ゼミ討論会「日本が『軍事産業立国』を目指すことに、あなたは賛成?反対?【前半】」

 

 2025年5月9日(金)のゼミナールでは、「日本が“軍事産業立国”を目指すことに、あなたは賛成?反対?」というテーマで討論会を行いました。
 ロシアによるウクライナ侵攻や、トランプ政権下での同盟国軽視といった国際情勢の不安定化を背景に、「自分の身は自分で守るしかない」「平和も結局は力によってこそ守られる」といった現実を突きつけられているのが、今の私たちの置かれた状況です。
 こうした中、日本でも防衛力の強化とともに、軍事産業の発展を目指す動きが活発化しています。特に、軍事製品の海外輸出を通じて経済成長を促し、軍事産業を国家経済の柱の一つとして育成していくべきだという考え方が広がりを見せています。
 一方で、憲法改正や武器輸出規制の緩和、さらには戦争への加担につながるのではないかという懸念も根強くあります。こうした議論の両面を踏まえ、今回のゼミ討論会では賛成派と反対派に分かれ、前半・後半の二部構成で活発な意見交換が行われました。
 次では、その討論の様子を振り返ります。

 

発言要旨
【賛成派】
(今泉)軍事立国をすることで日本が得られるものは多くあると考えた。まず、現段階では日本はアメリカから守られているという状況であるため、いざというときにアメリカの保護以外に自国を守る術がないため、軍事力を持つことで自国を自分たちの力で守ることが可能となる。次に、軍事立国することにより、他国との兵器の売買で日本の産業が活性化することが見込まれる。
(杉本)戦争が起こった際に自衛隊だけでは国を守るにはあまりにも戦力が弱く、いざと言う時の備えとして軍事力をあげ軍事立国にしていくのは賛成である。今のアメリカ大統領が日本や他の国々に対しても軍備力の強化を要求し自分の身は自分で守れというスタンスを取っているように軍隊の保持が憲法9条によって禁止されているのなら軍隊を立ち上げ法改正するべきだと考える。また日本の高度な技術は軍備や技術を通して貿易する際に有利であり、経済的な発展にも繋がり、今の困窮した日本から脱却できる可能性も充分考えられると思う。
(原田(花))周辺の国々が軍事力を強化する中で、日本が十分な備えを持たなければ、万が一の際に不利な立場に置かれる。また、軍事力を持つことで相手に警戒心を抱かせ、戦争の抑止にもつながる。さらに、アメリカによる防衛が将来的に続く保証はなく、自己防衛体制の整備が求められる。そして軍事力は経済発展にも繋がり、兵器の開発・輸出やアメリカとの共同開発を通じて技術力の向上や新たな産業の成長が期待できる。安全保障と経済発展の両面から、軍事立国は現実的かつ必要な選択であると考える。
(徳光)軍事立国は、国の抑止力を高めて戦争を防止し、平和を維持するだけでなく、外交交渉を有利に進める力にも繋がるため、幅広いメリットがある。さらに、防衛技術の発展により産業が発達し、産業や経済の成長を促す点でも大きな意味がある。他国との軋轢を産むなどデメリットはあるため、話し合いなどによる対策が必要だが、メリットが上回ると考える。
(遠藤)軍事立国は戦争をするためだけではなく、もしも何かあった時のために国を守るためにもつながると考える。軍事力を持つことで敵に対する抑止力を強化させたり、自立した防衛体制を確立することができる。今はアメリカのおかげで自衛隊だけで成り立っているが姜先生がおっしゃったようにアメリカの防衛がなければ 3 日ほどでやられてしまう。もちろんデメリットもあるが今よりも防衛体制を強化させ、他国に依存しすぎず自立した国家を目指すためにも軍事立国は現実的な選択であるといえる。
(三重野)軍事立国は、今のままだと日本は戦争をしかけられても自力で対応することが難しく、米国の支援に頼るだけになってしまうので、米国に見捨てられたら危機に直面する、という状況から脱するためにするべきだと思う。軍事立国をした場合、武器の輸出などによって日本の産業拡大にも繋がり、周辺国家に力があると示すことで、他国への威嚇にもなると考えた。戦争を仕掛けられてからでは遅いので、今から軍事立国をするべきだと思う。
(長谷川)もし日本が戦争を仕掛けられてしまった場合、アメリカの軍事力に頼ることはリスクが高すぎる。また、日本が軍事力を持つことで他国が武力を行使することへの牽制となることも考えられる。
また、軍事立国をして武器などを外国に向けて売ったりすることで日本の産業や経済の成長を促すことができる。
 
