く,動きは良いのです。最後は,安全という正義の御旗を持つ正当が勝利することになるのですが,時間はかかるかもしれません。」「徹底的に対抗していきましょう。」と記載して送信した。(乙132)
キ ≪О≫株式会社の≪A課≫の者は,平成29年1月23日,原告の≪X3≫に対し,「AVGAS関連」の件について「現状調査した結果をご連絡させて頂きます。」として,「佐賀航空がAVGASの試験を≪P≫に依頼したということは事実のようです。≪P≫は当社とは別会社であり,一部の外部顧客(佐賀航空)の試験を拒否するということはできないということが実情です。」などとメールで伝えた。(乙133)
ク 原告は,佐賀航空が≪Q≫株式会社(以下「≪Q≫」という。)を通じて≪R≫株式会社に対しジェット燃料(JET A-1)の調達の打診を行ったことを営業総括部において知ったことを受け,平成29年7月12日,販売部において情報の収集及び「現在の使用事業業界に対する給油会社の燃料供給体制について説明するため」として,≪X3≫及び販売部課長である≪X4≫(以下「≪X4≫」という。)において,≪Q≫の≪Q1≫,≪Q2≫及び≪Q3≫と面談を行った。
原告は,≪Q≫に対し,①佐賀航空の航空燃料品質管理の実施状況が不明であること,②佐賀航空の航空燃料と原告の航空燃料が顧客所有機の燃料タンク内で混合した場合のリスクについて責任を負えない旨を原告の顧客に説明していること等を説明し,≪Q≫から,原告の実施している給油前の事前確認及び念書の作成も視野に入れ検討したい旨の返答を得た。また,原告は,≪Q≫に対し,同社には≪Qの本社≫もあると聞いているとして社内的に情報を共有することを依頼し,≪Q≫はこれを了承した。
原告の販売部課長の≪X4≫は,≪Q≫との面談の記録を作成し,「今回は,石油元売会社(≪R≫㈱)がSGC佐賀航空㈱向けの航空燃料供給を断ったことで,SGC佐賀航空㈱は国内石油元売会社から直接燃料を仕入れることが出来なくなった。」「引き続き,当社が取引のある商社及び石油元売会社に対し,使用事業業界に対する給油会社の燃料供給体制について情報提供をおこなう。」「≪S≫㈱へ訪問し,情報提供済み,他≪О≫㈱,≪T≫㈱については,既に情報提供を行い対応済みである。」「今回,≪Q≫㈱に直接訪問したことで,今後は≪Q≫㈱内でも情報が共有されSGC佐賀航空㈱からの依頼に対し慎重に行動すると思われる。」旨を記載した。同面談記録には,≪X3≫のほか,原告の取締役2名及び≪X2≫の押印並びに原告の社長のサインがなされている。
(以上につき,乙134)
ケ 原告は,株式会社≪P≫における佐賀航空からの依頼に対する航空撚料の分析結果を,令和2年9月頃に弁護士会を通じて得るまで,佐賀航空の航空燃料の品質ないし品質管理の問題性に係る具体的な情報を得ていなかった。(甲49,弁論の全趣旨)
(2) 本件市場における需要者の状況
ア ≪E≫株式会社は,原告が唯一の給油会社である名古屋飛行場に飛行機を格納しており,全国の空港等でも原告との間で取引をしていたため,原告と取引ができないと飛行機を全国で飛行させることができなくなる支障が生じる状況にあった。(乙15〔22頁,30頁〕,25〔4~5頁〕,42〔8頁,16頁〕)
イ ≪F≫株式会社は,航空測量などの業務を行うため,全国各地の空港で給油を受けていたところ,例えば,名古屋飛行場及び広島ヘリポートには原告以外に給油会社がないため,名古屋飛行場で原告から給油を受けられないと,同飛行場周辺での業務が困難になり,また,広島ヘリポートを拠点とする2機のヘリコプターの給油が受けられなくなると困る上,八尾空港で急いで給油したい場合は八尾空港内に給油施設がある原告から給油を受ける必要があったため,原告から給油を受けられなくなると事業に支障が生じる状況にあった。(乙20〔23~25頁〕)
ウ ≪C≫株式会社は,原告から給油を受けられないと,原告以外に給油会社がない空港等で給油を受けられなくなるなど,マイナミ給油ネットワークを利用できなくなり,≪C≫株式会社や≪B≫株式会社を含む同社グループが事業を行う上で支障が生じる状況にあった。(乙37〔3頁,24頁〕)
エ ≪D≫株式会社は,八尾空港以外の空港等で原告や原告の提携先給油会社から給油を受けられなくなったり,掛け売りに応じてもらえなくなったりすると,同社の主要な事業である航空写真測量業務に支障が生じる状況にあり,原告等との取引がこれまでどおりできないのであれば,八尾空港において佐賀航空から航空燃料の給油を受けることは難しいなどと考えていた。(乙39〔2~3頁〕,119〔29頁〕)
オ ≪H≫株式会社は,日本各地の空港等で原告から航空燃料の給油を受けることができなくなると,特に航空燃料の給油を受ける量が最も多い名古屋飛行場には航空燃料の給油会社が原告しかないことから,業務に支障が生じる状況にあった。(乙41〔16頁〕)
カ ≪J≫は,同法人が航空事業を行う上では各地の空港等において原告や原告の提携先給油会社から給油を受けられることが必要であり,また,同法人が航空事業で使用することがある名古屋飛行場には,原告しか給油会社がないことなどから,佐賀航空から給油を受けることによって原告やその提携先給油会社から給油を受けられなくなる場合,航空事業に支障が生じる状況にあった。(乙18〔8~10頁,25~27頁〕)
キ ≪L≫株式会社は,顧客から委託を受けて顧客の航空機の整備・保管を行う事業等を行っているところ,八尾空港以外の空港等で原告や原告の提携先給油会社から航空燃料の給油を受けられなくなってしまう場合,原告やその提携先給油会社しか給油会社がない空港等で給油を受けられなくなるなど困ったことになるため,顧客が困ることになる状況を見過ごすわけにはいかないと考えていた。(乙122〔2頁,22頁〕)
ク 給油を受けた事業者は,本来は給油を受けた場所を管轄する税務署に 対し航空機燃料税を納税する義務があるところ,株式会社≪U≫は,マイナミ給油ネットワークの利用により,日本各地における給油について原告から一括して伝票を受領することができ,一か所の税務署で一括して航空機燃料税を納める特例手続の申請に際し各段に業務の効率化を図ることができるため,マイナミ給油ネットワークについて非常にメリットのあるサービスだと感じている。また,同社は,ベースとしている名古屋飛行場では給油会社が原告1社しかないため,原告から給油を受けられないと,航空事業が成り立たなくなる状況にあった。(乙19〔15~17頁,26~28頁〕)
ケ ≪V≫株式会社は,原告や原告の提携先給油会社から給油を受けられなくなる空港等が出てきてしまうと,同社が事業を行う上で支障が生じる状況にあった。(乙24〔15頁〕)
コ 株式会社≪W≫は,全国の空港等で,原告や原告の提携先給油会社から航空燃料の給油を受けており,また,場外離着陸場で使用するドラム缶のほとんどを原告から購入しているため,原告からこれらの給油等を受けられなくなってしまうと,ヘリコプターを運航することができないというように,事業そのものに支障が生じる状況にあった。(乙40〔21~27貢〕)
サ 大阪市消防局は,八尾空港において複数の航空燃料給油会社から機上渡し給油を受けることが可能な場合,通常は,指名比較見積又は事後審査型制限付一般競争入札により契約先を決定するが,災害派遣の場合,原告が唯一の給油会社である名古屋空港等において給油を受けることが避けられない場合があることから,原告と随意契約を締結する可能性があった。(乙50〔14~15頁,17~18頁〕)
シ 本件市場の需要者の中には,緊急時や急ぎの場合などに給油依頼に迅速に対応してもらえることが必要ないし重要であると認識している者がいた。(乙17〔7頁,26頁〕,20〔24頁〕,22〔21~22頁〕,48〔10~11頁〕,49〔14~15頁〕)
(3) 本件通知行為等以降の需要者の行動等
ア ≪E≫株式会社は,佐賀航空との継続的な航空燃料の売買取引の開始を検討していたが,12月7日通知を受け,原告から給油を受けられないと自社の飛行機を全国で飛行させることができなくなるという事業上の支障があることを懸念し,佐賀航空との取引開始の検討を見合わせることとした。(乙25〔3~5頁〕,乙42〔5~18頁〕,乙15〔11~22頁〕)
イ ≪F≫株式会社は,佐賀航空の航空燃料について,その品質を証明する資料に基づく説明を受け,品質に問題がないと理解したことにより,佐賀航空の航空燃料の販売価格によっては,佐賀航空との取引を開始したいと考えていたが,本件通知行為等により,原告から給油が受けられなくなることで同社の航空測量業務等の遂行が困難となることを懸念し,佐賀航空との取引を開始できないと考えていた。(乙20〔22~25頁〕,乙130〔2~3頁〕)
ウ ≪D≫株式会社は,佐賀航空の取引条件が原告より良いことが分かれば,佐賀航空から航空燃料の給油を受ける可能性はあるとしつつも,同社から給油を受けた場合,原告から受け取った12月7日通知及び3月15日通知により原告から給油が受けられなくなり自社の業務に支障を生じることを懸念し,かかる懸念が解消されなければ,佐賀航空から給油を受けることは難しいと考えていた。(乙119〔26~29頁〕)
エ(ア) 原告は,平成28年12月13日,大阪市消防局に対し,大阪市消 防局作成の仕様書(乙128)と異なる「ASTM D 1655又は共同利用貯油施設向け統一規格に適合しなければならない」こと等を「品質」の条件とし,「ASTM D 1655又は共同利用貯油施設向け統一規格に適合していることを証明する製油所全項目試験成績書及びバッチ試験成績書」を提出物とする入札仕様書の案を提出した。(乙127)
大阪市消防局は,平成29年2月頃,石油元売会社発行の全項目試験報告書の提出を条件とするなど,入札仕様書の内容を改訂する意向を有していた。(乙129)。
(イ) 原告は,平成29年1月26日の時点で,大阪市消防局に対し,佐 賀航空のジェット燃料(JET A-1)の品質が石連規格に合致しているか不明である旨の情報提供を行っていた。(乙50〔8~9頁〕)
(ウ) 大阪市消防局は,2月10日通知の後である平成29年6月頃,原告と随意契約を締結するため,免責文書に署名する方向で手続を進めていたが,その後,免責文書へ署名することについて内部的な許可が得られなかったことにより,免責文書への署名をしないこととした。(乙92~94)
オ 佐賀航空は,≪F≫株式会社や≪B≫株式会社の社長から,原告が取引先に配布した3月15日文書等,佐賀航空から給油を受けたら原告は給油を継続しないと言っている件が解決しない限り,佐賀航空から給油を受けるかどうかについて検討の土俵に上げることができないと言われており,また,3月15日文書を見た八尾空港に拠点を置く他の航空会社からも同じようなことを言われており,さらに,個人の需要者からも,他の空港に行ったときに給油ができないと困るため,現状,佐賀航空からは給油できない,と言われていた。(乙7〔4頁〕)
(4) 3月25日通知に対する需要者及び佐賀航空の認識等
ア 3月25日通知を受け取った原告の顧客の中には,次のとおり考えて いる者がいた。
(ア) 3月25日文書によっても,原告の従来の運用(本件違反行為)は何 ら変化していない。(乙120〔11~16頁,添付資料1の8頁〕,136〔8頁〕)
(イ) 依然として,原告と佐賀航空との間の揉め事は続いていることから,原告による従来の運用が完全に終了するまでは様子をみて,佐賀航空から給油を受ける(あるいは検討する)ことはしないだろうと考えている。(乙120〔11~16頁,添付資料1の8~9頁〕,乙136〔8~9頁〕,乙137〔8~9頁〕)
(ウ) 原告において,佐賀航空が国内石油元売会社から仕入れたジェット燃料を給油している限りは,従来の運用を取りやめるとしているが,佐賀航空のジェット燃料が国内石油元売会社から仕入れたものでなくなった場合(または国内石油元売会社から仕入れているかどうか,原告が分からないと判断した場合),原告は従来の運用に戻すのであろうから,そのような状況で佐賀航空からの給油を受ける(あるいは検討する)ことはしないだろうと考えている。(乙138〔8~9頁〕)
(エ) 結局は,給油会社である原告が,佐賀航空が給油する航空燃料について,原告の見解に基づいて行っている対応という意味で同じものであるので,令和2年3月25日文書の前と後とで,原告の対応が変わったとは考えていない。(乙139〔14~19頁,添付資料1の8頁〕)
イ 佐賀航空は,3月25日通知の後においても,原告がお墨付きを与えた燃料でなければ佐賀航空が販売できない状態は解消されていないと認識しており,また,石油精製業者からの調達価格や円相場の動向次第ではジェット燃料(JET A-1)を海外から購入する可能性は今後もあり,国内石油元売会社からジェット燃料を購入できない場合には国外から調達するしかないところ,その場合,突然需要者は佐賀航空から航空燃料を購入できない状況に陥ってしまうと考えていた。(乙135〔3頁,6頁,13~14頁〕)
2 排除行為該当性(争点1)について
(1) 独禁法は,公正かつ自由な競争を促進し,事業者の創意を発揮させて事業活動を盛んにすることなどによって,一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とし(1条),事業者の競争的行動を制限する人為的制約の除去と事業者の自由な活動の保障を旨とするものである。その趣旨に鑑みれば,本件通知行為等が排除行為に該当するか否かは,本件通知行為等が,自らの市場支配力の形成,維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり,競争者である佐賀航空の本件市場での活動を著しく困難にするなどの効果を有するものといえるか否かによって決すべきである(最高裁平成22年12月17日第二小法廷判決・民集64巻8号2067頁,最高裁平成27年4月28日第三小法廷判決・民集69巻3号518頁参照)。
そして,本件通知行為等が,上記のような人為性を有し,上記効果を有するものといえるか否かは,本件市場の状況,原告及び佐賀航空の本件市場における地位及び競争条件の差異,本件通知行為等の態様や継続期間,原告の意図・目的等の諸要素を総合的に考慮して判断されるべきものと解される。
そこで,上記見地に立って,本件通知行為等が人為性を有し,上記効果を有するものといえるかを検討する。
(2) 本件市場の状況並びに原告及び佐賀航空の本件市場における地位及び競争条件の差異について,前提事実及び前記認定事実によれば,次の諸点を指摘できる。
ア 原告は,本件市場において,平成28年11月に佐賀航空が参入するまで,独占事業者として航空燃料の販売事業を行っており,同月に佐賀航空が参入した後も,航空燃料の供給量において,航空ガソリン及びジェット燃料のいずれについても8割を超える高いシェアを保持しており(前提事実(4)ア(ア)),航空ガソリン及びジェット燃料のいずれについても,本件市場における需要を完全に満たすだけの供給能力があった。
イ これに対し,佐賀航空は,平成27年11月13日に八尾空港における航空燃料の販売についての承認を得て平成28年11月から八尾空港における航空燃料の販売を開始した新規参入者であり(前提事実(4)イ),その後平成29年及び平成30年においても本件市場におけるシェアは2割を超えることはなく(前提事実(4)ア(ア)),本件通知行為等の実施時点において,佐賀航空は,原告の供給量の全てを直ちに代替することができたとはいえない状況にあった。
ウ 原告は,平成28年12月以降,少なくとも令和元年11月までの間,名古屋飛行場,広島ヘリポート等,原告以外に給油会社のない空港等で給油を行っており,八尾空港協議会員11名のうち9名は,原告が唯一の給油会社である空港等において給油を受ける必要があった(前提事実(4)ア(イ))。
エ 原告は,日本全国の空港等のうち,80か所においてマイナミ給油ネットワークにより原告又は提携先給油会社等から航空燃料の販売を行うことを可能としており,実際に販売した実績のある空港等も69か所あり,利便性の高い決済手段を用いて全国の多数の空港等で給油を受けることを可能としていたところ,八尾空港協議会員11名のうち9名は,八尾空港以外の空港等においてマイナミ給油ネットワークを利用して提携先給油会社等から航空燃料の販売を受けており(前提事実(4)ア(イ)),中には,原告や提携先給油会社等から給油を受けられなくなると事業上の支障が生じる者がいた(認定事実(2))。なお,マイナミ給油ネットワークは,需要者に対し,決済代行サービスとしての利便性を与えるのみならず,八尾空港以外の全国の空港等において,提携先給油会社等から給油が受けられる利便性を与えるものであるほか,需要者において日本各地における給油について原告から一括して伝票を受領でき,納税における特例手続の申請業務の効率化に資するという利便性を与えるものであった(認定事実(2)ク)。
オ 原告は,佐賀航空と異なり,八尾空港内に給油施設を構えていたことから,需要者からの給油の依頼に対し,佐賀航空よりも迅速に対応できる場合が多いところ(前提事実(4)ア(ア),イ),本件市場の需要者の中には,緊急時や急ぎの場合などに給油依頼に迅速に対応してもらえることが必要ないし重要であると認識している者がいた(認定事実(2)シ)。
カ 上記ア及びイのとおり,本件通知行為等の実施時点において,原告において本件市場の需要全てを満たす供給が可能であったのに対し,佐賀航空が原告の供給量の全てを直ちに代替することができない状況にあったこと等,両者の本件市場における地位を踏まえると,原告は,需要者にとって,本件市場において避けることが困難な取引相手であったということができる。これに加え,上記ウ,エのとおりの八尾空港以外の空港等における原告の地位を踏まえると,八尾空港のみならず他の空港等で給油を受ける必要のある需要者,とりわけ,原告以外に給油会社のない名古屋飛行場や広島ヘリポート等において給油を受ける必要のある需要者にとって,原告は本件市場において避けることの不可能な取引相手であったといえる。また,上記オによれば,原告は,佐賀航空と比べ,本件市場においていつでも迅速に対応できるという競争上の優位性を有していたということができる。
以上によれば,原告は,本件市場において,需要者にとって避けることができない取引相手であり,かつ,佐賀航空と比べ競争上の優位性を有していたということができる。
(3) 12月7日通知が排除行為に該当するか否かに関し,前提事実及び前記認定事実によれば,その態様や継続期間,原告の意図・目的について,次の諸点を指摘できる。
ア 12月7日通知は,佐賀航空のように国内石油元売会社から航空燃料 を仕入れていない給油会社について,その取扱いに係る知識及び理解が不足していることが多いとし,そのような航空燃料と原告の航空燃料とを混合した場合,責任の所在が不明確となるとした上で,佐賀航空から航空燃料の販売を受けた場合,原告からの給油継続を「致しかねる」旨及び他の空港において提携先給油会社等からの給油継続も「困難」になる旨を通知するものである(前提事実(7)ア)。これに加え,原告が,佐賀航空の構内営業承認に関する議論において,八尾空港協議会員宛に配布した文書に,佐賀航空が給油した機体には給油を行えない旨を明記していたこと(前提事実(6)ウ(オ))に照らせば,12月7日通知は,佐賀航空から航空燃料の販売を受けた場合,八尾空港のみならず全国の空港等において,原告において給油継続をせず,携先給油会社等からの給油もしない旨を示したものと認めるのが相当であり,12月7日文書の送付先となった八尾空港協議会員11名もそのように理解していたものと認められる。
そうすると,12月7日通知は,需要者に対し,原告及び提携先給油会社等と佐賀航空との二者択一の選択を迫る効果を有するものであったということができる。
イ 平成28年になされた12月7日通知の内容は,平成29年の2月1 0日通知,同年の3月15日通知によって対象を拡大する形で維持され,同年5月中旬以降に免責文書・抜油対応がとられるようになった後も明示的な撤回はなされなかったから,平成28年から3月25日通知がなされた令和2年3月25日までだけで3年以上もの間維持されており,平成29年度及び平成30年度において原告が8割を超えるシェアを有していたことからすると,前記の期間は本件市場における市場支配力の維持,強化という観点から相応の長さのある期間であったということができる。
ウ 原告は,佐賀航空が八尾空港における航空燃料の販売事業を開始したことに伴い,その約1か月後に12月7日通知を行っており(前提事実(6)カ,(7)ア),これは,次の諸点を踏まえれば,原告において,佐賀航空に対する対抗心を有するにとどまらず,佐賀航空の航空燃料について安全性を問題視する口実のある間に,佐賀航空の不利益となり得る事情を用いて,需要者側にとってのリスクを示すことにより,佐賀航空を八尾空港における航空燃料の販売事業から排除する強い意図ないし目的でなされたものであったということができる。
(ア) 原告は,佐賀航空から八尾空港における構内営業承認の申請がなされた後の平成27年9月1日,八尾空港協議会における佐賀航空からの事業計画の説明が行われた際,「各使用事業者にとっては,自分の事業にとっての利害のほうが分かりやすいということがはっきりと見えた。」として,その後は「各社が検討しやすいように」「問題点を抽出し,それを分かりやすく書いて,提供することが得策と判断」し,「問題点としては」「八尾空港において佐賀航空から給油を受けると」「八尾空港においては,MKSは給油をすることができないというリスク」,「つまり,MKSは二股をかける業者には給油しない。」という点を指摘することとし(前提事実(6)ウ(エ)),同月7日付けの≪X2≫のメモには,「使用事業者サイドのリスク」として「MKSは混合は不可」,「地方ネットワークも使えなくなる(S社と契約した場合)」と記載していた(前提事実(6)ウ(カ))。これらの事実は,原告が,需要者が佐賀航空と取引した場合に八尾空港において原告から給油を受けられず,マイナミ給油ネットワークを利用できなくなることを需要者側のリスクと位置づけ,佐賀航空と原告との二股をかけた場合には,不利益を与えることを示すことにより,佐賀航空との取引を阻害する意図,目的があったことを示すものといえる。
(イ) 原告社内における次の発言等は,原告が,佐賀航空が販売する航空燃料の品質を懸念しているのではなく,これを口実として,佐賀航空の航空燃料に供給会社からの証明書が出されない間に,佐賀航空の不利益になる事情を需要者に対しアピールしながら安全性を理由に佐賀航空を排除する強烈な意図,目的を有していたことを示すものである。このように,佐賀航空が航空燃料について安全性を証明した上で原告と競争を行うという需要者にとって望ましい状況になる前に,安全性の証明を妨害することも厭わず,同社を排除するとの目的は,独禁法の許容する競争の意図にとどまるものとは評価できないというべきである。
a 平成27年9月29日には,≪X2≫から≪X3≫,原告の名古屋事業所長に対し,執行役員3名もCCとして宛先に含める形で,佐賀航空を「五月蝿いハエ」として「撃退中」である旨の連絡がなされた。(認定事実(1)ア)
b 平成28年11月10日には,取締役,執行役員及び部長級の者が参加する会議において,≪X2≫から,「社長も,我々も」「日干しにしてやろうじゃないかと思っている」との発言や,佐賀航空の航空燃料がどこから供給されているのか分からない状況の「今,早めにつぶそう」との発言,「元売から供給証明出ちゃったら,もう勝負にならない」として,石油元売会社から供給証明が出ておらず口実がつくうちに早めに佐賀航空を「つぶそう」との発言があった。(認定事実(1)イ)
c 佐賀航空が,「いかに,いい加減な業者かってことをアピール」することが「ポイント」であるとして,佐賀航空の不利益になる事情を需要者に対し「アピール」しようとしていた。(認定事実(1)イ)
d ≪X2≫は,八尾事業所長に対し,原告が火の粉を浴びないように,佐賀航空を懲らしめる,やがて,追い詰めるような追い込みを対処方針とすることを伝えていた。(認定事実(1)ウ)
e ≪X3≫は,原告の広島事業所長に対し,同事業所の課長,西広島営業所の課長,八尾事業所長,販売部の課長及び≪X2≫をCCとして宛先に含めるメールにより,佐賀航空を早めに排除したい旨の認識を示し,原告の八尾事業所長が佐賀航空の施設の工事の進捗について報告するメールに対しては,八尾事業所長に加えて≪X2≫及び販売部の課長らを宛先又はCCとして宛先に含めるメールにより,佐賀航空を「ぶっ潰したいですね」と伝えていた。(認定事実(1)エ,オ)
f 原告の≪X2≫は,原告の八尾事業所長に対し,原告の執行役員をCCとして宛先に含めるメールにより,佐賀航空を「マーケットを荒らす溝鼠」と表現し,「病原菌を撒き散らす」おそれがあるとした上で,「最後は安全という正義の御旗を持つ正当が勝利することになる」旨伝えていた。(認定事実(1)カ)
(ウ) 原告の≪X3≫は,≪О≫株式会社の≪A課≫の者から,「佐賀航空がAVGASの試験を≪P≫に依頼したということは事実のようです。≪P≫は当社とは別会社であり,一部の外部顧客(佐賀航空)の試験を拒否するということはできないということが実情です。」とのメールを受け取った(認定事実(1)キ)。この事実は,原告が,佐賀航空からのAVGASの試験の依頼を拒否するよう依頼したことを示すものと考えられ,佐賀航空が航空ガソリンの品質の確認をすることを妨げようとしていたことを意味する。
(エ) 原告は,佐賀航空が国内石油元売からジェット燃料を調達しようとしていた動きを知り,商社である≪Q≫に対し佐賀航空の品質管理の実施状況が不明であることなどを伝えた面談記録において,「今回は,石油元売会社(≪R≫㈱)がSGC佐賀航空㈱向けの航空燃料供給を断ったことで,」「国内石油元売会社から直接燃料を仕入れることができなくなった。」「引き続き,当社が取引のある商社及び石油元売会社に対し,使用事業業界に対する給油会社の燃料供給体制について情報提供をおこなう。」「今後は≪Q≫㈱内でも情報が共有され」佐賀航空「からの依頼に対し慎重に行動すると思われる。」としていた(認定事実(1)ク)。この事実は,佐賀航空が国内の商社又は石油元売会社から航空燃料の調達ができなくなるように,佐賀航空の品質管理に関する悪評を広めていたことを示すものである。
(4)ア 上記(2)(3)を総合すれば,12月7日通知は,八尾空港の航空燃料の機上渡し給油市場において8割を超えるシェアを有し,需要者にとって避けられない取引相手であって,全国においても自社又はグループ会社のみが唯一の給油会社である空港等やマイナミ空港ネットワークの存在等の利便性を有しており,佐賀航空より競争上優位な立場にあった原告が,八尾空港の航空燃料の機上渡し給油市場の約8割の需要を占める八尾空港協議会員11名に対し,八尾空港において佐賀航空から給油を受けた者には原告や提携先給油会社からの給油を行わない旨を示したものであって,本件市場の需要者にとって原告との取引を避けることができない以上,佐賀航空との取引を断念させ,八尾空港において原告のみと取引することを実質的に強制するものであり,また,需要者に対し,競争上優位性のある原告と取引することのできる地位を維持するために,佐賀航空との取引を抑制させる効果を持つもの,ということができる。そして,八尾空港協議会員11名が,八尾空港の機上渡し給油の需要の約8割を占めることからすると,佐賀航空にとって代替的な取引先を容易に確保することができなくなるといえるから,12月7日通知は,八尾空港における航空燃料の機上渡し給油市場において,佐賀航空における事業活動の継続を著しく困難にする効果を有するものといえ,原告が佐賀航空を八尾空港における航空燃料の販売事業から排除する目的で12月7日通知を行ったことも,同通知に上記のような排除効果があったことを裏付ける。
イ そして,12月7日通知は,需要者に対し,佐賀航空との取引を抑制させる条件を付す行為であるところ,需要者にとって避けられない取引相手の立場にある原告が行うこのような行為は,実質的にみて原告のみとの取引を強制し需要者の選択の自由を奪うものであって,それ自体,正常な競争活動とはおよそ性質が異なるものであるし,原告が佐賀航空を排除する強い意図ないし目的で12月7日通知を行ったことは,これが正常な競争手段とはいえないことを裏付けるものといえる。
以上によれば,原告が行った12月7日通知は,自らの市場支配力の形成,維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり,競争者である佐賀航空の本件市場での活動を著しく困難にするなどの効果を有するものということができるから,排除行為に該当するというべきである。
(5)ア 2月10日通知が排除行為に該当するか否かについて,前提事実,前記認定事実及び後掲証拠によれば,これらの態様や,原告の意図・目的について,次の事実を指摘することができる。
(ア) 2月10日通知は,原告による12月7日通知が維持されていた中,大阪市消防局に対し,原告が大阪市消防局との契約の相手方となっていない期間中,新千歳空港を除く直営11空港等及び原告のグループ会社である給油会社が唯一の航空燃料給油会社である福岡空港の合計11の空港等において燃料販売を停止する旨を通知するものであり,八尾空港において原告以外の者との取引をしないことを原告との取引の条件とするものであった(前提事実(7)イ)。
(イ) 大阪市消防局は,災害派遣の場合,原告が唯一の給油会社である名古屋空港等において給油を受けることが避けられない場合があることから,原告と随意契約を締結する可能性があった(認定事実(2)サ)。
(ウ) 大阪消防局においては,原告から「共同利用貯油施設向け統一規格」等に適合していることや「製油所全項目試験成績書」等の提出を条件とする入札仕様書の案の提出を受けたことにより仕様書の内容を変更する可能性があった(認定事実(3)エ(ア))。
なお,「共同利用貯油施設向け統一規格」(石連規格)は国内規格であり(前提事実(2)イ(ア)),原告の案どおりに仕様書の内容が変更された場合には,航空燃料を輸入する佐賀航空において対応できない又は対応するために追加の説明や資料等が必要な条件になり得たものであり,航空燃料を輸入する佐賀航空において,国内規格に基づく航空燃料を国内石油元売会社から購入している原告に比して不利な状況になり得た。
(エ) 原告は,平成29年1月26日の時点で,大阪市消防局に対し,佐 賀航空のジェット燃料の品質が石連規格に合致しているか不明である旨を話す(認定事実(3)エ(イ))など,佐賀航空の排除に向けた情報提供を行っていた。
(オ) 大阪市消防局は,2月10日通知の後である,平成29年6月頃,原告と随意契約を締結するため,当初免責文書に署名する方向で手続を進めていた(認定事実(3)エ(ウ))。
イ 上記ア(ア)~(ウ),(オ)の各事実によれば,原告による12月7日通知が維持されていた中でされた2月10日通知は,これにより,大阪市消防局が原告との随意契約を締結するため,佐賀航空との取引を抑制する可能性があったし,また,大阪市消防局の入札等の仕様書に記載される条件等が影響を受け,航空燃料を輸入している佐賀航空が入札に参加できないか,不利な取扱いを受けるような,国内石油元売会社の品質証明書を前提とした仕様書に変更される可能性もあったといい得る。
また,原告が佐賀航空を排除する目的で12月7日通知を行い,上記ア(エ)のとおり,平成29年1月26日の時点で,大阪市消防局に対し,佐賀航空の排除に向けた情報提供を行っていたことからすれば,2月10日通知も,佐賀航空を排除する目的で行われたものと認めるのが相当である。
ウ 上記イのとおり,2月10日通知は,12月7日通知による排除効果が生じていた中,原告において佐賀航空を排除する目的で行われ,大阪市消防局に対し佐賀航空との取引を抑制する可能性があったから,12月7日通知について,その対象を広げ排除効果を強化する効果を有しており,佐賀航空の事業活動を著しく困難にする効果を有するものであったと認められる。
また,2月10日通知が,12月7日通知同様,大阪市消防局に対し佐賀航空との取引を抑制させる条件を付すものであり,災害派遣の場合,原告が唯一の給油会社である名古屋空港等において給油を受けることが避けられない場合があり原告との取引を避け難い大阪市消防局に対し,原告のみとの取引を強制し,その選択の自由を奪うものであること,原告が佐賀航空を排除する目的で行われたものであることからすれば,これが,自らの市場支配力の形成,維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり,競争者である佐賀航空の本件市場での活動を著しく困難にするなどの効果を有するものといえることは,前記(4)と同様である。
エ 以上によれば,2月10日通知は,排除行為に該当するというべきである。
(6) 3月15日通知が排除行為に該当するか否かについて,前提事実,前記認定事実によれば,次のようにいうことができる。
ア 3月15日通知は,①佐賀航空の航空燃料と原告の航空燃料が混合し た場合,それに起因する事故等に係る責任を負えない旨及び②したがって,原告の契約先である顧客が,佐賀航空より航空燃料の給油を受けた場合,それ以降は原告からの給油継続ができない旨の内容を,12月7日通知の対象者を含む取引先需要者261名に拡大して通知したものであったから(前提事実(7)ウ),3月15日通知も,12月7日通知と同様,佐賀航空を排除する目的で行われたものと認めるのが相当である。
また,3月15日通知は,12月7日通知同様,佐賀航空から給油を受けた需要者には原告が給油しない旨を,八尾空港における機上渡し給油に限定せずに示したものであり,八尾空港協議会員11名のみならず,それ以外の需要者に対しても,八尾空港の航空燃料の機上渡し給油市場における佐賀航空との取引を抑制させる効果を有するものといえる。
イ そうすると,3月15日通知は,通知の対象となる需要者の範囲を大幅に拡張し,佐賀航空との取引を抑制する範囲を大幅に拡大したものであって,佐賀航空に対し,これらの通知の対象になった需要者に代わる取引先を容易に見出すことが一層できなくなる効果をもたらすから,12月7日通知による排除効果を強化し,八尾空港の航空燃料の機上渡し給油市場における佐賀航空の事業活動の継続を一層困難にさせる効果を有するものと評価できる。
ウ このように,原告が,競争者である佐賀航空を排除する目的の下,自社以外の者との取引を抑止する条件を付し,原告との取引が避けられない需要者に対し原告のみとの取引を実質的に強制する行為である3月15日通知は,自らの市場支配力の形成,維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり,競争者である佐賀航空の本件市場での活動を著しく困難にするなどの効果を有するものといえることは,前記(4)と同様である。
エ 以上によれば,3月15日通知は,12月7日通知により成立した排除行為に係る排除効果をより強化するものとして,12月7日通知と併せ,排除行為に該当するものというべきである。
(7) 平成29年5月中旬以降の免責文書・抜油対応の排除行為該当性について,次のようにいうことができる。
ア 原告は,平成29年5月中旬頃以降,佐賀航空から機上渡し給油を受けた需要者からの航空燃料の給油の依頼を受けた際には,3月15日文書を示して事故等が生じた場合に原告が責任を負えないこと等を説明し,給油の依頼に応じる条件として,免責文書への署名を求めるか,抜油を求めるという対応を行った(前提事実(7)エ)。
イ このような免責文書・抜油対応のうち,抜油対応は,需要者に対し,多大な経済的負担を生じさせる可能性がある上,時間的な負担も生じさせるものである。
また,免責文書対応は,航空事業者が原告の責任を免除することを認める免責文書への署名を,免除の権限を有するとは考え難い従業員(航空機のパイロット又は整備士)に対し求めるものである(前提事実(7)エ(イ)~(エ))。上記従業員らには,給油を受ける段階でそのような行為に応じる義務はなく,判断を求められることもないのが通常であるし,仮に航空事故が発生した場合多額なものとなる航空事業者の損害の賠償責任を免責したとなれば,免責文書に署名をした従業員の責任を問われることもあり得るから,免責文書対応は,上記従業員らに対し,給油を受けるたびに相応の心理的な負担を負わせるものである。
このように,免責文書・抜油対応が,佐賀航空から機上渡し給油を受けた需要者に対し,負担を生じさせる措置であることからすれば,これらの対応は,需要者に対し,佐賀航空との取引を抑制させる効果を持つものといえる。
ウ 以上に加え,免責文書・抜油対応が,12月7日通知,2月10日通知,3月15日通知が撤回されないまま,これらの通知に記載された給油の拒否に代わり行われるようになったものであって,これらの通知行為による佐賀航空の排除効果が生じていた中,継続して行われていたものであることに照らせば,免責文書・抜油対応は,12月7日通知,2月10日通知,3月15日通知による排除効果を維持することで,佐賀航空の事業活動を著しく困難にする効果を有するものというべきである。
そして,免責文書・抜油対応は,競争者である佐賀航空との取引の存在を理由として不利益措置を講じるものであって,競争行為ということはできない上,免責文書・抜油対応において3月15日文書を示すこととしており,3月15日通知と同様,原告の佐賀航空を排除する目的で行われたものと認めるのが相当であるから,自らの市場支配力の形成,維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり,競争者である佐賀航空の本件市場での活動を著しく困難にするなどの効果を有するものといえる。
エ 以上によれば,免責文書・抜油対応も12月7日通知,2月10日通知及び3月15日通知と併せ,排除行為に該当するというべきである。
(8) 本件通知行為等の一連・一体性
前記のとおり,本件通知行為等は,いずれも排除行為に該当するところ,これらは,いずれも本件市場に佐賀航空が参入したことを契機として,原告が本件市場から佐賀航空を排除する目的で,八尾空港における機上渡し給油の需要者に対して行われたものである点において共通するものである。12月7日通知が行われた後,2月10日通知,3月15日通知及び免責文書・抜油対応は,いずれも12月7日通知による排除効果を強化する効果を有していたことも,前記のとおりである。
これらの事情に鑑みれば,本件通知行為等は,一つの目的の下で行われた一連・一体の行為として排除行為に該当するものと評価するのが相当である。
(9) 排除行為に係る原告の主張について
ア(ア) 原告は,①原告の行為がなくとも需要者は佐賀航空と取引しなかったから,本件通知行為等には排除効果がなかった旨,②本件通知行為等に排除効果が認められるためには,仮に本件通知行為等がなかった場合に個別の需要者が佐賀航空と取引したことが認められなければならない旨,③本件排除措置命令履行後に佐賀航空に乗り換える需要者がいないことが排除効果のなかったことを裏付ける旨主張する。
(イ) しかし,排除行為に該当するというには,本件通知行為等が,自ら の市場支配力の形成,維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり,競争者である佐賀航空の本件市場での活動を著しく困難にするなどの効果を有するものといえるか否かによって決すべきであって,本件通知行為等が上記効果を有するものである事実が認められれば足り,個々の需要者において,本件通知行為等がなかった場合に需要者が佐賀航空と取引したであろうことや,排除措置命令の履行後に需要者が佐賀航空と取引を開始したこと等の事実が認められることを要するものではない。
したがって,原告の上記(ア)の主張は採用できない。
イ なお,原告は,本件通知行為等が自社に生じる危難を回避するためにとった防御的行為としてやむを得ないものであって,人為性を有しないから,排除行為に該当しない旨も主張する。
しかし,本件通知行為等が人為性を有するものといえることは前記(4)イ,(5)ウ,(6)ウ,(7)ウのとおりである。また,原告の主張する前記の事情は,正当化事由に該当し得る事情として,本件通知行為等が「一定の取引分野における競争を制限する」(独禁法2条5項)ものに該当するか否かの検討に際し問題となり得るものと解されるところ,本件通知行為等の目的が「自社に生じる危難を回避するため」であったとは認められず,正当化事由に該当する前提を欠くことは,後記3(4)において説示するとおりである。
したがって,この点に関する原告の主張も採用できない。



3 本件通知行為等が「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ものに当たるか(争点2)について
(1) 「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」(独禁法2条5項)とは,当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい,特定の事業者又は事業者集団がその意思で当該市場における価格,品質,数量,その他各般の条件をある程度自由に左右することができる状態をもたらすこと,すなわち市場支配力の形成,維持ないし強化という結果が生じることをいうものと解される(最高裁判所平成24年2月20日第一小法廷判決・民集66巻2号796頁,最高裁判所平成22年12月17日第二小法廷判決・民集64巻8号2067頁参照)。
(2)ア このように,「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ことが,排除行為によって行われる場合には,当該排除行為によって,その当事者である事業者がその意思で当該市場における市場支配力の形成,維持ないし強化という結果が生じていることをいうものと解されることからすれば,本件における「一定の取引分野」は,当該排除行為により影響を受ける範囲を踏まえて決定すべきである。
イ 前記認定のとおり,本件通知行為等は,佐賀航空が八尾空港の機上渡し給油による航空燃料の販売事業に参入したことを契機として,原告において,佐賀航空を八尾空港の機上渡し給油による航空燃料の販売事業から排除する目的で行われた排除行為であるから,ジェット燃料又は航空ガソリンの一方のみについてのみ行為を行うだけでは目的が達成できず,2つの航空燃料について一体として同時に行われる必要があったということができる。
そして,本件通知行為等のうち,12月7日通知,2月10日通知及び3月15日通知は,需要者に対し,佐賀航空の航空燃料と原告の航空燃料とが混合することを問題視した上で,佐賀航空から航空燃料の販売を受けた場合に給油の継続ができなくなる旨を通知するものであり,航空燃料の種類について特筆することはなく,ジェット燃料及び航空ガソリンを区別することなく航空燃料とだけ記載している。
また,本件通知文書の送付先も,12月7日通知は八尾空港における機上渡し給油による航空燃料販売の主要な需要者である八尾空港協議会員11名であるし,3月15日通知は,原告との間で航空燃料販売のための取引口座を開設していた全ての顧客である取引先需要者に対して,ジェット燃料及び航空ガソリンを区別せずに,航空燃料として一律に,原告としてどのような取扱いを行うものかを通知したものである。
その後の免責文書・抜油対応も,需要者が佐賀航空から航空燃料の機上渡し給油を受けた場合に一定の不利益措置を科すものであって,その対象となる航空燃料をジェット燃料と航空ガソリンとで区別していなかった(前提事実(7)エ)。
さらに,本件市場において,原告は,佐賀航空が参入するまで,ジェット燃料及び航空ガソリンのいずれについても独占的な供給者であり,佐賀航空の参入後も,ジェット燃料及び航空ガソリンのいずれにおいても8割を超えるシェアを有しており,2つの航空燃料につき市場の状況の基礎事情が共通しているということができる。
ウ 以上のとおり,本件通知行為等は,原告が八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売事業から佐賀航空を排除する目的の下,ジェット燃料と航空ガソリンとを区別せずに行われたものであり,ジェット燃料についても航空ガソリンについても同一の機会に同一の方法によって行われ,市場における原告の地位もジェット燃料と航空ガソリンとで共通していることからすれば,本件排除行為は,ジェット燃料と航空ガソリンとを一体不可分のものとして行われたものといえる。
これらの事情に照らせば,原告の排除行為により影響を受ける範囲は八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売に係る取引であると評価するのが相当であるから,当該取引分野を「一定の取引分野」として画定することができるというべきである。
エ(ア) これに対し,原告は,ジェット燃料と航空ガソリンには需要の代替性がないから,一つの一定の取引分野として画定することはできず,ジェット燃料の機上渡し給油と航空ガソリンの機上渡し給油とで別個の一定の取引分野を構成する旨主張する。
(イ) 確かに,ジェット燃料と航空ガソリンとの間には需要の代替性がないという点に着目した場合には,航空燃料の種類ごとの市場が成り立つようにも思われる。
しかし,本件のように,本件通知行為等が,原告において佐賀航空を八尾空港における航空燃料の販売市場から排除する目的で,ジェット燃料と航空ガソリンとを区別せずに行われており,当該排除行為の影響を受ける範囲が八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売分野全体に及んでいるとの事情の下では,ジェット燃料と航空ガソリンとの間に需要の代替性がないことを踏まえても,なお,これらを区別しない航空燃料としての単一市場を画定することができるというべきである。
(3)ア 本件における「一定の取引分野」である,八尾空港における機上渡 し給油による航空燃料の販売に係る取引分野(本件市場)において,本件通知行為等が「競争を実質的に制限する」(独禁法2条5項)ものといえるには,原告が,その意思で当該市場における価格,品質,数量,その他各般の条件をある程度自由に左右することができる状態をもたらすこと,すなわち市場支配力の形成,維持ないし強化という結果が生じることを要する。
イ 原告が,本件市場において,需要者にとって避けることが困難な取引相手であり,八尾空港のみならず,原告以外に給油会社のない空港等において給油を受ける必要のある需要者にとって,避けることの不可能な取引相手であり,佐賀航空と比べ競争上の優位性を有していたことは,前記2(2)カのとおりである。
このような地位にあった原告が,佐賀航空を本件市場から排除する目的の下,本件通知行為等により需要者と佐賀航空との取引を抑制したのであって,その対象となった需要者も12月7日通知の時点で本件市場の約8割に相当し,その後3月15日通知により対象範囲を拡大したものである。原告は,このような排除行為により,本件市場の8割を超える多数の需要者に対し佐賀航空との取引を抑制させたのであるから,これにより,佐賀航空の牽制力を失わせ,佐賀航空との取引を回避し原告と取引する需要者に対し,価格等をある程度自由に左右することができる状態をもたらしたものといえる。
したがって,本件通知行為等により,本件市場における原告の市場支配力の形成,維持ないし強化という結果が生じているということができ,本件通知行為等は,「競争を実質的に制限する」ものに該当するというべきである。
ウ 以上によれば,本件通知行為等は,八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売市場(本件市場)という「一定の取引分野」における「競争を実質的に制限する」ものに該当する。
エ これに対し,原告は,①本件通知行為等には排除効果よりも大きな逆排除効果がある,②佐賀航空の参入後は初期投資費用が埋没費用化するため佐賀航空は限界費用で競争庄力を加えることができる,③佐賀航空は再参入が容易であるし,≪AA≫という固定需要者がいるから市場から退出させることは困難であるとして,本件通知行為等による競争の実質的制限は生じていないと主張する。
(ア) 前記①の主張について,本件通知行為等が,需要者と佐賀航空との 取引を抑制するものであり佐賀航空に対する排除効果を有するものであったことは,前記のとおりである。そして,佐賀航空に対する排除効果を有する本件通知行為等において,需要者との取引を佐賀航空に譲る効果があったとしても,それは反射的効果であるに過ぎず,また,排除効果よりも大きな逆排除効果があったと認めるに足りる証拠はない。
したがって,この点に関する原告の主張を採用することはできない。
(イ) 前記②の主張について,仮に佐賀航空が初期投資費用を埋没費用化し,低価格での供給が可能であったとしても,本件通知行為等が本件市場における需要者に対し,原告を唯一の取引相手とすることを実質上強制するものであり,佐賀航空に対する排除効果を有するものであったことは前記のとおりである。
このような状況において,仮に佐賀航空が低価格で航空燃料を販売しても,佐賀航空による競争的抑制が緩和されているのであるから,本件通知行為等により,本件市場が有する競争機能が損なわれていることに変わりはない。
したがって,この点に関する原告の主張を採用することはできない。
(ウ) 前記③の主張について,本件通知行為等により本件市場における需要者と佐賀航空との取引が抑制され,佐賀航空による競争的抑制が緩和されており,市場支配力の形成,維持ないし強化という結果が生じていることは前記のとおりであり,当該結果は,佐賀航空が完全に退出したかどうかによって左右されるものではない。
したがって,この点に関する原告の主張を採用することはできない。
(4) 正当化事由について
ア 原告は,本件通知行為等が,自社に生じる危難を回避するためにとったやむを得ないものであって,正当化事由があるから,競争の実質的制限が認められないと主張する。
イ 独禁法1条が「一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進する」ことを目的としていることからすると,本件通知行為等の目的が競争政策の観点から見て是認し得るものであり,かつ,本件通知行為等が当該目的を達成するために相当なものである場合には,私的独占の要件に形式的に該当する場合であっても,「競争を実質的に制限する」との要件に該当しない余地もあると解されることから,以下,これを前提に検討する。
ウ(ア) 原告は,ひとたび航空事故が発生した場合,その原因が自社の航空燃料にないことの証明が困難であって,給油会社においては当該事故に基づく損害賠償義務等の多大な負担が生じる危険があることから,当該事故の責任の所在が不明となる危険を回避する目的で,本件通知行為等を行った旨主張する。このような目的に照らせば,原告においては,汚染の生じるリスクが低い,より安全な航空燃料を広く航空会社に供給する方向で対応することが当然の帰結であり,そのためには,佐賀航空がより安全な航空燃料を購入し航空会社に供給すること,すなわち,原告において汚染のリスクがより低いと主張する国内石油元売会社の航空燃料を佐賀航空が購入し供給することが,原告にとっては望ましいということになる。この点は,原告が,12月7日文書において,通常,国内の航空燃料取扱会社は,国内石油元売会社から航空燃料の取扱いについての情報を取得するが,そうではない航空燃料取扱会社は,この点に関する知識や理解が不足しているとし(前提事実(7)ア(イ)),2月10日文書において,佐賀航空が給油している航空燃料と国内石油元売会社から供給を受けている航空燃料が同等の品質管理を経ているか分からないとしていた(前提事実(7)イ(イ),(ウ))ことや,3月25日通知において,佐賀航空がジェット燃料を国内石油元売会社から仕入れていると報告していることが判明し,佐賀航空の取り扱う燃料が統一品質規格に合致した燃料ということができるとして,佐賀航空からジェット燃料の給油を受けた機体については他の給油会社から給油を受けた機体と同様に取り扱うとしていた(前提事実(9)イ)ことからも明らかである。また,原告が,本件訴訟において,佐賀航空が,国内石油元売会社から航空燃料を仕入れる給油会社が通常行う調達方法と異なり,自ら海外で購入した航空燃料を海上輸送しており,このような輸送の過程で汚染が生じる蓋然性が避けられない旨主張している(前記第2の2(1)(原告の主張の要旨)イ(イ))ことも,これと整合する。
(イ)a これに対し,≪X2≫は,取締役及び部長級の者が出席していた平成28年11月10日の原告社内の会議において,佐賀航空について,「今,輸入玉だからどっから出ているのか分からない。そこで,今,早めにつぶそうって話で。元売から供給証明出ちゃったら,もう勝負にならない。」と発言して(認定事実(1)イ),佐賀航空が国内石油元売会社から航空燃料を購入することとなる前にできる限りの手段を使って排除する方針を確認していた。
b また,原告は,佐賀航空が≪Q≫を通じて国内石油元売会社である≪R≫株式会社に対し,ジェット燃料の調達を打診したことを知り,≪X3≫らにおいて,平成29年7月12日,≪Q≫の≪Q1≫らと面談をし,佐賀航空における品質管理の実施状況が不明であるとか,佐賀航空の航空燃料と原告の航空燃料が混合した場合のリスクについて責任を負えないなどと説明した。その上で,原告は,その面談記録において,「SGC佐賀航空㈱は国内石油元売会社から直接燃料を仕入れることができなくなった。」「引き続き,当社が取引のある商社及び石油元売会社に対し,使用事業業界に対する給油会社の燃料供給体制について情報提供をおこなう。」「今回≪Q≫に直接訪問したことで,今後は≪Q≫㈱内でも情報が共有されSGC佐賀航空㈱からの依頼に対し慎重に行動すると思われる」と記載し,その面談記録を,社長,≪X2≫ほか2名の取締役らが閲読していた(認定事実(1)ク)。
c このように原告は,その主張するところによれば,佐賀航空が国内石油元売会社の航空燃料を購入し供給することが望ましいはずであるにもかかわらず,実際には,佐賀航空が国内石油元売会社から航空燃料を購入できないように会社全体の方針として積極的に活動していたものである。
(ウ) これに,以下の事実を併せ考慮すると,原告において,航空事故が発 生した場合に責任の所在が不明となる危険を回避するという目的を真に有していたものと認めることはできず,かえって,佐賀航空を排除する意図を隠すための表向きの理由として前記の目的を掲げていたものと認めるのが相当である。
a 原告は,佐賀航空の航空燃料の品質ないし品質管理に問題があるとの認識を前提に,佐賀航空による八尾空港における航空燃料の販売事業参入に際しても,その品質ないし品質管理に問題があるなどとして反対意見を表明し(前提事実(6)ウ),佐賀航空の参入後は本件通知行為等を行った(前提事実(7))。しかし,佐賀航空において発生した航空事故等は,いずれも航空輸送の安全確保に関するものであって(前提事実(6)ア(ア),(イ)),航空燃料に関する品質管理体制の不十分さに直結するものではない上,本件違反行為の6年以上前のことであって,原告も,その間,佐賀航空に給油車の貸与や航空燃料の販売を行っていたほか,佐賀航空を提携先給油会社と位置付けていたものである(前提事実(6)ア(ウ))。また,原告は,平成26年9月頃,取引先需要者である≪M≫株式会社が佐賀航空から給油を受けていることを認識していたにもかかわらず(前提事実(6)イ),これを特に問題視していたことはうかがわれない。
さらに,原告が,佐賀航空の航空燃料に関する具体的な情報を提供して所管の行政当局に必要な調査や規制,指示を求めるなど,航空事故に伴う危険を回避しようと真に考えていたのであれば通常取るであろう行動をとっていたことはうかがわれない。
加えて,原告は,本件排除措置命令後の令和2年9月頃に調査結果(甲49)を得るまで,佐賀航空の航空燃料の品質ないし品質管理の問題性に係る具体的な情報を得ていなかったのであるから(認定事実(1)ケ),本件通知行為等の時点では,佐賀航空の航空燃料の品質ないし品質管理に問題があることの具体的な情報を有していなかったものである。それにも関わらず,原告は,12月7日通知において,佐賀航空の航空燃料と原告の航空燃料を混合した場合,それに起因する責任は負えない旨記載し,理由として,他の給油会社と異なり,佐賀航空の航空燃料と原告の航空燃料とを混合した場合には,あたかもそれに起因して責任を負わなければならない航空事故等の問題が生じるかのような記載をしたものである。
b 航空事故が発生した場合に責任の所在が不明となる危険を回避するという目的で免責文書に署名を求めるのであれば,取引先需要者の代表権ないし代理権を有する者の署名を取得するのが自然であるが,原告が免責文書の署名を求めたのは,代表権ないし代理権を有する者ではなく,現場で給油を受ける航空機のパイロットないし整備士といった需要者の従業員であり(前提事実(7)エ(イ)~(エ)),不自然である。なお,刑事訴追のおそれは需要者の免責文書では回避できないから,この点においても責任の回避に資するものではない。
また,航空事故がどの需要者に生じるかは事前に予測できず,また仮に航空事故が生じた場合には,原告において事業継続上の重大な危険を負うおそれがある(前記第2の2(1)(原告の主張の要旨)イ(ア))というのであるから,航空事故が生じた場合の責任の所在が不明となることを回避するためには,これを避けるための行為を全ての取引先需要者に対して行うことが自然であるが,原告は,まず12月7日文書を八尾空港協議会員11名に送付し,次に2月10日文書を大阪市消防局に送付し,その上で3月15日文書をその他の取引先需要者に送付したものであり(前提事実(7)ア~ウ),不自然である。
c 原告の≪X2≫及び≪X3≫は,原告の事業所長や役員,部長級の者らに対し,佐賀航空について「五月蝿いハエ」(認定事実(1)ア),「ドブネズミ」(認定事実(1)イ),「マーケットを荒らす溝鼠」で「病原菌を撒き散らす惧れ」がある(認定事実(1)カ)と言及し,「懲らしめる,やがて,追い詰めるような追い込みを対処方針として進めていきたい」(認定事実(1)ウ),「ぶっ潰したいですね」(認定事実(1)オ)と記載したメールを送信するなど,会社全体として佐賀航空を排除する方針を繰り返し明示していた(認定事実(1)ア,ウ~カ)。
エ したがって,この点に関する原告の主張を採用することはできない。
オ 以上によれば,本件通知行為等は,「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ものに該当するというべきである。
なお,前記のとおり原告の主張する正当化事由が認められないことからすれば,本件通知行為等が「公共の利益に反して」の要件を満たすことは明らかである。
(5) 争点1及び争点2の小括
以上によれば,本件通知行為等は,独禁法2条5項に規定する排除行為に該当し,「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ものに該当し,「公共の利益に反して」の要件に該当する。したがって,本件通知行為等は,独禁法2条5項に規定する「私的独占」に該当し,同法3条の規定に違反する。