【反対派】
(合津)軍事立国をすることによって、周辺国との軍事的緊張が激化してしまうというリスクがある。また、軍事費の増加によって教育や医療、インフラ整備など他の重要分野への投資を圧迫する可能性がある。
(原田(ほ))日本が軍事立国をし、軍事力を強化すると周辺地域との関係を悪化してまい、紛争が起きる可能性がある。日本には資源がなく、他国の輸入に頼っている状況でその支援が受けられなくなってしまうのは日本に大きな負担がかかるのではないかと考える。また、軍事立国することで多額の費用が必要となり、経済的負担がかかる。
(岩本)日本は、現在少子高齢化しており、かつ働き手がいたる業界で低下している。そんななか、軍事立国をしてしまうと、軍事産業に力を入れることになり、軍事産業に人が取られてしまい、他の産業で人手が不足してしまうため、日本が衰退してしまう可能性がある。また、お金があまりない日本では、経済面的にも厳しくなると考えられる。
(西谷)現在の日本では軍事立国することは憲法9条戦力不保持に当たる可能性があるため厳しいと考えられる。また日本はさり食料やエネルギー資源を他国からの輸出に頼っているため下手に軍事立国することで物資不足にかなる可能性がある。
(黒田)平和主義、非核三原則を唱えている日本が軍事立国をするとなると世界からけん制される可能性がある。そして今の日本は軍事立国をする資金がなく、軍事立国よりも優先的に行うべき事案がある。もし軍事立国をしたとして戦争になってしまったら過去の過ちを繰り返すことになるから軍事立国をするべきではない。
(横田)軍事立国をするには軍事費の拡大が必要となるが、現時点でも不足していると言われている教育費や福祉費などの予算がさらに減ってしまうため軍事立国はすべきではない。資源を国内で確保出来ない日本は軍事立国をするには難しいと考える。
(鵜野)軍事立国することは現在の法律上難しい。また、軍備を持たずに、戦争はしてはいけないということを訴えていったほうが良いと考える。そして、日本は、借金が多いので、軍事立国にかけられるお金があまり無く、経済的にも厳しいと考えられる。
(満)軍事立国は、やはりメリットよりデメリットの方がでかいと考える。「もしも」の対策をして危険を背負うのではなく、今の均衡した状態を保つべきであると考える。
(井出)軍事立国は、短期間で築けるものでは無い。仮に日本が軍事立国しているという情報が国際社会に出回れば、現在友好的な国、緊張関係にある国問わず、日本への警戒心が強まる。それにより、相手国の軍備の拡大を招く可能性や、友好国からの信頼を失う可能性もある。さらに、軍事立国中の、まだ未完成な状態の日本を攻める機会だと捉えて、侵略される可能性もある。そのようなリスクを負ってまで、軍事立国をする必要性はないと考える。むしろ、戦争をしない、という日本の姿勢を崩さず、戦争以外の方法で国を守る政策を行うべきだと考える。
(大野)軍事立国をすることによって、まず日本の憲法第九条に反することになる。そして、軍備を強化したことによって周辺国も対抗して軍拡を進める可能性が高く、安全に繋がるとは言いきれない。今、日本はかなり多くの債務を抱えていてこれ以上経済的負担はかけられないから。
(小澤)今の日本では、平和主義の理念が採用されているため、周辺諸国からから脅威とされていない。そのため、今軍事力を強化してしまうと周辺諸国から目をつけられてしまい、最悪戦争が起こってしまう可能性がある。また、金銭的な面から見ても、軍事力を強化できるほどのお金がないと考えられるため、するべきではないと考える。
(田名部)軍事立国は平和を脅かし、外交的解決の余地を狭める。軍事費が福祉や教育を圧迫し、国民生活に悪影響を与える恐れがあるため 。
(松永)日本が軍事立国を目指すべきではないと考える。その根拠の一つは、日本国憲法第9条の存在。この条文は、日本が戦争を永久に放棄し、戦力を保持しないことを明記しており、戦後の日本が軍事によらない平和国家としての道を選んだことを示している。実際、戦前の日本は軍事力を背景に国策を進めた結果、アジア諸国との戦争に突入し、多くの人命が失われた。しかし今ある経済発展や国際的な信頼も、平和主義に支えられてきたと考える。現代の国際情勢は確かに不安定な要素もあるが、それに対抗する手段が軍事立国であるとは限らないと考える。むしろ、外交や経済、文化的な交流を通じて他国と信頼関係を築くことが、長期的な安全保障に繋がると考えるので、軍事立国には反対である。
(丸橋)日本は平和主義を大切にしてきた国であり、武力ではなく対話で問題を解決すべきだと思う。軍事力を持つことにより他国との関係悪化も考えられる。 そして、今の日本には十分なお金がない。軍事に多くの予算を使うより、教育や福祉など国民の生活を支えることに使うべきであると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2025年05月24日