4 違反行為期間の終期(争点3)について
(1) 本件排除措置命令は,本件違反行為が,12月7日通知により成立し,その後,本件排除措置命令時点においても継続していたとして,独禁法3条の規定に違反する行為が「あるとき」(独禁法7条1項)に該当するとしてなされたものである(前提事実(9)ウ,甲1)。
前記のとおり,本件通知行為等は,12月7日通知の時点から私的独占行為に該当するものと認められるところ,本件市場全体において本件排除措置命令までに本件通知行為等を終了させる事情が生じたとは認められない。
したがって,本件排除措置命令の時点においても,本件通知行為等が継続しており,私的独占に該当し独禁法3条に違反する行為があったといえるから,本件排除措置命令は,独禁法3条の規定に違反する行為が「あるとき」(独禁法7条1項)の要件を満たす。
そして,原告は,本件排除措置命令後,本件排除措置命令に基づく措置として,取締役会において本件通知行為等を取りやめる旨を決議し,令和2年8月21日以降にその旨を自社の取引先需要者及び佐賀航空に対し通知したから(前提事実(9)エ),同日以降本件違反行為を取りやめたものと認められ,同月20日が本件違反行為を行った最終日と認められる。
また,本件違反行為の終期は令和2年8月20日と認められることからすれば,同日からさかのぼって3年間である平成29年8月21日から令和2年8月20日までを本件違反行為の違反行為期間としてなされた本件課徴金納付命令においても,違反行為期間の認定の誤りはなく,したがって,課徴金算定基礎額の認定の誤りもないというべきである。
(2)ア これに対し,原告は3月25日通知によりジェット燃料の市場については免責文書・抜油行為を取りやめたとして,その取引との関係では本件違反行為が同日で終了した旨主張する。
イ しかし,原告が佐賀航空を排除する目的を一貫して有していたことは前記2(8)のとおりである。
また,佐賀航空は,石油精製業者からの調達価格や円相場の動向次第ではジェット燃料を海外から購入する可能性は今後もあり,また国内石油元売会社からジェット燃料を購入できない場合には国外から調達するしかないと考えており(認定事実(4)イ),平成29年の段階でも≪R≫株式会社から航空燃料の供給を断られ(認定事実(1)ク),3月25日通知の後も,佐賀航空において国内石油元売会社から安定的な供給が受けられない可能性が相応にあったといえるから,佐賀航空においてジェット燃料を輸入することとなる可能性も十分にあり得る状況にあったと認められる。そして,原告が,平成29年当時,佐賀航空が≪R≫株式会社から航空燃料の供給を断られたことを認識し,また,佐賀航空が商社又は石油元売会社から航空燃料の調達ができなくなるよう働きかけていたこと(認定事実(1)ク)からすれば,3月25日通知の時点においても,原告は,佐賀航空がジェット燃料を輸入することとなる可能性を認識していたと認められる。
そのような状況下で,原告は,3月25日通知において,佐賀航空がその供給するジェット燃料を,国内石油元売会社から仕入れている旨報告していることが判明したため,佐賀航空を他の給油会社と同様に取り扱うこととするとしつつ,あえて航空ガソリンについて運用に変更がないことを3月25日通知に記載している(前提事実(9)イ)。前記認定のとおり,原告が,本件通知行為等について,本件市場から佐賀航空を排除する目的で行ったことを踏まえれば,3月25日通知において航空ガソリンに関する取扱いの記載を行った趣旨は,佐賀航空においてジェット燃料の輸入を再開した場合には従前の取扱いに基づく不利益措置が課されることを示すところにあったものと認めるのが相当であると同時に,当該記載は原告の佐賀航空を排除する目的が継続していることを示すものであったということができる。
そして,需要者において,佐賀航空の航空燃料の仕入先について,給油を受ける毎に把握できるとは考えられず,現に3月25日通知を受領した需要者において,原告の従来の運用は3月25日通知を踏まえても特に変化していないと考えている者や,佐賀航空のジェット燃料が国内石油元売会社から仕入れたものでなくなった場合,原告が従来の運用に戻すだろうと考えている者,原告と佐賀航空のもめごとが続いていると認識している者がいた(認定事実(4)ア)のであるから,需要者からすれば,3月25日通知後も,原告の佐賀航空を排除する目的の継続を認識でき,佐賀航空からジェット燃料の給油を受けた後に原告から給油を受ける必要が生じた際に,不利益措置を受けるかどうかが不明な状況にあったということができる。
そうすると,需要者においては,3月25日通知の後も,佐賀航空との取引に伴い不利益措置が課される蓋然性がある以上,佐賀航空との取引を差し控える動機があったから,その文言を踏まえても,3月25日通知が本件通知行為等による排除効果を払しょくするものということはできず,これをもってジェット燃料について本件通知行為等が終了したと認めることはできない。
ウ 以上によれば,原告の上記アの主張を採用することはできない。



5 本件排除措置命令書の主文の不特定及び理由付記の記載の不備の有無(争点4)について
(1) 本件排除措置命令書の主文の不特定の有無について
ア 独禁法61条1項は,排除措置命令書には,主文として「違反行為を排除し,又は違反行為が排除されたことを確保するために必要な措置」を示さなければならないと定めており,主文の内容があまりにも抽象的であるため,これを受けた名宛人が当該命令を履行するために何をすべきかが具体的に分からないようなもの,その他その履行が不能あるいは著しく困難なものは違法となると解される。
そして,排除措置命令書の記載が特定されているか否かは,排除措置命令書の記載を全体として見た上で,当該排除措置命令書の趣旨・目的に照らし,社会通念にしたがって合理的に解釈すべきである(最高裁平成19年4月19日第一小法廷判決・集民224号123頁参照)。
イ これを本件についてみると,本件排除措置命令書(甲1)の主文1項は,原告に対し,取引先需要者が佐賀航空から機上渡し給油を受けた場合には自社からの給油は継続できない旨等を通知することにより,自社の取引先需要者に佐賀航空から機上渡し給油を受けないようにさせている行為を取りやめること(主文1項(1))及び佐賀航空の航空燃料と自社の航空燃料の混合に起因する航空機に係る事故等が発生した場合でも原告に責任の負担を求めない旨等が記載された文書への署名又は抜油を求めることにより,自社の取引先需要者に佐賀航空から機上渡し給油を受けないようにさせている行為を取りやめること(主文1項(2))を命じている。そして,本件排除措置命令書の理由の第1においては,原告が,12月7日通知,2月10日通知,3月15日通知及び免責文書・抜油対応(本件通知行為等)をした事実を特定して認定しており,本件排除措置命令書の理由の第2においては,法令の適用として,本件通知行為等について,原告が,八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売に関して,自社の取引先需要者に佐賀航空から機上渡し給油を受けないようにさせていることによって,佐賀航空の事業活動を排除することにより,公共の利益に反して,八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売分野における競争を実質的に制限している旨記載した上で,この行為が独禁法2条5項に規定する私的独占に該当する旨記載している(甲1)。
これらの記載を全体として見れば,主文1項(1)が,12月7日通知,2月10日通知及び3月15日通知を指し,主文1項(2)が,免責文書・抜油対応を指し,これらを併せて「自社の取引先需要者に基づき佐賀航空から機上渡し給油を受けないようにさせている行為」と総称して,その取り止めを命じていることは,容易に読み取ることができる。
そして,主文1項において特定に欠けるところがない以上,これを前提とする主文2項ないし4項が,その履行が不能あるいは著しく困難なものということはできず,いずれも特定に欠けるところはない。
したがって,本件排除措置命令書の主文が不特定ということはできない。
ウ この点,原告は,本件排除措置命令書の主文1項(1)において,原告 が自社の取引先需要者に対し,佐賀航空から機上渡し給油を受けた場合には自社からの給油は継続できない旨「等」を通知するとしており,この「等」との記載により,何を通知したことが問題とされ,どのような通知をすれば排除措置命令違反にならないのかが判然としないため,本件排除措置命令書の主文は不特定である旨主張する。しかし,本件排除措置命令書の記載を全体として見れば,その主文1項において特定に欠けるところがないことは前記のとおりであるから,この点に関する原告の主張を採用することはできない。
(2) 理由付記の記載の不備の有無について
ア 独禁法61条1項は,排除措置命令書には,その理由として,「公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用」を示さなければならないと規定するところ,「公正取引委員会の認定した事実」とは,具体的には,要件に該当する旨の判断の基礎となった被告の認定事実を意味するものと解される。そして,このような具体的な記載がされているかどうかは,排除措置命令書の記載を全体から見て判断すべきものであって,排除措置命令書の記載を全体から見て法の規定の適用の基礎となった具体的な認定事実を知ることができるのであれば,排除措置命令書の記載として欠けるところはない(最高裁平成19年4月19日第一小法廷判決・集民224号123頁参照)。
イ 本件排除措置命令は,原告の行為が,独禁法2条5項に規定する私的独占に該当し,同法3条の規定に違反するとして,同法7条1項の規定によりされたものである。そして,前記(1)イのとおり,本件排除措置命令書は,原告が,12月7日通知,2月10日通知,3月15日通知及び免責文書・抜油対応(本件通知行為等)をした事実を特定して認定した上で,これに対する法令の適用として,本件通知行為等について,原告が,八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売に関して,自社の取引先需要者に佐賀航空から機上渡し給油を受けないようにさせていることによって,佐賀航空の事業活動を排除することにより,公共の利益に反して,八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売分野における競争を実質的に制限している旨記載し,この行為が同法2条5項に規定する私的独占に該当し,同法3条の規定に違反する旨及び同法7条1項の規定に基づき排除措置を命じる旨記載している。
このような記載をみれば,本件排除措置命令書には,本件通知行為等が私的独占に該当するという,独禁法2条5項,3条及び7条1項の要件に該当する旨の判断の基礎となった被告の認定事実が明示されているというべきである。
したがって,本件排除措置命令書の記載には欠けるところはない。
ウ(ア) これに対し,原告は,本件排除措置命令書の理由における①2月10日通知及び3月15日通知の相手方が特定されていない,②本件通知行為等による影響等に係る事実関係の記載が不明確であり特定されていない,③どの部分が佐賀航空の事業活動を著しく困難にしたのかが明らかでない旨主張する。
(イ) 前記①の主張についてみるに,本件排除措置命令書の理由は,2月10日通知の相手方が「八尾空港協議会員のうちの1名」であって,八尾空港における航空燃料の買入れ契約の相手方を佐賀航空に決定したことを受けて,その者に対して通知した旨記載し,3月15日通知の相手方についても,「約250名の自社の取引先需要者」と記載し,いずれも当該需要者の具体的な名称が記載されているものではないが,本件違反行為は,原告がこれらの需要者に対し2月10日通知及び3月15目通知を送付することにより佐賀航空から機上渡し給油を受けないようにさせていることであって,通知の相手方の記載は,行為の特定のための要素の一つに過ぎない。そして,2月10日通知及び3月15日通知は現に原告が行った行為であり,これらの行為との区別が問題になるような行為が存しないことも踏まえれば,本件排除措置命令書において2月10日通知及び3月15日通知の相手方につき具体的な名称が記載されていないことをもって,原告において,いかなる行為を指すものかを知ることができないということはできない。
したがって,原告の前記①の主張を採用することはできない。
(ウ) 前記②及び③の主張についてみるに,独禁法61条1項が本件排除措置命令書に記載すべきとする事実は,具体的には,排除措置を命ずる要件に該当する旨の判断の基礎となった被告の認定事実である。
原告の指摘する前記②の主張に係る事実は,排除措置を命ずる要件に該当する旨の判断の基礎となった被告の認定事実には当たらないから,独禁法61条1項が本件排除措置命令書に記載すべきとした事実ということはできない。
また,排除行為に該当するか否かは,前記2(1)のとおり,競争者の本件市場での活動を著しく困難にするなどの効果を有するものといえるか否かによって決すべきものであって,現実に競争者の活動を著しく困難にした事実は要件事実ではない。
したがって,原告の前記②及び③の主張を採用することはできない。



6 被告による排除措置命令書に記載のない主張追加の有無及び許否(争点5)について
原告は,本件訴訟において,被告が,本件排除措置命令書に記載していないにもかかわらず,①八尾空港以外で原告から給油を受ける必要性の主張,②全国の空港に占めるマイナミ給油ネットワークの割合に関する主張,③マイナミ給油ネットワークの必要性に関する主張,④原告が迅速に給油できるとの主張をしたことが,違法な処分理由の追加である旨主張する。
しかし,これらの主張に係る事実は,いずれも排除措置を命ずるための要件に該当する旨の判断の基礎となった具体的な認定事実に該当しないから,これらの点に関する被告の主張は,理由の追加には当たらない。
したがって,原告の前記の主張を採用することはできない。



第4 結論
以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

令和4年2月10日

東京地方裁判所民事第8部
裁判長裁判官 朝倉 佳秀
裁判官 丹下 将克
裁判官 本村 理絵

注釈 《 》部分は,公正取引委員会事務総局において原文に匿名化等の処理をしたものである。


 

 


2022年12月15日

2023年度ゼミ選抜合格者発表

 合格おめでとうございます!

 次の方々が選抜を切り抜け、2023年度から新しい姜ゼミの2年生メンバーとなりました。皆さんの頑張る姿を見て私もとても嬉しく感じました。勉学面だけでなく、今後のゼミ活動においても大いに活躍することを楽しみにしております。

 姜ゼミに入った以上、みんなで一つの家族ですので、互いに助け合いながら、切磋琢磨して成長していくことを期待しております。また、互いに親友のような絆を結んで卒業できることを願います!

 合格者の皆さんは、2年生になる前の履修登録において、忘れずに専門ゼミナールの履修登録を行ってくださいね。  ゼミナール内の編成と時間割は、面接時のそれぞれの意向を踏まえて設定し、来年3月頃(履修登録前)にTeams クラスの作成とともに、お知らせします。基本的には水曜日又は金曜日のいずれかになるかと思います。

 新学期が始まりましたら、皆さんにとっての初めての懇親会を開催します。開催日は基本的に、初回ゼミナールの日になります。

 


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2022年12月06日

ゼミ見学を開催しました

 11月14日(月)に続き、21日もゼミ見学を開催しました。
 佐藤さんより、工業所有権者パラマウント社私的独占事件(勧告審決平成10年3月31日)の報告を行いました。
 いつもどおりの審判決報告ですが、連続して2コマの報告と質疑応答となり、報告者を含むゼミ生諸君、大変お疲れさまでした。
 そして、見学に来てくれた皆さんにも、感謝をお伝えしたいと思います。ありがとうございました!

 

 


2022年11月24日

🎥ゼミ説明プレゼンテーション会のオンデマンド配信(期間限定)を開始しました

 10月29日(土)に425教室でゼミ懇談会、1363教室でゼミ説明プレゼンテーション会を開催しました。
 会場が離れていたにもかかわらず、ご来場いたきました多くの方々には、とても感謝しております。
 感謝の気持ちを込めて、しっかりと皆さんにお返しをしたいと思います!

 EagleとTigerの両チームによるゼミ説明プレゼンテーション会の録画を期間限定でオンデマンド配信します。
 興味がある方やもう一度じっくりと聞いてみたい方は、ぜひご覧ください。
 ※説明の内容は、担当者が自身の認識に基づき自由に作成されたものとなります。

By Eagle Team

再放送期間が終了しました。ご視聴ありがとうございました!

 

By Tiger Team

再放送期間が終了しました。ご視聴ありがとうございました!

 





2022年11月10日

🎥ゼミ研究発表討論会2022を開催しました

 11月5日(土)2講目に、リアルタイム中継の研究発表討論会という形で、2年ゼミ生たちの研究発表討論会を実施しました。学園祭の日にもかかわらず、多くの方々にご参加いただき、ありがとうございました!
 討論会のオンデマンド再放送を開始しました。どうぞご覧ください(発表テーマの背景や粗筋についてこちらをクリックしてください)。

            テーマ:「コンビニ24時間営業の強制は違法?それとも合法?」
 
 参加者陪審員らの評決により、果たしてどのチームが優勝したでしょうか?再放送の最後で評決が行われます。  他方で、仮に時間を制限せずに思う存分に主張させていたら、結果が変わっていたかもしれません。如何に限られた時間内で説得力のある主張を展開するか、更にどのような順序で論拠を組み立てたら効果的なのかを考えながら切磋琢磨して討論していくのも、わくわくする法学ゼミの楽しいところですね。

 

再放送期間が終了しました。ご視聴ありがとうございました!

 

 

2022年11月06日

討論会テーマの論点整理を行いました

 11月5日の研究発表討論会に備え、議論をより分かり易く進め、陪審員を務める1年生の皆さんにも簡単に理解していただけますように、違法派と合法派の両グループが今回の討論テーマを巡る論点整理を行いました(実際の裁判でも行われる作業です)。

 来場する1年生の皆さんはぜひ、陪審員を務めながら、対戦する両チームによる白熱の討論をお楽しみください。

 

 

 

2022年11月01日

ゼミ説明会(懇談会・プレゼンテーション)・ゼミ研究討論会・ゼミ見学のご案内

 

  • ゼミ説明懇談会
    10月29日(土)425教室 12:50~16:00 
     予約不要で気軽にお越しください。皆さんとの距離が近い姜ゼミ2年生の先輩たちが、各種相談・質問に親切・丁寧に対応いたします。 なお、軽食や飲み物を用意しておりますので、どうぞ自由に食べたり飲んだりしながら懇談してください。

  • ゼミ説明プレゼンテーション(4回実施)
    10月29日(土)1362ゼミナール教室 
    1回目12:50~13:30 2回目13:40~14:20 3回目14:30~15:10 4回目15:20~16:00
     皆さんとの距離が近い2年生の先輩二人が、姜ゼミの特色と演習内容等をプレゼンテーション形式で皆さんにご説明します。集中しやすい静かな環境の中で効率よく、姜ゼミの色々なことを知ることができます。予約不要で同じ内容のプレゼンテーションを4回実施しますので、ゼミ説明会懇談会と組み合わせて、好きなお時間に気軽にお越しください。
     プレゼンテーションは担当者が自由に発想し作成・準備することになっていますので(姜ゼミスタイル)、当日開始直前まで、指導教員の私も、プレゼンテーションの全貌を知りません。皆さんと一緒に、どきどき・わくわくしながら楽しみにしております。

    【更新】Zoomにてオンライン中継も行う予定ですので、対面でもオンラインでも参加していただけます。
    https://us02web.zoom.us/j/94972785006?pwd=S0EwM2c1dWF2VktXMEFqYTRiaG1SZz09
    ミーティングID: 949 7278 5006 パスコード: 8sRnJa

    ※ZoomのアプリケーションはこちらのURLから入手することができます。
  • ゼミ研究討論会
    11月5日(土)10:30~12:00(オンライン開催)
    討論会 テーマ『コンビニ24時間営業の強制は違法?それとも合法?』
    https://us02web.zoom.us/j/94972785006?pwd=S0EwM2c1dWF2VktXMEFqYTRiaG1SZz09
    ミーティングID: 949 7278 5006 パスコード: 8sRnJa

     違法にも合法にもなりうる競争法上の論題です。皆さんがより気軽に参加しやすいよう、オンライン(Zoom)形式にてゼミ研究討論会を開催します。全員連動型が、姜ゼミ論会の特色の一つです。違法を主張するグループと合法を主張するグループに分かれて、論拠を示しながら舌戦を繰り広げます。見学者である皆さんが、納得して応援したいチームに投票し、得票数の多いチームが優勝するという全員参加型の研究討論会です。勿論、意見等がありましたら、リアルタイムで書き込んで発表することも自由です。ぜひご参加ください。
     なお、熱心に姜ゼミを応援する方々を記録として残しておきたいので、差し支えなければ本名にて氏名表示してください(強制ではないので、ニックネームでもかまいません)。

    ※討論会開始10分前に、昨年の法学検定で学部最高得点を獲得した本橋くん(2年ゼミ長)から1年生の皆さんへ、高得点を得るための経験談を伝える時間も設けておりますので、興味のある方は少し早めにお越しください(現在の3年生は頃なのため、法学検定を受けていなかぅた)。
    【更新】同じく最高得点を獲得したことがある4年生ゼミ長の青木くんも、無事に公務員試験面接に合格し余裕ができたので、1年生の皆さんに法学検定準備のコツを伝えるために出席してくれるそうです。

     
    研究発表討論会テーマの背景と経緯の粗筋(ニュース動画リンク付き)
    ①人手不足等を理由に加盟店が時短営業を要望するも、コンビニ本部に受け入れられず ニュース動画はこちら▶️
    ②業界団体が競争の番人である公正取引委員会に要望書提出 ニュース動画はこちら▶️

    ③公正取引委員会が、コンビニ本部の24時間営業の強制は独禁法違反のおそれと見解 ニュース動画はこちら▶️
    ④ところが24時間営業を背景とする一審判決でコンビニ本部が勝訴(深夜営業等の強制が独占禁止法上の優越的地位の濫用にあたらないとする判決は以前もあった)。 ニュース動画はこちら▶️
     
    公正取引委員会と裁判所の見解は対立しているのか?! 


  • ゼミ見学会


    1回目 11月14日(月)4講目と5講目2回実施 1363ゼミナール教室
    報告テーマ:「ぱちんこ機特許プール私的独占事件」
    対面でもオンラインでも見学していただけます。4講目と5講目の報告テーマは同じです。

    Zoom
    https://us02web.zoom.us/j/94972785006?pwd=S0EwM2c1dWF2VktXMEFqYTRiaG1SZz09
    ミーティングID: 949 7278 5006 パスコード: 8sRnJa
    ぜひ気軽に見学してください。


    2回目 11月21日(月)4講目と5講目2回実施 1363ゼミナール教室
    報告テーマ:「工業所有権者パラマウントベッド私的独占事件」
    対面でもオンラインでも見学していただけます。4講目と5講目の報告テーマは同じです。
    Zoom
    https://us02web.zoom.us/j/94972785006?pwd=S0EwM2c1dWF2VktXMEFqYTRiaG1SZz09
    ミーティングID: 949 7278 5006 パスコード: 8sRnJa
    ぜひ気軽に見学してください。

 

 

2022年10月20日

🎥姜ゼミ公式動画(2022)及びゼミ生自由紹介動画(2022)を公開しました

 姜ゼミの新しい公式動画(2022)及びゼミ生自由紹介動画(2022)を公開しました。姜ゼミに興味がある方はぜひご覧ください。

 なお、公式動画はこのページでも視聴していただけますが、ゼミ生自由紹介動画(2022)は、「ゼミ生自由紹介」のメニューから視聴していただけます。

 

 

 

 


 

                                               



 

 

 

 

2022年10月10日

姜ゼミでの学修内容を紹介する1年生向け動画コンテンツを用意しました

 姜ゼミでどのような法分野について勉強することになるかを紹介する動画コンテンツを用意しました。1年生の皆さんも十分に理解できる内容となっていますので、演習内容のイメージを掴むのに役立つかと思います。視聴に必要なパスワードは、『法学入門』講義のと同じです(同講義のTeamsクラスに掲示しております)。

 なお、Teams「専門ゼミナール関連【2022】」の姜ゼミナールチャネルにおいても、同様なコンテンツを公開しております(通信速度等により、チャネルに入ってもコンテンツがすぐ表示されないことがあるが、上部の「ファイル」カテゴリーをクリックして一度切り替えてみると、コンテンツがすぐ表示されるようになる)。

 

 

 

競争の役割

 

独占禁止法ってどのような法律?


景品表示法ってどのような法律?

 

下請法ってどのような法律? 

                                                 (経済産業省ウェブサイトより引用)

不正競争防止法ってどのような法律?



知的財産って何?

 

知的財産の代表格といえる特許って重要?

 

知的財産権と経済法の関係性:意匠権と不正競争防止法を例に

 

 

2022年09月30日

🎥ゼミナール旅行を実施しました

 2年ゼミ生たちと8月にゼミナール旅行に行ってきました。企画から実行まで教員が一切関わらず、すべてゼミ生に任せるというのが、姜ゼミの流儀です。

 合宿先に着くと、買い出しを担当するメンバーと部屋の片づけを担当するメンバーが早速支度を始めました。料理はゼミ長の提案でバーベキューでした。いざ調理が始まると、男子たちが火を起こし、女子たちが食材や食器を支度したりする等、思った以上にみんなで協力し合ってテンポよく宴会の準備を進めることができました。普段あまり自炊の機会がないので、それぞれ自分の手で作った料理をいつもよりも美味しそうに頬張っていました。

 宴会後に、みんなで花火やカードゲームで遊んだりして深夜までどんちゃん騒ぎをしていました。翌日、一緒に海にも行ってきました。

 2年生の皆さんにとって初めてのゼミナール旅行で、青春の一頁として楽しい思い出となってくれていたら嬉しいです。
今回のゼミナール旅行の企画を担当してくれたゼミ長の本橋くんと、写真撮影を担当した本田さんにも感謝を述べたいと思います。 

 

2022年09月20日

🎥オフィシャルサイトリニューアルの準備が始まりました

 新しいゼミ生メンバーを迎えるために、いよいよ今年のオフィシャルサイトのリニューアル準備が始まりました。
 先輩たちみんなでゼミナールを紹介するアイディアの一つ一つを話し合って企画しています。
 姜ゼミに関心を持っている方はぜひお楽しみに♪♪♪


 

 

 

2022年08月10日

ドラマ『競争の番人』

 近年、世界範囲で経済憲法と呼ばれる独占禁止法(競争法)に対する関心度がますます高まっています。

 日本の競争法当局は公正取引委員会という行政機関です。ほかの省庁の干渉を受けることなく、独立に事件を調査・処理する権限を持つ組織です。

 フジテレビは、独占禁止法と公正取引委員会を題材とした新ドラマ『競争の番人』を製作し放送を始めました。最新話なら、ネット配信もあります(https://www.fujitv.co.jp/kyosonobannin/)。

 興味のある方はぜひ視聴してみては如何でしょうか。 

 

 

 

2022年07月15日

今週の審判決報告(20220704)

 7月4日(月曜日)のゼミナールにおいて、相葉さんより、NTT東日本FTTH排除型私的独占事件(最判平成22年12月17日民集64巻8号2067頁)の報告が行われました。

 

 

 

2022年07月05日

今週の審判決報告(20220620)

 6月20日(月曜日)のゼミナールにおいて、小倉さんより、大石組入札談合事件事件(東京高判平成18月12月15日審決集53巻1000頁)の報告が行われました。

 

 

2022年06月28日

今週の審判決報告(20220620)

 6月20日(月曜日)のゼミナールにおいて、大曾根くんより、有線ブロードネットワークス排除型私的独占事件(同意審決平成16月10月13日審決集51巻518頁)の報告が行われました。

 

 

2022年06月28日

ゼミ討論会「好きな仕事と高給はどちらが大事?」

  高い給料をもらいながら好きな仕事に従事するのは、いずれ就職を迎える学生諸君の夢ですね。
  しかし、好きなお仕事に就いたけれど給料がそれほど多くないケース、又は給料が良いけれど好きなお仕事ではないというようなケースが、実際には多いのではないでしょうか。
  そこで、6月6日のゼミ討論会において、給料が安くても好きな仕事を選ぶグループと、仕事の内容よりも高い給料を選ぶグループに分かれて、選ぶとしたら、「好きな仕事と高給はどちらが自分にとって大事?」を巡って議論してみました。
  双方それぞれの主張要旨は次のとおりです。

好きな仕事が大事 高給が大事
(本橋)低給だが自由に使うことができる時間が多くあることで、趣味に没頭する時間や家族との時間が増え、「自分らしい」生き方をすることができる可能性が高まると考えます。 (尾澤)低給でも好きな仕事をする事は、時間や心の余裕ができるなど、今の人生を生きていく上では様々なメリットがあると感じました。しかし、私は、「お金は生きていくためには絶対に必要である。」という事を前提として考えていて、「今の人生が豊かにする。」という観点も大事にしたいですが、それ以上に「将来の不安に対して備える。」という観点の方が大事だと感じたので、嫌な仕事だとしても高給の方が良いと思いました。
(加山)自分の時間が無ければ、生きる目的が見出せず、豊かな人生とはほど遠くなると思います。健康を害するリスクなども含め、仕事を人生の大部分に置くのは健全ではないと思います。 (相葉)たとえ休みが少なくても生きていく上でお金は必要でお金があれば病気になったときや歳をとったときの不安を減らすことができ、尚且つ好きな事を仕事にして嫌いになりたくないからです。
(吉野)好きな仕事をすることは、自由に生きる、自分の意志を貫き通すことです。それが自分の誇りであり、糧になります。お金になる仕事を続けていた場合、毎日ネガティブで後悔することが多いと思います。それより私は、好きな仕事で充実感を得て、どんなことが起こっても、これでよかったと後悔のない人生を送りたいと考えたためです。 (相田)貰えるお金が高いのであれば、それ以外を犠牲にするのは仕方のないことだと考えたからです。そして、生きていくために一番必要なものであり、あるに越したことはないからです。
(本田)労働に時間を費やすことになり、生活時間を十分にとれなくなり、ワークライフバランスを保つことが難しくなると考えるためです。やりがいなどを見つけ年収が高くても自由な時間がなければ、趣味などにお金をつぎ込める時間はないし、鬱にもなりやすいと思います。られないまま働いているため仕事を通して知識や経験を得られないことが多く、働けない体になった時に将来の方向性を見失う恐れがあると考えるためです。
(高瀬)まず、お金がないのが生涯続くのであれば、必ず途中で好きな仕事を辞めて安定した職に就くはずです。お金があれば貯金もでき、余裕があれば好きなものを買うこともできます。確かに時間は無いかもしれませんが、早期退職すれば家族との時間も作れますし、お金が全くないというよりは忙しくてお金がある方が辛いけど、ましな生活を送れると思います。
(佐藤)少ないお金でもコツコツとお金を貯めていく過程も楽しいため、収入が少なくても楽しいと思える仕事の方が人生をより満喫できると考えます。 (大曾根)生活をしていく事や家族を養っていくうえでお金は欠かせず、お金が無ければ社会的信用も低くなるので給料を重視します。
(茂木)自分の趣味に使う時間も多く、程よくリフレッシュをして仕事に取り組めるため、健康的な生活ができます。また、嫌な仕事だとストレスが多く溜まり時間もないため、高給だがお金が思うままに使うことができないと考えます。
(福田)定年後の生活が安定しており、病気等にかかっても費用には困らないからです。
(勝山)年収が高くても自由な時間がなければ、趣味などにお金をつぎ込める時間はないし、鬱にもなりやすいと思います。 (原田)何をするにも必要であり、たくさん持っていても損をしないお金を最優先に考えました。趣味と仕事は別物であり好きなことを仕事にしてもそれは趣味や息抜きにはならないので時間を持て余すくらいなら働いていた方が自分の為になると思いました。
(鈴木)給与としてはあまり多くは無いが、高収入で大変な仕事では、長い目で見た時に、身体的にも精神的にも働けない体になっていることが十分考えられるからです。  

 

 

 

2022年06月28日

今週の審判決報告(20220613)

 6月13日(月曜日)のゼミナールにおいて、勝山くんより北海道新聞社排除型私的独占事件(同意審決平成12月2月28日審決集46巻144頁)の報告が行われました。

 

 

2022年06月14日

ゼミ討論会「住むとしたら、中国orロシア?」

 映画『日本沈没』、『感染列島』に描写されているように、日本は海洋資源に恵まれている一方、島国独特の危険性も抱えています。更に、今までの、そしてこれから発生しうる大地震や津波の脅威に曝される以上、日本列島に住む全国民が速やかにほかの国へ移住しなければならないというような緊急事態の可能性も否定することができません。そうなったときに、辿り着き易く、かつ受け入れを可能とする国土や資源を有するという観点からすると、移住先として近隣国の中国とロシアが選択肢に入るでしょう。そこで、5月30日のゼミナールにおいて仮に中国とロシアのどちらかを選ぶとしたら、どちらを選ぶかについてみんなで討論してみることにしました。
 実際に、討論において、選択した国を褒めることも意見あれば、相手国を批判するような意見もありました。選択した国を褒める意見を次のように要約しました。 

中国を選ぶ ロシアを選ぶ
(小島)中国は、世界有数の経済大国であり多くの日系企業が中国国内へ進出しており、ロシアよりも日本人が働きやすい環境が整っていると言える為。 (坂下)ロシアは中国と比べて自然が多くあり、自由である為。
(飯合)電子生産など世界中のあらゆる物の生産ラインを有していて経済的に発展している為また大連をはじめとした親日都市が多い為。 (坂下)西欧文学に触れられる為。
(山中)中国の方が日本の文化と類似していることから過ごしやすい。また現状、中国の方が安定しているため。 (小川)中国は工業による環境汚染がひどい為。
(小倉)日本と似た気候で暮らしやすい、言語がロシアに比べて中国は漢字を用いることでロシア語よりも難易度が低いように感じた為。 (春口)欧州系は美男美女が多い為。
(窪田)ロシアは気温が低く寒いことから日本に住んでいる私たちからすると比較的気温の近い中国の方が過ごしやすいと考えられる為。  
(君塚)食生活や文化などが日本に近いと感じた為。  

 

 

2022年06月14日

今週の審判決報告(20200606)

 6月6日(月曜日)のゼミナールにおいて、山中さんより多摩談合事件(最判平成24年2月20日民集66巻2号796頁)の報告が行われました。

 

 


2022年06月07日

今週の審判決報告(20200530)

 5月30(月曜日)のゼミナールにおいて、福田さんよりアンプル生地管を供給するニプロの排除型私的独占事件(判審平成18年6月5日審判審決、審決集53巻195頁)の報告が行われました。

 

 


2022年05月31日

今週の審判決報告(20200523)

 5月23(月曜日)のゼミナールにおいて、吉野さんよりノーディオン排除型私的独占事件(平成10年9月3日勧告審決、審決集45巻148頁)の報告が行われました。

 

 


 

 

 

2022年05月24日

今週の審判決報告(20200516)

 5月16(月曜日)のゼミナールにおいて、坂下さんより郵便区分機談合事件(最判平成19年4月19日、審決集54巻657頁)の報告が行われました。

 

 


 

 

 

2022年05月17日

🎥ゴールデンウィークお食事会を開催しました

 ゼミ生の企画で今年のゴールデンウィークに3年ゼミ生とのお食事会を開催しました。

 二十歳になってから、初めての懇親会ということもあり、みんな歓談してとても楽しんでいました。

 楽しい思い出を記録として残します。
  

 



 

 

 

2022年05月15日

ゼミ長自分探しの旅(沖縄編)

 3年生ゼミ長の飯合くんが春休みの期間中に一人で沖縄へ自分探しの旅を行ってきました。

 写真が届きましたので、記念として掲載しておきます。

 新しい自分を見つけ、成長していくことを期待しております。

 

 

 

2022年05月14日

ゼミ討論会「力が正義か」を開催しました

 ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、改めて古きアメリカのアニメからよく登場する名台詞「力が正義だ」について討論してみる必要があるのではないかと考えました。日本は民主主義の国家ですが、世界を見渡すと、既に独裁体制の国家が大半を占めるようになりました。法は正義を実現するという考え方は、民主主義の国において通用していても、もはや多くの国々において通用しなくなっているということです。日本の安全保障にかかわる周辺環境に鑑みると、いよいよ力が正義で、力が正義を実現する、という論題の現実味が、実感できるようになってきました。

 正義とは何でしょうか?人でいうなら人格や世界観によって理解が変わりますし、国家でいうなら政治体制や歴史観によって異なります。しかし、受けてきた教育や見聞きしてきた情報により、アメリカ人の多くがウクライナを支援することが正義と思っていて、ロシア人の多くが未だに「ネオナチ」からウクライナの人々を解放するのが正義と思っているように、自分自身が正義と思っているものが、実は思わされているだけのものかもしれません。

 正義は様々な場面で様々な意識形態で形成され、複数の顔を持っています。それに対応するかのように様々な正義を貫くためには、それなりの力が必要となります。裁判で勝つためには、弁護士(弁護団)の力が必要となり、判決を確実に履行するために公権力の力が必要となり、国家を防衛するために軍事の力が必要となります(口先だけでは国を守ることができない)。

 結局、力が正義かはともかくとして、少なくとも対応するための力がなければ、求める正義も実現されないということになります。

 このような背景から、5月2日に開催された月例ゼミ討論会において「力が正義か」を巡って激しい討論が繰り広げられました。
各メンバーの主張要旨は次のとおりです。

力=正義の理由 力≠正義の理由
(本橋)自分の思い通りの行動や政策を実施するためには力が必要であり、力がなければ正義を実現できないからです。 (本田)人の倫理や法律から外れて振るう力は正義ではないからです。
(相田)歴史は力を持つ者によって創られてきたので、力はないよりもあった方が正義を実現しやすいと考えたからです。 (吉野)誰しもが固有の正義を持っており、力でその思想を変えることは難しいからです。
(尾澤)力がある者が独裁者となって、政治をすることは正義だとは思わないですが、力が無い者が自分たちの正義を叶える事は、今の世の中では、困難である以上、力=正義なのではないかと思いました。 (本田)優れた力を持っている人が支配をすることが許され力がそこに存在しなければ影響力を持つことができないと思います。最終的に正義は力の持つ者が提唱するものであり絶対的な正義とは言えないと考えるからです。
(鈴木)私は正義の形が一つでないように、力の形も一つでないと思います。そのため我々が法令順守し、平和に生活させてもらっている現状は、力=正義が実現しているのではないかと考えます。 (加山)強い力を以て人々の価値観に影響を与えたとしても、実現しうるのはあくまで”大衆意見”に留まります。それ自体は正義とは別物だからです。
(茂木)「力」とは、物理的な力な強さであったり、役職や階級等の権力であったり様々ありますが、それらの力がなければ歴史上、そして現在も正義を実現するのは難しいと思うことから力=正義と考えます。 (佐藤)力を持たない者が集まれば、力を持つ者と対等になり、力を持たない団体は、力を持つ者と同じくらい影響力を持っていると思います。このことから、力は正義とはいえないと考えます。

(勝山)「勝てば官軍負ければ賊軍」という言葉があるように、力をもつものだけが正義を語ることができると思うからです。 (相葉)力=正義として考えてしまうと戦争といった正義とは程遠い行為も正義になってしまうため、力はときに正義を成し得るものとしてとらえるべきであり、力≠正義として考えるべきだと思います。
(原田)力は物理的なものだけでなく、知性や権力、影響力など様々だと思います。人によって正義が違う以上、自分の正義を貫き通す手段は力だけだと思うので正義=力だと考えます。 (高瀬)力にはさまざまな種類があるが、権力があっても筋肉があっても、戦争や喧嘩は名声や利益などを求める私欲のぶつかり合いであり、そこに正義は存在しない。
(大曾根)力を持った者に対抗する唯一の手段がより大きな力であると考えます。そのため力あってこその正義、力=正義と考えます。  


 

 

 

2022年05月13日

今週の審判決報告(20220509)

 5月9(月曜日)のゼミナールにおいて、相田くんよりインテル私的独占事件(勧審平成17年4月13日審決集52巻341頁)の報告、飯合くんより元詰め種子価格カルテル事件(東京高判平成20年4月4日審決集55巻791頁)の報告が行われました。


 

 

 

2022年05月10日

新入ゼミ生歓迎会を開催しました

 2022年から新たに姜ゼミに加わった15名の新入ゼミ生たちに歓迎会を開催しました。
 感染予防のために、比較的素朴なレセプションとなりましたが、みんな照れながら互いに自己紹介したり楽しそうに懇談したりしていました。
 これからゼミナールで強い絆を結び、助け合いながら共に成長していく姿を楽しみにしております。

 

 

 

2022年04月23日

ストリーミング専用サーバーの導入及び楽曲使用包括契約の締結に関するお知らせ

 ゼミナールの活動をより活発に推進していくために、姜ゼミにおいては、昨年度からストリーミング専用サーバーの導入及び楽曲使用の包括契約を進めてきました。この度は、新サーバーの導入作業及び包括契約の締結を完了しましたので、皆さんにお知らせします。
 通常のウェブサーバーより高速なストリーミング専用サーバーの導入により、YouTubeサーバーのようなシームレスな動画配信が実現され、ストレスを感じることなく、姜ゼミの配信動画を視聴することができます(商業広告等に邪魔されないのもいいですよね)。
 また、楽曲使用の包括契約(演奏音源を含む)を結ぶことにより、その都度楽曲使用の申込手続きをせずに、自由に楽曲を利用できるようになりました。
 今後も、ゼミ生の皆さんと一緒にゼミナール活動を更に盛り上げていけるよう努力していきたいと思います。

 

 

 

2022年04月02日

🎥2021年度卒業の思い出作り

2022年3月23日に2021年度卒業生の卒業式が行われました。

ゼミ生の男子たちが最後の思い出作りに教室で思い切り「ひと暴れ」しました。

楽しい卒業記念になれたらいいですね。

 

 

 

 

2022年03月29日

🎥ゼミ懇親会を開催しました

2021年の年末にゼミ懇親会を開催しました。みんなとても楽しんでいました。

楽しい思い出を記録として残します。

 

2022年01月08日

ゼミ討論会「これは社会の歪み?」第一弾

 ゼミ生の皆さんはそれぞれ「日本社会のここが変だ!」と感じているところをほかのメンバーに提示し、自説を披露しながら、討論を交わします。討論を経て全員の賛同を得た論者の主張は、「社会の歪み」として認められます。案の定、激論が展開されました。

 

社会の歪みとして認められた意見 社会の歪みと認められなかった意見
(小坂)男子のヘアスタイルと女子の化粧品使用まで過度に制限する校則。 (飯合)民法の成人年齢引き下げに伴い、飲酒も18歳に引き下げるべき。
(小島)国会議員の文通費100万円問題。 (春口)「引きこもり」の社会復帰が難しい問題。
(君塚)交通事故では責任の割合が10:0にはならない問題。
(小倉)男子トイレに乳児等のオムツ替え台が設置されないのは男女差別の表れ。
(窪田)いじめ問題。 (小川)地域間における最低賃金の格差。
  (坂下)喫煙場所の減少による喫煙者受動喫煙の増加問題。
  (奥村)支給対象が限定された給付金。
  (山中)転職をする際に面接などで転職者が責められ転職しづらい問題。

 

 

2021年12月24日

2022年度ゼミ選抜合格者発表

 次の方々が幾つもの選抜を切り抜け、2022年度から新しい姜ゼミの2年生メンバーとなりました。皆さんの頑張る姿を見て私もとても嬉しく感じました。勉学面だけでなく、今後のゼミ活動においても大いに活躍することを楽しみにしております。
 姜ゼミに入った以上、みんなで一つの家族ですので、互いに助け合いながら、切磋琢磨して成長していくことを期待しております。また、互いに親友のような絆を結んで卒業できることを願います!
 合格者の皆さんは、2年生になる前の履修登録において、忘れずに専門ゼミナールの履修登録を行ってくださいね。
 2022年3月(感染状況によっては4月になる可能性もありますが)に、皆さんにとっての初めての懇親会を開催します。具体的な日時と場所等は、3月に入ってから、Teamsで2年生ゼミのクラスを開設してそこでご連絡する予定です。


  氏名頭文字 学籍番号(右から3桁)
1 145
2 007
3 289
4 109
5 009
6 116
7 206
8 052
9 050
10 329
11 061
12 266
13 035
14 127
15 161
2021年12月06日

姜ゼミ研究発表討論会2021を開催しました

オフィシャルサイトスペシャル企画

2021年12月6日追記:完全版の再放送期間が終了しました。
2022年1月26日追記:ダイジェスト版の再放送期間が終了しました。

11月20日(土)1講目に、リアルタイム中継の研究発表討論会という形で、2年ゼミ生たちの研究発表を実施しました。多くの方々にご参加いただき、ありがとうございました!討論会のダイジェスト版及び完全版の再放送録画並びに両チームの要旨書面を掲載しました。どうぞご覧ください。
テーマ:「これは違法?Amazonの同等性条件規約」
 参加者陪審員らの評決により、果たしてどのチームが優勝したでしょうか?録画の最後で評決が行われます。他方で、仮に時間を制限せずに思う存分に主張させていたら、結果が変わっていたかもしれません。如何に限られた時間内で説得力のある主張を展開するか、更にどのような順序で論拠を組み立てたら効果的なのかを考えながら切磋琢磨して討論していくのも、わくわくする法学ゼミの楽しいところですね。
 
ダイジェスト版の再放送期間が終了しました。

完全版の再放送期間が終了しました。


コラム:「GAFA」を代表とする巨大IT企業に対する競争法の規制強化

2021年11月22日

姜ゼミ研究発表討論会の時間変更決定に関するご連絡

 11月8日にご連絡しました時間変更の件について、正式に決まりましたので、あらためて皆さんにお伝えしたいと思います。
 11月20日(土)に開催予定の研究発表討論会の開始時間は、諸般の事情により3講目から1講目(9時)に変更させていただくことになりました。
 既に3講目の参加を予定していた方もいらっしゃると思いますので申し訳ございません。
 予定が空いている方は、ぜひ陪審員として参加していただき、賛同するチームに一票を投じて研究発表討論会を一緒に盛り上げましょう。
 研究発表討論会の内容等詳細なご案内はどうぞこちらをご覧ください。

2021年11月13日

姜ゼミ研究発表討論会の開始時間変更についてのご案内

1年生の皆さんへ

 11月20日に開催予定の研究発表討論会の開始時間は、諸般の事情により3講目から1講目(9時)に変更させていただくことになりました。
 既に3講目の参加を予定していた方もいらっしゃると思いますので、申し訳ございません。
 ただ、皆さんにとって参加されやすい3講目の時間帯からの開催ができないか、現在も調整を試みています(可能性は高くありませんが)。
 現時点においては、1講目からの開催に変更せざるをえない可能性がとても高いので、取り急ぎ皆さんにご案内させていただきました。
 最新情報を随時ウェブサイトにて皆さんにお知らせしたいと思います。

2021年11月08日

ゼミ研究発表に備えるための検討会を実施しました

11月20日(土)に開催される予定の研究発表討論会に備え、準備作業の一環として討論を展開する両グループは争点及び論拠を整理するための検討会を行いました。
姜ゼミ研究発表討論会の詳細はこちらをご連絡ください。研究発表を切磋琢磨の討論会という形でリアルタイムに中継するのは姜ゼミだけです。
どうぞお楽しみに♪


 

2021年10月30日

ゼミ見学のご案内(2021年11月19日実施)

ゼミ見学日程

日時:11月19日(金曜日)4講目(14:30~16:00)
報告テーマ:「日本音楽著作権管理協会(JASRAC)私的独占事件(平成24年6月12日審決・平成25年11月1日東京高裁判決・平成27年4月28日最高裁判決)」
説明:著作権集中管理団体の市場支配力に対する競争法の規制
報告者:姜ゼミ2年小島さん・坂下さん
場所:姜ゼミ2年生Zoomルーム(教室で直接見学されたい方は個別にご連絡ください。)
https://us02web.zoom.us/j/94972785006?pwd=S0EwM2c1dWF2VktXMEFqYTRiaG1SZz09


2021年10月30日

ゼミ見学のご案内(2021年11月12日実施)

ゼミ見学日程

日時:11月12日(金曜日)4講目(14:30~16:00)
報告テーマ:「パチンコ機特許プール事件(平成9年8月6日勧告審決)」
説明:特許権(Patent pool)の濫用に対する競争法上の規制
報告者:姜ゼミ2年小坂くん
場所:姜ゼミ2年生Zoomルーム(教室で直接見学されたい方は個別にご連絡ください。)
https://us02web.zoom.us/j/94972785006?pwd=S0EwM2c1dWF2VktXMEFqYTRiaG1SZz09


2021年10月30日

姜ゼミ研究発表討論会のご案内(2021年11月20日開催)

オフィシャルサイトスペシャル企画

11月20日(土曜日)9時(1講目)から姜ゼミ研究発表討論会(同時双方向ライブ中継型の討論会)を開催します(90分)。
研究発表討論会をリアルタイムで生中継するのは姜ゼミだけ!
テーマ:「これは違法?Amazonの同等性条件規約」
ぜひ気軽に見学にお越しください。ゼミ説明会の時と同じルーム(2年生ゼミルーム)で開催します。
https://us02web.zoom.us/j/94972785006?pwd=S0EwM2c1dWF2VktXMEFqYTRiaG1SZz09 
ミーティングID: 949 7278 5006 パスコード: 8sRnJa


コラム:「GAFA」を代表とする巨大IT企業に対する競争法の規制強化

2021年10月20日

🎥ゼミ生自由制作動画2021を公開しました

ゼミ生たちが自由に制作した動画、2021版を公開しました。今回の動画編集を担当したのは春口洸くんです。どうもありがとうございました!
1年生の皆さん、どうぞご覧ください。

2021年10月11日

姜ゼミオンライン説明会開催のご案内

 10月23日(土)に次のZoomルームにてオンラインゼミ説明会を開催します。1年生の皆さんと距離がとても近い姜ゼミ2年生の先輩達が、姜ゼミのことを色々ご紹介します。
 同日に4回開催しますので、ご都合の良い時間帯にぜひお越しください♪♪♪
 https://us02web.zoom.us/j/94972785006?pwd=S0EwM2c1dWF2VktXMEFqYTRiaG1SZz09

 

2021年10月05日

ゼミ討論会「コロナワクチン特許の一時放棄に賛成?反対?」

 コロナウィルスのパンデミックから世界を救う切り札として注目されているコロナワクチンを巡って、ワクチンの製造量を増やし接種を加速させるためにメーカーにワクチンの特許を放棄させるべきではないかという議論が巻き起こっています。そこで、この議論をテーマに7月のゼミ討論会を開催しました。賛成派と反対派から、それぞれ次のような意見がありました。

ゼミ生たちの主張要旨

ワクチン特許の一時的放棄に賛成 ワクチン特許の一時的放棄に反対
(小島)人類が最優先することは、生命健康である。特許を解放することでどの国もワクチンに手に届く可能性が高まり、生命健康の保護に繋がる。 (君塚)コロナワクチンを解放することは今後別のウイルスが出た時にまた特許を解放しなければならず研究者たちの意欲を削ぐため解放するべきではありません。
(小倉)世界規模で苦しむ新型コロナウイルスを少しでも早く終息するために、人命を第1に考えた上でワクチンの特許は開放するべきだと思います。 (窪田)たとえワクチンの特許を開放しても、材料の面で問題が残り解決はしないと思うので特許解放は反対です。
(奥村)国家が特許を買い取るのであれば製薬会社に入る金銭面の問題も解決するので解放するべきです。 (山中)ワクチンの特許を認めてしまうと、ワクチンを開発した人の努力が報われなくなってしまいます。一時金をもらったとしても、後々を考えると特許を解放しない方がより多くの対価が開発した人にはいるため、ワクチンの特許の開放すべきではありません。。
(坂下)ワクチンの特許は解放すべきだと主張します。コロナウイルスは感染ウイルスとして世界的に大きな問題、短期間で多数の死者が出ており、世界が手を取り合って解決しなければならない問題であるからです。
(小坂)ワクチン使用に関する世界基準が上がらない限り特許を解放すべきではありません。
(春口)特許のせいで、発展途上国の国民はワクチンが高くて買えません。 (飯合)特許の解放は知的財産の保護の観点から解放するべきではありません。

  (小川)新たな変異主に対応できるワクチンを開発する多面資金確保として特許の保護は必要です。


 

2021年07月09日

2年ゼミ生たちと一緒に交流会を開催しました

ゼミ生たちのご要望に応えて、皆で一緒に交流する機会を作りました。

感染予防を心掛けてとても簡素な交流会でしたが、それでもゼミたちはとても楽しかったようです。

2021年07月02日

ゼミ討論会「日本社会は今もなお、男女差別はまだまだ存在している?男女平等になってきている?」

初めて2年生のゼミ生たちと一緒にゼミ討論会を開催しました。提示された複数のテーマから、皆さんは「今の日本社会において、男女差別はまだまだ存在している?男女平等になってきている?」という論題を選んで激しい討論を繰り広げました。

男女差別といえば、今まで女性側が差別されていることを念頭に、ほとんど女性の権利を如何に守るかの議論を中心に展開されてきていました。国際条約だけでなく、日本の国内法も(例えば、男女雇用機会均等法、男女共同参画社会基本法)、実質的に女性の権利を守ることを中心に置いた法制度が多いです。男女差別は、ジェンダーを巡る法学上の問題だけでなく、少子化や家族といった社会問題にも深く関わっています。

今回の討論は、今までの大人の視点というよりも、これからの日本社会を構成する若い大学生の視点から展開されていきました。女性側が依然として差別されているとして就業や育児制度上の問題が指摘された一方で、女性側が優遇され逆に男性側が差別されていることもあるから、男女差別は男性にも関わっているといった指摘もありました。とても興味深い討論でした。


ゼミ生たちの主張要旨

男女差別はまだまだ存在している 男女平等になってきている
(坂下)男女差別は現在も残っていると主張します。主にジェンダー分業の考えが社会に根強く残っている点からそう考えられます。 (小島)男女差別は存在しません。理由は男性女性にそれぞれの方が優れている能力があると考え、差別ではなく「適性」の問題であるからと考えたからです。
(窪田)国会議員の発言の数々に対し、根底意識には女性軽視の考えが残っていると考えるため、男女平等な社会ではないと判断します。 (小坂)就職や昇進に性別は関係ありません。
(山中)私は、男女差別はあると考えた。理由は、男女平等が叫ばれている時代であるにも関わらず、セクハラやマタハラが横行していると感じるからです。 (奥村)男性も育休取得が可能な制度になっているので男女差別と言えません。
(小倉)日本の政治を担う国会に女性議員が少ないことから男女平等とは言えないと思います。 (君塚)男女差別は戦前の家制度と現行法を比較した場合男女平等が強まってると感じたので差別が残ってるとは言えないと感じました。
(飯合)男性の育休取得率が女性よりも低く、その原因の一端がハラスメントによるものであるから差別は残っています。 (春口)実は男性も差別されています。

(小川)男女間の賃金において女性が少ない傾向にあるためです。  
2021年06月11日

ゼミ討論会「時短営業等への各種協力給付金財源をすべて医療事業に集中させるべき?させるべきではない?」を開催しました

 姜ゼミの慣例行事となった毎月のゼミ討論会は、今学期も始まりました。今回のテーマはコロナを早期に収束させるために、飲食店等に対して支払ってきた各種の給付金・補助金を、すべて医療事業に集中投入し、コロナ患者のための専門治療施設の建設やワクチンの購入・接種事業、更に開発にも活用すべきかどうかについてでした。
 このテーマは、特措法の適用や憲法上の営業の自由、私権の制限といった法学知識を要するだけでなく、政治学と社会学にも深く関わる論題でしょう。3年のゼミ生たちは、医療事業に集中させるべきと集中させるべきではないという二つのグループに分かれて舌戦を繰り広げました(如何にも姜ゼミらしい)。
 果たしてどれが正解なのか、これからの成り行きで自ずと分ってきそうな気がしますが、それでもいつまでのどの時点を線引きして、どちらが正解なのかを検証するための基準とするのかを巡っても、また見解が分かれて議論となりそうですね。
 これもまた、ゼミ討論会の楽しいところでもありますね。


2021年05月28日

久しぶりの再会に男子たちが興奮した‼

新学期が始まり、久しぶりの再会に男子たちが興奮した‼

大はしゃぎのすえ、思わず記念写真まで撮りました(女子たちは温かく見守ってくれました)。

 

2021年04月09日

ゼミ見学公開演習の討論結果を公表しました

 

 姜ゼミの研究発表会(討論会)に参加された皆さん、ありがとうございました!
 皆さんのご声援のおかげで、討論はいつもよりも盛り上がり、あっという間に終了時間となりました。
 本来、会場で結果を公表するつもりでしたが、予想以上に参観者の意見が分かれていたため、限られた時間内で集計が間に合わず、皆さんを大変お待たせしました。
 Zoomの出席データに基づいた集計結果を皆さんにお知らせします。

違法派 37 合法派 20 中立派 ほか 今回は違法派の勝ちとなりました。

 ただ、仮に時間を制限せずに思う存分に主張させていたら、中立派(立場を決められなかった方)が合法派に加わった可能性もあったので、結果が変わっていたかもしれません。
 如何に限られた時間内で説得力のある主張を展開するか、更にどのような順序で論拠を組み立てたら効果的なのかを考えながら切磋琢磨して討論していくのも、わくわくする法学ゼミの楽しいところですね。










2021年03月24日

ゼミ懇親会を開催しました

コロナを受け、オンライン授業が続く中で、ゼミ生たちもストレス感じています。
もともと予定していた懇親会も何度も延期していました。
たとえ短く簡単にでも貴重な団らんの機会をなんとか作ろうと、昨年12月に簡素な懇親会を開催しました。
本当は飲食店で賑やかに実施したかったのですが、皆さんの安全を最優先に守らなければならないですね。

 

 

 

2021年03月23日